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朝日が窓から差してきた。時計は・・・午前8時を回っている。
俺は――機械の軍人を見逃し、1人の男を殺した俺は――今、病院のロビーにいる。隣で右手を押さえている男、リキエルと一緒に。
《運命》によって出会い、命のやり取りを終えた後、「ずっとここに立っていても仕方がない」とどちらからともなく病院に入り、ソファーで休息を取り、
そして―――荒木の『放送』を聞いたのだ。病院のテレビ、スピーカーはもちろん、電光掲示板さえも放送の文字を映し出していたのだ。驚かないほうがおかしい。
しかし、このリキエルという男は、放送にやたらと関心を示していた。時折深く頷いていたり、何かぶつぶつと独り言をつぶやいていたりもした。
恐らく・・・放送で荒木が言っていた《運命》と言う単語に共感したのだろう。放送の中ではたったの一度しか言っていない、その『言葉』に。そして、リキエルが口を開く。
「13人か・・・なんと『神』に因縁深い数字なんだ・・・このゲームで滅ぶ《運命》にあった者達の魂も、こうして神父を祝福し、押し上げていくのか。
 そして・・・あのシュトロハイムという男も、やはり生き延びたようだ。彼の《運命》もまた強いものだな。最も、神父の持つ《運命》の前にはそれも無に等しいのだろうが・・・」
――なんでこいつはこんなに冷静なんだ。もう既に13人もの人間が死んでるって言うのに・・・
  ・・・その中に、あの殺人鬼、吉良吉影もいて―いや、ありゃ仗助の嘘だったかな・・・―とにかく殺人鬼(かも知れない男)を殺すほど強い奴等がいるってのに・・・
    ・・・それに、禁止エリアだって俺たちが放送の後ずっと黙りこくってる間に早くも一つ目が作動したってぇのに・・・
「ん、どうした噴上。顎が痒いのか?」
リキエルに声を掛けられ我に返る。無意識で弄っていた顎からも手を離した。ヤバい、このハンサムな俺が放送如きにビビッちまっていたのか・・・ゆっくりと返事をする。
「いや・・・平気だ。何でもねぇ。それよりおめーのほうは右手、いいのかよ?」
「ああ。さっき添え木も当てて包帯も巻いたじゃあないか。そりゃあ痛いが、この骨折もひとつの―」
「運命だ、って言うんだろ?」
「そうだ。分かってきたじゃないか」
分かりたくなんかねぇよ。と心の奥で吐き捨て、その気持ちを切り替えるために、俺はリキエルにひとつの―しかしとてもシンプルな―質問をした。
「・・・で、これからどうするよ?その『神父』とやらは探さなくていいのか?」
「もちろん探すさ。俺の運命・・・いや、ここでは《使命》と言うべきか・・・それは『神父を探し出し、ささやかな祝福すること』だ。」
それが当然であるかのように力強くリキエルは即答した。
「じゃあ、すぐにでもこの病院を出て神父探しをする、ってことだな?」
「当然だ。今の俺の生きがいはそこにある。」
はあ、やっぱりそうなるのかよ。俺はどこまでこいつと《運命》を共にしなければいけないんだ・・・それに――
「・・・そもそも神父ってのはいったい何者なんだ?詳しく聞かせろよ」
声に出して質問した。俺はかれこれ一晩中『神父』だの『祝福』だの聞かされてきたが、神父の存在についての詳細はリキエルから殆ど聞いていなかったのである。
「――そうだな。ここを出る前に話しておくのもいいだろう。そして、これを聞いたらお前の《運命》もまた、変わる。」


