泣き虫少年は立ち上がる

1話 泣き虫少年は立ち上がる


眼鏡を掛けた少年、野比のび太はエリアE-2の草原に突っ伏して泣いていた。

「ドラえもん……!」

未来から来た猫型ロボットであり、自分の大切な友達、いや家族とでも言うべき存在だったドラえもん。
そのドラえもんが――死んだ。

正確には「破壊された」が正しい表現なのだろうが、
ドラえもんはただのロボットなどでは無く、笑ったり、泣いたり、怒ったりした。
現に首輪を爆破される寸前まで、ドラえもんは自分の目を見据えて涙を流していた。
怖かっただろう。苦しかっただろう。悲しかっただろう。
最後の瞬間のドラえもんの眼差しを、のび太は忘れる事はできない。
だから、壊れたなどと無機質な言葉で表したくはなかった。

「何で、何でこんな事にっ…!」

昨日の夜、のび太とドラえもんはいつものように家で就寝したはずだった。
だが目覚めた時には、そこは自分の部屋では無かった。
暗闇ではあったが周囲には大勢の人の気配、ざわめき。
そして首にはめられた金属製の首輪――ドラえもんの命を奪った物と同じ首輪。
あまりに不可解な出来事にのび太はとても混乱した。

唐突に現れた、リリア・ミスティーズと名乗る、艶やかな黒髪を持ち、
両目の瞳が血のように赤く、青色のドレスを着た女性が宣言した。

殺し合え、と。

「ふざけるなぁ…っ!」

どんっ、と雑草が生える地面を思い切り、握り拳で叩き、怒りを露わにするのび太。

どうして殺し合いなどしなくてはいけないのか。
ただ、平穏な日常を送っていただけだと言うのに。
なぜドラえもんが殺されなければならなかったのか。

のび太の心にはリリアに対する怒り、憎しみが湧き起こり、渦巻いていた。

いつの間にか傍に黒いデイパックが置かれているのにのび太は気付く。
チャックを開け、中から取り出したのはまず参加者名簿。
月明かりがあるので何とか文字の判読は可能だった。

「!!」

そしてのび太は自分の友人である「源しずか」「剛田武」「骨川スネ夫」の名前を発見した。
やはり自分の友人達もこの殺し合いに呼ばれていたのだ。
リリアに対する怒りがさらに増していく。
次にのび太が取り出したのは一丁の大型自動拳銃と、リロードマガジン5個。
射撃が得意なのび太にとっては当たりの支給品である。
ずっしりと両手から伝わってくる重みと質感がのび太にそれが玩具などではない事を伝えた。

これからどうするべきか、のび太は考える。
無論、殺し合いに乗る気などあるはずがない。
ドラえもんのためにも何としてもこの殺し合いを潰し、そして友人達と一緒に家に帰る。
のび太はそう固く心に誓った。

「これからどこへ行こう…」

周囲を見渡すと、ぽつぽつ街灯が灯った道路の向こう、海の方向に船らしき物が見えた。
どうやら浅瀬か何かに乗り上げてしまった客船のようだ。

「あそこへ行ってみようかな…」

のび太は右手に大型自動拳銃、H&K MARK23を装備し、
肩から自分のデイパックを提げながら座礁客船を目指して歩き始めた。

(ドラえもん…見ててね。僕、君がいなくても絶対に頑張るよ!)

まだ涙の跡が残るその目には、明らかな闘志の光が宿っていた。





のび太からそう離れていない場所でもう一人の殺し合いの参加者がゲームを開始していた。
桃色の髪をツインテールにまとめたセーラー服姿の少女、永倉萌である。

「全く殺し合いなんて……」

溜息をつきながら今自分が置かれている状況を振り返る。
いつものように家で眠りについたはずなのに、目覚めたらリリア・ミスティーズと名乗る女性に「殺し合え」と言われた。
暗闇でよく見えなかったが他にも大勢の人がこの殺し合いに参加させられているらしい。

首にはめられた首輪を手でなぞり感触を確かめる。
この首輪は無理に外そうとしたり、逃げようとしたりすれば爆発する死の首輪。
下手な事をすれば、自分にはよく見えなかったが、ステージで首輪を爆破された誰かのように死ぬ。
当然、まだ16歳の高校一年生の少女である萌は死にたくは無かった。
身体が震えているのは決して潮風による寒さだけではないだろう。

近くの茂みに隠れて支給品を確認する。
名簿には全参加者の名前が載っているが自分の知り合いは一人もいないようだった。
他には時計や懐中電灯、筆記用具、コンパス、水と食糧。そして木刀とバイク用の黒いハーフキャップヘルメット。
とりあえずヘルメットを被り、木刀を装備する。

「結構堅そうだなぁ、これで殴られたらきっと痛いよね…」

木刀を手で擦りながら呟く。
いつかこれで人を殴る時が来るのかと思うと、萌はぞっとした。
とにかく下手に動かない方が良いと判断し、萌は海とは反対方向に広がる森に身を隠す事にした。

「…行こっ」

デイパックを肩から提げ、桃髪ツインテールの少女は森へ歩き始めた。



【一日目深夜/E-2平野:幹線道路付近】

【野比のび太@ドラえもん】
[状態]:健康、リリア・ミスティーズに対する怒りと憎しみ、E-1座礁客船へ移動中
[装備]:H&K MARK23(12/12)
[持物]:基本支給品一式、H&K MARK23のリロードマガジン(12×5)
[思考]:
0:殺し合いを潰す。友人達と一緒に脱出する。
1:座礁客船へ行ってみる。
2:襲われたら戦う。
※永倉萌には気付いていません。

【永倉萌@オリキャラ】
[状態]:健康
[装備]:木刀、ハーフキャップヘルメット
[持物]:基本支給品一式
[思考]:
0:殺し合いはしたくない。死にたくない。
1:森の中で身を潜める…?
※野比のび太には気付いていません。




≪支給品紹介≫
【H&K MARK23】
1991年に開発された特殊部隊向けの大型自動拳銃。
堅牢な構造で命中精度も高いがかなり重い。
日本では「SOCOM」または「SOCOM PISTOL」という名前で広く知られている。
使用弾薬:.45ACP弾 装弾数:12発

【木刀】
木材で日本刀を模した物。日本の剣術で形稽古に使用するために作られ、
剣道、合気道においても素振りや形の稽古で使用される(実戦に用いられることもある)。
修学旅行生が何の考えも無く土産屋で買ってしまう物としても有名。

【ハーフキャップヘルメット】
バイクに乗る時に被るヘルメット。フルフェイスと異なり頭の部分だけ覆う。
それなりに頑丈に出来ている。


≪オリキャラ紹介≫
【名前】永倉萌(ながくら・もえ)
【年齢】16
【性別】女
【職業】高校生
【性格】至って温厚で真面目
【身体的特徴】桃髪ツインテール、巨乳
【服装】襟とスカートが青色のセーラー服、白いニーソ
【趣味】読書、絵描き
【特技】模写(静態、動態どちらも)
【経歴】平凡な家庭で育つ
【備考】日本風異世界国家出身。



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最終更新:2010年04月17日 17:16
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