異世界と異文化

25話 異世界と異文化

ドーラ・システィールは厳かな装飾の施された門をくぐり、豪邸の庭へと足を踏み入れた。
豪邸は二階建てで、外観からもかなり大きな邸宅だという事が分かった。

「デカい家だねぇ。誰かいるかもしれないね…」

そう呟くとドーラはデイパックの中から自分の支給品であるポンプアクション式散弾銃、
イサカM37を取り出し、それをいつでも構えて発砲できるようにしながら、
豪邸の玄関口へ姿勢を低くしながら近付いていった。
しかし、視線をやや下向きにしていたためか、上方向には気が向いていなかった。

「…?」

翼を羽ばたかせる音が聞こえ、ドーラが立ち止まる。
直後、背後に何かの気配を感じ、イサカM37を構えながら振り向いた。

「待て。その物騒な物を下ろしてくれ。あんたと戦うつもりはない」

大きな翼を持った、竜のような怪物――ガーゴイルは散弾銃の銃口を自分に向けるドーラに対し、
戦意はない事を、しかし銃口を向けられながらも落ち着き払った様子でアピールした。

「戦うつもりはないってのは、殺し合いには乗ってないって事かい?」
「そんな所だ」
「……ふぅん」

疑りつつも戦意はないと判断したのかドーラが銃口を下ろした。
それを確認したガーゴイルが再び口を開く。

「こんな所で立ち話も何だ。折角豪華な邸宅があるんだし、
中に入って色々お喋りでもしようじゃないか」
「何勝手にリードしようとしてるんだい…まぁ、もっともだけどね」

ドーラとガーゴイルは共に豪邸の玄関へと向かった。



広い応接間で、ドーラはソファーにガーゴイルと向き合う形で座る。
カーテンを閉め切り、部屋の照明を入れたため、ドーラはガーゴイルの容姿を改めて確認する事ができた。
大きな翼、長い尻尾、腕や背中は青色だが顔から腹にかけては濃い肌色。
身体はよく引き締まっており、左肩には赤い何かの紋章が確認できる。

「アタイはドーラ・システィール。アンタは?」
「…ガーゴイルでいい」
「そうかい、んで、ガーゴイル、お喋りっつったって、何話そうってんだい?
世間話って訳じゃないだろ?」
「そりゃあな。今更聞く事ないだろうけど、ドーラ…だったか?
アンタ…この殺し合い、乗る気はあるのか?」

赤い瞳でドーラの顔を見据えながらガーゴイルが尋ねる。

「そんな気はないさね。別に殺しなんてその気になればいくらでもできるけど、
あんなどこの馬の骨とも知れない馬鹿女の言いなりになるのは御免だよ」

ガーゴイルの問いに対し、ドーラは素直に自分の意見で答える。
つまりこの殺し合いのルールに則り、殺し合いをする気は毛頭ないという意思。
それを聞いたガーゴイルはくくっと笑った。

「成程な。まぁ、俺も同意見さ。つまりお互い殺し合いには乗ってないって事だな」
「ああ、そうだねぇ」
「それじゃあ、単刀直入に言うとだな…俺と手を組んで欲しいんだ」
「へぇ…」

ガーゴイルがドーラに持ちかけたのは共闘の話だった。
興味深そうな表情を浮かべドーラがガーゴイルの話に耳を傾ける。

「俺はこの殺し合いから何とかして抜け出したいと思っている。
だけどそのためには…この厄介な首輪を何とかしないといけない」

自分の首にはめられた金属製の首輪を爪で数回突きながら、ガーゴイルが言う。
それを見てドーラも自分の首にはめられた同じ物に触れる。
絶対に外せないと言うその首輪の感触はドーラにとって不快この上ない。
まるで飼い犬にでもされたかのような屈辱感を消し去る方法があるというのなら、
さっさとその方法を実行に移したいがその方法は、少なくともドーラ自身や、
目の前にいるガーゴイルは現在持ち合わせてはいない。
ドーラは脱出するという思考までには至っていなかったが首輪は外したかった。

「だけどこれ外すとなるとやっぱり、何か機械知識的なものが必要になってくるだろうな。
そんなもの俺は持っていない」
「アタイも」
「だからそういう知識を持ってそうな奴を探そうと思う。協力して欲しいんだ、ドーラ」
「成程ね……アタイもこんな鬱陶しい首輪外したいし、いいよ。その話乗ってやる」
「そうか。助かるぜ」

ドーラが共闘を承諾してくれた事にガーゴイルが喜びの声を上げる。

「それで? ガーゴイル、アンタこの殺し合いに知り合いはいるのかい」
「ん…ああ。四人いるな。ジン、アキラ、亜美、ガルムの四人だ」

ガーゴイルはこの殺し合いに呼ばれている自分の知り合い、
と言うよりも彼が知っている人物四人についてドーラに説明し始めるが、
「ヴァルハラ」「帝国軍」「時の塔」「デビルチルドレン」「デビル」といった聞き慣れない単語の山に、
ドーラは首を傾げ、ガーゴイルの話の内容が半分程理解できないでいた。
ただ、「ジン」「アキラ」「亜美」の三人は、ガーゴイルの所属している「帝国軍」、
少なくともドーラが所属していた解放軍が戦っていたバルフォモーリア帝国軍とは、
全くの別物らしいが、とにかく「帝国軍」とは敵対関係にあるものの、殺し合いに乗るような人物ではない、という事。
「ガルム」はガーゴイルと同じく帝国軍のデビルだが、面識がある訳ではなく、
更に元々凶暴な種族らしいため、信頼性は薄いという事。
その二つの事が分かればドーラにとっては十分だった。
そしてガーゴイルは自分のデイパックから、自分の支給品を取り出した。

