ゆっくりいじめ系2815 ゲスの見た夢

ゲスの見た夢








「むーしゃ♪むーしゃ♪はむっ!はふっ!はふっ!うめっ!たべやすくてうめえっ!」

男の担いでいた鍬がカランと音を立てて地面を転がった。
豊潤な大地で手塩にかけてのびのびと育った有機栽培の大根がゆっくりにレイプされている。

「お、おまっ」

男は大胆に食い散らかされた大根の残骸と
その側で新たな大根を貪るゆっくりまりさの元へ駆け寄った。
男に気がつき「ゆぁぁん?」とふてぶてしいマヌケ面を向けるまりさ。
濁った死んだ魚のような目。
言うまでも無くゲスと呼ばれる人畜有害なゆっくりの目だ。

大根の残骸の周りには真新しいまりさのうんうんが無数に転がっている。
大根を腹いっぱい食べては排出し、食べては排出を繰り返した結果であろう。
こいつは古代貴族の末裔か何かだろうか?乱れた食生活にも程があるでしょう?

「そのままでいいから、ちょっと聞いてくれるか?まりさ」
「はふっ!はっふっ!なんなんだぜ?人間さん!まりさは遅めのランチタイム中なのぜ!」

歯茎を剥き出してありえない形相で大根を貪るまりさ、その側に腰をかける男。

「お前、なにしてるの?」
「みてわからないのかぜ?まりさはお野菜さんをたべているのぜ!はむっ!はふっ!」
「そのお野菜さん俺のなんだけど」

その男の言葉を聞いてまりさの動きがピタリと止まる。
眉間にシワを寄せ口を尖らせると男を睨みつけ、唾液と大根の食べかすを飛ばしながらまりさが叫んだ。

「またはじまったのぜ!お野菜さんは勝手に生えてくるのぜ!人間さんはどこまでも馬鹿なんだぜえええ!」

人間という奴はいつもこうだ。勝手に生えてくるお野菜さんを後から来て
自分の物だと主張する卑怯で卑劣な生き物。この人間の常套句で命を落としたゆっくりは数知れない。
群のゆっくり達は「よくわからないけど人間さんの言うとおりなんだね。わかるよ」と
諦めの表情でロクにゆっくりできない雑草をもそもそと食んでいた。しかしこのまりさは違う。

「まりさはしょぼくれた群のぺに無しとは違っ・・・・ぜ!?・・・・ぜええええええ?」

違うんだぜ?と言いたかっただろうまりさ。
その脳天には男が振り落とした草刈り鎌が深々と刺さっていた。
正確には下刈り鎌。形状が他の草刈り鎌より面白いのでゆっくりできる事で有名だ。

「い゛じゃい゛!!・・・!な゛に゛じでる゛ん゛だぜええええええ!?」

草刈り鎌は脳天どころか底の皮まで貫通して地面に突き刺さっている。
金属の冷たい感触がまりさの体内から伝わってくる。体の中で異物である金属の存在がはっきりと分かる。
その鋭利な刃物は少しでも動いただけで何の抵抗も無くまりさの体をスッと身を切断する。

「ゆ゛っ!・・・ゆ゛ゆ゛っ!」

底知れない恐怖がまりさを包んだ。金縛りにあったように、目を見開いて微動だにしないまりさ。
男がゆっくりとした動作でまりさの正面に移動して座りなおす。

「何か言いたい事は?」
「ばや゛ぐぬ゛い゛でね゛」

恐怖に引きつるまりさの口から垂れ流された弱々しい一言。
それを聞いた男は草刈り鎌の柄を掴んで、一気にまりさに刺さった刃を引き抜く。
まりさの顔が縦に伸び上がってスポーン!と鎌が引き抜かれた。

「ゆ゛っ!これでゆっく」

しかしすぐさま、まりさの右の頬にその引き抜かれた草刈り鎌が振り落とされる。
右の頬を貫いて反対側の左の頬から鎌の刃先が顔を覗かせた。
一瞬の出来事に状況を把握できないまりさ。
視線を脳天から右頬へゆっくりと移動させて、そこから流れるように左頬へ移す。
そして左頬から突き出て鈍く光る刃先を暫く見つめた後「ゆ゛っびぃっ!」と素っ頓狂な声を上げた。

「何か言いたいことは?」
「ざがらっでごべん゛な゛ざい゛」

ピクピクと痙攣しながらポロポロと涙を流して即座に謝罪の言葉を口にするまりさ。
ゆっくりにしては敏捷性に優れ、機転も利くという話のまりさ種、
何とか自分の今置かれている立場を理解したようだった。
そんなまりさの様子を眺めていた男が小さく頷くと草刈り鎌を引き抜き

