ゆっくりいじめ系614 チェンジリング後①

これはのチェンジリング前中(fuku1920.txtとfuku1921.txt、wikiの番号は551552)の続編です。
目を通していない人は、先にそちらからお読みください。




翌日、青年は職場に行くと、十日間の休暇を願い出た。
青年は、上司が何度休めと言って聞かないワーカホリッカーだったので、休暇の理由も聞かれることなく受理された。
休暇を貰えた青年は、その足で里の本屋へと向かうと、「ゆっくり」というコーナーに足を運んだ。
ゆっくりが幻想郷に現れて、早数年。ゆっくりの対処法や飼育法、食べ方などが確立し、本屋の一角にゆっくりコーナーが設けられている。
青年はたくさんと並んだ本から何冊かを適当に手にとって流し読みすると、「ゆっくりの飼育」「ゆっくりを丸裸にする!」というタイトルの本が気に入ったのか、それをレジに持っていった。
家に帰って、さっそく読破にかかる。
いつもと違い早く帰宅した青年にれいむが遊んでほしそうな様子だったが、青年は夜にゆっくり遊んであげるからと断ると、少し残念そうな顔をしながらも、邪魔をしては悪いと離れて遊んでいた。
青年はゆっくりの性格や嗜好性、趣味などに重点を置いて読んでいき、ゆっくりの分析をしていった。
本を読んで、苦しめるための方向性を確立した青年は、まりさ一家を苦しめるための道具を取り寄せるため、再び里に出て行った。

10日後、まりさ一家は久しぶりに物置の木箱の中から出されることになった。
その一家の表情は実に穏やかで、恐怖など微塵も感じていなかった。
初めこそ、真っ暗な箱の中にいてどんな目に逢うかとビクビクしていたが、だんだん目が慣れてくれば、ぼんやりとではあるが様子が見えるようになってきた。
また、狭い箱だったので常に家族のぬくもりが感じられるし、大声を出しても物置の中にいるので、青年に届くことがなく叱られることがなかった。
食事は一日一回ながら、生野菜を家族全員分、大量に箱に入れられていた。一日で食べるにはあまりに十分な量だ。
青年からすれば、別に一家を満足させるために大量に入れたのではなく、この一週間はれいむと遊んだり一家を苦しめるための用意をしたりと忙しかったことと、万が一、こんなところで一家に飢えて死んでもらっては困るからにすぎない。
しかし、そんな青年の事情は一家には関係なく、狩りをすることなく毎日送られてくる食事に、一家はとても満足していた。
さすがに以前食べたシュークリームには劣るものの、生野菜など人間の畑を襲いでもしない限り手に入れることなどできなく、今まで食べたことのなかった一家にはご馳走に等しかった。
これがまた美味くて、一層一家をリラックスさせる結果となった。
唯一の難点は太陽の光を浴びれないことだが、冬ごもりの時も暗い巣の中でじっとしていたし、なによりも食が優先されるゆっくりにとって、腹いっぱい食べて、好きな時に寝れるこの環境に思いのほか満足していた。
そんな一家が一週間ぶりに物置から出されることになった。物置から出されると、なぜ自身たちがこんなところにいたのかすら忘れていた一家は、今日はどんな美味しいご飯を持ってきてもらえるのかと喜び浮かれていた。
青年は可哀そうな物を見るように、何も言わずにこの日のために用意した部屋に一家の入った箱を運んで行った。


「ゆっ!? おじさん、まりさたちのごはんはどこにあるの!? わすれたの? ばかなの? いまならゆるしてあげるから、ゆっくりしないでごはんをもってきてね!!」

青年がこの日のために制作したお仕置き部屋に木箱を持ってきて、ドアを完全に閉め、まりさ一家を放すと、開口一番いつもの傍若無人っぷりを発揮する父まりさ。
子供も子供で「ゆっくりしないではやくもってきてね!!」と、青年の足に体当たりをしている。ここまでアホだと逆に哀れさを誘う。
青年はそんなまりさの頭をガッチリと掴むと、ギリギリと握りしめていく。

「いぎゃああぁぁぁぁぁ―――――!!! なにずるの、おじざん!!」
「お前、何であんな所に閉じ込められていたのか忘れたのか?」
「まりざだぢはなにもしでないよ!! まりざだぢのゆっぐりをじゃまじだのば、おじざんだよ!! ゆっぐりあやばっでね!!」
「ふう……処置なしだな……」

