愚民以下から這い上がれ

33話 愚民以下から這い上がれ


自動ドアをくぐり、銀鏖院水晶はS&W M19を右手に持ちながら病院のロビーへ進入した。
病院特有の薬品のような臭いが水晶の鼻を刺激する。
非常灯が点いているためまだ深夜だが視界には困らない。
他の参加者の姿を捜すため水晶がロビーの奥へ足を進める。

殺し合い開始早々、獣に強姦されるという悲劇に見舞われ、
更に自慢の超能力も使えず、今の自分は愚民以下だと自信も純潔も喪失していた水晶。
しかし、その喪失感を怒りに代え、他参加者達を殺害する事で、
その怒りを発散させようと奮起したのだった。

水晶が、ロビー奥の喫煙室付近まで来た時。

「――!」

背後から殺気を感じた。
次の瞬間。

ダダダダダダダダダダッ!!!

機関銃の発射音と共に無数の弾丸が水晶目掛けて襲い掛かってきた。
喫煙所を仕切るガラス壁が一瞬で穴だらけになった。

「くっ…!」

しかし間一髪だった。水晶はすぐ近くにあった柱の影に隠れ難を逃れた。

(マシンガン!? くそっ…!)

柱の影からほんの少しだけ顔を出し、襲撃者の顔を確認する。
病院玄関付近に、翼を持った長髪の女性が立っているのが見えた。
そして手に持った武器らしき物を水晶の隠れている柱の方に向け――。

ダダダダダダダダダダッ!!!

「!!」

弾丸を受け過ぎ喫煙室のガラスがついに砕け散った。
壁や柱、ソファー、観葉植物、ロビー内のありとあらゆる物が弾丸で抉られる。
柱の影で水晶は反撃の機会を窺った。

水晶を手にした短機関銃、イングラムM10の掃射で襲撃した、
オレンジ色の髪に赤い翼、尻尾を持ったサキュバス、メリエは、
空になった弾倉を取り換え、一気に水晶のいる柱付近まで近付こうとした。
だが、柱の影から水晶が身を乗り出し、M19の銃口をメリエに向け、発砲する。

ダン! ダン! ダン!

「くっ!」

どうにか胴体に当たるのは避けたが、左の翼の膜に一発命中してしまった。
傷みに顔を歪めるが、メリエは再び水晶に向けイングラムを掃射した。

「死ねぇーっ!!」

ダダダダダダダッ!!!

しかし既に水晶は奥にある廊下の方向へと走り出していた。

「逃がすかっ!」

殺せる獲物は、殺せる時に殺した方が良いと、メリエは水晶を追い掛ける。
この病院目指して空中を飛んでいた時、病院の中入っていく少女――水晶の姿を発見し、
気付かれないように静かに着陸、そして背後から銃撃を仕掛けた。
こちらは連射可能な短機関銃、相手は――他に武器を隠し持っていなければ――単発銃のみ。
火力は圧倒的にこちらが上、勝機は十分にあると踏んだメリエは、
水晶に止めを刺すべく追走した。

そして廊下の曲がり角を曲がった時だった。
前方数メートル先に銀色の髪をなびかせ走る学生服姿の少女の姿。
しめた、と思い、メリエはイングラムの銃口を水晶に向け――る前に、
水晶が踵を返し、M19の銃口をメリエの方に向ける方が、数瞬早かった。

「死ぬのは――」

しまった、と思い、メリエはイングラムの引き金を引こうとした、が。

「お前だぁぁぁぁぁ!!」

ダン! ダン! ダン!

それより先に水晶がM19の引き金を引き弾倉に残っていた3発の.357マグナム弾をメリエの身体に叩き込む。
一発目がメリエの豊満な乳房の内の右胸、二発目が左胸のやや下、
そして最後の一発がメリエの美しい顔の、鼻のやや横辺りに命中し、
後頭部へと貫通し、そして突き抜けた頃には、メリエの意識は消失していた。
そのまま仰向けにメリエは倒れ、血溜まりを作り、もう二度と立ち上がる事はなかった。
水晶はM19のシリンダーラッチを押し、弾倉を横に振り出し空薬莢を排出、
制服のポケットに入れていた予備弾を装填していく。

