無菌状態に慣れ過ぎて

2話:無菌状態に慣れ過ぎて


学校の制服であるカーキ色のブレザーと茶色のスカートを着た黄色い狐獣人の少女、
葛葉美琴(くずは・みこと)は橋のど真ん中で目を覚ました。
立ち上がり、自分の置かれた状況を整理する。
首には金属製の首輪、傍に置かれた黒いデイパック、見知らぬ市街地。

「そうだ、殺し合いをしろって言われて…」

そして自分や、近所の知人二人を含む大勢の人々が謎の二人によって殺し合いを
強要されている事を思い出した。

「冗談じゃないよ…殺し合いなんてする訳無いでしょ…!」

美琴はそう吐き捨てながらデイパックを手に取り欄干に背を預け、
中身を確認し始める。

「ああこれが基本支給品ね…それじゃあこの二つが…」

そう言いながら美琴は二つのランダム支給品を取り出した。
一つは登山に使うピッケル。もう一つは……。

「何なのよこれ…」

呆れた表情で「それ」を見る狐の少女。
それは「暴力反対!!」と赤い文字で書かれたプラカードだった。
これを持って行進でもしろと言うのだろうか。

「殺し合い反対!!」

バキッ!!

掛け声と共に美琴はプラカードを叩き壊し川へ投げ捨てた。

「まあいいか、ピッケルは武器として使えそうだし…」
「〈おい、そこのお前さん〉」
「!」
「〈おっと待て待て。ワシはこんな下らん殺し合いなんてする気は無い〉」

不意に現れ美琴に英語で声を掛けたのは、コート姿の壮年の外国人男性。
頭は禿げており髭面で、やや中年太りの体型のようだった。右手には杖を持っている。
美琴はピッケルを構え警戒しつつ男性に得意な英語で尋ねる。

以後、「」内に〈〉で囲まれている会話文は英語で話しているものと見て頂きたい。

「〈本当ですか?〉」
「〈おお、英語を話せるのか…本当だ。じゃなければ、声を掛けずにお前さんを襲っているさ〉」
「〈…信じます〉」
「〈ありがとう〉」

男性の口調と瞳に、嘘偽りは感じられないと見た美琴は男性を信じる事にした。

「〈ワシはジェイムズ・レオナルド・ベイル。アルソンズ・ベイルというペンネームで
推理小説を書いていてな、名簿にもペンネームで載っている〉」
「〈作家なんですか…私は葛葉美琴です。まあ、見ての通り普通の高校生です〉」
「〈そうか、宜しくなミコト〉」
「〈はい。アルソンズさん〉」
「〈え? ペンネームの方で? …まあいいか。
ここで立ち話も何だ、橋を渡って適当な建物に入るとしよう〉」
「〈そうですね…〉」

見通しの良い橋の上に長居するのは危険と判断し、美琴とアルソンズは橋を南に渡った。
そして鍵の空いているCDショップを見付け中に入る。
まず互いに支給品を確認し合う。美琴はピッケルと既に壊し川へ投げ捨ててしまったが、
「暴力反対!!」のプラカード。アルソンズは。

「〈ワシはまずこれだ〉」

そう言ってアルソンズは持っていた杖を見せる。

「〈杖が支給されたんですか?〉」
「〈ところがだ、この杖はただの杖じゃなかったんだ〉」
「〈え?〉」

アルソンズが杖の持つ部分を下を持ちながら引っ張ると、細い刃が現れた。
内部に刀身が仕込まれている「仕込杖」である。

「〈仕込杖ですか〉」
「〈ああ。それとな…〉」

自分のデイパックの中から、アルソンズが取り出したのは黒光りする拳銃
――を模したエアソフトガンだった。

「〈最初見た時は当たりだと思ったんだが…〉」
「〈残念、でしたね…〉」
「〈まあ仕込杖は使えそうだからな、良しとしよう〉」

支給品の確認も終え、今度は互いの、この殺し合いに呼ばれている知り合いについて話し合う。
美琴は近所の雑貨屋経営者四宮勝憲、その幼馴染で剣術師範をしている朱雀麗雅の二人が、
アルソンズは自分の担当編集者であるジョン・ハワードが呼ばれていた。

「〈このハワードがこれまた頼り無い男でな…今頃どうしているやら。
ミコトも知り合いが二人いるのか…お互い大変だな」
「〈ええ…二人共無事だと良いんですが〉」
「〈そうだな…取り敢えずはお前さんの知り合いと、ワシの馬鹿編集者を捜しながら、
首にはめられた首輪を外せそうな奴と、ワシらと同じく殺し合いに乗っていない奴を
仲間にしていく、という感じで良いか?〉」
「〈それで行きましょう…と言うより他にアイデアもありませんし〉」
「〈決まりだな…〉」

