7-024

47 名前:1/7 投稿日:2006/07/09(日) 01:42:20
鞄を受け取り城を出る最中、楽進はこれからどうすべきかを考えていた。
この殺し合いの中、自分は何をすべきか。今までと同じように主君曹操の為にこの武を振るうか、
(それとも、自らの命を第一とし、この身修羅と化し、己が主君すら切って捨てるか…)
そんな考えが浮かんだ事に、ふと笑みが漏れた。そのような考えは、常に引いてはいけない一線にその身を置き、曹操軍の一番槍として闘ってきた楽進にあるまじき考えだからだ。
(我が身我が武は、曹操様をお助けする為にあるような物だ。そのような考えはこの楽進の考えではない)
ならばこの後どうするかも、自然と見えてきた。
(まずは身を隠し、この城の前にて殿、もしくは夏候惇殿や夏候淵殿と合流し、今後の方針を決めればいい。)
そう決心し、城から出ようとした楽進は足を止めた。今まで潜り抜けてきた修羅場で常に感じていた物、強烈な殺気が入り口から伝わってきたのだ。
(殺気、こちらに向けているにはいささか距離があるように感じられる。ということは、例の銃器とかいう物かも知れん。
これは、今の内に支給品を確認した方よさそうだ。)
そして、楽進は自分の支給品を確認するため鞄を開き中身を確認した。



48 名前:2/7 投稿日:2006/07/09(日) 02:03:17
一方、城門から少し離れた茂みに郭シ巳が潜んでいた。片手のニューナンブを持ちながら自分の幸福に酔っていた。
「まさか当たりを引いちまうとはな。これさえあれば呂布だろうと董卓の旦那だろうと…ククク」
自分の力では到底叶わない二人が倒れ付す絵が頭に浮かびいびつな笑顔が浮かぶ。
と、そのとき、郭シ巳は城門付近に人の気配を感じた。
「誰か来たな?ククク、早速俺の腕試しをさせてもらうぜ…」
そして待つこと2,3分、城門から人影が現れた。
「クカカカ!死ねぇ!」
茂みから飛び出し、有無を言わさずの速攻の不意打ち。
殺った!と満面の笑みを浮かべた郭シ巳。しかしその顔は驚愕の色へと塗りつぶされた。
「へ?ば、馬鹿な。たしかに当たったはず…」
「ふむ、なんとかなるものだ」
そう言いながら両手の双剣を構えなおす楽進。
郭シ巳の狙いが外れたわけではない。寧ろ正確だった。
げに恐ろしきは楽進。彼は、予め、敵が飛び道具で狙うとしたら、とシュミレートした結果、頭部と心臓と予想した。
そして郭シ巳が飛び出すと同時に支給された双剣を胸と頭の前に出し銃弾をはじいたのだった
「さて、覚悟はよろしいか?」
「ヒッ!」
楽進の迫力に押された郭シ巳は情けない声を上げながら逃げ出した。
(しかし、予想以上に弾速は早かったな。あれが敵にあればこちらの危機につながるが、こちらにあれば実に頼りになる)
そう考えるよりも早く楽進は駆け出していた。そんなことよりも、確実に一つだけわかっていた。
あの男はたぶん我が主君にも牙を向くだろう。ならば…
(殿の障害と成り得る者はこの楽進が排除する!)



49 名前:3/7 投稿日:2006/07/09(日) 02:04:26
数十分に及ぶ追いかけっこは森の中にある少し開けた場所で終わりを迎えた。
楽進「観念しろ。俺が追撃している間にもたくさんばら撒いたんだ。既に弾は残っていないだろう」
楽進がそう言うと、図星だったのか郭シ巳はへなへなとその場に座り込み、うつむいて一言「殺せ」
とだけ呟いた。
「無論そのつもりだ。殿の障害と成り得る者はこの俺が排除する」
そう言って双剣を持ちながら一歩一歩郭シ巳に近付いて行ったその時、城の方から怒声が聞こえた。それを聞いた瞬間、楽進は唐突に悪寒を感じた。
(なんだ?まさか、殿が…!?)
楽進が注意を逸らした瞬間、一発の銃声が鳴り響いた。胸が熱い。そう思いながら胸に触れた手を見るとその手の平は紅に染まっていた。
「ひっかかりおったな、馬鹿めが」
崩れ落ちそうになるのを堪えながら郭シ巳を見ると、そこには満面の笑みを浮かべた郭シ巳がいた。
「もう、弾は無いはず…」
「馬鹿が!この一瞬の為に最後の一発は残しておいたのよ!それも気づかず俺の演技にのせられるとは、この大馬鹿者が!
第一に、貴様ごときから逃げようと思えばすぐ逃げられたわ!」
そう言って高らかに笑った郭シ巳は楽進が傍らに落とした剣を拾い上げた
「クカカカカカ、俺を追い詰めた罰だ。自分の武器で惨めに死ね!」
そう言って郭シ巳は剣を振り下ろした。決着は一瞬でついた。



