BRIGHTEST DARKNESS

34:BRIGHTEST DARKNESS

「嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だあああああああああああ」

ショッピングモール内に青年の悲痛な叫びが木霊する。
大きな狐が頭を抱え絶叫していた。周りにいる三人は沈痛な表情でそれを見ていた。

「ヒイアアアァアァアアァァァァ……嘘だあああああああああ……!!」
「た、高延」

狐の女性、千葉望が妖狐・日宮高延に声を掛けた。

「まどかぁ…まどかぁ…」

しかし高延は全く意に介せず。放送で死者の名前として主人の日宮まどかの名前が呼ばれてからずっとこの調子である。

「参ったな…」
「どうしよう…」

高村秀徳と新井宏音は困り果てる。高延の気持ちは分かるが余り長い間大声で喚かれるのは危険だ。
それは望も考えていたようで、どうにか高延を落ち着かせようと四苦八苦するが全く効果が無かった。

「うおあああああああああああああ!!! 信じない! 信じない信じない!!
俺は自分の目で見たものしか信じない!!!」
「あ、ちょっと、高延!? どこへ行くの!?」
「うるさい!! まどかを捜しに行く!! 放せ! 放せよ!!」
「きゃっ!」

制止しようとした望を振り払い、高延はショッピングモール正面玄関の方へ走り去ってしまった。
三人は追いかけようとした。だが。

ダァン!!

一発の銃声が響き、直後に宏音が床に倒れた。

「宏音!?」
「た、高村さ……む、胸が、痛い」

それだけ言うと、宏音はガクリと脱力し、事切れた。胸元が真っ赤に染まりドクドクと赤い液体が流れ出ている。

ダァン!! ダァン!! ダァン!! ダァン!!

四発の銃声。今度は銃弾が秀徳と望を貫いた。
秀徳は背中から腹にかけて貫通し、望は左肩を撃ち抜かれる。
焼けるような熱さにも似た激痛が左肩を襲う望は激痛に耐えながら襲撃者の姿を捜す。
すると洋品店の衣服の棚の陰に誰かの陰が動いた。一瞬ではあったがライフルらしき物を持っているのも見えた。

「このっ!」

人影が見えた方向に向けベレッタM92FSを乱射する望。
秀徳も4式自動小銃を望と同じ方向に向け発砲した。洋品店に陳列された衣服がズタズタになり、
商品棚に穴が空いていく。天井にぶら下がっていた照明が割れた。

「おっと…」

SMLEライフルを携えた狼獣人の青年、然堂正信は反撃の機会を窺う。
一人は仕留めた、残りは二人。既に手傷を負わせている。

「あっ…」

望が持つベレッタM92FSのスライドが後退し止まった。弾切れである。
そして秀徳の持つ4式自動小銃も弾が切れた。二人は予備弾を装填しようとした。
しかしそれこそ正信が窺っていた隙であった。正信は棚の陰から身を乗り出し、SMLEライフルを二人に向け発砲した。

「あっ……ア」
「! 高村さん? 高村さん!?」

銃弾が秀徳の胸を貫いた。口から血の塊を吐き出す秀徳。視界が大きく揺らいだ。

「やべ、痛ぇ……ゴフッ……駄目だ、逃げ、逃げろ、のぞ、み」

バシュッ!!

「あ……」

望の目の前で秀徳の頭部が、まるでスイカ割りの時のスイカのように割れ、望の身体に血と脳漿の飛沫が掛かった。
理解するのに数秒かかったが、理解した途端、望は悲鳴を上げた。

「……あ、ああ、う、ああああああああああああああああ!!!」

そして、脇目も振らず、高延が走り去った方向――ショッピングモールの正面玄関の方へと走って行った。
その背中に向けて、正信は弾を込めたSMLEライフルを発砲するが結局仕留める事は出来なかった。
二人分の死体が転がる一階中央ホールに、SMLEライフルを持ちながら正信が入る。
頭部に小銃弾を食らい破裂してしまった男の死体と、胸に銃弾を食らい死んだナイスバディの猫の女性の死体。
正信は足でそれらを触り、反応が全く無い事を見て完全に死んでいる事を確認する。

「よし…全員は無理だったが…上々だろう」

そう言って正信は殺害した二人の武装を回収しようとした。

ドォン!!

