13話 幽霊船で泣く兎
淡いピンク色の髪を持った、バニーガールの格好の少女が、
少し床が傾いた寝室の中で膝を抱えて震えていた。
ここはエリアE-1にある座礁したクルーズ客船内部。
上部デッキにある客室の一つで、バニーの少女――神山アキナは殺し合いをスタートさせた。
「どうしよう…殺し合いなんてできっこないよぉ」
何も分からぬまま仕事先のバニーガールの衣装のままで、
「最後の一人になるまで殺し合いをしろ」と言われたのである。
首には爆発する仕掛けの金属製の首輪がはめられ、
もしかしたら主催者の気まぐれで爆破されるかもしれないと思うととても怖かった。
ギギイイイ…。
「ひっ!」
時折聞こえる船が軋む音に怯えるアキナ。
座礁船であるこのクルーズ客船は、波が船体に打ち付けられたりする度、
不気味な軋みを上げるのだ。
もしかしたら船底部、機関室は既に浸水しているのかもしれない。
それを確かめに行く勇気など彼女にはないのだが。
自分が今いる客室の入口にはしっかり鍵を掛けている。
アキナは当分、この部屋から外には出ないつもりであった。
下手に動かず一ヶ所に隠れている方が安全だと考えたためである。
自分のデイパックの中に入っていたのは、
何の変哲もない拡声器と、小さな瓶に入った白い粉。
瓶のラベルには「シアン化カリウム」と書かれている。
薬品に疎いアキナでも、毒物であるという事は察しが付いた。
これらを使って人を殺さなければいけないのだろうか。
拡声器はともかくシアン化リウムは使うタイミングが難しいが、
容易に人を死に至らしめる事ができるだろう。
だが――。
「駄目…できない! とても…人殺しなんてっ」
普通の人間であれば殺人に対し少なからず抵抗感を持つはず。
彼女もその例に漏れず自分が生き残るために他人の命を奪う事など考えられなかった。
しかし、リリア・ミスティーズと名乗った主催者の話によれば、
生きて帰れるのは、最後まで生き残ったただ一人なのだ。
名簿も既に確認したが自分の知っている名前は一つも見当たらなかった。
自分の先輩でよく面倒を見てくれる伊藤文子の名前もない。
自分はこの見知らぬ土地、そしていつ命を狙われるか分からない危険な状況で、独りぼっち。
そう思うとアキナは次第に涙が出てきた。
「うっ…ひぐっ……」
自分が置かれている状況を呪い、絶望し、涙を流す。
今のアキナにできる事はこれだけだった。
「どうしてこんな所に船が…」
座礁客船の横の陸地で、眼鏡少年野比のび太は、
それなりに大きな客船が有り得ない場所に接岸している事に驚く。
しかしよく見れば船は接岸しているのではなく浅瀬に乗り上げている事が分かる。
「座礁したんだ…船に乗ってた人達はどうしたんだろう。
あ…あそこから出たのかな」
のび太の視線の先にはタラップが下ろされた船の入口があった。
船自体が傾いているためかなり不安定な状態だが、侵入口は他に見当たらない。
少々怖かったが、のび太はタラップの階段に近付き、それを登り始めた。
階段の先は扉が開けられたままの乗船口。奥は真っ暗でよく見えない。
しかしそれでものび太は進んでいく。
もしかしたら友達がいるかもしれないと、希望を持って。
「真っ暗だ…何も見えないや」
ぐらついた階段を上った先は暗闇の空間。
これでは動くに動けないのでのび太はやむを得ずデイパックから懐中電灯を取り出し明かりを灯した。
「うわぁ、広いなぁ」
照らし出された空間は広いレセプションエリア。
椅子とテーブルが幾つか置かれ、食堂に続く入口やエレベーターなどが見える。
放棄されてから時間が経っているのだろうか少し埃っぽい。
混乱があったらしくやや調度品などが荒らされている。
「もしかしたらジャイアン達もいるかも…他の参加者も」
これだけ広ければ誰か一人くらいは他参加者がいる可能性が高い。
懐中電灯で行く先を照らしながらのび太は船の奥へ進んで行った。
【一日目深夜/E-1座礁客船:客室】
【神山アキナ@オリキャラ】
[状態]:健康、恐怖
[装備]:なし
[持物]:基本支給品一式、拡声器、シアン化リウム
[思考]:
0:死にたくない。
1:客室内に留まる。
【一日目深夜/E-1座礁客船:レセプション周辺】
【野比のび太@ドラえもん】
[状態]:健康、リリア・ミスティーズに対する怒りと憎しみ
[装備]:H&K MARK23(12/12)
[持物]:基本支給品一式、H&K MARK23のリロードマガジン(12×5)
[思考]:
0:殺し合いを潰す。友人達と一緒に脱出する。
1:座礁客船内の調査。
2:襲われたら戦う。
≪支給品紹介≫
【拡声器】
声を増幅するための器具。バトロワ死亡フラグの代名詞的存在。
【シアン化リウム】
いわゆる青酸カリで、猛毒。
≪オリキャラ紹介≫
【名前】神山アキナ(かみやま-)
【年齢】18
【性別】女
【職業】バニーガール
【性格】明るいが怖がり
【身体的特徴】淡い桃色の髪、透き通るような肌、スタイルは良い
【服装】紺色のバニーの服、うさ耳
【趣味】一人カラオケ、作詩
【特技】これと言ってなし
【経歴】母親が物心つく前に他界しており、父子家庭で育つ
【備考】非リレーロワ・俺オリロワの参加者の一人、伊藤文子の後輩。
ちなみに「こちら」の伊藤文子は俺オリロワに参加させられていない、
並行世界の伊藤文子である。日本風異世界国家出身
最終更新:2010年04月17日 02:22