そして狐は忍び込む

42話 そして狐は忍び込む


座礁客船乗船用タラップの所で眼鏡少年・野比のび太とバニーガール・神山アキナは、
先刻行った拡声器による不戦の呼び掛けに応じて集まった二人の参加者を迎えていた。
一人は黒髪ツインテールに、黒いビキニ、その上に紺色のマントを羽織った、
のび太にとってはバニーガールであるアキナと並ぶ刺激的コスチューム姿の死神五世。
もう一人は黄色い狐の頭と毛皮を持った、狐獣人の少女のミーウ。

「死神五世さんにミーウさん、ですよね。
僕の呼び掛けに応じてくれてありがとうございます」

まずのび太が二人に礼を述べる。
横でアキナがのび太に続いて頭を下げた。

「いいけどな…あんな大声出してたら自殺行為だぞ。
以後はあんな軽率な行為は控えるべきだ」
「まぁまぁいいじゃない。殺し合いに乗ってない人が集まったんだし。
あたしと、えーと、死神五世さんだっけ? いい乳してるね~」
「おい! どこ触ってんだ!!」

いつの間にか乳房を揉まれている事に気付いた五世は顔を赤らめながらミーウの手を振り払った。

「……」

そんなやり取りを見ていたのび太少年も顔を赤くして明後日の方向を向き頭の中で全く関係のない事を考えて気を紛らわそうとする。
ジャイアンに苛められた時の事、スネ夫に意地悪された時の事、
しずかちゃんに宿題を教えて貰おうとしたがすぐに断られた事、
ママに隠していた0店のテスト用紙を発見され一時間弱に渡りお説教を食らった事、
パパに小遣いの値上げを嘆願したが「無駄遣いをやめろ」と一蹴された事など、
どういう訳かネガティブな思い出しか蘇る事はなかった。
そして秘密道具を使った結果惨事を招いた責任をドラえもんに擦り付け大喧嘩になった事――。

(……ドラえもん……)

ほんの数時間ではあったが、自分はドラえもんの事を忘れていた。
あんなに悲しんでいた、怒っていたというのに、薄情だろうか、自分は。
いつの間にかドラえもんを殺した主催者のリリアに対する憎悪も怒りも随分と薄れていた。

(…でも、ドラえもんだったら……)

ドラえもんだったら、優しい心を持っていたあのドラえもんだったら、
大切な友達が怒りや憎しみに溺れ、自分を見失っていくのは良しとはしないだろう。

(でも、それでも僕は――――)




「あの、五世さん、ミーウさん、これからどうしましょう、
どうすればいいんでしょうか……」

アキナが少しおどおどした様子で五世とミーウの二人にこれからの行動について尋ねる。

「そうだな…市街地の方に行こう。
仲間を集めるなら、人が集まりやすい場所に行く方が良いだろう」
「じゃああたしもそーれー」
「街ですか…地図で見る限りじゃ南北に市街地がありますけど…」
「島役場とか、病院とかがある南の市街地にすれば?
重要な施設は南に集中してるっぽいし」
「ん……そうだな。それじゃあ南の市街地に行くとしよう」

アキナ、五世、ミーウの三人の協議の結果、学校、島役場、病院といった
重要施設が集中している島の南の市街地へ向かう事になった。
情報交換や支給品の確認は移動中に行う事にした。

「のび太君? …どうしたの? え、泣いてる」
「…え? い、いや、泣いてないですよ」

悲しい思い出ばかりが蘇って自然と涙を零していたのび太は右腕の服で涙を拭い、
少々無理に笑顔を浮かべて応対した。

(のび太君……もしかして、ドラえもん君の事……)

アキナは心の中でのび太の事を心配した。
死神五世とミーウの二人にはそのやりとりは見えていなかったため、追及される事はなかった。

「それじゃあ行こうか、のび太にアキナ」
「ほらぁ、グズグズしてると置いてくわよ~」
「は、はい!」
「分かりました」

野比のび太、神山アキナ、死神五世、ミーウの四人は、
会場の島南部の市街地に向かって歩き始めた。



我ながら上手く行ったと、ミーウは心の中でほくそ笑む。
放送を聞いてのび太とアキナの元にやってきたのは事実。
だがそれは、協力して殺し合いを潰すためなどではなかった。
最初はさっさと全員、手にした突撃銃・H&K G3で射殺するつもりだった。
自分以外にも、やたらエロい格好をした女が一人放送を聞いて来ていたが、
それでも行おうとしていた事には特に支障はなかった。