リキエルは俺に語り始めた。
ある夜、3つの流れ星と共に自分が『兄弟』達と、そして『神父』と出会ったこと。
父親の存在を知り、DIOと言う男の存在を知り、そしてそれが『神父』の体に宿っていたこと。
彼のためにジョースターの血と対立し、そこに自分の存在が少しだけ見出せたこと。
そして、戦いの中で神父が追い求めていたものは《偶然》であり《運命》であると知ったこと。
だからこそこのゲームの中で神父に出会い、祝福をすることを自分の生きがいとしていること。
―――はぁ。なるほどね。俺には良く分かんねぇって事が・・・分かったよ。それに・・・そんなことが本当にみんなの『幸せ』に繋がるのか?
でも、まっ、話してもらったんだ。礼は言っとくか。
「そうか。よく分かった。じゃあ、少しでも早く外に出ないとな。神父の運命についてけなくなるぜ」
ほとんどが建前の、感謝なんかこれっぽっちもない言葉を吐きつつも・・・言い出した手前、荷物をまとめ始めた。
「よし、お前からその言葉を聞きたかったぞ。噴上。」
やたらと目の色が輝くリキエルの返事に俺は正直言って落胆した。考えてみたらそんな強い《運命》を身につけようとしている神父の前じゃあ、俺なんて力になれないんじゃあないか?
   そして、最後にゃあ「お前は神父のために死ぬんだ」とか言われて、最期の最期まで運命扱いで俺は殺されちまうんじゃあないか・・・・・・?
     そしたらみんなは『幸せ』になれるかも知れねぇが、そこで死ぬ俺は『幸せ』なんかじゃねぇ・・・
       ――嫌だ、死にたくねぇ。俺の手が顎に触れる。マズい、手を放さねぇと恐怖に飲まれちまう・・・顎から・・・恐怖が・・・手を・・・―――
「南に行こう。しかし、駅前ではなく・・・商店街に向かって、真南に、だ」
またしてもリキエルの一言で我に返ることになった。気がついたらほとんど無意識の内にリキエルと一緒に病院を出ていた。
勝手に自分の足が歩いちまっている。リキエルの背中を見ながら歩いていたみたいだ・・・
無理をして恐怖を心の奥に押しやり、俺は・・・改めてその理由を問う。正直なところ、もう自分の事をハンサムだと言っている余裕すらない。
「南?しかも商店街だと?」
「ああ。地図を見ていてそこに何か強い運命を感じたんだ」
「・・・そうかい。」
予想できる答えがそのまま返ってきた・・・聞かなければ良かったと後悔する。
「だけどそこに誰もいなかったら歩き損だぜ?」
せめてもの強がりを言う。
「そんなことはない。なにか感じるものがある。」
・・・あっそ。そこに肉体が通じ合う家族でもいるってぇのか!?チクショウ!!声には出さなかった。いや、出す訳にもいかないがな。
「とにかく、俺達二人はそこに行く《運命》なんだ。行かなくてはならない。」
・・・また運命さんのお出ましか。ふぅ、と声に出さずにため息をつき、肩をすくめる。最も、デイバッグを担いでる肩じゃあまともにすくめたりは出来ないんだが・・・
―――・・・デイバッグ、だと?これって、確か・・・あの『デスマスク』が入ってるやつじゃあないか!?あの・・・とても強い《運命》を持っているようなあの顔の。何で俺が『これ』を持ってきてるんだ・・・!?
ってことは、この『顔』のヤツも俺達が向かう先に来るんじゃあないのか?そういう《運命》なんじゃ・・・俺も半日リキエルと一緒にいて、考え方が似てきたらしい。
だが、その仮定がまた俺の恐怖を煽る。
――待てよ?て事はやっぱり俺は死にに行ってるようなもんじゃあないか。こいつは、リキエルは平気だろうけど、俺はそんな運命なんかに自分の死を委ねたくない。
      仮にこの『顔の男』がいなくても最終的にはやっぱり神父に・・・そうじゃなくても誰か別のヤツと遭遇して戦うことになったら・・・大体なんだ?『二人は』って。勝手に人の運命を・・・・
        それに、そんなことで得る『世界中の幸せ』なんて・・・そりゃあ俺の取り巻きのあいつらも幸せになるんならとも思ったが・・・やっぱり・・・俺は・・・・・・・・・・・・
          ――・・・・・うわぁああぁあああああアァァ!!!!!!俺は死にたくねえ!!!運命なんかに巻き込まれたくはねえんだ!!どっか遠い別の世界でやってくれ、そんな事!!!


 *  *  *  *  *  *  *  

「どうした噴上。疲れたか?少し遅いぞ」
振り返り俺は問いかける。立ち止まった噴上は、下を向いたまま答えた。
「・・・・・悪い、リキエル。俺、死にたくねぇんだ」
「ハッ?なにを言っている?」
俺は自分の命さえも《運命》に委ねる決意をしていた。死ぬことを悔いることはない。だから・・・この友の発言に驚きを隠せなかった。
「・・・だから、俺は死にたくないんだ。運命なんてのもどうだっていい!!俺はそんな運命に巻き込まれて死ぬほどお人よしじゃねぇんだ!」
噴上の手は顎にピタリとくっつき、離れようとはしなかった。あの手はなんだ・・・?何のサインだ・・・もしかして、ビビッてんのか?《運命》の存在に・・・いや・・・《死ぬこと》に!?
「・・・何バカなことを言っている!俺達の《運命》は神父への祝福だッ!それに比べたら俺達の肉体的な死なんか・・・」
気がついたら俺も声を荒げている。しかしその声も噴上の耳には、もう・・・届いてないみたいだった。
「――うるせぇッ!!だったらてめぇ1人で祝福でも何でもしてやりゃあいいだろう!!勝手に俺の運命まで決め付けやがって!!」
噴上がデイバッグを放り投げる。ドシャアッと音を立てて俺のの足元まで滑って来たデイバッグの、その開けっ放しだった口からあの『顔』が覗いた。
「・・・そうさ!その顔の持ち主だってどーせ『強い運命の持ち主だ』とか『こいつとは会う運命』とか言うんだろうッ!だがそいつは絶対にヤバいヤツだ!!直感だがそれは分かる!!
 だから俺はそんな運命に翻弄されて・・・俺が死んで、他人が幸せになるくらいなら・・・俺は、そんな世界は願い下げだッ!!!」
・・・確かにその『顔』は、強い《運命》の持ち主だった。一目見て分かる。神父の祝福もそうだが・・・こいつの運命もまた、興味深い・・・
噴上が叫び続けているが、そんな恐怖に押し潰された弱々しい叫び声でなんかでは、俺の心は・・・動かないぜ、噴上。

