死想回廊

56話 死想回廊


「そ、そんな、ジャイアンに、しずかちゃんまで……!」

エリアG-2、ガソリンスタンド裏の廃屋内。
眼鏡を掛けた少年、野比のび太は第一回目の定時放送の内容に大きなショックを受けていた。
この殺し合いに呼ばれた自分の友達三人の内、二人の名前が死者として呼ばれたのだ。
開催式の時に見せしめで殺されたドラえもんに続き、のび太は更に二人の友達を失った。

「ドラゴナスが……くそっ……」

のび太程ではないが、ビキニのような衣装の上にマントを羽織った女性、死神五世も、
同じように仲間の死にショックを受ける。
自分と同じ魔王軍四天王の一人であり、妻子もいたドラゴナス。
それなりの実力者であるため簡単に死ぬ事はないと踏んでいたのだが。

「の、のび太君、五世さん……」

そんな二人に、知り合いが一人も呼ばれていないバニーガールの少女、
神山アキナがどう声を掛けてやればいいのか分からず戸惑う。
のび太と五世に、この殺し合いに呼ばれている知り合いがいる事は既に聞いていた。
その知り合いの誰もが、二人にとっては大切な存在だという事も。

「……」

ただ一人、涼しい顔をしているのは狐獣人の少女、ミーウ。
彼女も親しい知り合いはこの殺し合いのは呼ばれていない。
いや、ミーウにとっては誰が死のうがどうでも良かった。
最終的には全員殺して優勝を狙うつもりだったから。
今こうしてのび太、五世、アキナの三人と行動を共にしているのは、
人気が多そうな市街地へ到着するまで、非常時のスケープゴートとして利用するため。
協力姿勢を見せているのも全て彼女の演技である。

「う、ううっ……みんな……」
「のび太……」

ついに耐えきれず、のび太が床に突っ伏して嗚咽をもらし始めた。
それを気遣う五世とアキナ。ミーウも表面上だけはその素振りは見せた。



しばらくして、ようやく心境が落ち着いてきたのび太。

「大丈夫かのび太。無理はするなよ」
「も、もう、大丈夫です……すみません、五世さん」
「いや、別にいいんだけどな……」

五世も仲間を一人失った身として、のび太の気持ちは痛い程理解できた。
また、のび太は殺し合いの開催式の時に、首輪爆破の見せしめとして殺された、
あの青いタヌキのようなロボット――のび太曰く「ドラえもん」という名前で、
耳はないが猫型ロボットらしいが――が、共に暮らしていた一番の親友だったらしい。
この理不尽な殺し合い、主催者であるリリア・ミスティーズの気まぐれによって、
三人もの大切な友達を、のび太は半日も経たない内に失った事になる。

まだ小学校高学年程度の少年が経験するには余りにも苛烈かつ凄惨な現実だった。

「五世さんも……知り合いが一人?」
「ああ……」

のび太に言われ、五世は先の放送で名を呼ばれたドラゴナスの事を思い出す。
彼が死んだ事が分かったら、妻のハーピー、義妹のハー妹(未だに本名が分からない)、
娘のハーナスは大いに悲しむだろう。

同じく四天王のムシャ、魔王軍中ボス級敵キャラデスシープは、
今現在も生きているようだが、ドラゴナスの死を聞いてどう思っているのだろう。
勇者アレックスの仲間であるブライアン、ヘレンも名前を呼ばれた。
今もどこかで生きているであろうアレックスも、仲間の死を悲しんでいるのだろうか。

何にせよ、こんなふざけた殺し合いに巻き込まれなければ、
のび太の友達も、自分の仲間も、その他の名前を呼ばれた人々も、
命を落とす事などなかったはず。

なぜ、あのリリアという女は、この殺し合い――バトルロワイアルなるものを開いたのか。

五世の心中に、主催者リリアへの怒りが沸き起こった。

――そう言えば、名簿にはリリアと同じ名字の参加者が二人記載されていた。
「クリス・ミスティーズ」「レオン・ミスティーズ」の二人。
滅多に見ない名字なので同姓なだけで全く無関係とは考えにくい。
血縁者である可能性が高いが、自分の親類縁者をこのような殺し合いに参加させるだろうか?
何にせよ、もし接触する機会があるなら、是非話をしてみたいと、五世は思う。

「ねぇ、お二人共、悲しんでいる所悪いんだけど……」

今まで黙っていたミーウが口を開く。

「お、おお、何だミーウ」
「放送も聞き終えたし……食事も取ったし。そろそろ出発しない?」
「……そうだな。確か禁止エリアは……」

四人は禁止エリアを再確認する。
午前7時よりF-3、午前8時よりD-2、午前9時よりE-8。
エリアF-3は現在いるエリアG-2の東北に位置する、森が広がるエリアで、一番早く禁止エリアになる場所。
エリアD-2は五世のゲーム開始地点である廃精神病院があるエリアだ。
エリアE-8は島の東側を走る幹線道路が含まれるエリア。
ここにいる四人は島南部の市街地を目指しているので、当面は禁止エリアは気にする必要はないだろう。

