崩壊への序曲

48話 崩壊への序曲

野比のび太、神山アキナ、死神五世、ミーウの四人。
眼鏡の泣き虫少年、バニーガール、水着の上にマントの女、狐娘。
はたから見れば異様という単語がよく似合う一団は、
市街地を目指して海の見える幹線道路の上を歩いていた。

「おい、のび太、大丈夫か? 随分疲れているように見えるぞ」

死神五世が最後尾を歩くのび太に声を掛ける。
眼鏡の少年はすっかり歩き疲れ、足が正に棒のようになっていた。

「も、もう駄目……どこかで、休みましょう、お願いします……」
「何よ体力ないわね~それでも男~?」

ミーウが小馬鹿にしたような口調でのび太に言う。

「やめて下さいミーウさん…のび太君はまだ小学生なんです。
このメンバーの中では一番体力ないんです。勘弁してあげて下さい」

最も多くの時間をのび太と過ごしているアキナがのび太を擁護するが、
何気に一番酷い事を言っているのでのび太が微妙な表情を浮かべる。
ミーウは「はいはい、悪かったわよ」と肩を竦め、五世はやや呆れた様子で後頭部をかく。
どこかに休めそうな場所はないかと五世が辺りを見回す。

「おい、あそこにガソリンスタンドがあるぞ。あそこで一旦休むとしよう」

そして、数百メートル前方にガソリンスタンドを発見し、後ろの三人に指を差して伝えた。
一番表情が明るくなったのはのび太だった事は言うまでもない。


座礁客船から行動を共にする四人は、市街地へ向かう道の途中で、
全員で情報の交換、主に互いの支給品の確認や知り合いの確認を行った。
そしてその過程である事実も明らかとなった。

開催式の時に見せしめで殺された、青い猫型ロボット。
首輪が爆破されようとした時、止めに行こうとし、その猫型ロボットの名前を叫んだのが、
五世とミーウの二人を命懸けの放送で呼び集めた野比のび太少年だったという事。
既にその話を聞かされていたアキナ、初めて聞かされた五世は、のび太に対して
同情を禁じえなかった。ミーウは、表面上は他の二人と似たような反応はしていた。

彼女にとってはそんな事はどうでも良い事だったから。

そもそも、ミーウはのび太、アキナ、五世と協力するつもりなど更々ない。
最終的には全員殺害するつもりでいる。
市街地に近付くまでは協力をするフリをする。
五世はともかく、のび太とアキナは完全に自分の事を信用し切っているようだ。
ミーウが装備している突撃銃、H&K G3は、元々は他の参加者の支給品。
のび太達と会う前に殺害した緑色の竜から奪った物だが、元々の自分の支給品の
トマホークと共に、自分の支給品だと説明した。
事前にトマホークに付着していた血痕は道端に捨てられていた服で拭き取ったため、
特に疑われる事も、怪しまれる事もなかった。
まさか、特にのび太とアキナは、自分が本当は殺し合いに乗っていて、
既に一人手に掛けているとは夢にも思うまい、と、ミーウは心の中でほくそ笑んでいた。
死神五世は不安要素ではあったが、今の所は特にアクションを起こさないので、
放っておいても問題はないと判断した。


四人はガソリンスタンドに到着した。
給油機が二台設置された質素かつ小さなガソリンスタンド。
離島なのでこのくらいの規模で十分なのだろう。

「気を付けろ。殺し合いに乗った奴がいるかもしれない」

五世は右手にマカロフを構え、のび太、アキナ、ミーウの三人に警戒を促す。
のび太はH&K MARK23、アキナは五世から渡された脇差、
ミーウはG3をそれぞれ装備し、四人はガソリンスタンドの建物の中へ入る。
入口の扉を開けた瞬間、鼻を突く異臭が四人の鼻腔を刺激した。

「! 何、この臭い…!?」

アキナが鼻元を手で覆いながら困惑の色を浮かべる。
今まで嗅いだどの臭いとも違う、生理的に受け付けられないような臭い。
それはのび太も同じだったが、五世とミーウは嗅いだ事があるため耐性があった。
特に五世、ミーウは数時間前に嗅いだばかりである。

――死体が放つ、死臭を。

(奥の方からだな……)

五世は死臭が奥にある扉の向こうから漂ってきているのに気付いていた。
数時間前に自分に襲い掛かった男を殺した後、同じような臭いを嗅いだ。
のび太、アキナ、ミーウには自分が正当防衛とは言え一人殺害した事は話していない。
理由はどうあれ殺人を犯した者に対する目は懐疑的になる可能性が大きい。
これから行動を共にして行く上で自分に不利かつ危険な事は言わない事にしたのだ。
果たしてそれが本当に正しいのかどうかは五世自身にも分からなかった。

のび太、アキナは完全に自分の事を信用してくれているし、自分も二人の事は信用していた。
だが、後一人、狐獣人の少女――ミーウだけは、どうしても心から信じる気になれない。
他の二人に余計な心配はかけまいと、表面上にはその事は出さないようにはしていたが、
時折ミーウが見せる、少女らしからぬ鋭い目付きに、五世は穏やかならぬものを感じていた。

だが、もしかしたらそれは自分の取り越し苦労かもしれない。
殺し合いという状況の中で疑心暗鬼に陥っているだけなのかもしれない。
とにかく、今現在はミーウは目立った動きは何もしていないので、
警戒はしつつも観察しておくだけにする事にした。