その時、正信は轟音と同時に後頭部に衝撃を感じ――それを最後に然堂正信の意識は消失した。

「油断、大敵、って、ね」

黒髪の美女、田中正子が、スプリングフィールドM1903A3小銃を構えながら言う。
頭部を撃ち抜かれ秀徳のように脳漿と血を撒き散らした無惨な死体と化した然堂正信の死体に近付く。
銃声が聞こえたので気取られ無いように来てみれば銃撃戦の真っ最中。
そして今、逃走した一人を除き銃撃戦をしていた者は双方死亡した。

「油断大敵よねぇ」

少女の声がどこかから聞こえた。正子が硬直する。
そして、ぼうっ、と言う音と共に、目の前が真っ赤になり、身体中に紅蓮の炎が回った。

「うがあああぁ、ああああぁああ!!?」

身体中を炎で焼かれる激痛に悲鳴を上げ、のたうち回る正子。
だが、いくら身体を転がそうと、手足をばたつかせようと、炎は消えず、皮膚が、衣服が、髪が、肉が焼き尽くされる。
やがて、あちこちに炎を燃え移させた正子は、肉の焦げる嫌な臭いを発しながら、炎の中に倒れ動かなくなった。
中央ホールが次第に炎に包まれていく。

「これはまずいかな…早く逃げよ」

最終的な勝者となった兎獣人の少女、月宮奈緒子は火炎が巻き起こる中央ホールを足早に立ち去り、
ショッピングモールの出口へと向かった。

◆◆◆

どこをどう走ったのか分からない。気付けば日宮高延はショッピングモールの建物の影も見えない、
市街地の道路の上に立っていた。ひんやりとした風が吹き抜ける。

「ゼェ、ゼェ、ゼェ、ゼェ、ゼェ……」

心臓の脈拍数が上がっているのを感じる。舌を出し、呼吸を整える妖狐の青年。

「…まどか…」

今まで行動を共にしていた者達の元から勝手に飛び出し、放送で名前が呼ばれた主人を捜しに来た高延。
信じたく無かった。つい昨日まで共に暮らしてきた女性がもうこの世にいないなど。
つい昨夜だって、ベッドの上で裸になったまどかの局部に己の熱い獣棒をねじ込み、
快楽の末に種汁をたっぷりと注いだと言うのに。

「……あ?」

呆然自失となった高延の前に、いつの間にか、ショッピングセンター程では無いが大きな娯楽施設が姿を現した。
外観からして、地図のエリアA-5の健康センターであろう。

「……」

高延は何かに引き寄せられるように、健康センターの中へと入って行った。
誰もいないカウンターを通り過ぎ、静まり返った飲食コーナーを素通りし、女湯ののれんを潜る。
当然、入浴客などいる筈は無く、全裸の女性達がいるはずも無い。雄として期待するものなど無いはずだが、
なぜか高延は女湯が気になった。

マッサージチェアや牛乳の入ったケースなどが置かれた脱衣所に入る。

ここで高延は、ある懐かしい匂いを感じ取った。

「……! まどかの、匂い……」

それは紛れも無く、愛する主人の匂いだった。
匂いを辿りロッカーの一つを開けると、そこには主人、日宮まどかの衣服が。
近くには基本支給品一式が入ったデイパックが置いてあった。

「まどか、近くにいる…」

間違い無く、この近くにまどかはいる。
高延は風呂場へ続く引き戸を開けた。

そして、絶望が彼の視界一杯に広がった。

「……あ」

全裸の、銀髪の女性の死体があった。喉を何かでえぐられ血溜まりを作り、大浴場の洗い場付近に横たわっている、
日宮まどかの亡骸があった。

「…まどか…おい、はは、全く、長風呂は良くねぇって言ったろ…のぼせて倒れてんじゃ、ないか……ほら、
起きろって、ほら………なぁ」

鼻先でまどかの身体をつつく。鼻先から感じるまどかの体温は、もうすっかり冷たくなっていた。
柔らかかった身体は、既に死後硬直が始まり、死斑も浮き出ている。

「……起きろよ……起きろって言ってんだろ………起きてくれよ……起きてよ………まどか………まど……か」

信じたくないと拒絶しても、現実は容赦無く心に作った壁を壊し入り込んできた。
妖狐の目に大粒の涙が滲み、その瞳から光が消えていった。

「……あはっ、ははは……ハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!! アハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」





