冷え込む空の下

43話 冷え込む空の下


男娼館の客室の一つ、その中にある木製のベッドの上に、
現在意識を失い昏睡状態となっている狐獣人の青年が寝かされていた。
上半身の衣服は脱がされ、胸元に巻かれた包帯には血が滲んでいる。
青年――高原正封を床に膝を突いて傍で心配そうに見守る少女――仲販遥。
部屋の床には拭き取られてはいたがかなりの量の血痕が付着しており、
正封の治療のために必死の手立てが施された形跡が生々しく残っていた。

ガチャ…。

「!」
「俺だよ、仲販さん」
「トマックくん…」

扉を開けて入ってきたのは腰にタオルケットを巻いて局部を隠した白狼獣人の少年。
遥のクラスメイトであり、現在、雄の人狼・シリウスの奴隷となっているトマックである。
流石にクラスメイトの遥の前で局部を常に晒している訳にもいかないので
タオルケットを巻いているのだが、最早それは何の意味もなしていないのではと、
遥本人は思っていた。

「シリウスさんは?」
「見回り行ってくるって。しばらくこの男娼館を拠点にするつもりらしいから。
……どう? 高原さん、だったっけ? 様子は」
「うん…まだめをさまさない…」
「そうか……」

正封の怪我は胴体を背中から胸元にかけて刀で刺し貫かれるという、
即死、或いは致命傷を免れない程危険なものだった。
しかし、不幸中の幸いか、致命傷こそ避けていたものの出血が酷かったため、
懸命の止血作業が長時間行われた。

結果、どうにか出血は収まり、正封の死の危険はどうにか去ったものの、
意識は戻らず、依然として予断を許さない状況である事には変わりない。
とにかく意識が戻る事を信じて絶対に安静にさせておく事しかできないのだ。
短い間とはいえ、いつ襲われるか、いつ死ぬか分からないこの殺し合いの下において、
自分と行動を共にしてくれたこの少し臆病な狐の青年には、死なないで欲しいと、
遥は心から何度も願った。

「ところで、トマックくん…どうしてわたしたちとあったとき、
はだかでよつんばいになってたの?」
「え゛っ!? そ、それは……」

不意に遥から投げ掛けられた質問に、正直に答えるべきか誤魔化すべきか迷うトマック。

トマックは銀色の雄の人狼、シリウスに捕まった直後、
着ていた衣服を引き裂かれて裸にされ、そのまま犬のように四つん這いにされ、
シリウスの怒張した槍に後ろの門を貫かれた。
今まで感じたどの痛みとも違う激痛に悲鳴を上げたが、
それでもシリウスは容赦なくトマックを責め続け、あの手この手の愛撫を行った。

結果、トマックは見事にシリウスの虜となり、遂には奴隷にされてしまったのである。
奴隷と言っても、そこまで絶対服従のものではないのだが。

シリウスにされた筆舌し難い行為を、目の前の純真無垢な女の子に話して良いものか。
トマックの中でしばらく葛藤が続いたが、結局――。

「あのさ、絶対、驚かないでくれる?」

話してみる事にした。

~数分後~

「……っていう、訳なんだけど……」
「………なんだかよくわからないけど、トマックくんもたいへんだったんだね」
「まあね。ある意味大変ではあった」

幸いにもトマックの体験談は遥には余りに難解な用語のオンパレードで分かり難かったようだ。
一応事実は話したので、これでこの件はカタがついたとトマックは胸を撫で下ろした。




娼館の屋上から、夜明けが近付きだいぶ明るくなった市街地を見渡す人狼・シリウス。
傍らにはデイパック、その手には自分の支給武器の一つである片刃の曲刀・サーベルが握られている。
もう一つの支給品はシリウスにはうってつけのスプレー型増精剤で、
トマックとの濃厚な絡みの際に半分近く消費してしまった。

野生の人狼である彼は武器を使っての戦いよりも爪と牙、素手での肉弾戦を得意としていたが、
殺し合いというゲームの性格上、ほとんどの敵対者が銃や剣といった武器を
装備していると思われるため、飾り程度の意味ではあっても武装は必要だと判断した。
現に数時間前に襲ってきた狼獣人の女剣士は刀らしき物を持ち、
この男娼館に避難してきたと思われる二人の男女の内、狐獣人の青年を刺し貫き重傷を負わせた。
女剣士は追い払う事に成功したが、狐の青年は治療はしたが意識が戻らない。
止血など、男娼館に供えられていた医療道具(恐らく喧嘩沙汰の時のためのもの)で、
応急処置は済ませたものの、危険な状態である事には変わりない。
今この状態で再び襲撃者が来襲すればほぼ間違いなく殺される。その可能性が高いのだ。

見捨てるという選択肢はシリウスには選べなかった。
自分がこの殺し合いで初めて遭遇した他参加者であり、
趣味で自分の性奴隷にした白狼の少年、トマックによれば、
狐青年に同行していた少女は仲販遥と言い、自分のクラスメイトだと語っていた。
仲販遥は狐青年の事を「たかはらさん」と呼んでいたので、あの狐青年は、
名簿に書かれている「高原正封」が本名と見て間違いなさそうだった。
仲販遥はどうやら高原正封の事を心配しているようなので、
彼を見捨てようというものなら猛反対に遭う事は想像に難くない。
それに、シリウス自身もそこまで冷酷な性格ではなかった事が大きかった。