「50点です」

今度は眉間を目掛けて草刈り鎌を振り下ろした。

「どぼじでぇぇぇ!?」

どう見ても戦意喪失。
おまけに素直にゆっくりと謝罪したのだ。許されない筈が無い。
ゆっくりと眉間に突き刺さった刃を中央に寄った両目で見ながら。
まりさの餡子脳裏に様々な思案が交錯する。

こんなに素直にあやまったのに!まだお野菜さんは半分以上残ってるのに!先にここを見つけたのはまりさのなのに!
白目を剥いて「どぼじで?どぼじで?」と連呼するまりさを眺めながら、
男は懐から小箱を取り出して中から釣り糸を出すと先についている針を
まりさの上唇に突き刺して捻りあげた。

「い゛じゃい゛!いじゃい゛がらね゛!ゆ゛っぐりざぜでぐだざいね゛っ!」

眉間に深々と鎌をめり込ませながらまりさが糸に吊られて宙を舞う。
何を根拠にしてかはわからないが、自分自身が選ばれたゆっくりだという
謎の自負を抱えたゆっくり特有の傲慢さは早々に微塵も無く、
涙と涎と例によって何なのか良く分からない液体をボタボタと滴らせながらまりさが情け無い声を上げた。
男は反対側の糸の端を畑の隅に突き刺してある杭に結びながら、面倒くさそうにまりさに語りかける。

「50点のまりさにはお野菜が勝手に生えてくる所を見せてあげよう」

男はまりさを踏みつけ草刈り鎌を引き抜くと、ついでに顔面に蹴りを入れる。
まりさは「ゆべっ」と小さなうめき声をあげて転がっていくが糸が伸びきった所で
上唇が伸び上がってありえないくらいに歯茎を剥き出しながら止まった。

「ほっふり!ほっふりはへてねっ!」

意外性に溢れるまりさの苦悶の声を聞き流しながら男は残った野菜の収穫をはじめる。
隙をついて「そろーりそろーり」と逃げ出そうとするまりさだったが、
上唇を針で貫かれ、その反対側の糸の先は杭に縛り付けられている為に
糸が伸びきった地点からは一歩も進む事ができなかった。
畑には時折「なぜなんだぜぇぇ!」という悲痛な叫び声が響いた。

動けないまりさは一日中男の悩まし気な声と共に大根が引き抜かれるという
心底ゆっくりできない光景を日が落ちるまで見続ける羽目になった。

「ゆっくりしていってね!」

男はまりさに無駄に男前な表情で親指を立てて渾身の笑顔を見せ付ける。
そして滴る汗もそのままに満足げに自分の筋肉を褒め称えた。

「ゆ゛っぐり゛でぎる゛わ゛げな゛い゛でじょう!!じじいはでぎるだけはやぐじんでね!!」

そこら中に開いた傷口から餡子を噴出させながら怒りを露にするまりさ。
思いつく限りの罵倒の言葉を男に浴びせたが「おぉ、こわいこわい」と言い残して男は自分の家へと帰っていった。
全ての大根が引き抜かれて、地肌が露出した畑にひとり取り残されたまりさ。
空は真っ赤に染まり、家路を急ぐカラスの群れが頭上を通り抜ける。
眉間にシワを寄せて死んだ魚の目で沈む夕日を眺めるまりさ。
周りの家からは一家団欒の笑い声と自分を馬鹿にしているような虫の声。

「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」

周囲に大声を張り上げながらまりさが大地を蹴った。
当然その声に反応する者は誰一人として居なかった。



「ゆ゛っ!」

地面に伝わる振動でまりさは目を覚ました。
体を起こして辺りを見回すと、昨日の男が鍬を地面に振り下ろして地面を耕していた。
大根は地中深くに根をはる為に他の野菜よりも念入りに地面を耕す必要がある。
男がたまに土に混ざった小石を拾い上げて畑の隅へ投げる。その小石のひとつがまりさの顔面に当たった。

「ゆべっ!いたいのぜ!ゆっくりあやまるのぜ!人間さん!」

昨日の傷口には薄皮が張り、早くも傷の回復をみせているまりさは
一晩のぐっすり眠った事により根拠の無い自信を取り戻していた。
昨日のようにはいかない。まりさは不適な笑みを浮かべて男を睨みつける。
そんな闘争心に燃えるまりさを男は一瞥すると、こう切り出した。

