オープニング(24バトルロワイアル)


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吐きそうな不快感を感じながら、こなたがうっすらと目を開いたその時、確かな存在感で周りを威圧する脊柱が目に飛び込んできた。
こなたの頭に疑問符が浮かぶ。今までの自分の人生と、今目の前に確かに存在する脊柱とを関連づけて考えることが出来ない。
右手で鈍痛と混乱が走る頭を押さえながら周りの様子を伺う。何か分かればいいがと期待していたが、残念なことに益々頭の中がこんがらがってくる。

あれえ……私はこんなファンタジックなお城に住んでいた覚えはないんだけどなあ。
確か、私は修学旅行で皆と一緒にバスに乗って……それから……

暢気に周りを眺めながら頬をポリポリとかく。こなたが寝ころんでいた部屋はまるで中世ヨーロッパ、
もしくはRPGの世界を彷彿とさせる西洋風な広い部屋だった。部屋の隅には重々しい扉、そしてこなたの正面の壁には大きなモニターが設置されていた。
部屋にはところどころ建築法に引っかかりそうなくらいに露骨な安っぽさを主張する部分が多々ある。
こなたはそれが嫌に気になった。どうせなら完璧にファンタジックな部屋を作ればいいのに。
異世界風なのに、消さなければならない「現実」の香りが残っている。
まるで現代風のデザインだった部屋に慌てて異世界の香りを取り繕ったみたいな……不快感を感じる。

こなたは視線を斜め下に転じる。床にはついさっきまでのこなたと同じように、沢山の人間が横になり眠っていた。
見知った顔も何人かいる。クラスメイトだ。私、夢でも見てんのかな……。シュールな光景を目の当たりにしてそう呟いた。
しばらく眺めているとこなたと同じように眠りから覚める者が多くでてきた。話しかけたい衝動に駆られたが、
なんとなく慎重に行動した方がいいような気がして、こなたは黙り込んだまま傍観していた。

こなたの丁度正面の壁に設置されたモニター画面が突然発光し、砂嵐の耳障りな音を放ち始めた。
起きている者は勿論、今の今まで寝ていた者もその砂嵐で目が覚め、モニター画面に釘付けになった。
やがて映像が鮮明になっていき、一人の女が映し出された。

「ケツホルデス!」
「ケツ掘るですだと!?」
最初に叫んだ男は憎たらしそうに「ケツホツデス」と言ったが、
「ケツホルデス」と聞いてあらぬ妄想をした一部のガチムチ達は、どこか嬉しそうにざわざわと騒いでいる。
「いったい誰のケツを……」
「待って。ケツホルデスというのは一部の男達が期待しているようなことではないわ。ケツホルデスというのは私の名前よ」
モニターに映った女、ケツホルデスがやんわりと否定する。騒いでいた男達は一気に萎えてしまったのか、すぐにしんと静まってしまった。
「そこまで露骨に萎えなくてもいいじゃない」

「……まあいいわ。私の名はプリンセス*ケツホルデス。今から貴方達に参加してもらうゲームの主催者よ」
「ゲームってなんだお?」
こなたのクラスメイトのやる夫が面倒くさそうに口を挟む。危機感など何も感じていないようだ。
「ゲームの名はバトルロワイアルよ。今から貴方達には最後の一人になるまで殺し合って貰うわ。
 優勝者、つまり最後まで生き延びた参加者だけが、生きて日常に戻ることが出来るの。
 加えて、優勝者には私が何でも一つだけ願い事を叶えてあげる」

ざわざわとあちらこちらでざわめきが聞こえてくる。ケツホルデスが説明したゲームのあまりの突拍子のなさにこなた達は困惑した。
冗談だと決めつけて、ケツホルデスを笑っている者もいる。

「どうせドッキリかなんかだろ。常識的に考えて」
「願い事!? 蟹になりたい!」
「テレビ番組の企画だと思うの!これは乗るしかないの!」
「冗談にしては手が懲りすぎてるような気がしないでもないですぅ」
「ああ!殺し合いとか、もう最悪……!」

様々な声が辺りから聞こえてくる。
──もし本当ならまるでアニメみたいな展開だなぁ~。まあ、私もドッキリだとは思うけど。
そう思いつつも、どこか不安なのか、こなたの胸の動悸は次第に加速していく。