それならなぜ、さっさと殺さないのか。
座礁客船から南部市街地まではまだそれなりに距離があり、
道中誰かに襲撃を仕掛けられる可能性も考えられる。
複数人いれば生存率も多少上がるとミーウは考えた。
いざとなれば盾にして自分だけ逃亡或いは反撃する事もできる。
折角なので利用できるものは全て利用しようというのだ。
勿論、市街地まで来れば、全員を殺害するつもりだった。

(だけど…)

ここでミーウは今自分の傍を歩いている不安要素に横目を向ける。

(死神五世……多分、っていうか間違いなくこいつ、あたしの事警戒してる)

死神五世はミーウと出会った当初から、ほとんど表にこそ出さなかったものの、
明らかにミーウの事を怪しんだり警戒している節が見られた。

(まあ、気を付けた方がいいわね。もしヤバくなったら、その場で全員殺せばいいし…)

そして、ミーウの予想通り、死神五世は出会った時からミーウの事を怪しんでいた。
確証はない。確証こそなかったが、魔王軍四天王の一角としての勘だろうか、
ミーウのどこか演技くさい動作を見破っていたのである。

(ミーウ…こいつは気を付けた方がいいかもしれないな。
アキナはともかく、のび太はほとんど疑っていないようだから……。
俺の考え過ぎかもしれんが)

自分の考え過ぎかもしれないと自制はしつつも、
万一の事を考え、死神五世はミーウへの警戒心は持っておく事にした。




【一日目黎明/E-1座礁船周辺】

【野比のび太@ドラえもん】
[状態]:健康、リリア・ミスティーズに対する怒りと憎しみ(だいぶ薄らいだ)
[装備]:H&K MARK23(12/12)
[持物]:基本支給品一式、H&K MARK23のリロードマガジン(12×5)
[思考]:
0:殺し合いを潰す。友人達と一緒に脱出する。
1:アキナさん、五世さん、ミーウさんと行動する。南部市街地へ向かう。
2:襲われたら戦う。


【神山アキナ@オリキャラ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[持物]:基本支給品一式、拡声器、シアン化リウム
[思考]:
0:死にたくない。
1:のび太君、五世さん、ミーウさんと行動する。南部市街地へ向かう。
2:武器が欲しい。


【死神五世@VIPRPG】
[状態]:健康、ミーウに対する警戒心
[装備]:脇差、マカロフ(7/8)
[持物]:基本支給品一式、ノートパソコン、マカロフのリロードマガジン(8×5)、島崎隆博の水と食糧
[思考]:
0:仲間と共に殺し合いからの脱出。
1:野比のび太、神山アキナ、ミーウと行動。但しミーウは警戒。
2:ドラゴナス、ムシャ、デスシープの三人を捜す。勇者(アレックス)達はとりあえず放置。
3:襲われたら戦う。できる事なら説得してみる。
※能力に制限がかかっている事に気づきました。
※女体化から元に戻れません。
※ミーウを警戒しています。


【ミーウ@オリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:健康、潮風の影響で毛皮にベタつき
[装備]:H&K G3(20/20)
[持物]:基本支給品一式、H&K G3のリロードマガジン(20×10)、
トマホーク(3、内2本に血痕付着)、ニコライの水と食糧
[思考]:
0:殺し合いに乗る。
1:南部市街地に着くまでは野比のび太、神山アキナ、死神五世と行動。
着いたら殺すつもりだが、道中に何らかの問題があった場合も同じように殺す。
2:可愛い子(女の子優先、死神五世は守備範囲外)がいたら…フフフ。
※参戦時期は本編死亡後です。
※名簿に書かれた主催者と同姓の二人が気になっています。
※死神五世に警戒されている事を察知しました。





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最終更新:2010年05月12日 00:21
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