光の向こうへ

50話 光の向こうへ


その道は厳密に言うと一本道では無い。
すぐ奥が行き止まりになった分かれ道が至る所に存在していた。
もっとも、見ればすぐに行き止まりだと分かるためそれ程厄介な物では無い。
――かのように見えるが――。

(あいつ…俺を気絶させた鉄槌の男じゃねぇか、何でこんな所に……!?)

走りながら、岸沼良樹は先程、主催者の男を殺害した鉄槌を持った大男の事を思い返していた。
だが、今はとにかく先に進む事に集中した方が良さそうであった。

「ヴア゛ア゛アアアアアアアアア!!!!」

背後から、まるで獣の雄叫びのような叫び声が響いてくる。

「はぁ…はぁ」
「い、伊東さん! あれ、美奈は? ま、まさか」
「……」
「そんな…!」

追い付いてきた伊東鴨太郎が伝える悲しい報せに落胆する長谷川泰三。

「ガアアアアアアア!!!!」
「……ッ!!」
「…今は逃げる事に集中しよう」
「ああ……」

鉄槌の男――柳堀ヨシカズが迫る。

だが、危険はヨシカズだけでは無かった。
主催者――比叡憲武こと◆ymCx/I3enUが死の直前に言っていた「障害物競争」と言う言葉。
ここに来て、その「障害物」が現れ始める。

「ぐぁっ!?」
「! おい、どうした」

突然、刻命裕也が転倒した。何かに足が引っ掛かったような感覚。

「いって……何だ――――!?」

自分の足の方を見た刻命は言葉を失う。
床から這い出た男が、自分の足を掴んでいた。
黒い霧のようなものを纏わせたその男に刻命は見覚えがあった。
殺し合いにおいて最初に自分が殺害した――鈴木正一郎その人。


…キ…ザ…ミ…ィ


「う、うわあああ、は、放せ! 放―――」


…一緒に、行きましょうよぉ
…こっちに、来てぇ
…ウフフ、キャハハハハッ


「!!」

背後には三人の少女がいた。その内二人には見覚えがあった。どちらも自分が殺した。
四人の霊が刻命の身体に絡み付き、床に出来た空間に引き摺りこむ。

「ぎゃああぁあああぁあ!!! よせ!! うわあああぁぁぁあああぁあああああああああ!!!!!」

必死の抵抗も空しく、刻命裕也は冥府へと引き摺りこまれてしまった。

「あ、ああ」

傍に居た憲顕は、完全に足が固まり、身動きが取れなかった。
そこへ良樹、伊東、泰三の三人が走ってくる。

「どうした!? 上杉さん」
「…き、刻命が…」

ブルブルと震える憲顕の様子を見て、ただならぬ事があったようだと、
その瞬間を見ていなかった三人にも理解出来た。

「…急ごう」

とにかく先へ行くしか無いと、残った四人は廊下を走り続ける。

「……!?」
「どうした岸沼!!」

突然足を止めた良樹に泰三が叫ぶ。
良樹は何も無い行き止まりの通路の奥を見詰めたまま立ち尽くしていた。

「…篠崎、中嶋、篠原…」

不意に、死んだクラスメイトの名前を呟くと、良樹はその行き止まりの奥へと歩き始めた。

「お、おい!? 岸沼!!」

泰三が良樹の名前を呼ぶが、良樹は聞こえていないらしい。
嬉しそうな、今にも泣きそうな表情のまま、行き止まりへと歩いて行く。
良樹には見えていた。手招く、三人のクラスメイトの姿が。

…岸沼ー
…岸沼くーん
…こっちこっち

「お前ら、生きてたんだな、びっくりさせんじゃねえよ、ったく、よぉ…!」



シュバッ!!