青年は言うだけ無駄といった感じで、まりさを開放する。
どうせ言ったところで三歩跳ねれば忘れるのだ。これからの行動で自分たちの愚かさをじっくり解らせてやればいい。
まりさはまりさで、解放されたのは自分の言い分が正しかったからだと言わんばかりに、胸を張っている。
青年はそんなまりさに構わず、母ありすのほうから制裁を始めることにした。ありすの体を掴むと、両足で挟みがっちりと押さえつける。
「とかいはのありすになにするの?」とうるさいありすを青年は相手にすることなく、右手に持っている機械のスイッチを入れる。
青年がありすのカチューシャを取ると、「ゆゆっ!? ありすのかちゅーしゃになにす……」と命に等しいカチューシャを取られたありすの悲鳴を最後まで聞かずに、ブウゥゥと音を出し小刻みに揺れるそれをありすの頭にもっていった。

「ゆあああぁぁぁぁぁ―――!!! ありずのぎれいながみがあああぁぁぁぁ――――!!!」

母ありすの絶叫が部屋中にこだまする。
バリカンを当てられ、真ん中にきれいな頭皮を覗かせるありす。
その様子を見ている家族もぎゃあぎゃあと騒がしいが、青年は素早くありすの髪をきれいに刈っていく。
一時的にであるが、カチューシャを取っているので、一家の敵対心が母ありすに向かないとも限らない。
青年は手早くありすを坊主頭にすると、すぐにカチューシャを頭につけ直してやった。

「あ、ありずのがぁみぃがあああぁぁぁぁ―――!!! なんでごんなごどずるのおおぉぉぉ――――!!!」
「おじざぁん!!! ゆっぐりおがあざんのがみをもどじでねええぇぇぇぇぇぇ――――!!!」

処理を終えた母ありすを横に投げ捨てた青年は、「次はまりさだ」と父まりさを捕まえようとする。
妻の様子を見ていて、青年が自分に何をしようとしているのか分かったまりさは、悲鳴を上げながら狭い部屋中を逃げ回る。
しかし所詮はゆっくり。人間の足に適うはずもなく、青年に捕まると、先ほどの母ありすと同じように帽子を取られバリカンを当てられる。

「やぁめぇでえぇぇぇぇ――――!!! まりざのぎれいながみをぎらないでええぇぇぇ―――!!!」

まりさの懇願の叫びも空しむ、青年は淡々と頭を刈っていく。
一分もかからず坊主2号が出来上がると、次は子供と番と、逃げ惑う子ゆっくりを掴み、両親同様頭を刈っていった。
見事、全員を三分刈りにし、周りを見渡す。帽子をかぶっているまりさはともかく、ありすの坊主にカチューシャ姿はかなりキモい。
一家は互いの顔を見渡しては、涙と涎とわけのわからない体液で顔をぐちゃぐちゃにしていた。
青年はようやく終わったと、額を拭う。

「ふう、ようやく第一段階終了か!!」
「まりざだぢ、わるいごどじでないのに、なんでごんなごどずるのおおおぉぉぉぉ―――!!!」
「自分の立場も分からないハゲにはこうするしかなかったんでな」
「まりざだぢ、はげじゃないよぉぉ!!」
「いや、十分ハゲだろ」
「おじざんがまりざだぢのぎれいながみをぎったがらでじょおおぉぉ――――!!!!」
「そうだよ、ハゲ!! おれが切ったよ、ハゲ!! それは認めるよ、ハゲ!! でも、ハゲ!! お前らがハゲなのは変わらないだろ、ハゲ!! ちゃんと理解してね、ハゲ!! ハゲだから理解できないの、ハゲ? 馬鹿なの、ハゲ!? (´,_ゝ`)プッ、ハゲ(笑)」
「ゆがああああぁぁぁぁぁぁ――――――!!!!! はげっでいうなあぁぁぁ―――――!!!!」

まりさ一家は、散々ハゲとバカにされた屈辱を、体当たりをもって青年にぶつけていく。
しかし、当然青年にそんな攻撃が通じるはずもなく、まりさたちの姿を見ては上から目線で見下し、その様子を失笑をもって返す。
父まりさなど頭をじょりじょりと撫でられ、「おお、ハゲハゲ!!」と散々バカにされる始末。
それが一家を余計イラつかせ、さらにムキになって、青年に無駄な攻撃を繰り返させる。

