The style of Otaku


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昔むかし、人間がまだ妖怪や幽霊を信じていた時代。
あるところに化け物のつがいがおりました。
その二匹は、夫婦のようでもあり、父と娘のようでもあったと言えるでしょう。まぁ、少なくとも、表面上は。
ながいながい間、彼と彼女は二匹きりで、人間を糧にし、化け物をむさぼり、略奪することを唯一の『喜び』として生きていました。
幾千の人間を食らい、幾百の魑魅魍魎を狩りました。

彼女は、『血吸い』だということに誇りを持っていましたが、
彼の心は、いつしかそれに倦みました。

ある時、彼は彼女にこう言います。

「僕は人間になりたい。人里に降りて、人間として生きたい」

その言葉に、彼女は激怒しましたが、彼の決心は固く、彼女の元を離れました。

吸血鬼には、人らしい感情(こころ)がありません。
吸血鬼に血を吸われて吸血鬼になった元人間や半吸血鬼は、ちゃんと感情を持っています。
でも、生れつきの吸血鬼はとても残虐な生き物で、戦うことや殺すことを喜びます。
そのことに、彼女は誇りを持ち、化け物とはかくあるべきだと人間を見下していましたが
彼は人間をうらやみ、尊敬し、感情(こころ)が欲しいと思っていたのです。

彼はその時から分かっていたのかもしれません。
彼女は『同族』であっても、『家族』になることはできないと。

そして、それから数百年の月日が流れました。

しかし、彼女はまだ彼を取り戻すことを、諦めていなかったのです。



  +  +  +

「魔法の刻印かー。ロープレにありがちだけど、これは現実なんだよね……」
泉こなたは、溜息をつきながら支給されたディパックの中身をごそごそ漁っていた。
首が爆発した少女とこなたはけっこう近い位置にいたが、生々しい肉の焦げる匂いと、すさまじい鉄の匂いがした。きっとあれがいわゆる『血の匂い』というやつなのだ。
「私はネットでグロ画像に飛んじゃったり、18禁ゲームしてるからちょっとは耐性あるけど、きっと純真無垢なゆーちゃんにはショックだろうなぁ……おりょ?」
指先に冷たい手応えを感じて、触ったものを握って引き抜く。
「うわぁ……」
出て来たのは、黒光りする銃身だった。
グリップの部分に紐付きで説明書がぶらさがっている。

【違法改造エアガン】
カノン・ヒルベルトの改造により、150気圧のエアで4グラムの鉛弾を秒速150mで発射することが可能。
実銃には劣るが、当たり所が悪ければ致命傷になる。

「カノン・ヒルベルトって誰さ……?」
実銃ではない、という部分に何やら安心するものを感じるけれど、使いどころが難しい武器には違いない。何せ、泉こなたは銃を撃ったことなどないのだから。
それでも、身を守る手段に少しの頼もしさを覚え、こなたはバイ〇ハザードなどでの見よう見まねでエアガンを構えてみせた。
真夜中の住宅街。
その四つ辻で、見えない闇の中に銃口を向けるセーラー服の少女。
「雰囲気だけはホラゲみたいだね。ここで蝙蝠の群れとかがばさばさばさっーて飛んできて、中ボス出現フラグが立ってさ……」
そんなことを想像していると、

ぱたぱたぱた

その銃身の先に、小さな生き物が飛んできてとまった。
手のひらサイズの黒いそいつは、エアガンの上で器用にバランスを取る。
「わぁ、本当に蝙蝠だ。初めて見たよー」
蝙蝠は赤い瞳で恐れる気もなくこなたを見上げ、
きぃ、と鳴いた。



  +   +   +

手の甲に、赤く光る瞳がぎょろりとうごめいた。
指は羽根に。
手のひらは黒い体毛に。
たちまちの内に、右手は『蝙蝠』に変化し、腕から切り離されて一匹の生き物になった。
『蝙蝠』は夜の中をまっすぐ飛びたつ。
小さな翼をはためかせて、ぐんぐんと飛び去る。
ぐんぐんと高度を上げながら漆黒の空へと――