「手・・・・もとい、口の届く範囲でいい、雑草を抜け、そして小石をあつめて畑の外に出せ」

そう言い放つと男は黙々と畑を耕す作業に戻る。
まりさは舐めきった男の態度に青筋ならぬ餡筋をビキビキと立てて
その場で地面を踏みしだきながら激昂した。

「なんでまりさがそんなことしなきゃいけないのぜ!ばかなんだぜ!」

男の手がピタリと止まる。鍬を剣のように地面に突き立てて手を添える。
そして昨日まりさを無言で突き刺した時のあの目で冷たく言い放った。

「ならそこで死んでね」

突き刺すような眼光、赤ゆっくりの寝息のような小さな声だったが、
怒号のようにまりさの脳天に響いた。昨日の恐怖がよみがえる。
まりさは思わず後方に飛びはねたが、糸が伸びきった所でブサイクな顔になって地面に落ちた。

「か、かかってくるんだぜぇぇ!人間さん!ゆっくりできなくしてやるんだぜぇぇ!」

ガタガタと震えて薄っすらと涙を滲ませながらも虚勢を張るまりさ。
シャドーボクシングのように小刻みにフットワークしながらおさげを振り回した。

しかし、今日男が口を開いたのはそれっきりだった。
男はまりさに昨日のような暴力を振るう事はしなかった。
まりさは地面に横になって寝そべり、頬を膨らませて精一杯の威嚇をし続けた。

次の日も膨れ面で男を睨んで膨らみ続けるまりさ。
しかし太陽が真上に位置する頃にようやく男の「そこで死ね」の意味がわかってきた。
糸でつながれたまりさは餌を探しに行く事ができない。
地面に生えた雑草を食べようとしたが、
大根を思う存分貪ったまりさにとってそれはもう食料にはならなかった。
いくら無理やり腹を膨らませてもゆっくりできなければ意味が無い。

待っているのは精神的な餓死だった。
ゆっくりと自分が緊急事態だということに気がついたまりさの頬を涙がつたう。
まりさは男に擦り寄って情けない声で叫んだ。

「おでがいじばず!だべものをぐだざい!じにだぐないでずぅぅ!」

男はまりさが存在しないかのように無視した。
鍬を地面に振り下ろし、時々肩を回して農作業にせいを出す。

「ゆ゛っ!ゆ゛ゆ゛ぅ!無視じな゛いでね゛っ!みでね!役に立つばりざをみでね゛っ!!」

まりさは一心不乱に雑草を引き抜いては吐き出し、小石をくわえては畑の外に吐き出した。
死にたくない!ゆっくりしたい!その思いだけで日が暮れるまで作業に没頭するまりさ。
なんでみんなまりさを無視するの!?群のゆっくり達も!カラスさんも!虫さんも!
頭の悪そうな人間さんまで!ゆっくりさせてね!まりさに嫉妬しないでね!かわいくてごめんね!

辺りが薄暗くなり、山肌が夕日を半分覆い隠したところで
まりさの目の前に一切れの玉子焼きと、大根の切れ端が投げ込まれた。

「ゆっ!だべもの!」

まりさは2日ぶりに食料を口の中に入れる。
玉子焼きがまりさの舌の上に乗った途端、甘さが口の中にフワッと広がってとろける。
その甘さは電流のように全身を駆け巡った。痺れるほどの快感にまりさは思わず身震いして叫んだ。

「し、しししあわせぇぇぇぇ!」

大根の切れ端もすぐさま口に放り込む。
前にうんうんを垂れ流しながら山ほど食べたお野菜さんだったが
味が全然違う、食べた瞬間にまりさの血肉になるような感覚。力がみなぎる。
幸せ、圧倒的な幸せがまりさを包んだ。

「しあわせぇぇぇぇ!しあわせぇぇぇぇ!」

そう叫びながら地面を満面の笑みを浮べながら転がるまりさだったが
少しするとピタリと動かなくなり大口をあけて「ゆぴぃ、ゆぴぃ」と寝息を立てた。
まりさは次の日もその次の日も黙々と雑草を引き抜き小石をかき集めた。
全ては作業の後の幸せの為、一心不乱に作業に精を出した。



「人間さん。お野菜さんはいつになったらはえてくるのぜ?」

キャベツの切れ端をモシャモシャとかみ締めながらまりさは男に聞いた。
最初の日から何日経っただろうか?
まりさは一向にお野菜が生えてこない事を疑問に思っていた。
男は暫く首を傾げて黙り込んでいたがこう切り出した。