青年はこの一週間、どうすればまりさ一家を苦しめることができるかを考えていた。
肉体的な痛めつけは簡単にできる。別にそれをするのに躊躇いはない。
しかし、肉体的な方法をとってしまえば、所詮は饅頭だ、いつ壊れてしまうかわからない。
れいむが今まで味わってきた苦しみを与えるには、それこそ長い期間をかけて、じっくりと痛めつける必要がある。自分たちがいかにれいむより下の存在であるかを分からせる必要がある。
その第一歩がこの丸坊主だ。
本を読んで研究したことによれば、まりさ種とありす種は、ゆっくりの中でも特に髪にこだわりを持つ種族らしい。確かに金髪のその輝きは、ゆっくりの中で一際目立つに違いない。
切った後の様子を見れば、このまりさ一家もその例にもれず、髪が自慢だったようだ。
「じねええぇぇぇ、じねぇぇぇ――――!!!!」と狂ったように青年に体当たりを喰らわせてくる様は、青年の溜飲をこれでもかと下げてくれる。

このまま一家を無残な姿をからかうのも面白いだろうが、れいむの相手もしなければならないので、さっさと次の作戦に取り掛かることにした。
一家は次々と青年に罵詈雑言をぶつけていくが、青年はなんのその、部屋の隅に積んである段ボールを下に下ろし、中から虐待用のアイテムを取り出す。
虐待のマストアイテム、透明な箱だ。しかしこの透明な箱、一般に流通している透明な箱とは少し違い、箱の上の面に小さな丸型の穴が開けられていた。
一辺が30㎝ほどの立方体で、穴は直径にして5㎝といったところか。今はその部分には蓋が閉められている。そんな穴のある箱を子供の数だけ用意すると、一つずつ部屋の中に並べて床に固定した。
青年は未だ女(?)の命である髪を切られた報復を繰り返す子ゆっくりを適当に摘みあげる。

「ゆー!!! まりざをはなじで、おじざんはゆっぐりじねえええぇぇぇ――――!!!」

手の中で暴れる子坊主……もとい子ゆっくりを穴あき透明箱に入れて、その蓋を閉める。その後、他の子ゆっくりも同様に一匹ずつ箱の中に閉じ込めていった。
子ゆっくりたちは、何とか箱から出ようと箱に体当たりを喰らわせたりしている。

「おじざあん!!! まりざのごどもだぢになにずるのおおおぉぉぉ―――!!!」
「どがいはのありずのごどもをはやぐだじであげでええぇぇぇぇ――――!!!」

両親も叫びながら透明な箱に体当たりをしている。
しかし、この箱はこの日のためにわざわざ作った特注品。500kgの衝撃テストにも合格したJIS規格も一発合格の一級の箱だ。両親の体当たり程度でどうにかなるほどやわではない。
そんな無駄なあがきを繰り返す両親を尻目に、今度は少し大きな箱を段ボールから取り出した。
言うまでもなく両親用である。
ちなみに両親用の箱は、子ゆっくりの箱を両親のサイズにしたものだ。
箱の上の面を開け、暴れるまりさとありすを無理やり、箱の中に順に詰めていく。

「ゆっぐりだじでええぇぇぇ――――!!!」
「息は出来るから死にはしないさ」
「なんでごんなめにあわなぎゃならないのおおおぉぉぉ――――!!!」
「ほんとハゲは物覚えが悪くて困る。ない髪使って考えな、ハゲ!」
「ゆぎいいぃぃぃ――――!!! まだはげっでいっだあああぁぁぁぁ―――――!!!」

両親を箱にしまい終えると、子ゆっくり全員の箱が見える位置に置く。
その後、青年は適当に目のついた子ゆっくりの箱に近づくと、箱の穴の蓋を取った。

「ゆっ!? やっぱりおじさんはばかだね!! こんなあながあったらかんたんにでられるよ!!」

今まで出ることができなかった箱に、突然穴ができて、嬉しがる子まりさ。
偶発的に出来たわけではなく青年が開けてあげたというのに、疑いもせず喜ぶのは、子供だからなのかゆっくりだからなのか……
穴の蓋をあけられた子まりさは、箱から出るべくその穴目掛けてジャンプする。
しかし、子ゆっくりのジャンプ力では箱の天井には到底届かない。

「ゆぎいいぃぃ!! なんでとどかないのおおおぉぉぉ―――!!!」

いつになれば届かないと気付くのか、子まりさは延々と天井に向かってジャンプを繰り返す。
青年はそんな子まりさを何するでもなく、今度はひと際大きな段ボールを床に置くと、それを開けて中身を持ち上げた。
その瞬間、まりさ一家の悲鳴が部屋中に轟く。