「Fack you! 消えろメス豚野郎」
突然、群衆の中から一人の大男が勃ち上がり、ケツホルデスに向かって啖呵を切った。部屋中がしんと静まり返る。
異様な風体をした男だった。皮のブーツにトゲ付きの首輪、胸にはこれまたトゲ付のサスペンダーを身につけている。
服は纏っておらずパンツ一丁。見るからに危険な男だ。
「ふふふ、私に向かって話しかける時は口を慎んだ方がいいわよ。私は指一本で貴方達全員を殺せるのよ?」
「どういう意味だコラ」

「くそっ!やられた!!」
その時群衆のある一角で、驚愕の声が挙がった。騒ぎの中心で月が頭を抱えている。
彼らは自分の首に巻かれている首輪を触り、これは何なんだ、と混乱していた。
こなたも自分の首に手をやる。ひやりとした金属の手触りを感じる。こなたも例外ではなかった。
どうして今まで気づかなかったんだろう。

「貴方は普段から首輪をつけているから気づかないのも無理はないわね」
ケツホルデスは啖呵を切った男に話しかける。
「貴方の首輪だけは、貴方のファッションセンスに敬意を表して、首輪のデザインを貴方が普段身につけている首輪そのままにしてあげたわ」
「全員に首輪を巻き付けてナニするつもりだ」
男が中指を突き上げ、モニターに映るケツホルデスを罵倒した。

「ナニするつもりって、さっきも言ったように殺し合いをさせるつもりなのよ、私は。そのために色々考えたわ。
 どうすれば貴方達を殺し合いをせざるを得ない状況に追い込めるか、その答えが『爆弾入りの首輪』よ」

────爆弾……!?
首輪を色々といじくっていた手をこなたはさっと引っ込め得た。周りの群衆も、爆弾と聞いて戦慄しているようだ。

「ゲームにはルールが付き物よ。バトロワは基本的に何でもやりたい放題のゲームだけど、それでもやってはいけない行為というものはやはりあるわ。
 ルールを破った参加者には死というきつ~いペナルティを払って貰うの。首輪を爆発させてね」
モニターの画面が切り替わる。首輪が爆発する条件という題目で、いくつかの文章が箇条書きで映し出されている。

首輪が爆発する条件
  • 六時間ごとに行う定時放送で発表される禁止エリアに進入した場合、首輪を爆破する。
  • ゲーム開始から24時間が経過した時点で、誰一人殺害していない参加者は、戦意なしとみなし首輪を爆破する。
  • 海から逃亡を図ろうとした場合、首輪を爆破する。
  • 上記の他、ゲームを進行するにあたって不都合な行動を参加者がとる場合、その首輪を爆破する。

「こんなところよ。これらは反則行為にあたるから、死にたくなければルールをちゃんと守ってね。
 あと、六時間ごとの定時放送では禁止エリアだけじゃなくて、放送までの六時間で死亡した参加者の名前も発表するから、しっかり聞いといた方がいいわよ」

もはや誰一人口を開く者はいなかった。ドッキリではない。テレビの企画でもなければ冗談でもない。
ケツホルデスは綿密な準備を経て、本気でこなた達に殺し合いをさせようとしている。
こなたは恐る恐る首輪に触れる。本当にこのなんの変哲もない鉄の輪の中に、爆弾が詰め込まれているのだろうか。
もし、本当にこれが爆弾ならば……。自分が実際に人を殺すなんて考えたこともない。だが、このゲームでは殺さなければ殺される。
運良く生き延びたとしても、誰かを殺さなければ24時間後にルールに引っかかって確実に殺されてしまう最悪な袋小路。

「特に24時間ルールについてはよ~く肝に免じておくことね。誰も殺したくないなんて甘えた我儘、許さないんだから」

ケツホルデスがモニターに現れた時とは打って変わって、部屋は沈黙に包まれていた。
バトルロワイアルというゲームについて、ある者は恐れ慄き、ある者は冷静に生き延びる方法も模索し、
ある者はいまだに現実から逃避し、これは冗談だと決めつけていた。

「殺し合いをするには武器が必要よね。安心して。用意してあるから。
 貴方達の足もとにデイパックがあるでしょ? ちゃんと一人に一つずつあるから、まずは自分のものを拾いなさい」
こなたは足もとにあるデイパックを急いで手に取る。ずしりとした重さが手に伝わってくる。恐らくこの中に武器が入っているのだろう。
「その中には貴方達が殺し合いをする舞台の地図、2食分の食料、飲料水1リットル入りのペットボトル2本、筆記用具、参加者名簿、腕時計、
 ランタン……これらは共通支給品と呼ぶわ。そしてランダム支給品というものが1個か2個入っているわ。
 ランダム支給品というのはその名の通りランダム、何が入っているか分からないの。一人一人違うものが入っているはずよ。
 多少の当たり外れはあるだろうけど、大方は殺すための武器とか、役に立つものが入っているはずだから安心してね」

