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「前進前進前進ンンン~~~!!!」
シュトロハイムは走り続けていた。
ツェペリ達と別れてから何時間もただひたすらに。
誰にも会わず、どこへ行き着く事も無く。

さて、此処で疑問に思う点が1つある。
そう。
“何時間も走り続け、何故今まで誰にも会わないのか”。
運良く今まで誰にも会わなかった?
探知機があるのにそれは考えられない。しかもそうなら、とっくに杜王港に辿り着いている筈である。
わざと探知機の示す方向から逃げた?
シュトロハイムを知る者はこんな考えを起こさない。
真実は、もっと簡潔である。

 * * *

「何故だ。この探知機の示す方向に進んでも、誰にも会わないではないか」
俺は少々訝しく思い始めていた。
この“ハート型の探知機”は、今までに何回か反応していた。
だが、この探知機の示す方向、つまり“ハートから伸びる棒の方向”に進んでも、誰にも会わないのだ。
それどころか、探知機の示す方向に進み続けると、反応を失ってしまう。
本当にこの探知機は、参加者の居場所を指しているのだろうか。

そしていつしか、俺は霊園とおもしき場所に辿り着いていた。
「此処は…」
俺は地図を開き、場所を確認する。
此処はG-1、間も無く禁止エリアとなる場所である。
「む。このエリアに居るのは危険だ。早急に避難しよう」
そう言って俺は踵を返す。
そしてG-1を抜け出し…


バササササッ

鳥の羽ばたく音が聞こえた。
空を見上げると、一羽の鳩が飛んでいた。
しかも、俺の頭上を越え、G-1へと向かって行く。
そして、鳩は地面に降り立ち、見えなくなった。
「ぬぅ」
あの鳩、どうやら禁止エリア内に降りたようだ。
鳩に首輪は付いて無さそうだが、禁止エリアに留まるのは危険。
追い払ってやるか。
そして再びG-1に足を踏み入れ、暫く歩くと鳩が見え…
「!」
探知機が“鳩とは逆の方向を”指し始めた。
どうする。
今度こそ誰かに会えるかも知れない。
鳩は足に何か付けていた様だが、首輪は無かった。
そもそも、参加者である筈が無かろう。
だが…
「ええいっ!鳩め、面倒をかけよるわ!!!」
誇り高きゲルマン人は、一度関わった物を見捨てない!
俺は鳩の降り立つ地へ、探知機の示す方角と真逆の方向へ向かった。
「おい、鳩。此処は危険だぞ」
地面を突いている鳩を見つけた俺は、そう声を掛けながら鳩の下へ向かった。
が、鳩は逃げる総振りを見せない。
「ほら。とっととこの場を去れ」
と言って追い払うように手を払うが、当の鳩は、構わず地面を突いていた。
「仕方ない」
俺はそう呟き、ディバッグからパンを取り出す。
「ホラ。これをやるから、食べた後は此処を出て行け」
千切ったパンの欠片を鳩に与える。


すると鳩は、目を輝かせたようにパン片に喰らいついた。
「…」
このような殺伐とした場でも、一時の安静は得られる…か。
どれ、少しだけ水を与えてやるか。
そう考え、鳩に近付いた時だった。
「!」
探知機の示す方角がいきなり変わる。
「む、誰か現れたか!?」
此処はもうすぐ禁止エリアとなる場所。
連れ出さねば爆死してしまう。
そう考え、立ち上がって動こうとすると。
ぐるんっ
探知機が大幅にその指し示す先を変える。
何だ、これは?
こんな、異常とも思えるスピードで街を徘徊している者が居るというのか?
まさか、これもあの“スタンド能力”と云う物なのか?
暫く探知機を見つめる。
反応は無い。
相変わらず鳩と真逆を指している。
因みに鳩は、食事を終えた後、先程の地面を突く作業を再開していた。
何故動かないのだ。探知機の先に居る、恐らくスタンド使いは。
………?


待て。もしかしたら…。
と或る可能性に気付いた俺はそのまま横に移動する。
ぐるんっ
探知機は動く。常に鳩と逆の方向を指すように。
「ま、まさか…」
そうか!そういう事だったのか!!!
これはハート型の探知機ではない。スペード型の探知機だったのだ!!!
探知機の示す方向に進んでも誰にも会わないのも道理。
俺は今まで探知機と逆の方向へ進んでいたのだ!!!
「ぬううう!!!無機物のクセに俺を謀るとは、なかなかやりおるわあああぁぁ!!!」
この場合、『お前が使い方を間違えただけだ』などという意見は受け付けない。
『自分も半分以上は無機物のクセに』という意見も却下する。
何にせよ、探知機はずっと鳩を指していたという事だ。
首輪は見当たらないから、恐らく足についているのが…
「む?」
その時、俺は鳩の足に括り付けられている物が何か気付いた。
まさかこの鳩は、伝書鳩なのか!?
思い当たった俺は、鳩の足からそれを外す。
それは2通の便箋だった。
「どれどれ…」
そして俺は、手紙を読み始めた…。
………………
………


