壊される汚される、そして失う

57話 壊される汚される、そして失う


エリアB-5の市街地の一角にある時計店。
青髪の青年剣士、クリスは、実の妹であり、この殺し合いの主催者である、
リリアによる第一回目の定時放送が終わった後、意気消沈していた。
それは同行者であり伯父であるレオンも同じだった。
そんな二人に対し、同じく同行者である髭面の巨漢、ゴメスは掛けてやれる言葉が見付からない。

「何て事だ、もう14人も死んでいるなんて……ゴメスの知り合いも……」

発表された死者は14人に上る。
ゴメスの知人であるブライアンとヘレン、ドラゴナスも含まれていた。
クリスが最初に遭遇したシェリー・ラクソマーコスの名前はなかったが。

自分の妹が、姪が、起こしたこの殺し合いにより、多くの無関係な人々が命を落とした。
自責の念が、罪悪感が、クリスとレオンに圧し掛かり、潰されそうな思いに襲われる。

「すまない、ゴメス。俺の妹のせいで、知り合いが……それに、
死んでしまった人々も……」
「む……そこまで自分を責めるな、クリス、レオン。お前らには罪はないさ」

落ち込む二人を励ますゴメス。
知り合いが三人も命を落としてしまったのは確かに悲しく、
主催者のリリアに対する怒りも有ったが、だからといってそれが、
主催者の血縁であるクリスとレオンに向けられはしない。
この二人も自分と同じこの殺し合いに巻き込まれた被害者なのだから。

「だから、いつまでも落ち込むな。もし、本当に死んで行った人に申し訳ないと思うなら、
この殺し合いを何としても潰すべきだ。そうだろ?」
「そ、そうだな……」
「うむ……」

ゴメスに叱咤激励され、気を取り直すクリスとレオン。
ゴメスの言う通り、いつまでも落ち込んでいる訳にもいかないだろう。

「それでは、再び男娼館へ向かうとしよう」

レオンがクリスとゴメスに言う。
三人はそれぞれの荷物を纏め、時計店の外に出た。

すっかり明るくなった市街地は、人がいない事を除けばいたって平凡な街並みに見えた。
クリス、レオン、ゴメスの三人は、当初の目的地である男娼館を目指し、再び歩み始める。
北部市街地で、目立ちそうな建物であり、人も集まる可能性がある。
男娼館に向かう事を提案したゴメスの口から出た理由だが、クリスとレオンには、
何かもっと他の、別の理由があるように思えてならなかった。

ゴメスは普段、ガチホモ――要するに同性愛者――として名を馳せている。
だが、TPOは弁える性分でもあり、ましてやいつ襲われるか分からない、
殺し合いという状況下でそのような行為に及ぶ気はない、と言うより、なれない。
しかし、それでも「男娼館」という単語の響きに、ゴメスの本能の食指が動いてしまった。
勿論、どこかの部屋にクリス、レオンの両名を連れ込んで掘ろうなどとは更々思っていない。
思ってはいない、が。

既に食事は済ませてある。いかなる状況でも空腹は満たさなければ行動できない。
三人は周囲を警戒しながら、なるべく通りの中央には近寄らず歩道の端に寄るようにして、
男娼館への道を進んで行く。

そんな三人の背後にある裏路地の一本から、殺気立った瞳をしたある人物が。



青い飛竜、大宮正悳は放送を聞いた後、すぐに行動を開始した。
隠れていた倉庫から外に出、H&K HK69グレネードランチャーを装備し、
獲物となる他参加者を探し始めた。

最初の6時間で自分を除く参加者46人の内、14人が脱落した。
自分を殺そうとした青年と、それを邪魔した鎧武者の名前もあったかもしれないが、
二人の名前が分からないので確認のしようがない。

正直、これ程多くの死人が出ているとは思っていなかった。
これならば、余り積極的に殺しに行かなくても良さそうなものだが、
参加者が残り少なくなる程、参加者同士の遭遇率も必然的に低くなる。
そうなると、主催者が言っていた、24時間の制限時間が来てしまう危険があった。

(だから、俺も屋内でオナってばっかじゃなくて、もっと積極的に行こう!)

正悳は爬虫類特有の縦長の瞳孔を有した赤色の瞳を四方八方に向けながら、
参加者の姿を探す。

そしてとある通りに裏路地から出た時、ついに三人発見した。
マント姿の青髪の青年、黒い毛皮の人狼、髭面の頭にバンダナらしき物を巻いた巨漢。
三人で一緒に行動しているようだが、だとするなら殺し合いには乗っていないのだろうか。
殺し合いに乗った者が徒党を組むとは考えにくい。
何にせよ獲物を見付け、しかも気付かれていない事に正悳は笑みを浮かべる。

