コワレモノ~血飛沫に嗤え~


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斗貴子の身体がフラッと倒れる。

「え、あ、」

自分の左手を見て善吉は驚愕した。
血と肉が染み付いている。
次に斗貴子を見る。顔が潰れている。そこにあるはずの顔がただの肉の塊。
脳みそがピューピュー出ていて、辺りを赤で染める。
血の特有の鉄臭い匂いも広がる。

「俺が……殺した?」

善吉は決して殺してやろうなんて考えていなかった。ただ、斗貴子が迫ってきて。
敵意を感じて思わず腕を振り抜いた。
だが結果はこれだ。鉄の塊であるリボルバーナックルを全力で振り抜いたらこうなることぐらい善吉にもわかるはずだ。

それでも振り抜いてしまったものは振り抜いてしまったのだ。
時間は戻るわけもなく、そこには血で濡れた一つの肉塊と一人の哀れな青年が残った。

「あ、ああああ、ああ」

――――掠れた声が出る。あれおかしいな、声でねえよ。どうした声帯壊れてんのか。
嘘だよな、俺殺してないよな!ほらお前も起きろよなぁ。おい起きろよ起きて嘘だと言ってくれ。
揺すっても揺すっても揺すっても起きない……。赤い液体が顔に降りかかるな。なんだよこの塗料臭いな。
ベチャッとした肉もついてるし。気持ち悪い――――

でも残念。その幻想は現実。

「――――」

――――認めちまえよ、お前は。人吉善吉は――――

「ち、がっ!俺はっ!」



“人殺しなんだよ”



そんな声が善吉の耳に入った。

「あああああああ、ああああぁぁああ、ああァあ嗚呼ァああ、あああ、ぁああぁ!!!!」

人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し
人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し
人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し
人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し
人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し
人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し!

「やめてくれ!俺は、おれは……何も悪くねえ!!!!
俺はただ、後ろから襲いかかれたから振り払っただけだ!」

脳内を駆け巡る人殺しというリフレイン。紅の呪縛が善吉を攻め立てる。

「だけど……」

人吉善吉は狂わないでいられるだけの意志の強さがあった。
それ故に狂えない。何も考えなくてすめばどれだけ楽なことか、と善吉は思った。

「俺が……俺が!!!!」

真実は一つだけ。

「殺しちまったんだ」

頭を抱えて、蹲り、何も聞きたくない、見たくない。
目の前のことから目を背けたくて。
人を殺したこと。それが泥のように自分の頭の中にへばりつく。



されど、この恐怖劇は終わらない。



何かが善吉の肩に触れて、そのまま飛んで行った。
数瞬後に善吉は遅れてやってきた痛みに顔をしかめる。
見れば肩に抉れたような傷があるではないか。

何だこれは?まだ敵がいたのか?善吉の頭の中はもはやグチャグチャで何を考えればいいのかさえわからない。
それでも自分を襲った相手の顔を確かめようとうしろを振り向いたその時。
善吉をさらなる衝撃が襲った。

