開幕前日

第七章 開幕前日(かいまくぜんじつ)

 □

恐怖が何であるかはあたしは知らない

 ◇

私のあらすじ、…というか今の現状。
明日はとうとう殺し合い演習の時がやってくる。
もちろんあたしは緊張する。
明日何をやるのかは不明なのだが、その分、不安もあり、不謹慎だけど、どんなものかという期待もある。
っていうのも悲しきながら事実でもあるんだよね。
だからといってどうというわけでもない。
ただただ緊張して、身体がバクバクいっているだけである。
そりゃ、明日あたしが死ぬってことはないと思うけど、信じたいけど、きっと明日誰かは死ぬだろう。
思いたくもないけど、そう思ってしまう。
嫌な現実だけど、現実逃避をしたくはない。
さて、今あたしは、マツドシ、いわいる自室で、ゆったりしている。
既に今日はお風呂も済ませ(ちなみに、ここは自室の風呂と、露天風呂で温泉があって今日は温泉に行った)、
自慢の寝巻に着替えて、ベッドの上でごろごろしている。
あたしのルームメイトである、碧南優香ちゃんはというと……。
淡い青色の髪にそこまで似合わないグレーのスウェットに、大学ノート(いつも思うが何故大学ノートなのだろう)を広げて、ベットにうつ伏せに寝転がる。
その巨大な胸は低反発ベッドにより押しつぶされ、はみ出していた。――――えぇそうよ、羨ましいわよ!!それでいて「邪魔」なんて言い出すんだから……。
話が逸れたね。
さてさて、そんなところからあたしの物語は語られる――――はず。
そして今の話題はというと―――――

「何で優香ちゃんは前日にそんな事言ってられるのよ……」
「いやいや、あの子ムチャクチャカッコよかったんだよ。春日正樹くん」
「いや、誰よ……」

あれ?
今日は、というか明日はもうあれだよね?月末の殺し合い演習。
あたしが間違ってたかな?不安になってくんですけど。
何で優香ちゃんはこんな冷静なのかしら。
あたしが合ってるはずよね。合ってなきゃおかしいんだけど。
うん、やっぱあたしが合ってるわ。――――何で自分の事でこんな疑心暗鬼にならなきゃいけないのかな?

「――――何で優香ちゃんはそんな溌剌としてんのよ…。あたしは明日の事気になり過ぎて仕方ないんだけど」
「別に―。私はそんなことで緊張なんてする性質じゃねぇし、第一明日は悩んでてもやってくんだぜ。楽しまねぇと損だぜ」
「いやまぁね。そうなんだけどね」

まさかここでいいセリフが返ってくるなんて思ってもみなかったわ。
けど、確かにそうなのかな?
悩んでいても仕方ないのかしら。
――――確かにその通りかもね。

「だから私は春日くんをものにするためにこんなに一生懸命計画をたててるんだからさ」

どうしよう。前言撤回したくなってきなぁ。
何で?
せっかくのいいセリフを何で潰したの?
今のセリフがなければ、中々いい感じだったのに。
っていうか春日君ってマジで誰なのよ。凄く気になってきたんだけど。

「いやいや、そんな目で見ないでよ。春日君は入学してまだ
2週間近くなのにファンクラブができるほどの逸材なのよ。ハーレムの一員になってもらわないでどうするのよ!!」
「――――いや、そんなに威張られても……。というかどっちかっていうと優香ちゃんが混ぜてもらう方じゃないの?」

ファンクラブって……。漫画か。
なんて突っ込んでもしかたないんだけどね。
……けど何か面白そうね。こんなにも一人の男に固執する優香ちゃんも珍しいし。
いい人なのかしら……。会ってみるのもまた一興かもね。

「おやおや、舞ちゃんどうなさいましたか?まーさか、春日くんに気があるなんて少女漫画みたいな事言わないよな」
「い、言いません」

びっくりしたぁ。
微妙にイントネーション違ったけど、何か言い当てられたわ。
すごっ!

「まぁ、別に気があってもいいんだけどな、そしたら舞ちゃんが私のハーレムの一員になるんだから」
「何か言ったかしら」
「いや何も」

毎回思うんだけどなんでこんなにもハーレムに拘るのかしら。
聞いたところで話逸らされていつの間にか、優香ちゃんペースに乗っ取られるし。
――――まぁ、話したくないんだったら無理に言わせる必要もないんだけど。
さて、今はもう0時を回っている。
この寮には消灯時間というものは決まって無い。
だから無理して早寝する必要もないし、遅寝する必要もない。
しかし、さすがに眠たい。

「もう寝たいんだけど優香ちゃん」
「いや、まだ春日君の話は終わってないよ。せっかく舞ちゃんという高価なおまけがついてきそうなんだからさ」
「聞きたくなくなったわ」

本人の前で言わないでほしいんだけど。
どう考えてもあたしに言う話じゃないし。

「待ってくれよ、舞ちゃん。この子は私のハーレムに必要不可欠なんだって!」
「知りません」

まだ見ぬ春日くん、ご愁傷様です。としか言えない……。
ていうか本当に眠たいんだけど。
もういいや、寝よう。

「お休みなさい、優香ちゃん」
「へ?あぁ寝るの?んにゃおやすみ」

あたしは、ここですぐに意識を閉じた。

 ◇

あたしは夢を見た。
とても怖い夢だった。
血。
肉。
眼。
尿。
涙。
声。
叫。
腐。
疲。
死。
もみくちゃに。
ぐちゃぐちゃに。
くちゃくちゃに。
だらだらと。
きりきりと。
ふらふらと。
しみじみと。
ふかぶかと。
わくわくと。
くるくると。
ざくざくと。
ばんばんと。
だんだんと。
さくさくと。
するすると。
もりもりと。
ばきばきと。
ぼきぼきと。
めきめきと。
どんな擬音で表そうが、表しつくせない、
壮大に、醜悪で、壮絶に、終焉だった。
そこであたしは理解する。
あぁ、明日の惨劇をみているんだなぁ。と。
正夢にならないことを祈ってみる……けどどうせ無駄なんだろうなとも思う。
あたしが夢を見るときは大概正夢になる。――――なんていうどうでもいい性質なんかじゃなく、
殺し合いが、始まるのは、変わりないからだ。
さて、ここで一つあたしの物語を語ろうと思う。
そもそもあたしがこの学園にやってきたのは、とある先輩の影響である。
名前は神楽坂 神菜 (かぐらざか かな)先輩の影響であった。
彼女は、いい人だった。
だった、ってことは今は――――違う。
彼女はこの異常なる学園の中変わってしまった。洗脳された、とでも言える。
あたしは2年ぶりの再会を楽しみにしていたっけ。けど、期待した再開なんて程遠いものだった。
詳しい描写はしない。
したくないな。
ただ一つ言えることは、ここで常識を保てない人間だって、数多くいること。
常識が異識になり、最悪が、最善となっちゃう。
逃げの一手が逃げにならない。
攻めの一手が攻めにならない。
この学園においては。
だからあたしは混乱する、困惑する、混沌する、困却する。
そんなあたしだから、あの優香ちゃんの性格に甘えているんだろう。
あの包容力のある性格に。―――もちろんハーレムの一員になるわけもないけど。
そのあたしは明日、何かをやる。何かを。
しかし、あたしは挫けない。

何があってもだ。

深淵の中。
あたしはそういう夢をみたらしい。
そして、演習当日を迎える。

それはとても晴れた日であった。


【第七章 終了】


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最終更新:2011年06月12日 16:48
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