「そろそろ夜明けか。ふぅ、この時間帯が一番冷え込むんだよなぁ。寒い…」

毛皮があるとは言え肌寒さはシリウスの身に染みた。
しかしそれでも市街地の方向にはしっかり目を光らせる。
今の所この男娼館に近付いてくる人影は見当たらない。
時折風に乗って銃声らしき音も聞こえてくる。

「……今、何人生き残ってんのかな」

深夜0時頃に始まったこの殺し合いも、現在は午前4時も過ぎ、
4時間が経過した事になるが、何人の死者が出ているのだろうか。
一人も出ていないという事はまず有り得ないだろう。
先刻の狼女剣士のように殺し合いを進んで行う気でいる者もいるのだ。
シリウスはいつになく真剣な目付きになる。
今まで無駄に時間を過ごしてばかりだったが、
そろそろこの殺し合いからの脱出手段を探した方が良いかもしれない。
それにはまず首にはめられた首輪をどうにかしなければいけないが、
爆弾が内蔵されているこの機械仕掛けの首輪を外すとなると容易ではない。

(そもそもそんな簡単に外れる首輪なんか用意しないよな…)

当のシリウスも機械には全く縁がないため、首輪については保留にする事にした。

(となると、やっぱそういう知識持ってそうな奴を仲間に引き入れるのが上策だよな。
だけど、そんな奴いるかな、いたとしてもそいつが殺し合いする気だったら……。
いいや、ごちゃごちゃ考えていても仕方ねーや)

今は重傷者を抱え込んでいるためどっちにしても下手に動く事はできない。
しばらくはこの男娼館を拠点として留まろうとシリウスは考える。
ふと、自分の股間にぶら下がるナニに目を向ける。

「……一発抜いとくか」

近くの古びた大型室外機にもたれ掛かり、
銀色の毛皮を持った雄の人狼は息子を握った右手をゆっくり上下に動かし始めた。




【一日目早朝/C-7男娼館】

【高原正封@俺オリロワリピーター組】
[状態]:背中から右胸下辺りにかけ刺し傷(処置済)、意識不明
[装備]:なし
[持物]:基本支給品一式、ニューナンブM60(0/5)、38sp弾(30)
[思考]:
0:………………。
※俺オリロワ開始前からの参戦です。
※仲販遥のクラスメイト(銀鏖院水晶、ケトル、鈴木正一郎、トマック)についての情報を多少得ました。


【仲販遥@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]:精神的疲労(中)
[装備]:手斧
[持物]:基本支給品一式、手榴弾(3)
[思考]:
0:死にたくない。高原さん、シリウスさん、トマック君と一緒にいる。
1:高原さん、死なないで…。
2:他のクラスメイトの皆については保留。
3:狼獣人の女剣士(シェリー・ラクソマーコス)には警戒。
※本編開始前からの参戦です。
※シリウスの名前をトマックから聞きました。
※シェリー・ラクソマーコス(名前は知らない)の容姿を記憶しました。
※トマックから調教の過程を聞かされましたがほとんど理解できなかったようです。


【トマック@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]:健康、腰にタオルケットを巻いているだけの格好、
シリウスに対する服従心、性感が増大している、精神不安定
[装備]:不明
[持物]:基本支給品一式、不明支給品(1~2)
[思考]:
0:ご主人様(シリウス)、高原正封、仲販遥と一緒にいる。
1:高原正封の看護。
2:もっとご主人様に可愛がられたい。
3:狼獣人の女剣士(シェリー・ラクソマーコス)には警戒。
※本編開始前からの参戦です。
※衣服は破かれC-7娼館:中庭に放置されています。
※シリウスに性的調教を受けたため人格が崩壊気味です。
ただし理性はあります。
※高原正封の名前を仲販遥から聞きました。
※シェリー・ラクソマーコス(名前は知らない)の容姿を記憶しました。


【シリウス@オリキャラ】
[状態]:健康、自分を慰めている
[装備]:サーベル
[持物]:基本支給品一式、増精剤入り小瓶(半分消費)
[思考]:
0:殺し合いをする気はない。いい男がいたら食べる(性的な意味で)。
1:そろそろ脱出手段を考える。但し高原正封の回復を待つ。そして時々抜く。
2:トマック、仲販遥と行動。
3:男娼館周辺を見回る。
4:狼獣人の女剣士(シェリー・ラクソマーコス)には警戒。
※高原正封の名前を仲販遥の台詞から知りました。
※シェリー・ラクソマーコス(名前は知らない)の容姿を記憶しました。



≪支給品紹介≫
【サーベル】
ヨーロッパの片刃の曲刀。柄には護拳 (guard) と呼ばれる枠状、
もしくは半円の大きな鍔がついており、指や手を保護するように作られている。

【増精剤入り小瓶】
スプレー方式で鼻元に吹き付けて使用する増精剤。
使用すると一定時間(個人差はあるが30分~1時間程)、
精力が飛躍的に上昇し、精液の量が増大する。
ガラス製の小瓶に入れられた透明色の液体の外見。




そして狐は忍び込む 時系列順 食える時に食うべし
そして狐は忍び込む 投下順 食える時に食うべし

男達の花園 高原正封 あの日の思い出を薄めては
男達の花園 仲販遥 あの日の思い出を薄めては
男達の花園 トマック あの日の思い出を薄めては
男達の花園 シリウス あの日の思い出を薄めては

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最終更新:2010年05月23日 00:04
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