「ゆああぁぁぁぁぁ―――――!!! なんでれみりゃがいるのおおおおぉぉぉぉ―――!!!」
「お、おじざあぁぁんっ!!! ざっざとれみりゃをじまっでえええぇぇぇ――――!!」

一家は大いに慌てふためいている。
青年が段ボールから取り出したのは、体つきのゆっくりゃだった。ちなみに、今は青年に麻酔を打たれ眠らされている。
子ゆっくりたちは狭い箱の中で逃げまどい、両親もそんな様子をみて、「はやくかくれてね!!!」と、箱の中から騒いでいる。
といっても、透明な箱の中で隠れるところなど当然ない。
青年はそんな一家を横目に、れみりゃの頬を強く捻り、無理やり起こしにかかる。

「……う~♪ れみりゃのほっぺがいたいど~♪ なんでだど~♪」

青年に無理やり起こされたれみりゃが、頬を擦りながら辺りをきょろきょろしている。
今の状況が全く理解できないようだ。
そんなれみりゃに、青年はやさしく言葉をかけた。

「お早う、れみりゃ。よく眠れたかい?」
「う~♪ ここはどこだど~♪」
「ここはお兄さんのお家だよ。君が森の中で倒れてたところを助けてあげたんだよ」
「う~♪ そうなのかど~♪ ありがとうだど~♪ おれいにこのおうちをれみりゃのべっそうにしてやるど~♪」
「それは光栄だな。それじゃあ、プリンを持ってきてあげるよ。お腹がすいただろ?」
「う~う~♪ れみりゃおなかがすいたど~♪ はやくぷっでぃ~んをもっできてだど~♪」
「今から作るから少し待っててね。持ってくるまで、おやつでも食べてるといいよ」
「う~♪ れみりゃはいいこだから、おやつをたべてまってるど~♪」

れみりゃは部屋の中に箱詰めのおやつがあることを確認したようだ。
喜々として、箱を物色していく。
青年がドアに近づくと、一家は大声で青年を呼び止める。

「まっでええぇぇ、おにいざん!!! れみりゃをおいでがないでええぇぇぇ―――――!!!」
「ありずだぢがわるがっだでずううぅぅ――――!!! ゆるじでぐだざいいいぃぃぃ――――!!!」

「たべちゃうど~♪」と、嬉しそうに一家の箱に突撃していくゆっくりゃと対称的に、喚きちらす一家。あれだけ敵視していた青年にすら、懇願すほど追いつめられている。
しかし、青年はそんな一家の言葉に耳を傾けることなく、重い扉を開け、部屋から出て行った。
後には「カチャ」と、外から鍵を掛ける音だけが残った。



「ゆっ? おにいさん、おしごとおわったの?」
「ああ。だから少しの間なら遊んであげるよ」
「ゆゆっ!! ありがとう、おにいさん!! ゆっくり遊んでね!!」
「おう。ところでれいむ、聞きたいことがあるんだが、さっきゆっくりの悲鳴とか叫び声とか聞こえたか?」
「ゆっ? なんにもきこえなかったよ!!」
「そうか、じゃあ俺の聞き違いかもしれないな。それとれいむ、俺の仕事場には近づかなかっただろうな?」
「ちかづかなかったよ!! れいむ、おにいさんのおしごとのじゃまはしないよ!!」
「偉いぞ、れいむ!!」

頭を撫でてやると、嬉しそうにするれいむ。
青年の家で過ごすようになって、おおよそ三週間。赤ゆっくり程度の大きさしかなかったれいむは、今や他の姉妹と同じくらいの大きさに成長していた。この一週間で赤ちゃん言葉もなくなった。
元々れいむは一人で生まれたのではなく、6匹の姉妹といっしょに生まれてきた。
にもかかわらず、一人だけ体が小さくうまく言葉が発せられなかったのは、栄養失調による発育不全のせいだ。
青年の家に来て、毎日栄養のあるものを食べたおかげで、今やそこらのゆっくり以上に健康体になっている。

青年はそんなれいむに悲鳴が聞こえなかったと言われ、ホッとしていた。誰でもそうだろうが、自分の大切な者に、自分の性癖や残虐性は見られたくない。
一週間かけて改造したあの部屋は、河童の技術の威信をかけた完全防音を誇り、例えドアの前に来ても中の声は一切届かない優れものだ。
また、外から鍵をかければ、一家やゆっくりゃではどうあがいても部屋から出ることはできないので、れいむが襲われる心配もない。
家をそんなに改造するのはどうかと思われるかもしれないが、青年はすでに里の一等地に土地を買い新しい家を建築している最中だ。
この家は新しい家が出来しだい潰す予定だったので、こんな暴挙ともいえる行動も取ることができる。
金があるからこその虐待である。