50 名前:4/7 投稿日:2006/07/09(日) 02:06:14
郭シ巳は三つのミスを犯した。
まず一つは本気で逃げなかった事。そうすれば楽進は>>17の騒ぎに向かっていただろう。
次は最後の一発で頭を狙わなかった事。どんな屈強な人間でも頭を打たれればそこまでである。
そして最後のミスは、彼は楽進という武将を見誤っていた事だ。
郭シ巳は剣を振り下ろした。しかしその剣が楽進の脳天を切り裂く前に楽進は郭シ巳に組み付き、その剛力で郭シ巳の骨を粉々に砕いていた。
決着は一瞬でついた。
その場には信じられないといった顔つきで血を吐き、倒れている郭シ巳と致命傷を受けながらも立ち尽くしている楽進がいた。
(勝つには勝ったが、このような失敗をしてしまうとは…私もまだ未熟というわけか…)
口から血を吐きながら自嘲を浮かべる楽進。彼の命もまた、尽きようとしていた。
(殿、お力になれず申し訳ありません…)
そんな事を思いながら楽進はその命を終えようとしてしていた。
「楽進!」
突如、自分を呼ぶ声に楽進が振り返ると、そこには、傷だらけの曹仁と曹洪がいた。
「おお、御二方、よもや、最後に貴殿らに会えるとは…」
そう言いながら崩れかける楽進を慌てて二人が支える
「しっかりしろ!楽進!」
「生憎、心臓をやられてしまいました。某はもう長くは無いでしょう…」
熱を失っていく体と胸から流れる血を見て、曹仁と曹洪は沈痛なおももちになる
「殿は…?」
「残念だが、敵に襲われはぐれてしまった。無事ならいいが」
心配そうな顔をする二人を弱弱しくも楽進が笑い飛ばす。
「何をおっしゃる。殿がしぶとい事は、御二方がよく知っておられるはず…」
「…うむ、そうだったな」
「ごきぶり並みだからな」
曹洪がそう言うと三人に笑いが漏れた。その時



51 名前:5/7 投稿日:2006/07/09(日) 02:07:41
「ここにいたか!」
声がした方に三人が顔を向けると血走った目で斧を構える朱霊がいた。
「しまった!」
「ひひひ、よくも俺を冷遇してくれたなぁ、ろくな物も持ってないてめぇらなんざぁ、俺様がぶっ殺してやる!」
狂気に飲まれた顔で朱霊が近づいてくる、いつもの曹仁と曹洪ならば朱霊にここまで追い込まれる事は無かっただろう。
しかし二人に支給された物はかみそりとゴム風船である。これでは斧相手に勝てというほうが無理である。
「くっ…!」
「ここまでか…」
絶望的な状況に覚悟を決めた二人。しかし、その後ろで楽進がゆっくりと、しかし、確実に立ち上がってゆく
「この二人は…やらせん…」
通常ならば立ち上がることなどはできる体ではない。だがそれでも楽進は立ち上がる。
「楽進!」
「無理だ!その体では」
止めようとする二人に、楽進は微笑ながらただ一言つぶやく。
「ここで…倒れる…は楽進に非ず…我が命…尽きるまで…我が殿の障害は…排除するのみ…!」



52 名前:5/7 投稿日:2006/07/09(日) 02:08:15
それだけ言うと楽進は双剣を構え、朱霊へと突進した。
(天よ、この死に損ないに最後の力を!!)
「舐めるな死に損ないが!」
怒号と共に朱霊が振り下ろした斧を双剣で受け止める。楽進の傷口から血が噴出し楽進の顔に苦渋の色が浮かぶ。
「舐めるなはこちらの台詞だ未熟者めが」
その言葉と共に楽進は双剣で受け止めた斧は跳ね上げ空いた胴を双剣で薙ぎ払った。
「そ、そんな…こんな死に損ないに…」
それだけを言うと上半身と下半身に分かれた朱霊は地に転がった。そしてそれと同じく楽進も地に伏した。
「楽進!」
曹洪と曹仁が駆け寄る。だが既に楽進は事切れていた。最後まで主君の為に戦い、その顔に満足げな笑みを浮かべながら。



53 名前:7/7 5が二つorz 投稿日:2006/07/09(日) 02:09:44
「…これからどうする?」
簡易に作った楽進の墓に手を合わせ、曹洪が訪ねる。
「無論、孟徳を探す。奴に死なれたらこいつとて浮かばれん」
そう言って曹仁は楽進の墓を見た
「だな。じゃあ行くか。武器も手に入れたし。まずはどこに行く?」
「奴が行きそうな所…奴の家にでも行ってみるか」
「よし、じゃあ行くか」
そう言うと、二人は再度楽進に手を合わせ、目的地へと足を進めた。


【郭シ巳、楽進、朱霊 死亡確認】

【夏候淵 生存確認】

≪孟徳捜索隊/2名≫
曹仁【かみそり、双剣(やや刃こぼれ)】&曹洪【ゴム風船、斧】
※曹操の家に向かいます。現在地は洛陽
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最終更新:2007年11月18日 10:37
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