「今は地面をゆっくりさせている状態だ」
「ゆゆん?」

まりさも男とは逆方向に首を傾げる。
この人間さんは何を言っているのだろうか?
あまり頭の良くない人間さんだとは思っていたがよもやここまでとは・・・
まりさに一抹の不安がよぎった。

「人間さんは馬鹿なのかぜ?」
「お野菜さんはな、ゆっくりとした地面さんとすっきりすることによって勝手に生えてくるんだ」
「なっ!なにいっでるのぉぉお!?」

衝撃の事実。まりさは驚きの声をあげた。
男はそんなまりさの目の前へ手のひらに乗せた野菜の種を差し出す。
それをまりさは目を丸くして覗き込んだ。

「ゆっ!なんなのぜ!ゆっくりできるもの?」
「これはお野菜さんのぺにぺにです」

ゆぎゃ!と顔をしかめて仰け反るまりさ。
首をイヤイヤと振って顔を赤らめる。

「なに見せてるんだぜ!?馬鹿なんだぜ!「おとしごろ」のまりさにそんなもの見せないでね!」
「刮目しろ!まりさ!これが大人のすっきりだ!」

人間さんはニヤニヤと爛れた笑みを浮かべながら
長い間耕されて焦らしに焦らされた熟れた地面さんを指でゆっくりと愛撫すると
腰から下げてある袋からお野菜さんのぺにぺにを取り出して指先から一気に地面さんに挿入した。

「やめてね!やめてあげてね!地面さんはいやがってるよ!」

まりさはおさげで目を覆い隠してその非情な光景から逃避した。
人間さんの我侭プレイはまだ終わらない。
再び30センチほど離れた所に再びお野菜さんのぺにぺにを挿入する。

「今日はほんのお遊びだ!これから毎日毎日この畑全体をお野菜さんのぺにぺにで蹂躙してやる!」
「地面さん!逃げてね!ゆっくりしないで逃げてね!変態がくるからね!変態がくるからね!」

オロオロと地面を見回してまりさは叫んだ。

お野菜さんは勝手に生えてくる。
そんなことを初めに言い出したゆっくりは誰だ。捕まえて尻をぶったたいてやる。
お野菜さんはまりさには思い出すこともできない膨大な手順を踏んで、
人間さんの変態プレイに耐えてやっとの思いで生えてくる。

そしてそんなお野菜さんを以前、無造作に貪った事を思い出すまりさ。
こんなゆっくりと手間隙をかけたお野菜さんを何もしていないまりさが食べたのだ。
まりさが男を見上げる。その視線に気がついて男もまりさを見下ろした。

「馬鹿な人間さん・・・お野菜さんを勝手に食べてごべんなさい」

器用に帽子を脱いでペコリと頭を下げるまりさ。
随分と時間はかかったが、ようやく人間の出した問題の100点の答えにたどり着いた。
男はまりさの側にしゃがみ込みんでまりさの頭の上に手を置いて優しく撫でた。

「80点です」
「ゆ゛っ?」

男はまりさを帽子の中に無理やり突っ込むとリボンをきつく縛って
その奇怪な生き物を封印した。畑に平和が訪れた。大地がほっこり笑った。
帽子の中で尻を振りながらモルンモルン!と暴れる黒くて丸い何か。

「馬鹿はいらないよね!」
「ゆ゛っぐり゛!」

黒い物体が男に蹴られて地面を跳ねて天へ昇っていった。



更に数週間が経過した男の畑。
日差しの強さは日に日に勢いを増し、男の肌を浅黒く焼いた。
まりさの糸が縛られた杭は畑の中に移動しており、
畑の30分の1程の面積がまりさの担当する場所になっていた。
如雨露をくわえて「ゆっ!ゆっ!」と器用に畑に水を巻く。
雑草を見つければ口で引き抜き、害虫を見つければ「むしゃむしゃするのぜ」と取り除き
曲がった大根を見つければ「まっすぐのびてね」と土寄せをした。

畑一面に見事に育ちきった大根が軒を連ねる。
夏の炎天下、他のゆっくりなら餓死の危険でも無い限りは木の木陰で暢気に
音程のズレた歌と称する雑音を垂れ流しながらゆっくりを満喫しているであろう。
今のまりさにはそんなゆっくりは全く興味が無かった。
ひたすら野良仕事に精を出して、夕日が沈む頃に男が持ってくる食べ物に舌鼓を打ちながら
ゆっくりと成長していくお野菜さんを眺める。それが今のまりさのゆっくりだった。