「そろそろ仕事にかからないとな」
「ゆぅ……ゆっくりがまんするよ!! おしごとがんばってね!!」
「おう。それと俺の仕事場には来ちゃいけないぞ」
「わかってるよ。れいむ、いいこでまってるよ!!」
「いい子だ。今日は御馳走にするからな。楽しみにしてろよ」
「ゆゆ!! れいむ、たのしみにまってるよ!!」

虐待部屋を出て2時間くらいだろうか? 青年はれいむとの遊びを切り上げ、部屋の様子を伺いに行った。
れいむに来るなと言ったが、別に部屋の前に来たところで、れいむにはドアを開けることは出来ないし、中の声も聞こえない。
それでも万が一を考えて来させないのは、青年の親心である。
部屋の前につき、ポケットから鍵を取り出すと、それを鍵穴に差し込んだ。
ドアを開けて、素早く部屋に進入する。
中からは一家の泣き叫び声と共に、ゆっくりゃの泣き声も青年を迎えてくれた。

「うああぁぁぁ~~~ん!!! なんでおがじがどれないんだどう~~~~!!」
「いだいよおおぉぉぉぉ―――!!! おどうざん、おがあざん、だずげでえええぇぇぇ――――!!!!」

青年はその光景を目にし、にんまりと目を細めた。予想通りの展開だったからである。

青年が部屋を出た後、ゆっくりゃはお菓子、即ち一家に狙いを定め、突撃していった。
しかし、当然一家は堅い箱の中に入れられていて、ゆっくりゃに出すことはできない。

「う~う~♪ おかしのくせになまいきだど~~♪」

初めこそ、こんな箱を開けるなど造作もないと思っていたゆっくりゃだが、中々箱が開かないと次第にイライラし、手当たり次第に箱を取っ換えていった。
しかし、どの箱も開けることが出来なかった。

「うううぅぅ……なんではこがあかないんだど~~~」

箱を「ぽいっ♪」したいところだが、床に固定されていてそれも出来ない。
さっきまでは自分のゆっくりを邪魔する箱でしかなかったが、今では自分を守る絶対防御の楯になったせいか、一家には若干余裕が出てきた。両親たちも子供の無事を見て、ホッとしている。
しかし、そんな余裕もすぐに崩れ去った。
ゆっくりゃが取っ換えた箱の一つに、穴が開いていたのだ。
もちろん、青年が蓋を開けた子まりさの箱である。
それを見つけたゆっくりゃ。泣き顔からいつものまぬけ面に戻ると、今までの鬱憤を晴らすかのように勢いよく箱の中に手を突っ込んだ。

「いやあああぁぁぁぁ――――!!! なんでまりさのはこだけ、あながあいてるのおおぉぉぉ――――!!!」

箱の中で逃げまどう子まりさ。
しかし、どんなに逃げようと狭い箱の中に逃げ場所なんてあるはずなく、いとも簡単にゆっくりゃの手に捕まった。

「やっとつかまえたど~~~♪」
「ゆぎゃああぁぁぁ―――!!! まりざをだべないでええぇぇぇ――――!!!」
「だめだど~♪ れみりゃをおこらせたばつだど~~~♪ たべちゃうど~~~♪」

ゆっくりゃが箱からまりさを引っ張り出す。
しかし、ここで思わぬ出来事が起こった。ゆっくりゃの腕が箱の外に出ないのである。
理由が分からないゆっくりゃ。もしかした引きが弱いのかと、腕に力を込める。

「ゆぎいいぃぃぃ――――――!!! いだいいだいいだいいだい………!!!」

片手なので、ゆっくりゃに子まりさが千切れるような握力はない。
それでも強く握りしめられ痛いことには変わらず、子まりさは激痛と恐怖で悲鳴を上げる。
しかし、どんなに強く腕を引いても、やはりゆっくりゃの腕は箱の中から出なかった。

