血風の狂詩曲

67話 血風の狂詩曲


二人の仲間を目の前で失い、更にその死に方が凄惨極まりなかったため、
悲しみよりも吐き気が勝り、元々なかった元気が更にローダウンしたのび太。
しばらく吐瀉を続け、胃液まで吐いてようやく吐き気が収まったが、
相変わらず、首なしのバニーガール、神山アキナの死体、
身体を袈裟に斬られた水着マント(?)の女性、死神五世の死体は地面に横たわっている。

「大丈夫? のび太君。随分吐いてたようだけど……」
「だ、大丈夫です……」

気分的には余り大丈夫ではなかったが、これ以上、最後に生き残った仲間である、
狐獣人の少女で自分より年上のミーウに心配を掛けさせる訳にもいかない。

「二人の荷物を貰おうか。折角だから、使わせて貰いましょ」
「は、はい……」

(ミーウさん……目の前で人が二人も死んじゃったのに、何でこんなに平気でいられるんだろう。
こういう事に、慣れてる……? まさか……ね)

のび太はミーウの余りにも冷静過ぎる態度に疑問を抱きつつも、
五世とアキナの二人の荷物をミーウと共に漁り始めた。

死神五世が持っていた小型自動拳銃マカロフとその予備マガジン、
ノートパソコン、食糧をのび太が、そして神山アキナが持っていた、
元々は五世の支給品で五世がアキナに贈与した脇差、食糧を、
ミーウが貰う事になり、後の基本支給品やアキナの支給品である
拡声器とシアン化リウムは放棄する事になった。

そしてのび太とミーウは再び、目的地の豪邸を目指し道路を歩き始めた。



そしてついに、車庫や庭園のある二階建ての豪邸に到着する。
豪邸正門前でのび太とミーウは、自分達と同じく豪邸を目指しやって来た三人と遭遇した。
赤と白の服を着た少年ジン、白い鉢巻を頭に巻いた青年アレックス、
学生と思しきブレザー姿の青い毛皮を持った狼獣人の青年石川昭武の三人である。

「もしかしてそっちもこの豪邸目指して来たのか?」

ジンがのび太とミーウに尋ねる。

「う、うん。そうだよ。えーと……」
「あ、俺はジン。んでこっちがアレックスで、こっちが石川昭武」
「ジンさん、だね。っていう事はジンさん達も?」

ここでのび太はジン達も豪邸を目指し歩いて来た事を知った。
更に話を聞く内、彼らもまた自分達と同じように殺し合いには乗らず、
脱出する方法を探っている事も。

「そうなんだ! それじゃあ僕らと一緒だね、ねぇ、ミーウさ――――」

喜び、後ろにいるミーウの方を振り返った時、のび太は思いも寄らない光景を目にする。

「……」

ミーウが持っている突撃銃H&K G3を構え、銃口を自分を向けていたのだ。

(え? ミーウ、さ……)

「危ねぇっ!!」

身体が横に突き飛ばされ、のび太が雑草の生えた地面に叩き付けられるのと同時に、
ミーウの持つG3が火を噴き、ついさっきまでのび太がいた場所に現在立っており、
のび太を横に突き飛ばした少年、ジンの身体を無数の大口径ライフル弾の弾丸が貫通した。
更に、その貫通した弾丸は、ジンの後方にいたアレックスと昭武の二人にも襲い掛かる。

「くっ!!」

アレックスは持ち前の反射神経でギリギリの所で横に跳んで回避したが、

「う、ぁ――――!!!?」

昭武は反応が遅れ、その身を無数の灼熱に貫かれた。
ジンと昭武の二人は地面に崩れ落ち、動かなくなった。
直後、豪邸の玄関の扉が乱暴に開かれ、中から二人の獣人が飛び出してきた。
一人は狐の獣人の女性で手に散弾銃イサカM37を持ったドーラ・システィール。
そしてもう一人は狼の獣人の男性で手に自動拳銃コルトM1911A1を持ったピタゴラス。
豪邸の中にいた二人は突如外から聞こえてきた銃声に、自分の武器を持ち飛び出してきたのだ。

その二人目掛けてミーウはG3の引き金を引いた。
連射音が響き、銃口が火を噴くも、様々な障害物が邪魔になりドーラとピタゴラスは幸運にも無傷だった。
そしてG3が弾切れになり、ミーウは素早く次の弾倉に交換した。

