7-180 誰かの為に生きて この一瞬が全てで


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110 名前:誰かの為に生きて この一瞬が全てで 1/5 投稿日:2006/08/07(月) 00:04:23
しとしとと雨が降る。
それぞれ雨宿りできるような大木の陰で、凌統、馬謖、関興の三名は食べられそうな植物を探すのに精を出していた。
雨の中を移動するのは得策では無いと判断した、というと聞こえは良いが、
その実、雨に濡れるのが嫌だと馬謖がだだをこねただけである。
犬の母子はしばらく姿を消したかと思うと、その鋭い牙で野ウサギを2匹捕らえてきた。
なんだか前にもこんなことがあった気がするなぁ、と思いながらそのうちの1匹を受け取る。
礼を言い頭を撫でてやると、満足気にしっぽを振り、人間たちより一足先に食事にとりかかった。
そろそろこちらも準備にかかるか、と凌統は馬謖と関興を呼び戻し、

……馬謖が得意げに抱えてきた毒丸出しの草やキノコに目を剥いた。

毒々しい桃色の斑が入ったキノコをつまみ上げ、凌統は引きつった笑いをなんとか浮かべた。
「わざとだな? そうだろう、ネタだろこれは!?」
「……何がだ?」
「あぁ本気だ! こいつ本気でこれ食えると思ってるー!!」
「桃色で可愛いだろう? きっと甘いぞ」
「アホだー! こいつアホだー!!」
「あ、アホとは失敬な! これでも諸葛亮先生の一番弟子だぞ!?」
不毛などつきあいを始めた凌統と馬謖の横で、関興がこれもあからさまな毒キノコを手にポツリと呟く。
「この紫と黄の縞々のキノコ、持って帰って僕の家庭菜園に加えたいなぁ……」
思わず膝が砕けてその場にへたりこんだ凌統の顔を、いつの間にか寄ってきていた仔犬が慰めるようにぺろぺろと舐めた。




111 名前:誰かの為に生きて この一瞬が全てで 2/5 投稿日:2006/08/07(月) 00:08:24
「さっきの桃色の、やっぱり食べられるのではないだろうか」
「やかましい! 毒だ毒!」
馬謖が両腕に抱えてきた植物全てが毒持ちという恐るべき結果にあきれ返りながら、
凌統は自分が集めた山菜と、関興が集めた食べられなくもない草で夕食の製作に取り組んでいた。
大木の下の辛うじて乾燥した場所で火を起こし、ウサギ肉に香草をまぶして焼く。塩や胡椒も欲しい所だ。
馬謖が視界の隅で色とりどりの毒草をうっとり眺めているが、無視する。
「しかし凌統殿は野草に詳しいんですね。どなたかに教わったんですか?」
純粋な尊敬の目で見つめてくる関興に、ちょっぴりいい気分になる。
「まぁね。昔、呂蒙殿に教え―――」
「呂蒙!?」
急に険しい顔になった関興に驚き、危うくひっくり返そうとした肉を取り落としかける。
「呂蒙、父上と兄上の仇……! きっと僕が首を取ってみせる! 見ていてください父上兄上、九泉の下から!」
何それ初耳。あと放送によれば関羽まだ生きてる。心の中でツッコミを入れながら、馬謖をつついて小声で聞く。
「(呂蒙殿が関興殿の父兄の仇って本当か?)」
「(本当だが? それでキレた劉備が呉に攻め込んで陸遜にほぼ全軍焼き尽くされたりもしたな)」
凌統は長い溜息をついた。
「……関興殿、初めに呂蒙殿を探しに行くって行ったの覚えてるか?」
「はい、それはもちろん。呂蒙を殺しに行くんですよね?」
駄目だ! これは駄目だ!
頭を抱えた凌統の顔を、今度は母犬が舐めていった。



112 名前:誰かの為に生きて この一瞬が全てで 3/5 投稿日:2006/08/07(月) 00:14:09
親の仇というのは、たとえ協力し合うべき状況になったとしても、そう簡単に受け入れることは出来ない。
かつて同じ呉臣の甘寧を父の仇として深く憎んだ経験のある凌統には、とてもよく分かる。
こりゃ呂蒙殿を頼るのは難しそうだ……。目的地の変更が必要かな。
「関興殿、陸遜殿についてどう思う?」
「宿敵です。必殺です」
凌統が思わず遠い目をしたとしても、誰にも責める事は出来ないだろう。
「(……えぇと、凌統、目的地変更するか?)」
「(なんで関興殿が呂蒙殿と陸遜殿に恨みがあるって教えてくれなかったんだお前)」
「(劉備とか関羽とか全く興味ないから忘れてた……)」
ひそひそと小声でやりとりする凌統と馬謖を他所に、関興はうふふふふと怪しい笑いを漏らす。
「待っていろ呂蒙、陸遜、この煙草で根性焼きして焙り殺してやる」
「煙草で根性焼きって殺すまでにどんだけ時間かかるんだよ……」
「馬謖殿も! 陸遜は貴方の兄上の仇ではありませんか! 何故討とうとしないのですかっ」
えっそうなの? こいつも? とぎょっとして凌統が見た馬謖は、珍しく真面目な顔をしていた。
「夷陵の戦いでは、陸遜は軍師として当然の選択をしただけだ。あんな間抜けな布陣を敷いたこちらが悪い。
 兄上は諌めたが、劉備が聞き入れなかった。……だから私が恨むのは陸遜でなく劉備だ」
布陣の間抜けさについてはお前が言うなと各所からツッコミが入りかねないが、
馬謖の真剣さと言葉に滲んだ怒りは本物だった。思わず関興は気圧される。
雨の空と相まって重くなりはじめた空気を無理やり持ち上げるように、凌統は明るい声を作って言った。
「まあ、ほら、とりあえず飯にしよう! 俺特製の香草焼き、ちゃんと味わって食えよ!」



