後日談、というか今回のオチ。
殺し合いから一週間が経ち、僕の日常はとてもへいわて――――
「兄ちゃん起きろ!」
「うおおおおおおおおおお!!」
なんか殺し合いより殺されそうになったところで僕は目を覚ます。
うんまぁ馴れちゃったけどね。この僕をもってすれば、妹のやることなど一から十までしってるぜ。
「けど百は知らねぇだろ」
「――――へ?」
「χショットネス!!」
「だから横文字使ってんじゃねぇ!!」
ツッコミどこはそこでは無い気がするが。
だけどマジで師匠呼んで来い。僕がしかるべき対処してやるから。
…そして気づいた時には僕の身体は宙を舞っていた。
なんで柔道、空手の部類の競技の技で身体が浮いてんだよ。
僕の常識っておかしかったかな?
そんなこと考えていると。
「ぶはっ!!」
見事僕の身体は床に叩きつけられた。
受身なんてとれねぇよ。
何でこんなに暴力的なんだよ、寝起きの人にすることか。
「兄ちゃんさすがだぜ。今のは殺人法だたりするんだぜ」
「やっぱ師匠呼んで来い!!」
暴力的どころか殺人的だったよ!
ダメだ。これは決定的だ。
火憐ちゃんの口から殺人法って出てきたぞ。
この平和な世の中で詐欺がこんなに堂々と行われているなんて!!
とここで僕はある異変に気づく。
「――――――あれ?月火ちゃんは?」
「月火ちゃんは、『ダブル長谷川』をお仕置きしているよ。あそこ、浪白公園で」
「ふぅん。確か先週片方逮捕されたっていう、強姦魔のことか――――ってお仕置き?」
「うん、運が悪かったな。私たちを襲おうとするからこうなるんだぜ」
「――――物騒な世の中だね」
どいつもこいつも。
「そうだぜ。全く、この街にはまだ捕まえ切れない、小学生を襲う高校生がいるってのにな」
「あ、ああそうだな。ちゃんと僕に言えよ。僕がしかるべき対処取ってやるから」
「やっぱ兄ちゃんは炎より熱いぜ」
惚れるよ。と火憐ちゃん。
いやー。どこのどいつだろうなぁ、小学生を襲うやつなんて。
全くもって許せないぜ。
「ってあれ兄ちゃん。今日は確か出かけるんじゃなかったのか?」
「うん、出かけるよ。友達と遊びに行くんだ」
と。
ここで、昔の少女漫画だったら背景が雷で覆い尽くされるほど、驚いていた。
そこまで驚くか。
「えっ!?兄ちゃんに友達がいるの!?」
「まぁ、まぁ。落ち着くんだ火憐ちゃん。確かに羨ましいのは分かるが―――」
「いや、羨ましくはねぇけど」
妙に口調は冷めていた。
なんか悲しい。
「ふぅん。『あの』兄ちゃんがな」
「あのを強調するな」
「『こんな』兄ちゃんがな」
「言葉を変えても駄目だ!!」
「まぁいいんだけどな。楽しんできなよ」
「分かってるって」
そして僕は妹を追い出し、着替え、駅へと向かった。
親友と精一杯遊ぶために。
◇
八九寺を見つけた。
……僕はもうくだらない前置きは入れないよ。
入れたところでまた忍に邪魔されるのが落ちだ。
そもそも、思わせぶりすぎたんだよな。どうせ展開は分かっているんだから。
そういうのするのは餓鬼餓鬼。僕は違う、大人だ。
するべき仕事はさっさと終わらすタイプだ(夏休みの宿題は最終日まで全部残していたが)
――――というわけで、僕はこれ以上なき勢いで八九寺に向かい走り出した。
「はっちっくじーーーーーーーーーーーーーー!!もう会えないかと思ったぞ!!」
「きゃー!キャー!!ぎゃあああああああああああああああああ!!」
例の通り八九寺に腹を思いっきり蹴られた。
「いってぇ!!何しやがんだ!!」
やっぱりこの場合、痛いも、何しやがんだも。やっぱり僕な訳だけど。
つーか何度見てもこいつの身体はどうなってんだ?
人間じゃねぇ。髪が金髪になって逆立って…って超サイヤ人じゃん!!
