遭遇


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

第十五話≪遭遇≫

艶やかな黒髪のロングヘアーをたなびかせながら、
人間の女性――中松英子(なかまつ・えいこ)は林道を歩いていた。
右手には自分の支給武器である大型自動拳銃――AMオートマグを握り締めながら。
彼女は殺し合いをする気など微塵も無かった。何とかして首にはめられた首輪を外し、
この理不尽な殺人ゲームから逃れようと考えていた。

(まず急務は首輪よね)

しかし自分には首輪を何とか出来そうな機械知識も無ければ脱出方法も何一つ浮かばない。
それならばどうするべきか? ――やはり同じ考えを持った他参加者を仲間に引き入れる事が一番の道だろう。
名簿で見たが、この殺し合いには自分の知り合いは一人も呼ばれてはいなかった。
そして参加者は自分を含めて50人いるらしい。
いや、今この時点で既に何人か頭数が減っている可能性もあるが。
それでもこの大人数、きっと自分と同じく殺し合いを拒否する人がいるはずだ。
そういった人達と結託すれば、脱出の道も見つかるかもしれない。
勿論、あくまで可能性だけの話だが、何もしないよりは、殺し合いに乗ってしまうよりはずっとマシなはずだ。
ならば人の集まりそうな場所――会場南部にある市街地へ向かう事にしよう。英子はそう思った。
だが恐らく市街地には殺し合いに乗っている者も多数いるかもしれない。
戦う気が無いなら基本的にやり過ごすべきだが、
万一逃げきれない時は交戦も覚悟しなければならないだろう。

(こんな大きな拳銃、初めて見たんだけど)

もっとも証券会社に勤めるただのOLでしかない自分は拳銃など扱った事は無い。
ましてやこんな手に余るような大型拳銃など見るのも珍しいのだ。だがそんな事を言っている場合でも無い。
とにかく南下すればいずれは市街地に到着するだろうと思い、英子は歩みを進めていた。

「!!」

途中、黒い学生服に身を包んだ高校生ぐらいの少年と鉢合わせになった。

「待って下さい! 僕は戦うつもりは無いんです!」

銃を突き付ける英子に向かって慌てて戦意は無い事を訴える少年。
英子は銃を突き付けながら、少年に右手に持っている
アーミーナイフ――いわゆる十徳ナイフ――を捨てるよう促す。
少年はそれに応じ、アーミーナイフを地面に捨てた。
少し時間が経って、英子は少年に本当に戦意が無いと判断し、銃を下ろした。

「ごめんなさい。いつ襲われるか分からないから、警戒していたのよ」
「いえ、謝る事無いですよ。酷いですよね、殺し合いなんて……」

英子は銃を突き付けた事を詫び、少年は引きつった笑顔を浮かべながら笑って応対する。
少年はよく見ると震えているようだった。当然だろう、本物の銃を突き付けられたのだから。
その少年の様子を見て英子はますます罪悪感を覚えた。

「本当にごめんなさい……大丈夫?」
「大丈夫です、大丈夫。心配無いですって!」
「そ、そう……えと、私は中松英子って言うの、あなたの名前は?」
「僕は、鉤丸聖人(かぎまる・せいと)って言います」
「聖人君、私はこの殺し合いから脱出しようと思って、同じく殺し合いに乗っていない人を仲間にして、
このゲームから脱出しようと思っているの。良かったら私の仲間になってくれない?
銃を突き付けておいて、こんな事言うのも何だけど……」

鉤丸聖人なる少年が完全に殺し合いに乗っていないと判断した英子は聖人に仲間になってほしいと告げる。

「分かりました……僕も手伝います! 一緒に頑張りましょう!」

聖人は快く承諾した。そのまっすぐな瞳に、英子は嘘偽りは無いと確信した。

「ありがとう、聖人君。あ、これ、あなたのでしょ?」

英子は地面に落ちていたアーミーナイフを拾い、聖人に手渡した。
もう武器を離しておく必要は無いだろう。そう思ったためだ。

「それで、これからどうするつもりなんですか?」
「南の方に街があるから、そこへ向かうつもりよ。色々物も調達したいし、
殺し合いに乗っていない人もきっといると思うから。
もっとも、そうじゃない人も沢山いるだろうけど……あまり無茶しない程度に探索するつもり」

