命の儚さ

020話:命の儚さ


篠原世以子は廃墟と化した街を歩きながら、同行者の犬獣人の少年、
三浦京太にこの殺し合いに呼ばれている自分のクラスメイトの事を大まかに話していた。

「…とまあ、こんな所かな」
「面白そうな人達だね」
「ハハッ、まあね~」

一度悲惨な死を遂げた事が自分でも信じられないと世以子は思っていた。
こうして生きて地面を歩き、他の人と会話をしている事自体もう有り得ないはずの事なのだ。

(うーん、どうしよう、一回死んだ事、京太君に言っておくべき?
……いや、いいか。ややこしいし、特に重要な事じゃ無いでしょ、多分)

考えた末、世以子は自分が以前一度死んだ身である事は京太に話さない事にした。
中嶋直美と再会出来れば、恐らくその時にばれてしまうだろうが、ばれた所でまずい訳でも無い。
今、確かに自分は生きている。それだけで世以子は十分だった。

二人が街中を歩いていると、路地から背中に赤い二本の触手が生えた、
青い毛皮を持つ巨大な犬が姿を現した。
その触手の片方には長剣らしき物が握られている。

「!」

青犬――ガオガモンは世以子と京太に気付き、鋭い視線を向ける。
その目は少なくとも友好的で無い事は確かだった。

次の瞬間、長剣――エグゼキューショナーズソードを持った方の触手が二人に向かって伸びた。

「きゃあ!?」
「うあっ!!」

間一髪でそれを避ける二人であったが、触手は向きを変えて、
その刀身を世以子目掛けて振り下ろした。
世以子はそれに気付いたが、回避するには余りにも残された時間は少なく。

「――――ッ!!」

大きく目を見開き、自分の脳天目掛けて振り下ろされる剣を黙って見詰めるしか無かった。

(直――――)

「危ない!!」

ドンッ!! ザシュッ!!

思い切り付き飛ばされ、世以子はひび割れたアスファルトの上に投げ出される。
腰を強か打ち付けたが軽傷のようだ。

「いった…………あ?」

そして腰をさする世以子の視界に、悪夢のような光景が映り込む。

「ぎゃあああああぁぁぁああ、あああああああ!!」

三浦京太が地面に倒れて悲鳴を上げていた。
両足が、膝の辺りから切断され、その辺に血塗れで転がっている。
切断面からは真っ赤な液体が止め処なく溢れ出、灰色のアスファルトに赤黒い水溜りを作って行く。

「チッ、邪魔するからだ」

ガオガモンが吐き捨てるように言う。

「ああぁああ、う、あああああああああああああああ!!!!」

だが次の瞬間、ガオガモンにとって予想外だった事が起きる。
両足を切断された少年が、まさか軽機関銃を自分に向けて乱射するとは考えていなかった。

ダダダダダダダダダダダッ!!!

凄まじい連射音が響き渡り、無数の7.62㎜弾がガオガモンの身体を貫通した。
断末魔を上げる前に頭部が半分弾け飛び、ガオガモンは呆気無くただの大きな血塗れの肉塊と化した。
やがて京太の持つM1918の弾が無くなった。

「け、京太君!!」

呆然と横で見ていた世以子が我に帰り京太に駆け寄る。

「し、の、はら、さん、う、ぐううううう、はぁ、はぁ」
「京太君、しっかり……!」
「ぶ、無事で、良かった、篠原さん、、が、、し、の、はら、さん、、、ぶ、じ、、、で」

それだけ言うと、京太の動きがピタリと止まった。
そして脱力し、目を開いたまま、動かなくなった。

「……! そ、そんな……! 京太君……」

自分を庇い死んだ犬の少年の目を閉じさせ、世以子は涙した。



【ガオガモン@デジモン  死亡】
【三浦京太@オリキャラ・男  死亡】
【残り33人】



【一日目/早朝/F-6市街地跡】
【篠原世以子@コープスパーティーBCRF】
[状態]腰にダメージ、悲しみ
[装備]S&WM36(5/5)
[道具]基本支給品一式、.38スペシャル弾(15)、鉈
[思考]
1:殺し合いはしない。直美、委員長(篠崎あゆみ)、岸沼君を捜す。
2:京太君……。
3:私は死んだはずじゃ……?
[備考]
※本編死亡直後からの参戦です。


※F-6一帯に銃声が響きました。


≪支給品紹介≫
【エグゼキューショナーズソード】 支給者:ガオガモン
斬首用の長剣。刺突する必要は無いため切っ先は丸い。


お狐さま、射殺する。 時系列順 忘れ去られた歌舞伎町
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最終更新:2011年01月13日 20:51
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