「何でだよ……」

自分でもびっくりするくらい小さな声だった。善吉は呆然としながらそんなことを思った。

「竹内……」

そして振り返った廊下の先にいたのは仲間だと思っていた少女――竹内理緒だった。
手には大きなクロスボウを持ち、こちらに向けて射ったところか。

「外しましたか。大型のクロスボウだから手に余りますね」
「お前……最初から俺のこと騙していたのかよ。答えろよ、竹内……」

善吉の言葉がフロア内に木霊する。
嘘だと言ってくれ。質の悪い冗談だってよ、と善吉は泣きそうな顔で呟く。

「ご苦労様でした、あの人を殺していただいて。おかげであたしが危険な綱渡りをしなくてすみました」
「何だと……」

だが返答として返ってきたのは無情な事実。竹内理緒が殺し合いに乗ってるということ。
ただそれだけ。

「騙しててごめんなさい。でも仕方ありませんよね?これは殺し合いなんですから」

善吉が黙っている間も理緒の言葉は続く。

「あたしにもいろいろとあるんですよ、いろいろと」
「…………な……」
「はい?」

掠れたつぶやきのような音が理緒の耳には聞こえた。
スプリンクラーの雨のせいで余り聞き取れなかったが確かに声のようなものが善吉から発せられた。

「……ふ……け……な……」

善吉はふらりと立ち上がり、前を見る。

「ふざけんなよ……」

この言葉に込められた感情は何であろうか。

怒り――――いいえ。

哀しみ――――いいえ。

絶望――――いいえ。

失望――――いいえ。

狂気――――いいえ。

どれも違う。今の善吉に。
人吉善吉の頭の中に存在するのは。

「“どうして”、なんだよ?」

感情が感じれられない無機質な言葉が善吉の口から出る。
無。ひたすらな無。虚無のココロ。
何かが。善吉の大事な境界線が。無くなったような。
理緒はそんなことをふと思った。

「どいつもこいつもよ、殺すのがそんなに好きなのかよ」

淡々と善吉は喋る。理緒はそれを訝しみながらも聞く。
理緒は今すぐ善吉を撃つことは出来る。
クロスボウには矢を装填している。
だができなかった。なぜか、そうしてはいけない気がしたから。

「こいつは護りたいものがあるからみんな殺す。
 竹内はいろいろあるから殺す。……何でだよ。どうしてそんな簡単に人を殺すって言えるんだよ」

その言葉は理緒に響いた。そしてとあることを思い出す。

ブレードチルドレン。呪われたヤイバの子供達。
そのブレードチルドレンを排除するために動いていた“ハンター”と争っていた時のことを。
理緒はブレードチルドレンとして、敵対する者を容赦なく殺してきた。
それも仕方はない。殺らねばこちらが殺られるのだから。

だが人を殺したことには偽りはない。
自分の意志で――明確なる意志で殺したのだから。

(あたしは人を殺してきた。あっさりと、時には凄惨に。
 だけどそれは簡単だった?違う。それだけはありえない。だって――)

理緒は言う。苦々しく、顔を歪めながら。

「簡単な訳ないじゃないですか……」
「なら、」
「それでも殺さないといけないんです、“希望”を護るために!」
「“希望”を護るため?」

善吉は問う。ということはこいつもとある奴を護るために殺し合いに乗ったのか、と考える。

「そうです。その人は私達の“希望”。呪われたあたし達のたった一つの光」

理緒は語る。呪われた自分達の定めを。そして“希望”の存在の尊さを。
善吉は黙って残酷と言えるブレードチルドレンの“運命”を聞く。

「それで?結局はそいつの、“希望”のためにこのゲームに乗ったってことだろ」
「ええ、あたしは決めたんです、あの人の剣とも盾ともなろうって」

その理緒の一言に善吉は――――



「アホらしいな」



冷酷に否定した。

「俺にだっているよ。ここに。この島に大切な幼馴染が。俺にとっての“希望”が。
 でも、俺が護りたいからなんて言って殺し合いに乗ったらそれこそ本末転倒だ。
 めだかちゃんはそんなことされても喜ばない。だから俺は乗らなかった。
だから俺は人を殺すことを否定した」

それでも人を殺しちまったんだけどな、と善吉は呟く。
依然と言葉は淡々としていて、感情めいたものはない。
人を殺してしまい壊れてしまった心の残りカス、その残骸で起動している“人吉善吉”の“ロボット”が喋っているかの様に。

「竹内は“希望”を護るために殺し合いに乗った。
それでその“希望”とやらが死ぬってことも当然考えてんだよな?
まさかこのどこよりも危険な島で五体満足で無事でいるとでも思ってんのか」

え?そんな言葉が理緒の口から漏れた。その考えは予想外で考えもしなかった。

それは理緒が無意識に頭の奥に仕舞っていたこと。
そして考えたくもなかったこと。
“希望”である鳴海歩が――――

「もう死んでるかもしれないぜ、な」
「そんなことありません!彼は!弟さんは死にません!!!」

善吉の言葉を遮って理緒は叫ぶ。それだけはあってはならないことだから。
もし鳴海歩が死んだとしたらブレードチルドレンは破滅あるのみだ。
それに自分の決意はどうなる。ここにアイズや浅月などの仲間がいて尚殺し合いに乗ることを決意したのだ。
ただ鳴海歩を護るが為だけに。

