それは微妙な出会いなの


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第二十三話≪それは微妙な出会いなの≫

エリアH-4に存在する外壁が白く塗られたコンクリート造中型灯台。
すぐ脇の港に入港、出港する船舶のために建造されたのだが、
現在、灯台に管理責任者の姿は無い。
代わりに最上階の60センチ回転灯器が設置された部屋に、
明らかに灯台には不釣り合いなバニーガールの格好をした若い人間の女性がいた。
豊満な部類に入る乳房が中心部から下だけを隠し大きく露わになっている。
金色のロングヘアが潮風に揺れていた。

「うう……寒いなぁもう!」

海からの潮風が吹き、高所に位置する灯台最上部はそれなりに肌寒い。
ましてや今の彼女の服装は非常に肌の露出度の高いバニーガールの衣装。
身体を震わせ、寒がるのは至極当然の事と言えよう。

「何だって殺し合いに仕事先の服装で呼ばれなきゃならないのよ。
無防備極まりないじゃない。靴だってハイヒールだし歩きにくいのよ!」

彼女――伊藤文子(いとう・あやこ)はとある大手カジノに勤務するバニーガールだった。
いつものように仕事を終え帰宅し、食事、入浴、自分の好きな事をした後に、
自分のベッドで就寝し次に目覚めた時にはこの殺し合いに参加させられていたのだった。
しかも仕事先で着る露出度の高いバニーガールの衣装で。
当然頭にはウサ耳バンドが付いている。
文子自身は殺し合いなどするつもりは無かったが、まずまともな服に着替えたかった。
自分のスタート地点であるこの灯台をくまなく探したが、
当然衣服など置いてあるはずも無い。

「はぁ……それにしても、殺し合いなんて……」

改めて今自分が置かれている状況を振り返り、溜息を漏らす。
参加者名簿に書かれていた、自分を含む50人の男女の名前。
幸い知り合いは一人もいなかったが、自分以外の49人が全員死ななければ、
自分は生きて帰る事が出来ないとは、文子は今一つ実感が湧かなかった。
だが、首にはめられた起爆装置及び監視装置内蔵の死の首輪、
そして自分のデイパックの中に入っていた大型のナイフ――ブッシュナイフがその現実を突き付ける。
正直、怖かった。
身体の震えは寒さだけでは無いのかもしれない。

「……大丈夫、何とかなる。何とかなるって」

無理矢理不安に落ち込む自分の心を、
生来の明るさで何とか盛り上げようとする文子。

「ちょっと海でも見ようかな。寒いけど」

気分を変えようと寒さを我慢して、ベランダ部分に移動し海を眺めようとした。

「あれ……?」

ふと、遠くからこちらにやってくる小さな人影を見付けた。
遠くてよく分かりずらいが、どうやら人間では無く、竜人。

「この灯台に向かってくる!? え、ちょ、どうしよ。とりあえず……」

文子はデイパックからブッシュナイフを取り出し、
灯台内の螺旋階段を素早く下りて行った。




赤いブレザーを着た灰色の有翼竜人、本庄忠朝は、
遠くに見える灯台を目指して走っていた。
あの狼獣人の警官が男性を容赦無く射殺するのを目撃したその時から、一心不乱に走り続けていた。
そして気が付いたら周囲の風景は無機質な倉庫街では無く、
遥か彼方まで水平線が続く海と草原、緑が生い茂る山になっていた。

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」

さすがにもはや息が続かなくなったのか、途中で歩きに変わり、呼吸を荒げる忠朝。
そしてやがて膝を曲げ、両手を膝に置き、呼吸を整える。
ふと背後を見れば、倉庫街はもうかなり離れた場所にあった。

「ハァ……ハァ……随分、走ったんだな……」

特に運動が得意な訳でも無い自分が、結構な距離を走れたものだ。
ふと自分の背中から生えた一対の翼を見て思う。
「空を飛べばもっと早かったんじゃないか」と。
あまり高く飛ぶ事は出来ないがある程度低空飛行なら可能なのだ。
まあ今更そんな事を思っても仕方無いと思い、
忠朝は再び前方に見える灯台に向けて歩き出した。

やがて灯台に辿り着き、出入口の扉を開ける。
屋内は長い間締め切られていたのか、蒸されたような空気が漂う。
短い通路があり、管理人詰所と書かれたプレートが貼られたガラス窓付きの鉄扉と、
奥に灯台最上部へ続くと思われる螺旋階段が見えた。

(灯台のてっぺん行ってみたいけど……まず最初に一階の部屋から調べようか)

忠朝は管理人詰所の扉の前に立った。
擦りガラスの向こうには動く影は見当たらない。
いや、もしかしたら物陰に誰か隠れているのかもしれないが。
忠朝は扉のノブに手を掛けたまま、しばらく迷っていたが――。

ガチャ、キイイイイ……。

結局部屋の中に入る事にした。
部屋の中に踏み込んで数歩進んだ、その時。

「止まって! 動かないで!」

左から女性の鋭い声が飛んできた。
忠朝は驚いて声のした方向へ身体を向ける。そこには――。

(ば、バニーガール?)

忠朝はかなり驚いた様子だった。
無理も無い、いつ誰に襲われるか分からない殺し合いという状況下に、
赤を基調とした際どいデザインの、バニーガールの格好をした、
金髪の人間の女性が立っていたのだから。

(こ……子供? まだ高校生ぐらい?)

そして両手でブッシュナイフを構え、
切っ先を忠朝に向けているバニーガール――伊藤文子もまた、驚いていた。
さっきは遠くてよく見えなかったが、背格好からして、まだ年齢は10代半ばぐらいか。
まだ子供と言ってもいい竜人の少年が、先程灯台最上階で目撃した人影の正体だと気付いたためだ。

美人のバニーガールの人間の女性と高校生の竜人の少年。
二人の出会いの場には、かなり微妙な空気が流れていた。


【一日目/午前/H-4灯台管理人詰所】

【伊藤文子】
[状態]:健康、死に対する恐怖(軽)、驚き
[装備]:ブッシュナイフ
[所持品]:基本支給品一式
[思考・行動]
基本:殺し合いはしない。生き残まる。
1:目の前の竜人の少年(本庄忠朝)に対処。
2:まともな服がほしい……。

【本庄忠朝】
[状態]:健康、驚き
[装備]:無し
[所持品]:基本支給品一式、不明支給品(1~2個、本人確認済)
[思考・行動]
基本:殺し合いには乗らない。死にたくない。
1:目の前のバニーガール(伊藤文子)に対処。




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