いばらのみち

22話 いばらのみち

とにかくしつこい。
しつこかった。自分達を追跡する、虎狼獣人の青年は。
明らかに正気を失っており、話が通じる様子も無く、とにかくただ、真柄守隆と尼崎晴可は、
虎狼青年小早川好信から逃げるしか無かった。

いつしか周囲の風景は農耕地帯から、住宅地へと変わっていた。

「もう、足が…」
「頑張れ!」

長時間走り続けポニーテール少女、晴可は足に来ていた。
銀狐獣人青年、守隆が励ますが長くは持ちそうにない事は明らかである。

「はははっ…ははっ…逃がさない…ぞ!」

好信は涎を垂らし、笑みを浮かべながら十三年式村田銃を発砲する。

ドォン!

「うぐぁ!」
「! ま、真柄さん、真柄さん!」

銃弾が守隆の足に命中し、血と肉片が飛び散った。

「…痛、え…!」
「真柄さんしっかり! あ…ひ、酷い」
「糞が…あ…」

牙をガチガチと鳴らし身体を震わせ、脂汗をかく守隆。
今まで感じた事の無い激痛に耐えていた。

「アッハァ! イイイイイイイイイ!!」

奇声を発しながら好信が再び十三年式村田銃を構えた。
守隆と晴可は死を覚悟した。守隆に至っては手にした拳銃を撃つ事すら失念してしまっていた。

ダダダダダダダダッ!!

銃声が響く。しかし、それは好信の持つ十三年式村田銃の物では無い。
その銃声が鳴り響くのと同時に好信は赤い液体を噴き出しながら奇妙なダンスを踊った。
そして十三年式村田銃を地面に落としその場に崩れ落ち、二度と立ち上がらなかった。
何が起きたか一瞬理解出来ず目を白黒させる守隆と晴可。
好信のすぐ脇に建つ、交番と思しき建物の中から、茶色と灰色の毛皮を持った雄竜が出て来る。
その手には短機関銃らしき物が握られていた。

守隆と晴可は竜の男が自分達を助けてくれたのだと思った。

「…助けてくれた、のか?」
「あ、ありがとう、ございます」

礼を言う二人に、竜は笑みを浮かべ、

「勘違いしちゃ駄目だよ」


ダダダダダダダダッ!!


再び短機関銃Vz 25の銃声が鳴り響いた。

「……移動するか」

殺害した三人から装備を回収しながら竜、マクシミリアンは呟く。


【小早川好信:死亡】
【真柄守隆:死亡】
【尼崎晴可:死亡】
【残り18人】


【朝/D-6交番前道路】
【マクシミリアン】
[状態]健康
[装備]CZE Vz25(16/32)
[道具]基本支給品一式、CZE Vz25予備マガジン(3)
[思考]
1:殺し合いに乗る。特に優勝したい訳では無いが。
2:殺害した三人から装備を回収し移動する。
[備考]
※特に無し。


新しい苦難を越える支度にかかる 目次順 灰に咲く花のように

もっとリアル鬼ごっこ 真柄守隆 GAME OVER
もっとリアル鬼ごっこ 尼崎晴可 GAME OVER
もっとリアル鬼ごっこ 小早川好信 GAME OVER
小曲園 マクシミリアン 危険好きの誰かのふりをする小心者共

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最終更新:2011年05月28日 22:25
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