「何と!シーザーかっ!」
手紙を読んだ俺は声を上げた。
漸く仲間の手掛かりを得たのだ。
「だが…」
妙な事がある。
何故鳩は此処に居る?
ジョセフの下へ向かったのではないのか?
なのに鳩は何故…
「おい、鳩」
俺の呼び掛けに地面を突く作業を止め、こちらを振り向く鳩。
「お前、何故この手紙をジョセフに届けん」
「…」
鳩は無言で又地面を突き始める。
「お前、よもやちゃんと相手に届けることが出来ないのではあるまいな」
キラン!!!
俺の発言に、鳩の目が光ったような気がした。
「…」
鳩は俺の肩に飛び移り…
バササササ!!!
「うわっぷ!」
いきなり羽ばたき始めた。
「解った!貴様を侮辱した非礼は詫びる!だから止めろ!」
俺がそう言うと、鳩は地面に舞い戻り、再び地面を突き始める。
…俺の頭は鳩の羽だらけになっていた。
「………む?」
あの鳩、何か違和感がある。
人語を解しているとしか思えない行動に、では無い。
まあ、十分不気味ではあるが、この町では有り得ない事では無い。
もっと根本的な、1+1=3と解いてしまったような、決定的な間違い。それは…


鳩を眺め、考える。
足首に封筒がついている以外普通と何も代わりの無い鳩。
そう、何も…
!!!
そうだ!何も無いのだ!
首輪も!!!
ならば、何故探知機は反応する!?
………待て。
ジョセフの下へ飛び立った鳩。
ジョセフの下へ辿り着かず、地面を掘るように突き続ける鳩。
首輪の無い鳩を指し続ける探知機。
『ジョセフは死んだ振りをしている』と書かれたシーザーの手紙。
まさか………!
探知機が指すのは鳩ではなく…!
ならばジョセフの居場所は…!
「ジョセフ!もしお前がここに居るのなら、安らかな眠りを妨害する非礼を詫びよう!!!」
そう叫び、俺は土を掘り起こした。


「…」
暫く掘り起こし、漸く出て来た男の眠る顔。
それは俺のよく知る男、ジョセフ・ジョースターに間違い無かった。
「ジョセフ…」
やはりお前は、このゲームにその命を散らしたのか。
鳩は役目を終えたとばかりに、地面を突くのを止めていた。
「起こして済まなかった。あの世で会った時、俺の事を殴るが良い」
そうジョセフに呼び掛け、俺は土を戻そうとした。
その時…

pipi

「…む?」
俺の首輪が鳴り始める。
何故鳴り始めたか。理由は明白だ。
「しまった!!もう13時か!」
長居し過ぎた!!!
ここは禁止エリアとなってしまった!
そう考え、首を吹き飛ばされるのを覚悟する。
「………?」
しかし、首輪は爆発しなかった。
「どういう事だ?」
首を傾げ、すぐにその答えに行き着く。
そうか。荒木は『5分前に合図が鳴る』と言っていた。
今のはその合図だったのか。
ならば今すぐこの場を離れるべきだ。
そう考え立ち上がり…
「あ」
その事実に気付いてしまった。


12時55分30秒―――
「…」
俺はジョセフの方を振り返る。
奴にも首輪は付いていた。
このまま奴を放置するという事は、1時に奴の首が吹き飛ぶという事。
その事実に気付いた以上、俺のする事はただ一つ!
「ぬうううぅぅぅ!!!
その様な死者に鞭打つ真似、このシュトロハイムが許さんぞおおおぉぉぉ!!!
荒木いいいぃぃぃ!!!!!!」
俺はすぐさま地面を掘り起こし始める。

12時57分―――
「むうううぅぅぅ!!!」
全力で掘り起こす。が、片手の作業なので思うように捗らない。
未だ、顔と胸が見えて来ただけだ。
「クソッ」
とても間に合わない。
無理なのか?俺には…。
!!!
その時、俺は視界の隅にそれを捕らえた。
「なっ」





鳩が、掘り起こし作業を手伝っていた。



別に役に立っている訳ではない。
ついばむ程度の土を除けても焼け石に水である。
だだ、その行動は…
………俺を奮い立たせるに十分だった。
「そうだ!諦めてなるものかあああぁぁぁっ!!!」
俺は左手と、手のない右腕を使って掘り起こす。
残り時間など考える必要は無い!
ジョセフを助けるまで全力で掘り起こすのみだ!!!