その行き止まりには、視認するのが難しい程細く、頑丈な鋼線が幾つも張られていた。
それが突然動き、良樹の身体を文字通り「八つ裂き」にしてしまった。

「岸沼っ…!!」
「くっ……長谷川さん! こっちだ!」
「畜生……! 何だってんだよ!!」

憲顕に引っ張られながら、泰三は怒声をあげた。



「ガアアアアアアア!!!!」



鉄槌の男の咆哮が響く。
その空間にはよく反響した――突如、洞窟のような場所に、深い谷に出くわした。
対岸まで、古びた吊り橋が掛けられている。
ロープは傷み、木板も所々壊れ落ちているその吊り橋の前に、伊東、泰三、憲顕の三人はいた。
対岸からは光が見えた。暗闇の中において、まばゆいばかりのその光を、
この吊り橋を渡り目指す事になる。

「ま、マジ、かよ…これ、渡れっての?」

恐る恐る泰三が谷底を覗き込む。
一体どれだけの深さがあるのだろうか、全く底は見えない。
うなるような音が谷底から響いてくる。底に無数の亡者が潜んでいるかのように。

「…一気に渡るしか無いな」
「余り時間も無い。長谷川さん!」
「く、くっそぉ……こうなりゃヤケだ! ここまで生き残ってきたんだ! 最後まで行ってやらぁ!!」

長谷川泰三を先頭に、三人が吊り橋を突き進む。
ギシギシと軋み、一歩歩く度に異常な程吊り橋は揺れ、三人を不安にさせた。
三人共、一様に視線は前方の光のみに見据える。
下に広がる漆黒の谷に目を向けたら、もう二度と動けなくなるような気がした。

「ヴヴヴヴ」

鉄槌の男、ヨシカズが吊り橋に辿り着いた。
だが、なぜか渡ろうとしない。

「……? あいつ、渡ろうとしないぞ?」
「…何だ?」
「構う事ぁねぇ! 渡ろうとしないんなら好都合だ! さっさと渡ろうぜ!!」

ヨシカズの事が気になりつつも、三人は尚も吊り橋を渡り続ける。

「……ヴ」

ヨシカズは、吊り橋を繋ぎ止めている重要な箇所に目をやった。
そして、その場所目掛け、鉄槌を振り下ろす。

バキィッ!! メキ、メキメキメキッ

脆くなっていた吊り橋は、いとも簡単に崩落を始めた。
既に渡り切っていた泰三は、背後の物音に振り向く。

「う、あ、あああああああああああああああああああああ―――――!!!!」
「グッ!!」
「い、伊東さん―――――――――――ッ!!!」

憲顕は寸での所で崖に掴まる事が出来たが、
伊東は、谷底へと真っ逆さまに、落ちて行った。
伊東の断末魔が、洞窟内に木霊した。

(……また、死ぬのか、僕は……)

落下していく中、伊東は自分でも怖いぐらい冷静だった。
死ぬのはこれで二度目になる。まさか、二回も死ぬ事になるとは夢にも思わなかった。

(…生きて帰っても、僕は真選組の裏切り者……ロクな事にはならないだろう。
……どの道、僕は死ぬ運命、だったのかもな……)



(土方君……もし、君だったら、どうした――――?)



吊り橋は落ち、もう鉄槌の男に追われる事は無い。
背後にある光は、主催者が言っていた、帰るための道なのだろうか。

「……大勢、死んじまった」
「ああ……」
「…俺…正直…帰っても、宿無しで、ロクな人生じゃねぇんだよなぁ」
「…命があるだけ、マシだと思え」
「……へっ、そうだな」

殺し合いを生き抜いた、サングラスの男と、黒と白の妖狼は、
力無くその場に座り込んだ。



【刻命裕也@コープスパーティーBCRF  死亡】
【岸沼良樹@コープスパーティーBCRF  死亡】
【伊東鴨太郎@銀魂  死亡】



【上杉憲顕@オリキャラ・男  生還】
【長谷川泰三@銀魂  生還】



【バトルロワイアル  終了】



下校の時刻を過ぎています。まだ残っている生徒は…… 時系列順 男達よマダオであれ
下校の時刻を過ぎています。まだ残っている生徒は…… 投下順 男達よマダオであれ
下校の時刻を過ぎています。まだ残っている生徒は…… 岸沼良樹 死亡
下校の時刻を過ぎています。まだ残っている生徒は…… 上杉憲顕 男達よマダオであれ
下校の時刻を過ぎています。まだ残っている生徒は…… 伊東鴨太郎 死亡
下校の時刻を過ぎています。まだ残っている生徒は…… 長谷川泰三 男達よマダオであれ
下校の時刻を過ぎています。まだ残っている生徒は…… 刻命裕也 死亡

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最終更新:2011年02月18日 01:09
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