「こりゃまた、凄いモン支給されたねぇ」
「ああ」

テーブルの上にゴトンという大きな音と共に置かれたそれは、
対戦車擲弾発射器、RPG7。そして予備弾の対戦車擲弾3発。
「対戦車」と銘打ってある通り本来は対人兵器ではない。
しかしこんな物が支給されるという事はこれで参加者を殺せという事なのだろう。

「つくづく性格悪いみたいだね、あのリリアとかいう女ァ」
「まあ、可能な限り威嚇用に使うとしよう。ドーラは?」
「アタイはこのイサカとかいう銃と予備弾。それと……」

ドーラは自分のデイパックの中からもう一つの支給品を取り出した。
それは黒いベストのような衣服――防弾チョッキだった。

「ほお。良かったじゃないか。拳銃弾程度なら防げるんじゃないか?」
「悪いけどアタイはこんな重たいモンは着たくないよ」

そう言ってドーラは防弾チョッキをデイパックの中にしまった。

「そんで、アタイの知り合いは…一人いるね。シェリー・ラクソマーコスさ」

支給品の確認も終わった所でドーラが知人であり参加者の一人である、
シェリー・ラクソマーコスについて話し出したが、
ここではガーゴイルの方が「アルカディア解放軍」「バルフォモーリア帝国軍」
「コバルト・アクセレイセス」といった単語に戸惑う事になった。
しかし、シェリー・ラクソマーコスなる人物が少々注意を要すると分かれば、それで良かった。

「今はまだだいぶ暗いからなぁ…もう少し明るくなるまで待とう」
「そうだね。それじゃ、アタイはこの屋敷でも見回ってくるとしようかね」

ドーラとガーゴイルはもう少し明るくなり視界が効くようになるまで豪邸内で待機する事にした。
お互い、理解不能な部分を残しながら。



【一日目深夜/H-3豪邸】

【ドーラ・システィール@FEDA】
[状態]:健康
[装備]:イサカM37(4/4)
[持物]:基本支給品一式、12ゲージショットシェル(30)、防弾チョッキ
[思考]:
0:今の所殺し合いをする気はない。
1:ガーゴイルと行動。しばらく豪邸に留まる。
2:シェリーについては保留。
3:首輪を外したい。
※参戦時期は少なくともコバルトを倒した後です。
※フォナ・アンシュッツの名前と容姿を記憶しました。
※ガーゴイルの知人(ジン、アキラ、亜美、ガルム)のおおよその特徴を把握しました。
※ガーゴイルの言葉の一部が理解できず気になっています。

【ガーゴイル@真・女神転生デビルチルドレンライト&ダーク】
[状態]:健康
[装備]:RPG7(1/1)
[持物]:基本支給品一式、85㎜対戦車擲弾(3)
[思考]:
0:殺し合いからの脱出。首輪の解除方法の模索。
1:ドーラと行動。しばらく豪邸に留まる。
2:元世界の知人(ジン、アキラ、亜美、ガルム)については保留。
3:襲われたら説得を試みる。駄目ならば戦うか逃げる。
※ドーラの知人(シェリー・ラクソマーコス)のおおよその特徴を把握しました。
※ドーラの言葉の一部が理解できず気になっています。



≪支給品紹介≫
【イサカM37】
1937年に発売されたポンプアクション式散弾銃。
散弾銃としては非常に軽量なため「feather light(羽根のように軽い)」の愛称がある。
機関部下面にある装弾口が排莢口も兼ねているため、砂埃等の汚れが入りこみにくく構造的に堅牢。
引き金を引いたまま先台を前後させる事で連射(スラムファイア)が可能。
使用弾薬:12ゲージショットシェル 装弾数:4発

【防弾チョッキ】
服の内側に着込んで使う、拳銃弾程度なら防ぐ事ができる特殊繊維製のチョッキ。
但し斬撃や刺突に弱く、重い。過信は禁物。

【RPG7】
旧ソ連が1960年代に開発した個人携帯可能な肩付け式の対戦車/軽装甲火器。
RPGとはロシア語の「Ручной Противотанковый Гранатомёт」の
英語綴り「Ruchnoy Protivotankovyi Granatomet」の頭文字で、携帯式対戦車榴弾発射器の意。
「Rocket Propelled Grenade(ロケット推進式榴弾)」の略称とされることもあるがこちらは誤り。
なまじ意味が通るゆえ広く後者の語で紹介されている。
軌道が直線に近いため命中率が高い。
使用弾薬:85㎜対戦車擲弾 装弾数:1発





The unexpectedness and it are fatal. 時系列順 光は希望とは限らない
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不意討ちは時々高難易度 ドーラ・システィール 死体損壊なんてよくある事
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最終更新:2010年05月04日 15:20
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