べしゃり

透明な壁にぶつかったように、『蝙蝠』が飛行を阻まれる。落下した。
「どうやら、そう遠くへは行けないようになってるみたいだ……」
すごすごと帰ってきた『蝙蝠』を右手に合体させ、亮史は内心で舌打ちをする。
「部分変換」で創り出した生き物の、動ける範囲が限られている。
「この調子だと、先に捜索に飛ばした『もう一羽』の方も、近くでへばってるかな」
四つ辻を曲がってみえなくなった『蝙蝠』を少し気遣いながら、亮史は目算で蝙蝠の飛距離を計る。
――おそらく、半径五十メートルが限度。それ以上は、亮史本体から離して動かせない。
千年余りの人生で、数多の化け物と戦って来た月島亮史にも、未知の枷だった。
『聖水』や『祝福を受けた道具』など、吸血鬼の力を奪う道具にも心当たりはあるし、能力を自在に使えない苦境で戦ったことも一度や二度ではない。
しかし、吸血鬼の『特定の能力にだけ』制限をする方法は、亮史の知る限り存在しなかった。
どういう仕掛けでこのような『制限』を施しているのかは分からない。
しかし、仕掛けを施した意図は理解できる。
知り合いとの合流を防ぐ為、だろう。
「最後の一人になるまで」というルールを課した以上、同盟を組む参加者が続出するのは好ましくないはずだ。
特に、知り合い同士を参加させるのなら合流を防ぐ措置を取ってもおかしくなないだろう。
現に月島亮史も、ここに呼ばれた三人の少女を捜索する為に、蝙蝠を飛ばそうとしたのだから。

その内、二人は大事な『家族』であり、一人は愛憎半ばする『同族』だ。

『家族』の存在がなければ、亮史の頭には『優勝する』という選択もあっただろう。
千年もの間、数多くの人間や化け物を、殺害し、搾取し、血を吸って生き延びてきたのだ。
どころか、先日の『組織』との戦いでも――苦い想いはしたが――数十人の吸血鬼部隊を単独で壊滅させた。
いまさら、たかだか数十人程度を殺すことに呵責を感じたりはしない。
しかし、レレナと舞もこの会場にいるとなれば、話は別だ。

――月島さん……あたしの、『家族』になってくれる?

幽霊少女、舞は亮史にそう言ってくれた。

――私も……私も、月島さんとは、別れたくありませんから。

半吸血鬼の少女、レレナは亮史にそう言ってくれた。

“人間”として里に降りてから何百年もたったが、“家庭”というものを実感できたのは、彼女たちといた間だけだ。
亮史に初めて“欲望”ではない“ぬくもり”をくれた二人。
彼女たちは、何としても守らねばならない。
数日前の、『組織』との戦いを亮史は思い出していた。
亮史が戦いにかまけている間にレレナが拉致されたと知った時、亮史の顔はゆがみ、胸は激しくきしんだ。自分で、自分の心臓を喰い破ってしまいたいと思ったほどに。
生まれて初めてのことだから分からないが、あれが“後悔”という感情なのかもしれない。
同じことを決して繰り返してはならない。
何よりも優先すべきは、レレナと舞の保護。
『蝙蝠』による捜索が不可能である以上、足を頼りに探すしかない。
それだけでなく、日が昇っている間は亮史も動きが取れないから、二人を見つけた後の『拠点』の確保も必要だろう――


きぃ
「案内ありがとう。こっちでいいんだね」
鳴き声と、少女の声が角を曲がって現れた。


鳴き声の主は、ぱたぱたと亮史の元へ飛んで来て、亮史の左手と同化した。
声の主は、それを見て目を丸くしている。

『蝙蝠』が、女の子を連れて来た。

青くて長い髪の、小学生ぐらいの少女だった。
『力』が感じられないから一般人なのだろう。
だとすると今の『変化』に動転しているに違いなく、亮史は対応に焦った。
舞に初めて『変化』を見せた時、すごくおっかなびっくりな反応をされたことを思い出す。
しかし少女は、予想に反して目を『きゅぴーん!』と輝かせていた。
そして亮史の傍にとことこ歩み寄り、言ったのだ。

「お兄さん……もしかして、クリーチャー?」
「はぁ……?」
無礼な問いかけだが、あながちハズレではなかった。



 +  +  +

「案内してくれるみたいに飛んでいくからね。これはクリーチャーフラグかとも思ったけど、小さくて可愛い感じだったから、むしろお助けキャラだろうと思って
……まあ、昨今のアニメだとメタ要素強いから、マスコットっぽいからとって中身もそうだとは限らないんだけど」
少女の話はよく分からない部分もあったが、つまり蝙蝠が彼女に友好的だった為に、蝙蝠の後を追って来たらしい。
どう考えても怪しいだろう蝙蝠の後を追うとは、ずいぶんな度胸の持ち主だ。
泉こなたと名乗った。
友達と妹分もこの会場に呼ばれているので、一緒に探してほしいと頼まれた。

亮史は考える。
泉こなたと行動を共にするメリットはなかった。
亮史の目的はレレナ、舞との一刻も早い合流であり、戦力のない少女を抱え込むことは、どう考えてもデメリットが大きい。

けれど、亮史は“もし”を考えてしまった。
もし、“足手まとい”と判断した少女を見捨てて、その上で舞やレレナと合流したら――
――彼女たちの顔をまともに見ることができない。
そんな風に考えてしまった。
そして、『人間』なら、そう考えるはずだ、とも思った。