「ってまて!その状態で攻撃されたら僕でも危ないって!僕だって僕!よく見ろ!」
この場合でも僕だから何だって話なんだけど。
やっぱり話し合いは大事だね。
八九寺も徐々に落ち着きを取り戻し、
「フゥウウウウウウウウウ!!―――――――ってあれ?」
髪も元通りに戻り(やっぱ人間じゃねぇ)、僕を見る。
「あらぁ、ラギさんじゃありませんか」
「ふふふ、八九寺ぃ!甘ぇな。そのラギはもうすでに神原とやってるぜ!」
と。
ここで何故か八九寺は僕を蔑む視線を僕にたっぷり浴びさせる。
――――あれ?何か間違えたかな?何だろ?
そして八九寺は溜息交じりで口を開いた。
「はぁ…、阿良々木さんも落ちぶれたものですね。
今のは、『あら、ラギ』さんで読点が余計だっていうツッコミでしょう」
「一度に二個も重ねてんじゃねぇ!!」
「けどこれは意外と簡単な部類でしたよ。きっと読者の皆様は『こいつ何言ってんだ?』って嘲笑っているに違いありません」
「何だとぉ!」
「ていうより阿良々木さんは何で普通に私と喋っているんですか。堕ちて逝ったんじゃないんですか」
「まず何でそれをお前が知ってるんだ」
「八九寺Pを舐めないでください。あなた方の物語は私が考えたも同然ですよ」
「まじかよっ!八九寺Pすげぇ!!」
何だよただのプロデュウサーじゃねぇのかよ。
監督どころか全部指揮してやがった。
「しかし、それにしては今回の物語は構成も文も下手糞だったよな」
「まぁ私が書いたってのは嘘ですので。今回の物語は◆xzYb/YHTdIっていう架空の書き手が書いた物語ですよ」
「誰だよっ!すぐに責任転嫁しやがって。なんだその記号だらけの人物は!?」
「なんだっていいじゃないですか。それより何で阿良々木さんは堕ちてないんですか」
「まるで僕が堕ちてた方が都合が好さそうな言い分だな」
「次あたりホントに私の貞操が危険ですので。エロパロと違い、この私は阿良々木さんには辛辣ですよ」
「――――まぁ、僕が吹き返ったのは、ヶ原さん関係だよ。僕がこんなんじゃやっぱいけないな。って」
「何かご都合主義ですね」
「仕方ないだろ、◆xzYb/YHTdIってのに文句は言えよ」
なんて、僕が笑って言えるのも、やっぱり人間強度が下がったからだろう。
これが春休み前だったら感じたことも違うだろう。
……人間万歳。人間じゃねぇけど。
そして僕は歩みを進める。
新たなる物語を切り開くために――――。
「っていやいやいや。私を無視して話を終わらせないでください。どっか行かれるのですか?」
「ん?あぁ、そうだよ。親友に会いに行くのさ」
「……どうしましょう。とうとう阿良々木さんが夢を見始めました」
「夢じゃねぇよっ!!」
「しかし『あの』阿良々木さんがねぇ」
「妹と同じ事言うな」
どんだけ僕に人望がねぇんだよ。
進化するんだよ。僕でも。
「はぁぁ。つくづく私の知ってる阿良々木さんはどこか遠く彼方へと行かれてしまいましたね」
「なんでそんな悲しい事言うの!?僕に友達できるのがそんなに不思議か!?僕だって一度折れた心を持ち直したんだぞ」
「どうでもいいですけどさっきから感嘆符使いすぎですよね。いつもの阿良々木さんはそこまで使いませんよ」
「そ、それは◆xzYb/YHTdIの技術不足だって。僕の所為じゃ無くない!?」
「人のせいにして……。私の知ってる阿良々木さんは我が身を犠牲にしても人を救ってくれるような方でしたよ」
「な、何だとっ!僕の評価、意外と高かった!!」
「それだというのに阿良々木さんときたら……。ご愁傷様です」
「くそおおおおおおおおおおおお!!」
◇
何て感じで僕の日常は再び動き出す。
今回のこの殺し合いだって意味のないことはなかった。
僕が僕であるべき指針を改めて見つめなおさしてくれた。
僕、阿良々木暦という者が、ぶれることのないように。
そして、僕は、成長をする。
このすばらしき日常が続くように。
【化物語:終了】
最終更新:2011年09月03日 14:39