お菓子の掴み取りをしたことのある人なら理解できるだろう。
箱の上には穴があり、中にはお菓子がたくさん入っている。大量のお菓子を握って箱から手を出そうとすると、膨らんだ手が穴の縁に引っ掛かって出すことが出来ず、結局、少量のお菓子しか取れないようになっている。
原理はこれとまったく同じである。
元々、この穴は子ゆっくりが出入りできるギリギリの大きさに作られているので、ゆっくりゃが子まりさを握っている限り、永遠に箱から手を出せないようになっているのだ。
しかし、そんなことはゆっくりゃにも一家にも分からない。
子まりさは延々と泣きわめき、ゆっくりゃはなぜ取れないのかとムキになり、両親はいつ子供が食べられないかと気が気ではなく、他の姉妹は次は自分かと箱の隅で震えていた。
青年はそんなゆっくりゃの後ろに行くと、ポケットから取り出した注射器を手に取り、ゆっくりゃの首に打ち込んだ。

「う~~~? ちぐっでしたどう~~」

箱に入れていない左手で、首筋を押えるゆっくりゃ。
すると、すぐに即効性の薬が効いたのか、箱の中の子まりさを落とすと、バタンと床に倒れた。永琳精製、ゆっくり専用の即効性の麻酔である。お値段は推して知るべしという代物だ。
青年は倒れたゆっくりゃを再び段ボールに戻すと、一家に向き直った。
子まりさは、未だ目を真っ赤にはらし、息を荒げている。泣きすぎたのか、目元がブヨブヨにふやけている。
この2時間、想像を絶する恐怖と痛みを味わったのがよく分かる光景だ。

しかし、青年はそんな姿を見たくらいでは、虐待を止めはしない。止めるくらいなら、そもそも始めから虐待などしていない。
ようやくゆっくりゃの脅威から解放された一家に追い打ちを掛けるべく、すぐさま次なる作戦に移る。
青年は小さな段ボールを床に置くと、そこから注射器を取り出した。
といっても、さっきゆっくりゃに打った麻酔薬とは中身が違う。
透明な液体と黄色い液体の入った注射器をそれぞれ一家の人数分用意すると、先ほどの子まりさを透明な箱から出して、まず黄色い液体を打ち込んだ。

「ゆぎゃあああぁぁぁ――――!! いだいよおおぉぉ――――!!!」

さっきまでのゆっくりゃに握られていた痛さとは違う、瞬間的な痛み。今までに味わったことのない痛みに、青年の手の中で暴れ狂う子まりさ。
そんな子まりさを意に返さず、青年は続いて透明な液体の針を打ち込んだ。
子まりさに打ち終えると、今度は他の子ゆっくり全員を箱から取り出し順に打ち込んでいく。
他の子ゆっくりたちは、子まりさと違いゆっくりゃの暴行を受けていないせいか、一層痛さが身にしみるようだ。
子ゆっくりもすべて打ち終えると、最後に両親に注射を打つ。ただ両親は体が大きいので、黄色三本透明三本を打ち込んだ。
痛さも三倍、絶叫も三倍である。

「なにずるのおおおおぉぉぉぉ――――!!!! おじざあん!!!」
「いやなに、お前たちにご飯を食べさせてやろうと思ってな」
「ゆっ!? ごはん? ゆっくりごはんたべさせてね!!」

単純なもので、ご飯という単語を聞いた瞬間、今の状況もこれまでの仕打ちも忘れて、笑顔を見せる一家。何でこれが野生で生きていけるのか不思議でならない。

「ご飯なら今食べさせてやっただろ」
「ゆゆっ!? まりさたち、ごはんはたべてないよ!! わすれたの? ばかなの?」
「馬鹿はお前らだろ、ハゲ!!」
「ゆぐううぅぅぅ―――!!! まだはげっていっだああぁぁ!!! まりざだぢ、まだごはんたべてないがら、さっさどもっできでね!!!」
「物わかりの悪い奴らだな。だから、今あげただろうが。栄養剤を打ってやっただろ」
「えいようざい? そんなごはん、たべてないよ?」
「今お前らの体にこれを刺して、体の中に栄養を送ってやったんだよ。これさえ打てば、一日何も食べなくても問題ないんだよ。ゆっくり理解してね、ハゲ!!」
「ゆぎいいぃぃ―――!!! まだハゲっ(ry」

注射器を一家の目の前に見せつけ、ゆっくりと理解させる。
しかし、一家にはどうしても青年の言っている意味が分からなかったのか、「まだごはんたべてないよ?」と馬鹿の一つ覚えのように繰り返していた。
青年はこれ以上説明するのもメンドイと、説明を切り上げた。
そんな中、父まりさの体にある異変が起こった。