「あの、五世さん」
「何だ、アキナ」
「市街地へ行く途中に豪邸と灯台があるんですけど……寄りますか?」

地図上で、ガソリンスタンドから南部市街地へ続く道筋の途上には、
豪邸と灯台の二つの施設がある。
アキナはこの二つの施設に寄るかどうかを五世に尋ねたのだ。
いつの間にか、五世はのび太、アキナ、ミーウのグループを纏めるリーダー格のような存在になっていた。

「そうだな……アキナ、お前はどう思う?」
「えと…一応、見てった方が良いかと」
「のび太とミーウは?」
「僕も、アキナさんと同意見です」
「……あたしも」
「そうか……それじゃあ、この豪邸に行ってみるか」

全員の意見を総合した結果、途上にある豪邸に立ち寄る事にした。
それぞれ荷物を纏め、出発の準備を始める。



いつも暴力的で、音痴な歌を無理矢理聴かせ、「俺の物は俺の物、お前の物も俺の物」
などという利己的としか言いようのない理論を振りかざし、
しかし、妹思いで、友達の事は大切にしていたガキ大将、ジャイアンこと剛田武。
優しくおしとやかで、それでいて気丈な一面も持っていた、
将来は自分の嫁よなるはずだった、憧れの女の子、源しずか。

二人はもういない。ドラえもんに続き、二人も友達が死んだ。
骨川スネ夫――この殺し合いにおいて、最後に残った自分の友達。
今、一体どこで何をしているのだろう。

会いたかった。普段、嫌みばかり言って、ジャイアンには卑屈で、
販売したばかりの最新の玩具を買って貰った事を自慢しては周囲の顰蹙を買っていた。
正直言って、いけ好かない奴、だが、それでも大事な友達である事には変わらない。
早く、会いたい。のび太は心の中でそう思った。



豪邸辺りまで近付けば、だいぶ市街地も近くなる。
余りズルズルと長く、仲間ごっこを引っ張っても仕方ない。
そろそろ潮時だと、ミーウは考え始めた。

幸い、やや警戒している感がある死神五世は別として、
野比のび太、神山アキナの二人は自分の事は疑っていないようだ。
これならばいざという時は行動に移り易い。

もし、自分が本当は殺し合いに乗っているという事実を知った時、
友人をこの殺し合いで三人も失ったのび太や、
明らかに殺し合いに怯えているアキナはどんな反応をするのか。

もっとも、気付いた時には、もう手遅れだが。



【一日目早朝/G-2ガソリンスタンド:裏の廃屋】

【野比のび太@ドラえもん】
[状態]:健康、深い悲しみ
[装備]:H&K MARK23(12/12)
[持物]:基本支給品一式(食糧一食分消費)、H&K MARK23のリロードマガジン(12×5)
[思考]:
0:殺し合いを潰す。
1:ジャイアン、しずかちゃん……。
2:アキナさん、五世さん、ミーウさんと行動する。南部市街地へ向かう。
3:襲われたら戦う。


【神山アキナ@オリキャラ】
[状態]:健康
[装備]:脇差
[持物]:基本支給品一式(食糧一食分消費)、拡声器、シアン化リウム
[思考]:
0:死にたくない。
1:のび太君、五世さん、ミーウさんと行動する。南部市街地へ向かう。


【死神五世@VIPRPG】
[状態]:健康、ミーウに対する警戒心、悲しみ
[装備]:マカロフ(7/8)
[持物]:基本支給品一式(食糧一食分消費)、ノートパソコン、マカロフのリロードマガジン(8×5)、
島崎隆博の水と食糧
[思考]:
0:仲間と共に殺し合いからの脱出。
1:ドラゴナス……。
2:野比のび太、神山アキナ、ミーウと行動。但しミーウは警戒。
3:ムシャ、デスシープの三人を捜す。勇者(アレックス)達はとりあえず放置。
4:襲われたら戦う。できる事なら説得してみる。
5:南部市街地へ。途中にある豪邸や灯台にも寄ってみる。
※能力に制限がかかっている事に気づきました。
※女体化から元に戻れません。
※ミーウを警戒しています。


【ミーウ@オリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:健康、潮風の影響で毛皮にベタつき
[装備]:H&K G3(20/20)
[持物]:基本支給品一式(食糧一食分消費)、H&K G3のリロードマガジン(20×10)、
トマホーク(3)、ニコライの水と食糧
[思考]:
0:殺し合いに乗る。
1:南部市街地に着くまでは野比のび太、神山アキナ、死神五世と行動。
着いたら殺すつもりだが、道中に何らかの問題があった場合も同じように殺す。
2:可愛い子(女の子優先、死神五世は守備範囲外)がいたら…フフフ。
※参戦時期は本編死亡後です。
※名簿に書かれた主催者と同姓の二人が気になっています。
※死神五世に警戒されている事を察知しました。
※トマホークの血痕は拭き取られたようです。




運という不確定なものも時には必要 時系列順 壊される汚される、そして失う
運という不確定なものも時には必要 投下順 壊される汚される、そして失う

崩壊への序曲 野比のび太 曉血殺傷
崩壊への序曲 神山アキナ 曉血殺傷
崩壊への序曲 死神五世 曉血殺傷
崩壊への序曲 ミーウ 曉血殺傷

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最終更新:2010年05月26日 00:43
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