「ふむふむ。それじゃ、こなたくんが探しているのは、友達の柊かがみくんとつかさくん姉妹。
それに従妹の小早川ゆたかくんと、その友達の岩崎みなみくんと田村ひよりくん。で、いいのかな?」
「そうだよ。特にゆーちゃんは身体が弱いから心配なんだ。月島さんが探してるのは、イタリア人ハーフのレレナちゃんと幽霊の舞ちゃん
……それに、上弦っていう女の人と、ツルって女の子は危険なんだよね」
亮史が吸血鬼だということや、舞が幽霊だということも、こなたは――驚いたものの――あっさりと受け入れてしまった。
会ったばかりの頃のレレナや舞は“信じられない”という反応だったから、おそらくこなたの方が珍しいのだろう。
この手のタイプは初めてだ、と亮史は少々おののく。
「うん……上弦は僕と同じ吸血鬼で、ツルはその『使い魔』だよ。上弦は僕と違って……人間を獲物だと思っている。だから殺人にも躊躇はないだろう。危険なんだ」
「でも、月島さんと上弦さんって知り合いなんでしょ? 月島さんが頼んだら言うこと聞てくれたりはしないの?」
かつての『同族』を悪しざまにいうのは、以前なら気が引けただろう。
しかし、亮史は今の上弦が、――おそらく亮史に対する嫉妬から――レレナを拉致したことを知っている。彼の中で、既に上弦は『敵』になっていた。
「いや……僕とアイツは、価値観の相違から別れたんだ。……その、僕の方が一方的に切り出したから、アイツは僕に想うところがあるようだけれど
……僕の言うことを聞くとは思えない。アイツは自分の方が正しいと思ってるから」
ぶっちゃけた話、上弦と亮史は知り合いどころか深い関係にあり、そして上弦は今でも亮史のことを想っていて、その為に今現在、舞とレレナに狂気に近い嫉妬を抱いている。
だが、幼いこなたにそんなドロドロした話を聞かせるわけにもいかない。
しかし、少なくとも上弦の方は亮史を探すだろう。そうなれば、こなたにも敵意を向けて来ることは必至だ。
「だから、僕がアイツの『力』――気配を感じたら、こなたくんは隠れていてほしい。僕と人間の女の子が一緒にいたら……上弦は何をしてくるか分からないから」
こなたはそれを聞いて、納得したようにうんうん頷いた。
「そっかー。もしかして上弦さんって“ヤンデレ”?」
「やんでれ?」
ぎゅぴーん、とこなたの瞳が輝いた、ように亮二には見えた。
長々と講釈を始めた。
「ヤンデレっていうのは、心が病んでるんじゃないかってぐらい依存心が強い女の子のことだよ。
テンプレとしては「あなたがいないと生きていけないー」とか「あなたの為にやってるのに、どうして分かってくれないのー」とか。
エロゲーやギャルゲーだと、必要以上に愛情表現やそっちの行為を求めてくるケースも多いね。
あと、絶対に外せない特徴として、男の周りに他の女がいるのを見たら、絶対に切れる。お人形から鬼になるみたいに凶暴になるんだよ。
その場合、男の方が鈍感だったり女性の扱いに慣れてないせいで、事態が悪化して暴力沙汰に発展することが多い。
でもねー、わたし的にはやっぱりヤンデレよりツンデレの方が……」
最後の方は、聞こえていなかった。
こなたの観察力と洞察力に、亮史は驚嘆する。(よく分からない単語も混じっていたが、それは最近の子の『流行語』というやつなのだろう)
こんな年端もいかない少女に、上弦の人物像(吸血鬼像)や二人の関係を、たやすく看破されてしまうとは。
どうやら自分はまだまだ人間をなめていたらしい。

人間、恐るべし。

【F―7/住宅街/一日目深夜】

【月島亮史@吸血鬼のおしごと】
[状態]健康、『力』を微消費
[装備]なし
[道具]基本支給品、不明支給品1~3(確認済み)
[思考]基本:ゲームには乗らない。レレナと舞を失うことに対する強い恐怖。
1.こなたくんと行動。
2.レレナくん、舞くんと何としても合流。並行して、こなたくんの友人も探す。
3.日中の陽射しを避けられるような拠点を確保する。
4.上弦、ツルは最大限に警戒。
※参戦時期は、5巻と6巻の間。
※こなたを、小学生ぐらいの年齢だと思っています。

【泉こなた@らき☆すた】
[状態]健康、陵桜高校の制服
[装備]違法改造エアガン(残弾10/10)@スパイラル~推理の絆~
[道具]基本支給品一式、不明支給品1~2(未確認)
[思考]1.吸血鬼って本当にいたんだー。
2・月島さんと行動。
3.かがみやつかさ、ゆーちゃん、岩崎さん、田村さんと合流したい。
※高校三年時からの参戦です。

※亮史とこなたの名簿には、以下の人物に丸がついています。
雪村舞、レレナ・パプリカ・ツォルドルフ、柊かがみ、柊つかさ、小早川ゆたか、岩崎みなみ、田村ひより

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