「ゆゆっ!? まりさ、なんだかおなかがすいてきたよ!!」

栄養剤を打ったばかりだというのに、このセリフ。他人が聞いても、「相変わらずゆっくりは卑しいなあ」くらいしか思わないだろう。
しかし、まりさのこの言葉を聞いて、青年は心の中でほくそ笑んでいた。
そんなまりさに続いて、母ありすも「ありすもおなかがすいてきたわ!!」と、腹が減ってきたらしい。
さらに続いて、子ゆっくりもが「おなかがすいたよお!!」と、全員が空腹感を訴えてきた。
これは自然現象でも何でもない。実は青年の打った透明な液体がこの空腹の理由である。
青年が打った二本の注射器。黄色の液体はゆっくりの栄養が偏らないようにするサプリメントみたいなものだが、透明な液体はそれとは違い、人間の胃液を分泌増幅し、食欲を促進するための薬品である。

これまでの一連の薬は、すべて永遠亭の永琳医師の処方である。
10日前、青年が里に出向くと、ちょうど薬売りの兎―ようはウドンゲであるが―が里に薬を持ち込んでいた。
それを見た青年は「ゆっくりにこれこれこういった薬を使いたいのだが?」と、ウドンゲに相談を持ちかける。
「私はそんな薬は持っていないが、自分の師ならそんな薬を持っているかもしれない」というウドンゲの言葉を聞いて、青年はウドンゲに連れられて永遠亭を訪れた。
そこで永琳に相談を持ちかけて手に入れたのが、この麻酔薬、栄養剤、胃液分泌薬である。
ちなみに麻酔薬と栄養剤はゆっくり専用の薬だが、胃液分泌薬は人間のものであった。
胃袋のないゆっくりに人間の薬が効くのかと尋ねると、永琳は実際にゆっくりに打って実演してくれた。しっかりとその分の代金は請求されたが……
その結果、薬を注入されたゆっくりは数分後、「なんだかおなかがすいてきたよ!!」としっかりと効果を表していた。5分後にはあまりの空腹にイライラしていた。なんで胃が無いのに効くのか不思議でならない。
青年はそれを気に入ると、「1か月分ください」と永琳に薬を売ってもらおうとした。
しかし、さすがに「1か月分も在庫はない」と一旦は断られたが、「時間をくれたら作ってあげる」と言われ、ちょうど10日間の猶予があることだし、1割増しで料金を払い薬を作ってもらうことにした。
一週間後、割増料金の効果か、早く仕事を終えた永琳がウドンゲに青年の家まで持って来させ、今に至るというわけである。

「おじさん、まりさたち、おなかがすいたよ!! ゆっくりしないでごはんをもってきてね!!」
「何言ってんだ。さっきの説明しただろ。お前たちには栄養剤を打ってやったから、ご飯なんて食べる必要がないんだよ」
「まりさたち、ごはんなんてたべてないよ!! 
「いや、もういいわ……」

青年はこれ以上話すのもメンドイとばかりに一家から離れると、今度は段ボールから香霖堂で仕入れたある数個の機械を取り出し、一家の目の前に置いた。
店主に習った通りに、いろいろな線を組み合わせ作業をしていく。
その間、さらに薬が効いて腹が減った一家が「おじざあん、なにがたべるものちょうだいいいぃぃぃ―――!!!」と五月蠅いことこの上ないが、青年は一家を無視して黙々を作業を続ける。
「よし、終わったぞ!!」と満足そうに頷くと、青年はおもむろにいじっていた機械のスイッチを入れた。

「ゆゆっ!! ぐずのれいむがはこのなかにいるよ!!

それを見て、一家は驚き声を上げる。
一家が見ているのは、テレビに映ったれいむの映像である。
青年が取り出した機械、それは幻想入りしていたテレビとビデオカメラとバッテリーであった。
うまく接続しテレビに映ったのは、この10日の間に撮りだめしたれいむの食事シーン。

『れいむ、うまいか?』
『おいしいよ、おにいさん!!』
『そうか!! じゃあ、これも食べてみろ。うまいぞ』
『むーしゃむーしゃ、しあわせ~♪♪』

内容は人間ですら滅多に食べられないような豪華な食事に、れいむが度々舌鼓を打っているというそんな内容である。
そして、当然のごとく、テレビに映った映像を見て一家は騒ぎ出す。

「ぐずのれいむのくせになまいきだよ!! まりさたちがたべるから、ぐずのれいむはゆっくりしね!!」
「そうよ!! そんなおいしそうなごはんはありすたちにこそふさわしいわ。ぐずはゆっくりそこからでていってね!!」