 *  *  *  *  *  *  * 

知らず知らずの内に俺は自分の胸にたまっていた思いを全て目の前の男に向かって叫んでいた。涙が流れているのも自分で分かる。まったく、我ながら情けない姿だぜ。
リキエルは何も言わなかった。さっき声を荒げていたときとは裏腹に、表情が動くこともない。感情と言ったものが見受けられない。
悲しんでいるのか?怒ってんのか?それとも・・・またこれも《運命》ってぇのかい?
リキエルの野郎は俯いて・・・『顔』を眺めていた。まぁ、今の俺にはそれさえも、どうでもよかった。
「・・・・・・今まで迷惑かけたな。じゃあな。――祝福してやれよ・・・神父をよォ」
踵を返す。手が震えて力が入らない。ずるりと、手からボーガンが滑り落ちた。・・・あァ、俺まだこんなもん持ってたのか。右手が微かに痺れている。
もう何も言うことはない。俺は走り出した。無我夢中だった。リキエルの“ロッズども”が追ってくるかもしれなかった。
いや、そんなことよりも・・・立ち止まったら《運命》の《恐怖》に押し潰されそうだった。
俺は―――止まれなかった。
「待て!  ・・・・・・俺とお前は、もう一度めぐり合う《運命》にあるッ!!その時は・・・!」
後ろで何か叫んでいる。でも耳を貸しちゃあいけない。俺は、俺は・・・―――

リキエルは、友を失った悲しみと、その友の情けなさへの怒り、そして、自分の《運命》に従う気持ちの入り混じった心境で、ついさっきまで友だった男の背中に叫んだ。
「俺とお前は、もう一度めぐり合う《運命》にあるッ!!その時は・・・その時はッ!殺し合いの、敵同士だッ!!」
ロッズで追う事はしなかった。自分は噴上裕也を見逃す運命だったのだ、と言い聞かせた。涙は流さなかった。神父のために自分個人の感情を剥き出しにしてはいけなかった。
そして、リキエルもまた、デイバッグから覗く『顔』を拾い・・・《運命》の感じる方向へと、歩き始めた。

――ある1人の男は、自分の命のために世界の全てを、幸福を捨てた。
    ――また1人の男は、世界の、神父のために自分の命を捨てるだろう。

     杜王町に、日が昇り始めた――


【 H☆S & S☆H  コンビ解散】
【線路沿いの道 (D-04)/一日目/午前(8時過ぎ)】



【リキエル】
[スタンド]:『スカイ・ハイ』
[状態]:右手首を骨折(添え木&包帯で応急処置)。疲労は回復。感情の起伏が少ない。
[装備]:未確認飛行生物ロッズ(多数。呼べばいつでも来る)
[道具]:支給品一式×2、植物図鑑、ディアボロのデスマスク(シュトロハイムのランダム支給品)(リキエルのランダム支給品は未確定)
[思考]:
1) 神父の願いを叶える手助けをする。『運命』が神父を導くはず、と信じている。
2) 神父、あるいはDIOに対立するものを狩り、排除する(なおDIOへの敵対は神父への敵対、と判断)
3) 噴上裕也の言動に動揺、落胆。(次にあったら殺し合いを宣言)
4) 神父のために自分の感情を出す訳にはいかないと考えている。

※リキエルはまっすぐ南に行くつもりで駅前などには興味を持っていません。


【噴上祐也】
[スタンド]:『ハイウェイ・スター 』
[状態]:健康。恐怖による錯乱状態。走り続けている。
[装備]:なし
[道具]:なし

[思考]:
1) 運命の恐怖、死への恐怖から逃げ出したい。
2) どこでもいいから自分の心の落ち着く場所がほしい。
3) 今止まったら運命に押しつぶされてしまう!と思っている。
4) 無我夢中に走ってはいるが、もう病院には行きたくないと思っている。
※D-04の北西(線路の東がわ)に噴上の支給品(デイバッグ×2、双眼鏡、ボウガン(鉄球なし))が放置されています。
  噴上は荷物の全てを捨てておおよそ東の方向(露伴宅方面)に向かって走っていますが本人は方角も何も考えていません。

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キャラを追って読む

41:《運命》の使徒 リキエル 71:奪われたスタンド
41:《運命》の使徒 噴上裕也 86:断末魔のエコーズ,