脱衣所に、獣の荒い息遣いが響く。
床には引き摺ったような血の跡が残っていた。

「ハッ、ハァッ、アハッ、いひよ、きもちいいよ、まどかっ、まどか~あはっ」

大粒の涙を流し、舌と涎を垂らしながら、雄の妖狐は銀髪の女性の骸のそこに、己の獣の竿を突き入れる。
虚ろな目はどこも見ていない。快感を愉しんでいる訳では無い。自分が何をしているのかも彼は良く分かっていなかった。

「ハァ、ア、イ、いくよぉ…ウッ」

妖狐、高延が身体をビクッと震わせ、何の締まりも無いまどかの中の奥にねっとりとした熱い種を注ぎ込んだ。
しばらくの間、高延はまどかの死体にしがみつき、ビクッ、ビクッ、と身体を震わせていたが。
しばらくして、己自身をまどかの死体のそこから引き抜き、根元の瘤が大きく膨らんだそれの根元に、
自分の支給品であるコンバットナイフを宛がう。

「まどかっ、まどかまどか、あはっ、おれもいまからまどかのとこいくよ!
ち○こきりとってしぬから! ち○ぽきっておれもしぬからね! あはっ、あはっまっててねまどか!」

血走った目で笑いながら、妖狐はコンバットナイフの刃を鋸のように使い、
自分の雄の象徴を切断し始めた。

「あっ、ぎ、ギイイイイイアアアアアア!!! イダい、いだいいい! あ、でもがまんすル!
お、あぎ、いだいけドがまんするぅ!! まどカのトコいけるから! コレデマドカノトコ、イケ、ル、ギャアアアアアアアアアア!!!
あああ゛ア゛ア゛ッア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

ブチッ、と言う、とても嫌な音がした。そして、いきり立ったままの形の妖狐の獣の肉剛が根元から切り離された。
切断された部分から噴水のように、いや、まるで血尿の如く鮮血が噴き出し、瞬く間に血の池が出来上がる。

「マドカ、ァ………ソッチ、イクカラ、ネ………マタ…イッパイヤロウ……ヨ……マ………ド……カ…………」

まどかの死体の顔をぺろぺろと舐めながら、妖狐、日宮高延は股間から血を噴き出し続け、やがて冷たくなった。

◆◆◆

千葉望はとある民家の中に身を潜めていた。
撃たれた傷が焼けるように痛んだが、家の中にあった包帯を(かなり適当ではあるが)巻き付け応急処置は施した。
それよりも、自分が一人になってしまった事が望にとっては嫌な事だった。
首輪を解除出来る可能性のあった高村秀徳が殺害されてしまった事もショックであったし、
また、日宮高延があの後どこに行ってしまったのかも分からない。

「…痛い……もう、しばらく動かないようにしよう……」

同行者の出奔、突然の襲撃による仲間の死、更に自身の浅からぬ負傷、色々な事が立て続けに起こり、
望の精神と肉体をあっと言う間に疲弊させた。



【新井宏音  死亡】
【高村秀徳  死亡】
【然堂正信  死亡】
【田中正子  死亡】
【日宮高延  死亡】
【残り15人】



【午前/B-3ショッピングモールの外(詳細不明)】
【月宮奈緒子】
[状態]良好
[服装]高校制服
[装備]コルトパイソン(6/6)
[持物]基本支給品一式、.357マグナム弾(7)
[思考]
1:殺し合いに乗る。優勝を目指す。
2:石田佳奈子に注意。
[備考]
※特に無し。

【午前/C-2市街地奥田家一階】
【千葉望】
[状態]左肩貫通銃創(応急処置済)、肉体、精神疲労(大)
[服装]仕事用のスーツ
[装備]ベレッタM92FS(10/15)
[持物]基本支給品一式、ベレッタM92FS予備マガジン(15×2)
[思考]
1:殺し合いはしたく無い。脱出したい。
2:……もう嫌だ。
[備考]
※特に無し。


※B-3ショッピングモール一階中央が火災になっています。
※高村秀徳、新井宏音、田中正子、然堂正信の死体及び所持品は炎上していると思われます。
※A-5健康センター女湯脱衣所に日宮高延と日宮まどかの死体及び二人のデイパックが放置されています。


離れていても 時系列順 削られるガラス玉
離れていても 投下順 削られるガラス玉
今そこにある危機 日宮高延 死亡
今そこにある危機 千葉望 一番楽な方法
今そこにある危機 高村秀徳 死亡
今そこにある危機 新井宏音 死亡
今そこにある危機 然堂正信 死亡
今そこにある危機 田中正子 死亡
今そこにある危機 月宮奈緒子 一番楽な方法

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最終更新:2011年04月09日 22:42
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