一家はテレビというものが理解できず、テレビの中にれいむがいると思っているようだ。
薬が完全に回ってきたのか、空腹で我を忘れた一家は、テレビを見てはれいむをさんざん罵倒している。
しかし、映像が返事を返してくれることなど当然なく、今まで散々バカにしてきたれいむが自分たちを無視してするばかりか美味しいものを食べているのを見て、一層ボルテージが上がってきた。

「まりさはゆっくりしねっていってるんだよ!! やっぱりぐずのれいむはばかだね!!」
『おにいさん、これすごくおいしいよ!! れいむ、いちばんきにいったよ!!』
「ぐずのくせにまりさをむししないでね!! さっさとまりさたちにたべさせてね!!」
『ゆっ? おにいさん、それなあに? ぱく! むーしゃむーしゃ、しあわせ~♪♪』
「だからむししないでっていってるんだよ!! おとうさんのいうことがきけないの!!」
『おにいさん、うれしいけどこんなにいっぱいたべられないよ!!』
「なんでまりざのごとむじずるのおおおぉぉぉ!!! れいむのぐぜにいいぃぃぃ―――!!!」
『ゆゆっ!! けーきはたべれるよ。れいむ、やっぱりおなかいっぱいじゃないよ!!』
「ゆぎゃああぁぁぁぁ――――!!!」

空腹と映像のれいむの態度に遂に切れたまりさ。
それに続くように、母ありすも姉妹たちもれいむの態度に切れだす。
しかし、のれんに腕押し糠に釘の如く、一家はテレビ相手に独り相撲を取っている。
青年はそんな一家の様子をしばらく眺めていたが、何時まで経っても延々と同じことを繰り変えす一家に飽きて、静かに部屋を出た。


再びれいむと遊んで時間を潰していた青年は、再度一家の部屋を訪れた。
そこでは、なにやらやつれた一家が、未だにテレビ相手に延々愚痴を言っている。

「……だからまりさをむししないでね。まりさにごはんをちょうだいね。れいむのくせになまいきだよ」

さっきまでの勢いはなく、虚ろな表情でテレビに話しかけている。
おそらく空腹で目が回り、叫びすぎて疲れたのだろう。まあ、栄養剤を注入してあるので死にはしないが。
青年からすれば、そんなになるまで叫ばなければいいのにと思うが、自分たちがれいむより上だと考えている一家は、そうでもしていないとプライドを保てないのだろう。

青年はそんな様子をしばらく見ていたが、次の虐待に移るべくビデオの映像を止めた。
そして代わりに取り出したのは新しいテープ。デッキに入れて、映像を一家に見せつける。

『どうだれいむ、気持ちいいか?』
『ゆ~~……おにいさん、とってもきもちいいよ!!』
『しっかりきれいになれよ!! 髪はゆっくりの命だからな』
『おはなのいいにおいがするよ』
『ゆっくり用のバラの香り付き高級シャンプーだ。いい匂いだろ。髪のないゆっくりには必要ないけどな』
『かみのないゆっくりなんているの?』
『世の中にはいるんだよ、そんなハゲゆっくりが』
『ゆー……かわいそうなゆっくりだね。かみのけがないなんて』
『そうだな。その分れいむがきれいになってやれ。そうすれば、ハゲのゆっくりも喜んでくれるよ』
『わかったよ!! かみのないゆっくりさん、れいむがかわりにきれいになってあげるからね!!』

見ての通り、れいむの入浴シーンである。
これを見て再び火のついた一家。一家にとっては最高の燃料だったようだ。さっきまでの疲れなどどこ吹く風と言わんばかりに立ち上がると、再びれいむ罵倒の口を開く。

「まぁりぃざぁははげじゃないよおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「ありずだっでぎれいながみがあっだのにいいいぃぃぃぃぃ―――――!!!!!」
「でいぶのぐぜにいいいいいぃぃぃぃぃ――――――!!!!」

入浴を済ませて、髪を乾かした後のれいむのキューティクルを見て、一家はさらにれいむに敵愾心を抱いていた。
青年はさっきと同じように、映像を流しながら、部屋を出て行った。
その後、れいむと遊び、再び部屋に戻った青年が見たものは、疲れながらも気力を振り絞り映像に罵声を浴びせるまりさの姿だった。
ホント、そのバイタリティだけは尊敬に値するかもしれない。
青年は今日はこれで終わりと、テープを切ると、ゆっくりとその部屋から出て行った。
一家はそんな青年になにも言わなかった。なにも言えなかった。疲れていたのである。
空腹も忘れるほどの疲労に、一家はそのまま意識を失った。




後編②へ続く


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最終更新:2008年09月14日 07:48
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