正悳はHK69のストックを肩付けし、狙いを定め、引き金を引いた。

しかしその瞬間、黒人狼が気付き、叫んだ。



「危ないッ!! 避け――――」



静かな市街地に、爆発音が響いた。

つい数瞬前まで、三人がいた辺りの歩道の石畳は抉れ、大きな穴が空き、
すぐ近くの書店のウィンドウガラスは粉々に砕け散った。

「やったか……?」

もうもうと粉塵と煙が巻き起こり詳しい様子が確認できない。
正悳はHK69の弾を入れ替え、ゆっくりと爆破地点に近付く。

「えいやああああ!!!」
「おぼろっ!?」

突然、粉塵の中から、髭面の巨漢、ゴメスが物凄い勢いで正悳に体当たりを仕掛けてきた。
衝撃で正悳は思い切り後ろに突き飛ばされ、その拍子にHK69を手放してしまった。

「ゴメス!!」

足を負傷してしまったらしいクリスを抱えたレオンが粉塵の中から出てくる。
その視線の先には襲撃者と思われる青い飛竜と激しく揉み合っているゴメスの姿が。
ゴメスのリボルバー拳銃、スタームルガー ブラックホークを持つ右手を、
飛竜が必死に捕まえ、銃口を向けられないようにしているのが分かる。
ぱんっ、ぱんっ、と、空中に向かって幾度か空撃ちされていた。

「こいつはワシが何とかする! お前らは先に行け!」

ゴメスがレオンとクリスに叫ぶ。

「し、しかしゴメス!」
「ワシなら大丈夫だ! 早く行け! クリスを手当てしてやれ!!」
「くっ……クリス、大丈夫か?」
「う…何とか……ぐっ!」

クリスの右足は破片か何かが当たったらしく、かなりの出血を起こしていた。
ゴメスの言う通り応急処置が必要な程度である。
レオンも拳銃を持っているので、ゴメスの加勢に回りたかったが、重傷のクリスを放っておく訳にもいかない。
しばらく迷ったが、レオンは結局クリスを連れて先に男娼館に向かう事にした。
クリスを背負い、人狼の脚力を活かし通りを走り始めるレオン。

「ゴメス……すまん!」

自分の姪の愚行のせいで三人もの知人が落命したのにも関わらず、
身命を賭して自分達を逃がしたゴメスに心の底から感謝し、また、
彼が必ず自分達の後を追って来る事を信じつつ、レオンはクリスをおぶさったままひたすらに走った。



「せいっ!!」
「ごほっ!!」

ゴメスの渾身の殴打が飛竜、大宮正悳の柔らかい腹部に食い込んだ。
アスファルトの上に転がり、数時間前に食べた食糧のなれの果てである
吐瀉物を吐きながら悶絶する正悳をよそに、ゴメスは既に弾切れになった
ブラックホークに予備の弾丸を込め直し、銃口を正悳の頭部に向けた。

「あ……」

それを目の当たりにした正悳は、一気に戦意を喪失してしまった。

「ご、ごめんなさい、こ、殺さないで……!」
「ワシらを殺そうとしておいてそれは虫が良すぎるんじゃないのか?」

酷く冷たい口調でゴメスが言い放つ。
そしてブラックホークの撃鉄を親指で起こした。
その行動に正悳は自分が撃たれると予感し、ブルブルと震え出した。
この状況は、まさしく森の中で黒髪の青年に殺されかけた時と同じ。

「嫌だ、嫌だ嫌だ死にたくない……お願いします、命だけはっ……何でもしますからぁっ!!」

既に泣きべそをかき始めている正悳は必死にゴメスに命乞いをする。
しばらく正悳を睨み付けたまま黙っていたゴメスだったが、何かを思い付いたのか、
銃を下ろし、正悳に語り掛けた。

「おい、お前名前は?」
「お、大宮、正悳です……」
「オオミヤマサノリ? ドラゴンっぽくない名前だな。本名か?」
「本名です」
「そうか、まあいい。正悳、今、お前は『何でもする』と言ったな?」
「は、はい……」
「…………それじゃあな……」




「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!! お願いですそれだけはぁっ!!!
俺、確かに童貞ですけど後ろだけは一生童貞でいたいですだからお願いしますっ!!」
「何でもすると言ったのはお前だ。悪いがもう無理だ。
ワシとクリス、レオンを殺そうとした罪、この肉槍でお前を罰する!」
「あああああ嫌ああああああやめてっ! そんな大きいの無理です入らないです!
あ゛っ、あ゛あ゛あ゛い゛だい゛い゛だい゛い゛だい゛イタイイタイイタイイタイいいいいい!!!!
や゛っめ、裂ける!! ああああ裂けるううううぎゃああああああああっ!!!」
「……全部入ったぞ。おお…初物だけあって良い締まりだ……アレックスに引けを取らん。
もっと力を抜け。そうすれば少しは楽になるぞ」
「う、嘘だろ、あ、ああああ、俺、男にっ、ケツをっ、そんなぁああ………!!」
「泣くな泣くな。何、最初は痛いが慣れれば段々気持ち良くなってくる。
そしたらもうお前は病み付きになるぞ」
「えっ? あ、がああああああやめ、動かない、で、ひっ、い゛っ、あっ、がっ、あ゛っ、あ!
あっ! うっ! い、痛いいいいい!! やめてええええ!! ああああああああ!!!!」