12時59分30秒―――
「良し!!!」
遂にジョセフを掘り起こす事が出来た。
「寝てるとこ騒がしくして済まないが、もう少しだけ辛抱しろ。ジョセフ!!!」
そして俺はジョセフを担ぎ上げる。

後20秒―――
「前進前進前進ンンン~~~!!!」
G-1脱出を目指し、全速力で駆ける。

後5秒―――
くそっ!紙一重で間に合わないか!!!
いや、諦めるな!
最後の一瞬まで全力で駆けろ!!!

後3秒―――
「!」
その時、後ろから押されるような手応えを受けた。
バササササッ
!!!
そうか。振り返らなくても解る。
鳩の奴、嘴で俺の背中を押しているのか!
全く、格好つけてくれる鳩だ。
先程の掘り起こしの時と同じく、殆ど役に立たない力。
だが…

後1秒―――
「ぬおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっっっ!!!!!!」
鳩の尊敬すべき行動に活力を得た俺は、ありったけの力を振り絞り走る。
そして…



―――ゼロ。
ドッグオオオォォォ~~~ン!!!!!!



…という爆発は起こらず、
「どうだあああぁぁぁっっっ!!!!!!」
紙一重の、1秒にも満たぬ一瞬の差。
俺達はG-1を抜けていた。

 * * *

「鳩よ!!!生態系は違えど、お前の誇り高き行動に敬意を表する!!!
せめてもの礼だ。受け取れいっ!!!」
俺はパンの欠片と水を少々、鳩に与えた。
そして鳩がパンを啄ばみ、水に喉を潤す間、俺はジョセフの顔に帽子をかける。
済まないな、ジョセフ。
ここは眩しいだろうが、禁止エリアが指定されるたび埋められたり掘り起こされるのはお前もイヤだろう。
だから暫くは、そう、荒木を滅するまでは日の下に居てくれ。
終わった暁には、お前がゆっくりと眠れる場を提供するから。
さて、俺が先ずやるべき事は、シーザーへの返信だ。
そして俺は、返信用の紙に書き始めた。
………………
………


「うむ」
出来上がった手紙を持ち上げる。
何時の間にか、鳩は食事を終えたらしく俺の下に居た。
「では、鳩よ。任務を与える。
この手紙をシーザーの下へ届けてくれ」
そして、俺は鳩の足に、シーザーに向けた手紙を括り付けた。
バササササッ
そして鳩は飛び立って行った。
「さて、暫く小休止とするか」
そして俺は、ジョセフの隣に座り込む。
ジョセフよ。後の事はこの俺と世界に誇るナチスの科学力に任せ、安らかに眠るが良い。



 * * *

『シーザー・アントニオ・ツェペリ
この手紙を受け取った、シュトロハイムが返信をさせて頂く。



久し振りだな。シーザーよ。
シュトロハイムだ。
お前が放った鳩は、ジョセフの死体の上に居た。
それを発見した俺が、ジョセフの代わりに返信させて貰っている。

そう、ジョセフは死んだ振りなどしていない。
正真正銘、死んだのだ。
誰が殺したのかは不明だが、とにかく今ジョセフの死体は俺と共にG-2に居る。
シーザーよ。すぐにG-2に来い!
俺は此処で第三放送まで待っている。
第四放送時、リサリサ達とC-4で合流する手筈になっているから、お前も一緒に行こうではないか。

後、もう一点。
“スタンド”
この言葉に聞き覚えが無いのなら、不用意に出会った人間に近付くな。
でないとお前は死ぬ事になる。
お前は、“スタンド”と云う能力について知らなくてはならない。
スタンドについて、俺の状況について、今後について…
全ては出会ってから話そう。

良いな、最優先でG-2まで来るのだ。

                             シュトロハイム   』






【霊園(G-2)/1日目/日中】
【シュトロハイム】
[能力]:ナチス最新鋭の技術を駆使したサイボーグ
[時間軸]:次の書き手さんヨロ
[状態]:右腕喪失。生身部分は波紋によるパワーアップ
[装備]:ゲルマン民族の誇りである自らの肉体
[道具]:支給品一式(パンと水少々消費済み)。『矢の形をした首輪探知機』
[思考・状況]:
1)第三放送までシーザーを待ち、合流する。
2)第三放送後、仲間を捜しつつ病院(C-4)へ向かう
3)ジョースター卿とディオに出会った時、二人を倒すかどうかは保留
4)もちろんワムウ、荒木には警戒する
5)全てを終えた後、ジョセフを弔う


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64:SZR~surround zone readers~ シュトロハイム 105:『シーザー孤独の青春』
74:一期一会 サヴェジ・ガーデン 105:『シーザー孤独の青春』