英子はこれからの自分の行動指針を簡単にまとめて聖人に話した。
わざわざ自ら危険な場所に赴くような内容に聖人はかなり難色を示していた。
もし嫌ならば無理について来なくてもいい、と英子は言ったが、聖人は意を決した表情で言った。

「……行きましょう。僕なら大丈夫です、これでも男なんですから。むしろ中松さんを守るぐらいの勢いで行きますよ」
「ありがとう、聖人君。それじゃあ……行きましょう」

英子は聖人を連れて、再び南方の市街地へ歩き出した。




うまく行った、と、少年――鉤丸聖人は心の中でほくそ笑んだ。

(俺ながら、中々の演技派だなぁ。しっかしこの女の馬鹿だぜ。
ちょっと震えたフリしただけで簡単に信じやがった)

聖人は、先程まで英子と会話していた時とはまるで別人の口調で心の中で呟く。
英子は現在前を向いていて分からないが、すぐ脇を歩く聖人の表情は悪意に満ちた笑みが浮かんでいた。

(脱出ゥ? へっ、馬鹿じゃねーの? んな事出来る訳ねーだろ、俺達はこの首輪で主催に命握られてんだぜ。
どうやって外すんだっつの。万が一全員殺し合いやめたとしてもだ、
24時間誰も死ななかったら全員の首輪が爆発してゲームオーバーなんだぜ?八方塞がり、詰みじゃねーか)

聖人は首にはめられた首輪に触れながら心の中で毒づく。
彼はこのゲームから脱出出来るなどとは微塵も思っていなかった。
彼の目的はただ一つ、”優勝する”事。

(だけど……正直俺は進んで次々人殺すような力はねー……返り討ちに遭う可能性の方が高ぇ。
だったら……)

脇で歩く女性を横目で見ながら、聖人は再び笑みを浮かべる。

(殺し合いに乗っていないフリして、隙を見て! ……みてーな感じでいくしかねーな)

これが聖人の本性だった。
彼は家や学校では成績優秀で人柄も良い優等生を演じていたが、
その実、陰で動物虐待、恐喝、万引き、陰湿なイジメを繰り返す邪悪な性格の持ち主だった。

(へっ、こんな所で死んでたまるかっつーの……しばらくはこの馬鹿女と一緒にいて、
隙を見て銃を奪ってぶっ殺すか。こんな十徳ナイフじゃ頼りねえしな。クククククッ)

聖人は心の中で邪悪そのものの笑い声をあげる。
しかしその本性は決して表には出さない。

「ん? どうかした? 聖人君」
「あ、いや、何でも無いですよ」

仮面を被り、明るく礼儀正しい優等生を演じる。
英子は気付かない。いずれ気付く時が来るかもしれないが、その時にはもう手遅れかもしれない。


【一日目/明朝/C-3林道】

【中松英子】
[状態]:健康、市街地方面に移動中
[装備]:AM オートマグ(7/7)
[所持品]:基本支給品一式、AM オートマグの予備マガジン(7×10)
[思考・行動]
基本:殺し合いからの脱出。
1:市街地へ向かい、必要な物資の調達と仲間を集める。
2:聖人君と行動を共にする。
3:首輪を外す方法を探す。

【鉤丸聖人】
[状態]:健康、市街地方面に移動中
[装備]:アーミーナイフ
[所持品]:基本支給品一式
[思考・行動]
基本:優勝を目指す。
1:殺し合いに乗っていないフリをして他参加者に近付き、隙を突いて殺す。
2:中松英子の銃を奪う方法を考える。







Back:014おじいちゃんのバトロワ 時系列順で読む Next:016悪魔の判決
Back:014おじいちゃんのバトロワ 投下順で読む Next:016悪魔の判決
GAME START 中松英子 Next:039錯綜する犠牲者
GAME START 鉤丸聖人 Next:039錯綜する犠牲者
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。