こなたはケツホルデスの説明を聞きながら慌てた手つきでデイパックの中を弄った。共通支給品なるものは全部入っている。
ランダム支給品は大型のナイフだった。ほかの参加者たちに見られないようにこっそりとナイフを観察する。
冗談みたいに大きく鋭い刃に、こなたは寒気を覚えた。人間など、これで一突きすれば簡単に殺せてしまうだろう。

「さて、説明はこんなところよ。これから貴方達を一旦眠らせて、私の部下にそれぞれ一人一人殺し合いの舞台の適当な位置に運ばせるわ。
 深夜零時にゲームスタートよ。この後部屋に充満させる睡眠ガスも、だいたい深夜零時頃に効き目がなくなる計算よ。
 あ、それと……地図でいう4-Eにホテル跡と明記されている場所があるでしょう?その場所はゲーム開始同時に禁止エリアになるから、
 近づかないでね。さあ、それじゃあ何か質問あるかしら?答えられる範囲で教えてあげる」
質問と聞いて、すぐに手を挙げた者がいる。それはこなたのよく知る人物、やる夫だった。

「どうしてやる夫達が殺し合いなんかしないといけないんだお!」
やる夫は見るからに必死な表情で、ケツホルデスに訴えかけた。何故殺し合う必要があるのか。
それはこの場にいる全員が知りたい事だった。こなたは遠くから、心配そうにやる夫を見つめた。
「したくないのならしなくても構わないのよ?もっとも、誰も殺さないのなら24時間後に首輪を爆発してしまうのだけれど……」
「そういう事を言ってるんじゃないお!お前の目的は何なんだお!殺し合いを開いた理由は何だお!?」
「さあね。それは勝手に想像しておきなさい」
やる夫は憎たらしそうにケツホルデスを睨んだ。何よりも知りたい質問に対して、ケツホルデスは答えなかった。
やる夫の質問は、ケツホルデスの答えられる範囲を逸脱していたのだろうか。ケツホルデスの目的は……?

「もう少し現実を見なさい。貴方達にとって重要なのは、私が殺し合いを開く動機なんかじゃないでしょ?
 動機なんてどうあれ、貴方達の首には爆弾付きの首輪が巻かれ、誰かを殺さなければ死んでしまう状況にあるの。
 私の意図なんて探るよりも、これからどう生き残るかについて考えるのが大切なんじゃないかしら?」
「やる夫は殺し合いなんか乗らないお……こんな最悪なゲーム、乗る奴なんて誰もいないお!」
「ふふふ、面白い子ね。貴方のようなお人好しがいると、このゲームも盛り上がるような気がしてくるわ」
「……それはどういう意味だお!」
ケツホルデスの挑発に、やる夫は食ってかかる。

「やる夫や、やる夫の友達はそう簡単に人を殺すような奴じゃないお!
 むしろ皆で協力してこんな馬鹿げたゲームをぶっ壊してやるお!」
「あ、兄貴ぃ、そろそろやめといた方がいいって……死亡フラグ立てんなお」

「ナイスでーす!バトルロワイアルだらしねえ!」
やる夫の宣言に勇気を刺激されたのか、部屋に活気が蘇ってきた。部屋のあちらこちらからケツホルデスを罵倒する声が聞こえてくる。
24時間以内に、誰も殺さずに、ゲームを転覆させる……そんなことが本当に可能なのだろうか。
勿論、こなたとて殺し合いなどしたくはないので、転覆させられる、と信じたいのだが……
「ふふっ、これは少々絶望感が足りなかったようね。出来ればやりたくなかったんだけど、仕方がないわね」
ケツホルデスが何か言ったようだが、部屋の喧騒がますます強まり、こなたの耳にケツホルデスの言葉は届かなかった。

「兄貴、もうやめてよ!あの人、怒って兄貴の首輪爆発させるかもしれないお!」
やる夫の妹のやる美が、必死にやる夫に呼び掛けている。その時だ。



            -‐ '´ ̄ ̄`ヽ、
             / /" `ヽ ヽ  \
         //, '/ u   ヽハ  、 ヽ
         〃 {_{ \ 、/,リ| l │ i|
         レ!小l( ●) (●)从 |、i|
          レ⊂⊃ 、_,、_, ⊂⊃ |ノ       『ピっ…………ピっ………』
             ヽu  ゝ._)   j / 
            ヘ,、 __, イ          え……何? 首輪が……?
         r ヽヽ::::::|ヽ`ー'´,1ー:::::ヽ、
         {  V:::::::::∨yヽ/::::::::::/,1