「それに救い?ばかじゃねえのか」

理緒が頭の中でぐるぐると思考を重ねている間も善吉は否定の言葉を紡ぐ。

「そんな血まみれで救われるわけねえよ。ただのエゴで人を殺して、よ」
「あ――――」

それは鳴海歩が死ぬことより奥深くに眠って、いや考えてすらいなかったこと。
理緒にとってそんなことは一度も考えたこともなかった。

「でも、それでもあたしは救われたいんです」

救われたい、その一心で理緒は生きてきた。
そして、誰よりも鳴海清隆と鳴海歩を信じてきた、それは狂信とも言えるだろう。
その狂信を捨てることなどできるのだろうか。

否。考えというものはそう簡単に変わるものではない。
ましてやこの極限状態。あらゆる面からみても最悪の環境で有る。

「そうか、もういい。悪いけどさ俺、まだ死にたくねえんだよ」
「奇遇ですね、あたしもです」

二人は向かい合う。互いの距離はそれなりに離れていて飛び道具のある理緒が圧倒的に有利だ。

「この場を切り抜ける。それには、俺は、俺、は。人を殺すしか――」
「……」

自分に無理やり言い聞かせるように善吉は狂ったように独白を続ける。
もうこの人は普通には戻れない、と理緒は思った。
目は濁っていて、浮かべる薄笑いは気持ち悪い。

「だからさ――死んでくれ」

理緒がクロスボウの先を善吉の頭に向け矢を放つ。
それよりも早く善吉が懐から何かを取り出す。
そして理緒がクロスボウのトリガーを引く前に善吉が手に持った何か――スタンガンを理緒に向けて投げる。
理緒はそれにより標準が少しずれた。そのせいで少しずれて矢が飛んでいく。

「……っ!」

矢は狙っていた顔ではなく右肩に突き刺さった。理緒は急いで予備の矢をクロスボウ装填するが。

「残念だったな」

それは遅すぎて。

「い、や」

理緒のもう善吉は楽に殺せるという油断がこの結果を生んだ。

「まだ、死にた」

再び血の華がこの廊下に咲く。



◆ ◆ ◆



「俺は……」

善吉はスプリンクラーの雨に濡れながら一人佇んでいた。
足元には先程まで生きていた竹内理緒の成れの果て。
顔は斗貴子と同じように潰れて原型をなさない。

「殺したんだ。あいつはともかく、竹内は純然な意志で」

そういってこの廊下に転がる二つの死体を見る。

――眼に刻め。これはお前がやったんだ、人殺し。今更善人ぶるな――

――よくも殺してくれたな。生きたかったのに、救われたかったのに――

善吉の頭の中では微かに残る人を殺したことを咎める常識的な心、殺した二人の恨み声が鳴り響く。
無論、声など実際には聞こえない。それは善吉の被害妄想的なものに過ぎない。

「殺しを許容――受け入れてしまったんだ、俺は」

だが、善吉は心身ともにボロボロだった。
右肩に刺さった矢は丁寧に抜き、制服を引きちぎって無理やり止血したが痛みは残る。
精神的にも普通の高校生では考えられない激動の一時だった。

(狂ってしまったんだろうな、俺は)

そう心中つぶやいて、気分を変えようと無理やり笑ってみる。
窓に映った自分の顔は酷く歪んでいた。
いつもの皮肉げな笑みはどこに行ってしまったのだろうか。

「行こう……もう終わったんだ」

善吉は落ちているデイバッグにクロスボウなどを全部拾いこの場所を後にする。
ここにいたら余計なことを考えてしまう。
そして階段をおりビルから外へ出た時ふと考える。

(めだかちゃん……できれば、今は会いたくないな)

心の整理がつかない今、幼馴染の黒神めだかに会ったら余計な心配を絶対にかけてしまう、と善吉は苦笑しながら思う。

(ははっ、こんなことがあった後でもめだかちゃんの事を考えるなんて、馬鹿だな俺は)

その時の善吉の顔が少しはましになっていた気がするが、それもすぐに消えて。
再び、歪んだ顔に戻る。

(疲れた。少し……休んでもいいよな)

そしてそのままふらっと地面に倒れて善吉の意識は闇へと落ちていく。
だがその前に何かの音が善吉の耳に聞こえた。

(誰だ……どうでもいいか。もう俺、何も考えたくねえ)