「おいどうした正悳? お前の――――がこんなにいきり立っているじゃないか」
「はぁ……はぁ……はぁ……ぅ……ん」
「目がトロンとしているぞ。涎まで垂らして、そうか。気持ち良くなってきたんだな? うん?」
「…………」
「どうやら本当みたいだな。もっと気持ち良くしてやるぞ!」
「あっ! やぁ! ひゃんっ! あんっ! あんっ! らめ、らめえええええ!!
そんなっ、にぃ! 激しくっ、突かれちゃっ、あんん!! あん! あんっ!!
いい! いいよぉ!! きもちいい! こ、こんなきもちいいのっ、はじめてっ!!」
「それ!! 逝ってしまえ!」
「らめえええ!! 濃いの出ちゃうううう!! アッーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」



路地裏から、服装を直しながら、ゴメスが出てきた。
その手には青飛竜から奪ったHK69グレネードランチャーが握られている。

「ふぅ……中々良かった……」

襲撃者に罰を与えるという名目で、自分の欲求を存分に満たしたゴメスは、
クリスとレオンの後を追い始めた。



路地裏の開けた場所。
地面に倒れ、涎を垂らし、虚ろな目をした青い雄の飛竜がいた。

「おふっ、おふっ」

口から漏れるのは意味不明な喘ぎばかり。
周囲には白く濁った粘液が大量に飛び散り、それは飛竜――正悳の青い身体をも、
所々白くペイントし、鼻を突くような異臭が漂っていた。
尻尾の付け根付近の穴からも止め処なく同じ液が溢れ、正悳の口からも流れ出ていた。
下腹部の、正悳の体色とは対照的な赤い正悳自身は何度も達したせいか、
すっかり元気をなくし、だらんとしている。

「……ご……しゅじん……」

意識を失う直前、正悳が最後に呟いた言葉だった。



【一日目朝方/B-5市街地】

【クリス・ミスティーズ@ムーンライトラビリンス改造版】
[状態]:全身にダメージ(中)、右足裂傷、レオンに背負われている、C-7男娼館に移動中
[装備]:三徳包丁(刀身に僅かな亀裂有)
[持物]:基本支給品一式、双眼鏡
[思考]:
0:リリアを止める。そのためにもこの殺し合いを潰す。
1:ゴメス……無事でいてくれ……。
2:レオン、ゴメスと行動する。
3:首輪を外す手段を探す。
4:仲間を集める。同時進行でゴメスの知り合いも捜す。
5:襲われたら対処。
6:シェリー・ラクソマーコスには注意。
※参戦時期は本編終了後です。
※シェリー・ラクソマーコスの名前と容姿を記憶しました。


【レオン・ミスティーズ@ムーンライトラビリンス改造版】
[状態]:全身にダメージ(中)、クリスを背負っている、C-7男娼館に移動中
[装備]:シグザウアーSP2340(12/12)
[持物]:基本支給品一式、シグザウアーSP2340のリロードマガジン(12×5)
[思考]:
0:殺し合いを止め、リリアと会う。
1:ゴメス……すまん。
2:クリス、ゴメスと行動する。
3:仲間を集める。同時進行でゴメスの知り合いも捜す。
4:首輪を外す手段を探す。
5:襲われたらそれなりに対処はする。
※参戦時期は本編終了後です。
※拳銃の使い方を一通り覚えました。


【ゴメス@VIPRPG】
[状態]:全身にダメージ(中)、スッキリ
[装備]:スタームルガー ブラックホーク(6/6)、H&K HK69(1/1)
[持物]:基本支給品一式、.357マグナム弾(24)、40mm榴弾(3)
[思考]:
0:殺し合いには乗らない。脱出手段を探す。
1:さて、クリスとレオンの後を追うか。
2:クリス、レオンと行動する。仲間を集める。
3:元世界の仲間、知人と合流したい。ただしムシャは警戒。
4:首輪を外したい。
5:襲われたら説得してみる、無理なら戦うか逃げる。
※大宮正悳の名前と容姿を記憶しました。


【大宮正悳@オリキャラ】
[状態]:精神的ダメージ(深刻)、左脇腹、腹部に打撲、気絶、全身白濁液塗れ
[装備]:なし
[持物]:基本支給品一式(食糧半分消費)
[思考]:
0:元の世界に帰るために、優勝する?
1:……。
2:他参加者を見付けたら容赦なく殺す?
※ゴメスの名前と容姿を記憶しました。また、
高野雅行、ムシャ(どちらも名前は知らない)のおおよその容姿を記憶しました。
※彼の周辺は白濁液だらけになっています。



※B-5市街地一帯に銃声と爆発音が響きました。また、B-5市街地の一角が破壊されています。



死想回廊 時系列順 奇妙なすれ違い
死想回廊 投下順 奇妙なすれ違い

脳筋+うっかり獣人+GOMES クリス・ミスティーズ 出会い、別れ、男娼館にて
脳筋+うっかり獣人+GOMES レオン・ミスティーズ 出会い、別れ、男娼館にて
脳筋+うっかり獣人+GOMES ゴメス 出会い、別れ、男娼館にて
妄想だけならタダ 大宮正悳 It never permits It kills without fail.

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最終更新:2010年06月03日 00:22
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