7-110

270 名前:1/4 投稿日:2006/07/20(木) 18:11:08
ようやく正平に会えた。思えば長い道のりだった気がした。
だが―。
どうやらここでゲームオーバーらしい。
死の銃口がこちらを向いている。最後の最期で友に会えたのは僥倖だったか。
そう思い、眼を閉じようとした瞬間だった。

―強い衝撃と共に押し倒され、気が付けば無様に地面に延びていた。

「諦めるのは、八方手を尽くし終えたときだけにしろ。勝手に戦を終わらせるな」
私に体当たりした男はそれだけ言い放った。

「なぜだ…?あんたとは面識がないはず…?」
私は自然に口走っていた。

「さぁな。ここでは理由無く人が死ぬ。
だったら人を助けるのにも理由など要らないんじゃないか?」
一呼吸おいて、
「それに、無傷ってわけじゃない。こめかみから血が出てる」
そう言いつつ刀を抜き払った。
確かに。だがこの程度で済んで、感謝すべきだろう。
あの状況なら確実に死んでいた。

「すまなかった。礼をい―」

「安心するのはまだ早いぞ…。」
ぎり、と唇を噛み締めながら彼はつぶやいた。
その通り。戦況は五分じゃない。
刀VS銃。
子どもでもわかる。
…不利すぎる。



271 名前:2/4 投稿日:2006/07/20(木) 18:12:00
…死んじゃえよ!!
悪意を込めたその弾丸は、あやまたず孔融を捉えたはずだった。
しかし、横合いから、孔融は電光石火の勢いで体当たりされ、彼の眉間を狙った弾丸は、そのこめかみを掠るだけに到った。

なんでだ。どうしてどいつもこいつも邪魔したり、騙したりするのか。

いらいらする。頭の中で虫か何かが走り回ってるみたいだ。

「みんな死んでしまえ!! 」

銃を構える。残りの弾は3発。邪魔者は4人いる。

くそ。ひとり殺せない。

―え?4人!?

動揺した瞬間に、また一人邪魔が入った。
構わない!!死んでしまえ!
引き金に掛けた指に、力が入る。

―今度は、満寵自身が体当たりされたが、至近距離だったため、銃を構えた手の位置が、体当たりでぶれても、その弾丸は駆けつけた邪魔者―田疇の右胸を貫いた。



272 名前:3/4 投稿日:2006/07/20(木) 18:13:45
「みんな死んでしまえ!」

いけない!
心臓が早鐘のように鳴る。
猛然と走った。ここまで死ぬ気で走った記憶はあまりない。

(くっ!!間に合え!!)

おそらく、発砲するのと体当たりするのは同時だった。

くぐもった『バン!』という音が聞こえた。
次の瞬間、全身から力が抜け、膝が折れた。

「が…!!ごほ……!!」
右胸が苦しい。脳が酸素を求めている。自分の頭がガンガン殴られているようだ。
あり得ないほど血を吐いた。視界が狭まる。
どうやらここまでかもしれない。
駆けつけたまでは良かったが、何の役にも立てなかった…。

『―それが望んだ結末なのか?』

どこかから、声が聞こえた。
それは、懐かしい朋友の声のような、穏やかで、しかし芯の通った声だった。
その声が、立ち上がる体力をくれた。

「…まだ、おわって…ないぞ…!」
それは、大出血しながらの壮絶極まる立ち姿で、凛とした威厳があった。


273 名前:4/5 投稿日:2006/07/20(木) 18:20:13
「…おい…潘…しょ…う…きこえるか…? 」
なぜ彼が斬りつけてきたのかが、今わかった。撃たれたショックで、記憶の断片が戻ってきた。
―猫耳、潘璋、元譲、陳留、みかん、公孫サン―。
―ああ、ようやく思い出した…
「聞こえるぞ!!なんだ!?」
彼が大声で応える。

「…ふく…しゅ…うに生き…るのもじ…ゆうだ…」
喋っている間にも攻撃されるかもしれない。だが、これだけは伝えなくては。
「…だが…それ…にとら…われ、歪ん…だ…生き方…をす…るな!!」
「田疇!!しかと聞き止めたぞ!!」
よかった。私の声は届いたらしい。後は、満寵をどうにかするだけだ。その余裕があれば、だが。




274 名前:5/5 投稿日:2006/07/20(木) 18:20:59
「くそう!!いい加減に死ね!!」

今まで彼が発砲しなかったのは、田疇の言葉に聞き惚れた訳ではなく、その威圧感に手が出せなかったからだ。
バン!!
バン!!!
さらに二発の弾丸が、田疇の体を貫いた。
これは、確実に致命傷だった。が、しかし―。
もはや歩くだけの力さえ残ってないはずの田疇が、銃弾を受けながらも前進し、満寵の首輪を掴んだ。
満寵は、弾倉が空になったことも知らず、ひたすら引き金を引き続けていた。
言葉にならない声を上げながら。

「…うらぎり…者…は…消え…るし…かない」

最期に、田疇は夏侯惇のいる方に向かって微笑んだ。
田疇は一気に首輪を引きちぎり、次の瞬間、爆発音と共に、彼の首輪を掴んでいた右手と、満寵の頭部は吹き飛んでいた。
それが引き金になったかのように、ゆっくりとくずおれる2人。
だが、潘璋には、田疇の口から『ありがとう』という声が聞こえた気がした。
今は、田疇の眼には星だけが輝き続けていた。

【田疇 死亡確認】【満寵 死亡確認】
@禰衡[脇腹負傷]【農業用スコップ】@孔融[こめかみかすり傷]【???】@潘璋【備前長船】
※広辞苑、S&W M60 チーフスペシャル(弾切れ)、刺身包丁は放置。他の状況はそのまま。
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最終更新:2007年03月13日 01:58
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