今度こそ善吉の意識は闇に落ちていった。
これから人吉善吉は立ち直れるのか。それとも負の螺旋に囚われるのか。
今はまだどちらともいえない。


【竹内理緒@スパイラル ~推理の絆~ 死亡】
【津村斗貴子@武装錬金 死亡】


【H-7/一日目・深夜】

【人吉善吉@めだかボックス】
【状態】気絶、びしょ濡れ、肉体疲労(大)、右肩に刺突痕、右肩上に切り傷、精神崩壊?
【装備】左手用リボルバーナックル@魔法少女リリカルなのは
【持ち物】 支給品一式×3、スタンガン、アーマライト AR18(使用不能)、予備マガジン×3、
クロスボウ、竹内理緒の不明支給品1~2(銃に立ち向かえる武器はない)
【思考】
0.―――――
※折れた宗像形の日本刀@めだかボックスはビルの前に転がっています。

【宗像形の日本刀@めだかボックス】
宗像形がいつも手に持っている日本刀。
特に何の変哲もない。

【スタンガン】
電圧により相手にショックを与え無力化する道具。暴漢に襲われた際にでも使うのが適切。
当て所が悪ければ当てられた相手は死ぬ可能性もある。
ちなみに携帯型のハンディータイプである。

【アーマライト AR18】
アメリカ、フェアチャイルド社のアーマライト事業部が、アーマライトIncとして独立後の1963年に開発した突撃銃。
製造権をコルト社に売却してしまったAR15に替わる、新たな5.56mm口径ライフルとして、アーサー・ミラーらによって設計された。
 作動機構には、オーソドックスなガスピストン方式のガスオペレーションを採用している。
ちなみにこの銃はなぜかどこの国の軍隊にも採用されないというかわいそうな銃でもある。

【左手用リボルバーナックル@魔法少女リリカルなのは】
ギンガ・ナカジマが左手に装着している非人格式・拳装着型アームドデバイス。
リボルバーナックルが持つオートパーソナライズ機能により、
使用者の身体に合わせたサイズに変化すると同時に、色彩も使用者が設定した色合いに変化することができる。

【クロスボウ】
矢などを発射する武器。拳銃型で大きい。



◆ ◆ ◆



「どうするのこれ?」
「そりゃあ、このままにはしない。どこかに運んで治療するさ」

倒れ伏した善吉の前で喋る二人の男女、十六夜咲夜と睦月透真。
二人は銃声が聞こえたので知り合いが襲われてないかと様子を見に来たのだ。
結果、見つけたのは傷付いた人吉善吉だ。

「でもこの子の腕を見なさい、血が付いているわ。
もしこの子がゲームに乗っていたとしたらどうするのよ」
「その時は俺らで止めればいいだろ。それにもし乗ってなかったとしたらどうする。
 このまま見捨てろってことかよ」
「はぁ……あなた馬鹿でしょ?」
「馬鹿でいいよ。目の前の人一人救えないで何がゲームからの脱出だ!そんなの認められるかっ!」

咲夜の冷静な指摘にも透真の考えは搖れない。
彼の心の中では善吉を助けることは既に決定事項だ。

「止めても無駄だぞ。俺は一人でもこいつを助ける」

そう言って透真は善吉を背負って歩き出す。

「わっ」
「その子の片方の肩を貸しなさい。二人の方が疲れないでしょ?」
「咲夜……!」
「勘違いしないで。その子が少しでも怪しかったら私は切り捨てるわよ?」
「それでも、ありがとう咲夜」

透真が笑うのに咲夜も仏頂面ながらしっかりと答える。
二人は少しよろけながらもどこか安心して治療ができる場所を探すため夜の闇に消えていった。


【H-7/一日目・深夜】

【睦月透真@操り世界のエトランジェ】
【状態】健康
【装備】
【持ち物】 支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
0.善吉をどこか安全に治療できる場所に運ぶ。
1.今は乗らない。

【十六夜咲夜@東方Project】
【状態】健康
【装備】ミセリコルデ
【持ち物】 支給品一式、不明支給品0~2
【思考】
0.善吉をどこか安全に治療できる場所に運ぶ。ただし何かあったらそれなりの対応を取る。
1.今は乗らない。



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