最後まで読んではいけない

13話:最後まで読んではいけない


分校跡近くの森の中。

「殺し合いだと…くそっ、ふざけている!」

青と白の毛並みの人狼、ガロンは怒りの声を上げた。
突然、声も姿も見えない謎の存在に殺し合いを強制され、
しかも首に首輪まではめられ、彼のプライドは大きく傷付けられていた。
傍にあったデイパックを開け、名簿を確認する。

「フェリシアもいるのか…早い所、合流したいな」

知っている名前が一人いる事を確認すると、次にランダム支給品を調べ始める。
入っていた物は特殊警棒と、防犯用ベル。

「ロクな物が無いが…まあ良いだろう」

元々身一つでも十分戦える。今までもそうしてきた。
ガロンは特殊警棒を装備し、デイパックを携え、森の中を歩き始めた。



「ウアアアアアァア、ハハハハハハハ!! アハハハハハハ!!」
「!?」


突然、前方に見えた木造の廃墟らしき建物の中から、男の狂ったような叫び声と、
笑い声が聞こえてきた。咄嗟に身を伏せるガロン。
人間時より鋭敏な聴覚は、その声と共にドンッ、ドンッ、と、何かを激しく打ち付けるような
鈍い音まで聞き取っていた。

(な、何だ? 一体何が起きて……?)

「アハハハハハ!! アハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」

グシャッ、という嫌な音と同時に、唐突に男の声が止んだ。

「……??」

得体の知れぬ恐怖感を抱きながらも、ガロンは廃墟――分校跡の中へと入って行った。
中に入り、垂れ下がった天井板や電気コードに気を付けながら進む。
そして、とある教室跡で、

「ウ……ぁあ?」

何度も何度も壁に頭を打ち付けて、頭から大量の血を流して息絶えた、
スーツ姿の人間の男の死体が横たわっているのを発見した。
教室は目新しい荒らされた跡があり、窓が割られたり、木製の机が叩き壊されたりしていた。
男は、歪んだ笑みを浮かべながら死んでいた。
よく見れば涙を流しているようだった。

「何が起きたんだ……ん?」

ガロンは男の傍に、薄汚れた五枚の紙が落ちているのを見付けた。

「……」

なぜかは分からなかったが、ガロンはその紙に書かれた文章を無性に読みたくなった。
自分でもこの衝動が何なのか分からなかったが、ガロンは、その紙を手に取り、読み始めた。
文章は日本語で書かれていたがなぜか、ガロンは読む事が出来た。




…■■君…■■■■、■いたい さっき幽霊■教えてくれた
…一緒■■■て来られたけど、別の■■に閉じ込められているから
…同じ校舎に居るのに、会えないらしい
どうしてこんな目に遭う■ 今日は■■■■■■■■■■があったのに
さぼった■■たお姉ちゃんに怒られる
■■君と会えたら、こんなトコ抜け出せる気がする
■■■■に居■■■ら、何か連絡を■■■■■…あるはずだよね


所々掠れていて読めなくなっていた。
どうやら誰かの手記らしかったが、内容はとても理解出来ない。
しかし、ガロンは自分でも分からない内に、見入っていた。
そして、弐と書かれた紙を手に取る。



…寒い… あたしの身体■■■温■■ん■■■■■していっているのがわかる
…さっ■から鳴■■まないこの嫌な音は何だろう
耳が痛い■思考が定まらない。■■まわりに薄い膜が張っ■いる感覚―。
そういえばさっき■体の傍に■■■ング■■■■■■■つけた
この■■のどこかに■■■■わ■■■■あるら■い…何処のこと?
それ■■■■、人■死体を見■■何も■わない自■の感■■■。


「…ハァ、ハァ」

身体の回りの体温が下がったような気がした。
これ以上は読まない方が良いと本能が警告している。
だが、ガロンはその警告に従えなかった。



■■■■はどこにもいない やっぱりもう、会■■いのかなぁ
だけど■ンタクトを取■■■■思いついた
彼が『教卓に■■■■■を残してくれたのだ。
空間が違っても■■が一緒なら、こうやって■■■取■■んだ
でも、足りない…■■じゃ、■■■■■■■■。
ふざけ■■■■■■る■■■■■か…体温■か■■■くて… ただ、■が見■■
いつも会って話■てた、■■■■■事が 今となっては何物■も代え■い、
とても■■■事だったなんて
こ■■、寒さ■指す■■かなくなって来てか■気が付■■■■


頭が痛くなってきている。とても寒い。紙を持つ指が震える。
本当に危険だ。やめろ。これ以上は読むなと、自分に言い聞かせても、無駄だった。




さ む い…

…ゆび うごか な ■…

ひ■だん も■■ない…

あ いた い

足の筋 切られた

血…いっ■い出た


「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」

もう止めた方が良い。尋常では無い頭痛と寒気がする。
耳鳴りがする、鋏の音? 次は読むな と ほんのうが けいこく してるのに
手が かってに


―――の手記   読みますか?


読む






私はもう死ぬみたい

どんどん血が抜けて寒くなって来た… なんかもう、目もよく見えない

どうしても会えなかったな こんな時に限って 出て来てくれないんだから

■■君

君はいつも私の理想

いつも私の想像を追い越して、一歩先で笑って待っていてくれた

君はきっと今度も私の前に出て来てくれると信じていたのに

私の脳が君の出てくるのを拒否しているようだ

死んでも夢が見れたなら

いつも通り、出て来てくれるよね

いつものように、ふざけっこしようね




ひとりにもどるのは、もういや




「くっ…何だ…頭が…ぐぅッ」




激しい嘔吐感と虚脱感に突如全身を包まれたガロンは、
気が付くと、狭く真っ赤な部屋の隅に立つ自分の姿をみとめた。

思考の混濁に意識が定まらず、地面や重力が何処にあるかもわからない
突然の降下感に驚き、ビクリと何度も神経反射を繰り返す。

人智を超えた負の波動【呪い】に取り込まれたのであろうか。

もう自分の事を緑色の棒としか捉える事が出来なくなっている。



「ア゛…ア゛…」



前触れも無く襲ってきた自我の崩壊に、ガロンはただ放心するしかなかった。



しばらくして。

分校跡のとある教室跡に、自分の爪で喉を切り裂いて死んだ青と白の人狼の死体が横たわった。



【田々邊福男@オリキャラ・男  死亡】
【ガロン@ヴァンパイアシリーズ  死亡】
【残り38人】



≪支給品紹介≫
【特殊警棒】 支給者:ガロン
伸縮式の警棒。見掛けによらず頑丈。

【防犯ベル】 支給者:ガロン
小学生などによく渡される、ピンを抜くと大音量の警報音が鳴る防犯グッズ。

≪オリキャラ紹介≫
【名前】田々邊福男(たたべ-ふくお)
【性別】男
【年齢】23
【職業】サラリーマン
【身体的特徴】特徴の無い優男
【好きな事・もの】ラーメン、職場のあの娘(誰だよ)
【苦手な事・もの】ラッシュアワー、上司
【特技】漢字に強い
【趣味】ホラーゲームのプレイ
【特筆すべき能力】一般人
【備考】動画サイトにゲームの実況動画などを投稿している



廃墟に行く時は厚着じゃないと危険 時系列順 ボロボロのその羽にだって空舞う力は残されてる
廃墟に行く時は厚着じゃないと危険 投下順 ボロボロのその羽にだって空舞う力は残されてる
ゲーム開始 ガロン 死亡
ゲーム開始 田々邊福男 死亡

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最終更新:2011年10月21日 10:20
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