「このくらいにしとこうかな、じゃあね」

腰を抜かしているのび太に笑顔で別れを告げると、ミーウはかなりの速さで市街地方面へと走り出す。

「ま、待て!!」

アレックスが追い掛けようとするが、即座にミーウにより足元に銃弾を撃ち込まれ足を止められた。

「くそっ……!」

遠距離攻撃可能な武器を何も持っていないアレックスは、
高威力のライフル弾を使用する突撃銃相手に太刀打ちできず、
すぐに踵を返して走り去る狐少女の後ろ姿を黙って見詰めるしかなかった。

「おいアンタら! 大丈夫……じゃ、ないねこれは」
「酷いな……」

ドーラとピタゴラスが生き残ったのび太とアレックスの二人に駆け寄る。
のび太は地面に尻を突いたまま放心状態、アレックスは悔恨の表情を浮かべていた。
片や信じていた仲間に裏切られ、片や今まで行動を共にしていた二人が殺害されたのだ。

「おいお前、しっかりしろ」
「……何で……ミーウさん……」

ピタゴラスの問い掛けにも応じず、のび太はただただミーウの事を考える。
座礁客船にて、自分の放送に応じ仲間になってくれたのは嘘だったと言うのか。
今まで自分や、既に死んでしまったアキナ、五世を騙し続けていたと言うのか。
いや、今思ってみれば、不審な点は幾つか見受けられた。
それでも、自分は何の疑問も抱かずミーウを信じていた。
仲間ができたという安心感と喜びで、警戒心や注意力が薄まっていたのかもしれない。
友達が三人も死に、残る一人も生死不明。
更に追い打ちを掛けるかのように同行していた仲間二人が死に、
最後に残った、仲間にも裏切られ、その上また目の前で二人の人が死んだ。

「あ、あ、あああ――――」
「大丈夫か? おい! ……むぅ、これは駄目か」

のび太の心は、もう限界に達していた。

「アンタ大丈夫かい?」
「俺は……大丈夫だけど……ジン、昭武……」

一方のアレックスは、今まで行動を共にしていた仲間を一気に失い悲しみに暮れていた。
この殺し合いが始まった直後に親友であるブライアンを目の前で失い、
今、また更に二人の仲間を失った。目の前で起きた出来事だったのに何もできなかった。
アレックスは自分の無力さを痛感していた。

「とりあえず、こんな所で立ち話も何だから、家の中に入ろうか」

ドーラがアレックスに豪邸の中へ共に来るように促す。
アレックスは無言で頷き、ドーラと共にジンと昭武の死体から持物を回収し始める。

「ほら、しっかりしろ。お前もとりあえず中に入れ」
「う……う……」

ピタゴラスはのび太の両脇を抱えるようにして、引き摺るような形で豪邸の中へ運んで行った。



ようやく市街地の入口に辿り着いたミーウは、走り続け乱れた呼吸を整えながら、
手近の民家の門をくぐり、中に入った。
居間と思しき和室に座り、卓袱台の上に上半身を伏せる。

「ふぅ……やっと市街地に着いた。長かったなぁ」

殺し合いが始まり約8時間半。ようやく人気が多そうな市街地へと到着した。
途中、座礁客船にて野比のび太、死神五世、神山アキナの三人のグループに潜り込み、
いざという時の盾とするために表面上は協力姿勢を見せ、共に南部市街地を目指した。
そして道中、五世の仲間であるらしい鎧武者の男、ムシャと遭遇し、
そのムシャにアキナと五世の二人が殺害された。
但し、五世に関しては誤殺だったらしく、ムシャはその後発狂したように叫び声を上げながら、
市街地方面へと走って行ってしまった。

その後、意気消沈したのび太と共に、豪邸に到着する。
そこで同じく豪邸を目指していたというアレックス、ジン、石川昭武の三人に遭遇した。
のび太とジンという少年が会話をしていた時、ミーウはそろそろ頃合だと判断し、
のび太に向け持っていたG3の銃口を向けた。
自分の方に振り向いた時ののび太の驚愕、絶望の混じった表情を思い出すと、
自然とミーウは笑いが込み上げてくる。

(あの子、完全にあたしを信じ切っていたみたいだからねぇ。
それに友達三人死んで、目の前で四人も人が死んで、今まで信じていた人に裏切られて。
のび太、散々ってレベルじゃないわね)

そして、結局のび太はジンなる少年に庇われ、代わりにジンと、後ろにいた狼獣人の学生、昭武が
ミーウの放った銃弾をその身に受け死亡した。
豪邸内からも銃を持った獣人二人――片方は確か見覚えがある――が出てきたので、
無理に戦う事もないと考え、追い縋るアレックスを威嚇しながら市街地まで走り抜けた。