そして、四人は臭いの発生源があると思われる奥の部屋――事務室に足を踏み入れた。

「「――――!!」」

その瞬間。のび太とアキナが大きく口を開けたまま、声にならない叫び声を上げた。
いや、実際は大声など出してはいなかったが。
五世とミーウも余りの惨状に言葉を失う。

床に首と胴体が別れた、青い髪の少女の死体が転がっていた。
死体周辺は血痕だらけで、殺人現場そのものの様相を呈していた。

「あ、あああ、あ、ああ……!」

のび太がガクガクと震え出し、その後ろでアキナが死体から目を逸らしていた。

「こりゃ酷ぇな……死んでから4、5時間ぐらいは経ってる。多分、夜の内に殺されたんだろう」
「このデイパックはこの子のかしら? あー駄目ね。目ぼしい物は持ってかれてる」
「へ、平気なんですか、二人共」

死体に耐性のある五世とミーウは臆する事なく現場の調査に当たり始める。
生まれて初めて本物の死体を、しかも首が切断された惨殺死体を目にしてしまった
のび太とアキナは割と平然としている五世とミーウが不思議でならなかった。

結局、異臭はガレージも含むガソリンスタンドの建物全体に広がっており、
また、全員が死体のある建物にはいたくないという意見で一致したため、
やむを得ずガソリンスタンドのすぐ裏にあった崩れ掛けの廃屋で休憩する事にした。
廃屋は赤茶色に錆びたトタン屋根で、やや斜めに傾いていた。
内部は埃っぽい上にカビ臭く、敷かれた畳はふやけ、足場も悪かった。
それでも四人は我慢して、思い思いの場所に腰を落ち着かせた。

「それじゃあもう放送の時間も近い事だし、しばらくここで休むとしよう」
「はい、分かりました」
「はい…」
「そろそろお腹も空いてきたから朝ご飯にでもしようよ。
まぁ、こんなカビ臭い所だけど、我慢してさ…」

第一回放送の時刻である朝の6時が迫っていた。
のび太はこの殺し合いに呼ばれている友達の事を考える。
剛田武、源しずか、骨川スネ夫。どうか生きていて欲しい。
大親友であり家族であったドラえもんを失った今、もし、他の友達まで死ぬような事になったら。
そんな事はない、今まで色々な苦難を乗り越えてきたみんなだ、絶対に大丈夫。
とは言い切れないのが現実。現実は大抵人を裏切り、傷付けるものだ。

(ドラえもんが死んで……ジャイアン達まで死んだら、僕は……)

良い方向に考えるしかない。とにかく今は放送を待つしかない。
のび太はデイパックから適当におにぎりを取り出し包装を開け、
嫌な考えを振り払うがの如く口に入れ食べ始めた。

他の三人も、それぞれの思いを胸に秘めつつ、食事を取り始めた。




【一日目早朝/G-2ガソリンスタンド:裏の廃屋】

【野比のび太@ドラえもん】
[状態]:健康、リリア・ミスティーズに対する怒りと憎しみ(だいぶ薄らいだ)、食事中
[装備]:H&K MARK23(12/12)
[持物]:基本支給品一式(食糧消費中)、H&K MARK23のリロードマガジン(12×5)
[思考]:
0:殺し合いを潰す。友人達と一緒に脱出する。
1:アキナさん、五世さん、ミーウさんと行動する。南部市街地へ向かう。
2:襲われたら戦う。
3:放送を待つ。
※死神五世、ミーウと情報交換をしました。


【神山アキナ@オリキャラ】
[状態]:健康、食事中
[装備]:脇差
[持物]:基本支給品一式(食糧消費中)、拡声器、シアン化リウム
[思考]:
0:死にたくない。
1:のび太君、五世さん、ミーウさんと行動する。南部市街地へ向かう。
2:放送を待つ。
※死神五世、ミーウと情報交換をしました。


【死神五世@VIPRPG】
[状態]:健康、ミーウに対する警戒心、食事中
[装備]:マカロフ(7/8)
[持物]:基本支給品一式(食糧消費中)、ノートパソコン、マカロフのリロードマガジン(8×5)、
島崎隆博の水と食糧
[思考]:
0:仲間と共に殺し合いからの脱出。
1:野比のび太、神山アキナ、ミーウと行動。但しミーウは警戒。
2:ドラゴナス、ムシャ、デスシープの三人を捜す。勇者(アレックス)達はとりあえず放置。
3:襲われたら戦う。できる事なら説得してみる。
4:放送を待つ。
※能力に制限がかかっている事に気づきました。
※女体化から元に戻れません。
※ミーウを警戒しています。
※野比のび太、神山アキナと情報交換をしました。


【ミーウ@オリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:健康、潮風の影響で毛皮にベタつき、食事中
[装備]:H&K G3(20/20)
[持物]:基本支給品一式(食糧消費中)、H&K G3のリロードマガジン(20×10)、
トマホーク(3)、ニコライの水と食糧
[思考]:
0:殺し合いに乗る。
1:南部市街地に着くまでは野比のび太、神山アキナ、死神五世と行動。
着いたら殺すつもりだが、道中に何らかの問題があった場合も同じように殺す。
2:可愛い子(女の子優先、死神五世は守備範囲外)がいたら…フフフ。
3:放送を待つ。
※参戦時期は本編死亡後です。
※名簿に書かれた主催者と同姓の二人が気になっています。
※死神五世に警戒されている事を察知しました。
※トマホークの血痕は拭き取られたようです。
※野比のび太、神山アキナと情報交換をしました。



妄想だけならタダ 時系列順 フラッシュバック――記憶の欠片
妄想だけならタダ 投下順 フラッシュバック――記憶の欠片

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最終更新:2010年05月19日 23:52
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