「ハァ…ハァ…死ぬかと思ったけど、何とかなったわね」

最初短機関銃の掃射を受けた時、水晶は正直な所、死を覚悟した。
現在ここに生きて立っていられるのは幸運と言っていいだろう。
水晶はメリエが落としたイングラムM10と、メリエのデイパックの中から、
イングラムの予備マガジン8個と食糧を抜き取った。
殺し合いを有利に進めるには武器が多い方が良い。
連射が効く短機関銃を手に入れられ水晶は思わず笑みを浮かべた。



(えーちょっと、何これ……私が惰眠こいてる間にえらい事なってるんだけど)

院長室の扉を少しだけ開け、様子を窺う全裸の少女――に見える若い女性、戸高綾瀬。
ソファーで眠りについていた綾瀬を目覚めさせたのはロビーの方から聞こえてきた銃声だった。
しばらく――脱ぎ捨ててあった服を着るのも忘れ――机の陰に隠れていたが、
やがて三発の単発銃のものと思しき銃声を最後に、音が止んだため、
恐る恐る院長室の扉を少しだけ開け何事か様子を確認した。

そこには血溜まりを作って床に倒れたまま動かなくなっている翼を持った悪魔っ娘と思しき女性と、
学生服を身に纏った銀髪の小柄な少女が、リボルバー拳銃に弾を込めている所が見えた。
状況から見て、学生服の少女が悪魔っ娘を殺害したと見るのが妥当だろう。

(あの子、殺し合いに乗っているの? それともあの悪魔っ娘に襲われて、
正当防衛で殺したの? どうしよう、思い切って接触してみようかな)

綾瀬よ、それよりも何よりもまず服を着ろ。

(……やめとこう。危険を冒してまで接触する事もないでしょ。
それより一旦どこかに隠れた方が……そうだ、窓の外に)

脱ぎ捨ててあった服を掻き集め、デイパックとボウイナイフ、衣服を持ったまま、
院長室の窓を静かに開け、外の植え込みに着地し静かに窓を閉めた。
そして脱いでいた服を着始める。

綾瀬がさっさと逃げなかったのには訳があった。
それは廊下に放置されていると思われる悪魔っ娘――メリエの死体。
綾瀬は参加者の首にはめられている首輪のサンプルを入手したがっていた。
それには参加者の死体から――つまり、死体の首を切断し、首輪を入手する必要があると、綾瀬は考えていた。
もうこのゲーム会場には幾つかの死体が転がっていると思われたが、
それを捜索して見付けるのは苦労する。
なので、すぐそこにある死体を、メリエの死体を利用しようと考えたのだ。

(しばらく待って……あの女の子がいなくなったら、いよいよ……)

自分の武器であるボウイナイフを手に取り、
綾瀬はゴクリと生唾を飲み込んだ。



【メリエ@オリキャラ  死亡確認】
【残り37人】



【一日目黎明/G-8病院:一階廊下】

【銀鏖院水晶@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]:精神的ダメージ(やや回復)
[装備]:S&W M19(6/6)
[持物]:基本支給品一式、.357マグナム弾(24)、イングラムM10(22/30)、
イングラムM10のリロードマガジン(30×8)、メリエの水と食糧
[思考]:
0:殺し合いに乗る。優勝を目指す。
1:もう少し病院内を探索する。
2:みんな殺す。とにかく殺す。クラスメイトでも容赦しない。
3:あの黒狼(レックス)は今度会ったら絶対に殺す。
※本編開始前からの参戦です。


【一日目黎明/G-8病院:院長室すぐ外の植え込み】

【戸高綾瀬@オリキャラ】
[状態]:健康
[装備]:ボウイナイフ
[持物]:基本支給品一式
[思考]:
0:殺し合いには乗らない。首輪の解除を目指す。
1:しばらく植え込みに身を潜めて、悪魔っ娘(メリエ)の死体から首輪を回収。
2:もし可能であれば仲間が欲しい。
3:襲われたらどうする…?
※銀鏖院水晶(名前は知らない)の容姿を記憶しました。
※服を着ました。



※G-8病院周辺に銃声が響きました。
※G-8病院玄関ロビーが荒れています。
※G-8病院:一階廊下にメリエの死体とデイパック(水と食糧抜きの基本支給品入り)が放置されています。



男達の花園 時系列順 Triple axel
男達の花園 投下順 Triple axel

傷付いた水晶 銀鏖院水晶 その思いは正義をも砕く
傷付いた水晶 メリエ 死亡
傷付いた水晶 戸高綾瀬 さっさと調べろと言うのは無粋、無粋。

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最終更新:2010年05月09日 11:23
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