「少し疲れたな……しばらく休もう」

ミーウはしばらく民家内で休息を取る事にした。



【ジン@真・女神転生デビルチルドレンライト&ダーク  死亡確認】
【石川昭武@オリキャラ  死亡確認】
【残り27人】



【一日目午前/H-3豪邸前】

【野比のび太@ドラえもん】
[状態]:疲労(肉体的、精神的共に大)、呆然自失
[装備]:H&K MARK23(12/12)
[持物]:基本支給品一式(食糧一食分消費)、H&K MARK23のリロードマガジン(12×5)、
マカロフ(7/8)、マカロフのリロードマガジン(8×5)、水と食糧(二人分)
[思考]:
0:……。
※アレックス、ジン、石川昭武の名前を記憶しました。
※ムシャの名前と容姿を記憶しました。


【アレックス@VIPRPG】
[状態]:全身にダメージ(軽度)、右腕上腕に裂傷、深い悲しみ、
ジンと石川昭武の持物を回収中
[装備]:サバイバルナイフ
[持物]:基本支給品一式(食糧一食分消費)、USBメモリ
[思考]:
0:仲間を集めて殺し合いを潰す。そして脱出する。
1:ジン……昭武……。
2:元の世界の仲間と合流?
3:首輪も何とかしたい。
4:USBメモリの中身が気になる。
5:ガーゴイルには一応警戒しておく。
6:ムシャ……どうしたんだ?
※襲撃者(高野雅行)の容姿を記憶しました。
※ミーウの名前と容姿を記憶しました。


【ドーラ・システィール@FEDA】
[状態]:健康、ジンと石川昭武(どちらも名前は知らない)の持物を回収中
[装備]:イサカM37(4/4)
[持物]:基本支給品一式、12ゲージショットシェル(30)、防弾チョッキ
[思考]:
0:今の所殺し合いをする気はない。
1:アレックス、野比のび太(どちらも名前は知らない)の保護。
2:ガーゴイル、エルザ、久保遼平、ピタゴラスと行動。
3:シェリーについては保留。
4:首輪を外したい。
※参戦時期は少なくともコバルトを倒した後です。
※ガーゴイルの知人(ジン、アキラ)のおおよその特徴を把握しました。
※ガーゴイルの言葉の一部が理解できず気になっています。
※久保遼平、ピタゴラスと情報交換をしました。
※首輪による盗聴の可能性に気付きました。


【ピタゴラス@オリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:健康
[装備]:コルトM1911A1(7/7)
[持物]:基本支給品一式、コルト ガバメントのリロードマガジン(7×5)
[思考]:
0:殺し合いには乗らない。首輪を外したい。
1:アレックス、野比のび太(どちらも名前は知らない)の保護。
2:久保遼平、ドーラ、エルザ、ガーゴイルと行動する。
3:襲われたら戦う。
※参戦時期は本編死亡後です。
※毛皮の色は作者の想像です。
※自分が以前別のバトルロワイアルに参加していた事を久保遼平に話していません。
※ドーラ、エルザ、ガーゴイルと情報交換をしました。
※首輪による盗聴の可能性に気付きました。



【一日目朝方/G-5市街地:大城家一階和室】

【ミーウ@オリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:肉体的疲労(大)、潮風の影響で毛皮にベタつき
[装備]:H&K G3(10/20)
[持物]:基本支給品一式(食糧一食分消費)、H&K G3のリロードマガジン(20×9)、
脇差、トマホーク(3)、水と食糧(二人分)
[思考]:
0:殺し合いに乗る。
1:しばらく休む。
2:可愛い子(女の子優先)がいたら…フフフ。
※参戦時期は本編死亡後です。
※名簿に書かれた主催者と同姓の二人が気になっています。
※トマホークの血痕は拭き取られたようです。
※アレックス、ムシャの名前と容姿を記憶しました。



※H-3一帯に銃声が響きました。



須牙巡査の病院探索 時系列順 もう言葉もない、言葉が出ない
須牙巡査の病院探索 投下順 もう言葉もない、言葉が出ない

曉血殺傷 野比のび太 屍演舞-ShikabaneEnbu-
曉血殺傷 ミーウ 君との思い出
帰れない、帰らない アレックス DEAD OR ALIVE THE ALEX
帰れない、帰らない ジン 死亡
帰れない、帰らない 石川昭武 死亡
Is it hope or despair? ドーラ・システィール DEAD OR ALIVE THE ALEX
Is it hope or despair? ピタゴラス

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最終更新:2010年06月06日 22:32
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