作家と狐の女子高生の当面の行動方針が定まった。



【一日目/早朝/E-2橋南側の市街地】

【葛葉美琴】
[状態]良好
[装備]ピッケル
[持物]基本支給品一式
[思考・行動]
 基本:殺し合いから脱出する。四宮勝憲、朱雀麗雅の捜索。
 1:アルソンズ・ベイルと行動。
 2:首輪を何とかして外したい。
[備考]
 ※ジョン・ハワードの情報を得ました。
 ※英語が喋れます。

【アルソンズ・ベイル】
[状態]良好
[装備]仕込杖
[持物]基本支給品一式、エアソフトガン(BB弾20/20)、BB弾300発
[思考・行動]
 基本:殺し合いから脱出する。ジョン・ハワードの捜索。仲間も集めたい。
 1:葛葉美琴と行動。
 2:首輪を何とかして外したい。
[備考]
 ※四宮勝憲、朱雀麗雅の情報を得ました。
 ※英語しか喋れません。


※暴力反対のプラカードは破壊され川に捨てられました。



≪支給品紹介≫
【ピッケル】
葛葉美琴に支給。
積雪期の登山に使う鶴嘴のような形の道具。
氷雪の斜面で足がかりを作るのに用いる他、確保の支点(ビレイピン)、滑落時の滑落停止、
グリセード時の制動及び姿勢の維持、アイスクライミング時の手掛かり、杖代わり、
時には雪上でテントのペグとして使ったりもする。
先端部分は用途上非常に鋭く作られ刃物そのもの。

【暴力反対のプラカード】
葛葉美琴に支給。
白地に赤文字で大きく「暴力反対!!」と書かれた持つ部分があるプラカード。
これを両手で持って高く掲げ「暴力反対!!」と唱えればあなたもデモ隊やプロ市民の
気分を味わえるかも。

【仕込杖】
アルソンズ・ベイルに支給。
外見は普通の杖だが中に細い片刃の刀身が仕込まれている。
切れ味は良い方だが強度が低く、折れ易い。

【エアソフトガン】
アルソンズ・ベイルに予備BB弾300発とセットで支給。
コッキング式の空気銃。要するに玩具。外見はベレッタM92FS。
当然、殺傷能力は実銃と比較するまでも無く低いが、当たれば痛いし、
目に当たれば失明の危険もある。また脅しにも使えるかもしれない。


≪キャラ紹介≫
【名前】葛葉美琴(くずは・みこと)
【性別】女
【年齢】16
【職業】高校一年生
【身体的特徴】黄色の狐獣人。身体付きは普通。学校の制服であるカーキ色の
 ブレザー、茶色のスカートを着ている
【性格】明るく礼儀正しい
【趣味】音楽鑑賞
【特技】英語が堪能
【経歴】両親と妹がいる普通の家庭で育った
【好きなもの・こと】シュークリーム
【苦手なもの・こと】イカ
【特殊技能の有無】一般人
【備考】近所の雑貨店の店主四宮勝憲とその友人の剣術道場主の女性朱雀麗雅と仲が良い

【名前】アルソンズ・ベイル(本名:ジェイムズ・レオナルド・ベイル)
【性別】男
【年齢】55
【職業】推理小説作家
【身体的特徴】禿頭。後頭部に黒髪が残っている。髭を生やし小太り。
 濃い灰色のスラックスと白いカッターシャツの上に茶色のコート着用
【性格】気難しいが根は誠実
【趣味】釣り
【特技】多少の推理力
【経歴】現代アメリカ風国家出身の、多くのヒット作を生み出している作家で、
 幾度か賞にも輝いている。結婚し子供もいたが家庭を顧みなかったため10年前に離婚している
【好きなもの・こと】コーヒー
【苦手なもの・こと】別れた妻子、ジョン(担当)、口うるさい編集長
【特殊技能の有無】ネタが無くても締切が迫るにつれどんどん良いネタが思い付く
【備考】ジョン・ハワードは担当編集者。若造扱いしている




森の中の黒い狼 時系列順 愉しまなきゃ損
森の中の黒い狼 投下順 愉しまなきゃ損

ゲーム開始 葛葉美琴 酔っ払いはマジ勘弁
ゲーム開始 アルソンズ・ベイル 酔っ払いはマジ勘弁

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2010年11月29日 22:30
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。