ゆっくりとしたリズムで、やる美の首輪が電子音を刻み始めた。空気が一気に変わった。
さっきまでの熱狂的な叫びは一瞬で掻き消え、やる美の首輪の電子音だけが静寂の中響いている。
やる美の傍にいた者達は、それぞれ喚きながらやる美から離れていく。唯一人やる夫だけは、驚いた表情で困惑しているやる美を凝視していた。
ここにいる人間全員が、やる美がこれからどうなってしまうのか、ある程度連想することができた。

────やる美!
こなたも例外ではなく、やる美の末路を想像してしまい、声にならない悲鳴を上げた。


       ____
     /ノ   ヽ、_\
   /( ○)}liil{(○)\   やる美……どういう事だお
  /    (__人__)   \
  |   ヽ |!!il|!|!l| /   |
  \    |ェェェェ|     /

「死亡フラグなんてメタな用語を無粋にも使う輩はここらで退場願うわ。他の参加者達に首輪の威力を理解させる、見せしめも兼ねてね。
 おバカなやる夫も一々騒ぐ連中も、ここまでしてあげればさすがに現実を直視出来るかしら?」
ケツホルデスの言葉を皮切りに、部屋が再び喧騒に包まれた。悲鳴や嘆き、喚いている者の表情はみな、絶望に包まれている。
先ほどのようなケツホルデスを罵倒する声は一言も聞こえてこない。

「なんとなく理解していると思うけど、その首輪の電子音のリズムは少しずつ加速していくのよね。
 そして限界まで早まった時、ボン!……よ。そうね、あと30秒といったところかしら」
「やる美……ど、どういう事なんだお」
やる夫とやる美は互いに驚愕しながら、見つめ合っている。電子音が少しずつ加速していく。
こなたはやる夫ともやる美とも知り合いだったが、何も言葉を発することができなかった。
これから本当に殺し合いをしなければならないんだという事を本当の意味で理解してしまい、
まもなく死んでしまうやる美に何か言おうとしても、恐怖で舌が上手く回らなかった。

「や、やる夫離れるですぅ……!」
やる美達から離れた群衆の中から一人の女の子が飛び出して、やる夫を強引にやる美のところから引き離す。
彼女は翆星石。本人は決して認めようとはしないが、彼女は多分少なからずやる夫に好意を抱いている、とこなたは睨んでいる。
「やる美……」
呟くやる夫。離れていく自分の兄を見て、やる美は最後に……

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          |..! | : : : | ,rfj ̄ヾ、       |ム」_:リ! : : ,' .|
          | ト.| : : : K {| ::::::リ       ,イ}:::::::ハ,! : :/ : ,'   う、嘘だお
              V ハ: : : |  ゛ー ''        K.__,/ } : :/ : /    こんなの冗談に決まってr
             V .| : : ト . こ つ     ,.   `"" //} /
              V.ハ : :|:::\   __     こ つ/イ : /
            リハハヽ-t`/  \   _,. イ//l /
                 / /~\ ヽ‐、  /  /
          _____,.ィ| イ ,.へ `< ヽr‐ァ―=‐、
          ,/´ \:.:.ヽ;;;;;;;;ハ  イ ,、〆``'ー /;;/.:/   ヘ
.         /     ヘ:.:|;i;;;;;;;ハ   ∨ ̄   /;;/.:/ /  ハ
.       i      ∧:!;!;;;;;;|:}   |!     /;;;;!://     i
       .|!     ∧l;|;;;;;;|,'   |!    〈 ;;;レ        |
   .    |!      ヽ|;; ;/     ハ     ∨!        |

爆発音と共に、やる美の首が宙を舞う。誰も言葉を発せないままいると、部屋の壁から睡眠ガスが噴出された。
こなたはそのガスを吸い込み、ゆっくりと意識を失っていく。
床を転がるやる美の顔面と噴出されるガスは、悪夢のような殺戮ゲームの始まりを意味していた。

【やる美 死亡】

【残り42人】

【24バトルロワイアル 開幕】

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GAME START プリンセス*ケツホルデス Next:
GAME START 泉こなた Next:第二話
GAME START TDNコスギ Next:
GAME START 夜神月 Next:
GAME START やる夫 Next:
GAME START やる美 GAME OVER
GAME START 翠星石 Next:
ツールボックス

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