113 名前:誰かの為に生きて この一瞬が全てで 4/5 投稿日:2006/08/07(月) 00:18:03
「あ、美味しい」
「そうだろ? 実は料理にはちょっと自信あるんだぞ俺」
「うん、見直したぞ凌統。馬鹿なだけじゃなかったんだな」
「そうだろ……っておい、誰が馬鹿だ誰が」
呂蒙直伝ということは秘密のウサギ肉香草焼きに舌鼓を打つと、重かった空気も徐々に軽くなっていく。
人間腹が減ると怒りっぽくなるというのはどうやら本当のようで、ぴりぴりしていた関興も今は普段通りの緩んだ笑いを浮かべていた。
毒と指摘されても懲りずに桃色キノコをかじろうとする馬謖の後頭部を凌統がどつき倒す。
「全身痺れて3日は苦しむハメになるぞ、それ食うと」
「……でも甘そうだし」
「甘くねぇよ! 毒は普通辛いか苦い!」
「……すごく残念だ」
「これでも食っとけ」
山菜探しのときに見つけていた甘い果実を口に捻じ込んでやると、馬謖が途端におとなしくなる。
凌統は同じものを関興にも投げてやり、自分もその赤い果実を齧った。
しゃくしゃくとした歯触りと爽やかな風味を楽しんでいると、馬謖が唐突に驚きの声を上げた。
「何だ、どうした? 甘くなかったか?」
「いや甘くて美味い良くやった。ではなく、結構ここに接近してる奴が居る」
「何?」
探知機を指差す馬謖。覗き込んでみると、なるほど比較的近くに二つの光点がある。
すぐに遭遇するというほどの距離ではないが、無視するのも危険だろう。
「あ、僕見に行ってきましょうか?」
軽く手を上げて言う関興に、頼むと頷いて探知機を渡す。
「シロ、関興殿に付いて行ってやれ」
了解したというようにくぅんと喉を鳴らした母犬を連れ、関興は森の奥に消えて行った。



114 名前:誰かの為に生きて この一瞬が全てで 5/5 投稿日:2006/08/07(月) 00:25:08
「なんか露出の多い日に焼けた女性と、真っ黒ででかい男でした。一言で言うと南蛮丸出し」
関興の報告を受けて、馬謖が祝融と孟獲だろうなと断定した。
「乳丸出しでした。南蛮は下品な土地ですね」
サラリと放たれた関興の台詞に凌統は飲んでいた水をぶほっと吹く。
「凌統殿、汚いですよ」
「って、ちょ、お前いきなりち……乳房とか言うなよ!」
「え、だって現実の女性には僕、興味ないですし。どうでもいいって言うか」
これまたサラリと吐かれた台詞に、凌統と馬謖は目を見合わせた。
現実じゃない女性って何?
突っ込むと危険な気がして、慌てて話題をそらす。
「そ、それで、どんな様子だったんだ」
「だから乳が」
「そうじゃなくて、移動してるかとかそういう」
「あぁ、どうやらその位置で夜を明かすつもりのようでした」
なるほど探知機の示す二人の位置はずっと動いていない。
ふむ、と馬謖が頷いた。
「かつて私は諸葛亮先生に七縱七禽、彼らを七度捕らえ七度放つ策を提案した。
 心を攻めるのを上策とし、城を攻めるを下策とする場面だったからな。
 しかし今度はそれは必要ない。心も身も一発で叩きのめしてやろう」
得意げに胸を張り、人差し指を立てる。

「迎え撃とう。私に策が有る」


<<既視感を追う旅/3名>>
凌統【銃剣、犬の母子】馬謖【探知機】関興【ラッキーストライク(煙草)、ジッポライター】
※荊州南部。≪後追う南蛮夫婦≫を迎え撃つ準備を始めました
※呂蒙、周瑜、陸遜、諸葛亮との合流を目指していましたが、再考中
※探知機で近づく人間を察知可能。馬謖が直接認識した相手は以後も場所の特定が可能
※「なんでお前こんな毒ばっかりピンポイントで採って来る?」「姜維よりはましだぞ私のほうが」「どんなふうに?」「あいつの採ってくるのは常に不味い。食えるけど」「お前、それは姜維さんのほうが絶対ましだから」
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