男が作業の手を止めてまりさを見る。
以前の濁った魚のような目つきはもう無い。
ゆっくりらしからぬ真っ直ぐで純真な眼差しに男は小さく呻いた。

「今日は・・・・いや、これで終わりだ」
「ゆっ?」

まりさが少し驚いたような表情で男の方へ振り返る。如雨露が地面を転がった。
沈みかけた太陽を背にした男。逆光で表情どころかシルエットが薄っすら見えるだけである。

「よく頑張ったな、正直言って関心したぞ」
「ゆゆっ?」
「お前が育てた野菜はお前のものだ」
「ゆうっ!!」

以前、勝手に食べた量の数倍はある膨大な数のお野菜さん。
それが突然まりさの物になった。

「俺が明日お前の巣まで運んでやろう。お前はもう自由だ」

その男の言葉を聞いて驚きの表情を浮かべていたまりさの表情がみるみる曇る。

「まりさの巣・・・・?」

何を根拠にしてかはわからないが、
自分自身が選ばれたゆっくりだという謎の自負を抱えていたまりさは
群の中で暴虐無人な態度を取り続けた結果、誰からも相手にされなくなり、
人間の里へおりてきて男の野菜に手をつけた。

ゆっくりの群にはもうまりさの居場所など無かった。
しかし自分で言うのも何だが、まりさは変わった。変われたのだ。
お野菜さんを群に持ち帰ってゆっくりと許しを請えば再び群の仲間に戻してもらえるかもしれない。
しかしそれからどうすればいいだろう。何も無い。
ゆっくりと再び腐っていく自分の姿がありありと想像できた。
そして何よりも元のゆっくりという名の堕落した生活に戻るのが嫌で堪らなかった。

顔をクシャクシャにしてまりさが泣き出した。
まりさの様子に男が小首を傾げる。
初めは嬉し泣きでもしているのかと思ったがそうではないようだ。

「ま゛でぃざは゛っ!ま゛でぃざの゛ゆっぐりブレイズばっ!も゛う゛な゛い゛ん゛でずっ!」

大口をあけて泣きじゃくるまりさを暫く見つめていた男がまりさの側に座り込んだ。
男によって遮られていた強い日差しがまりさに降り注ぐ。
涙をこぼしながらまりさが隣に座った男の顔を見上げる。
そして暫く何やら考え込んでいる様子だった男が口を開いた。

「ウチくる?」
「ゆっ?」

男の言っている事の意味がわからずに
頭の上にクエスチョンマークを浮かべながら小首を傾げるまりさだったが、
男に抱きかかえられて、今までまりさの動きを制限し続けた上唇についた針を抜かれ、
男の家へ向かう道を進んでいる内にようやく状況をゆっくりと理解した。
まりさは人間に許されたのだ。それは群の仲間に許されるのと同じくらい
いや、今のまりさにとってはそれ以上に嬉しい事だった。

「ゆっ!ゆーっ!ゆーっ!」

再びまりさの頬を涙がつたう。
ゆっくりできない時に目から出てくるお水さんが何故、今出てくるのか分からなかったが、
まりさは元気よく男の頭の上に乗って叫んだ。

「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」
「おぉ、ゆっくりゆっくり。さっさと下りろよ、踏み潰すぞ」



男の家、簡素な作りながらも太い柱と梁、清潔な室内。
男の性格を象徴したかのような作りの建物。その室内の床をまりさが転がる。
今まで雨風をしのいできた横に倒しただけの木箱とは段違いの男の巣。
木でできた地面。高い天井。巣の真ん中でメラメラと燃える小さなお日様。
挙げだしたらキリがない程に目に映るもの全てが物珍しかった。

「風呂に入るぞ」

隣の部屋から男の声が響いた。
ぽいんぽいんと男の側にかけよって足元で身を揺らすまりさ。

「ゆっ!おふろってなんなのぜ?ゆっくりできるもの?」
「主に俺がな、お前臭いから」
「ゆ゛ゆ゛っ!!」

衝撃の事実。まりさは驚きの声をあげた。
数ヶ月間ロクに体も洗わずに野良作業に勤しんだ結果がごらんの有様だった。
まりさの頭にお湯をザバーっとかける。

「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

目を見開いて絶叫するまりさ。
続いて石鹸をつけたタオルでゴシゴシと擦る。

「ゆ゛っ!?ゆ゛っ!?ゆ゛っ!?ゆ゛っ!?ゆ゛っ!?」

なにこれ?なにこれ?と言わんばかりの疑問符を募らせたような表情で
擦られる度に素っ頓狂な声をあげるまりさ。
十分に体を洗った後、またお湯をかける。
再び目を見開いて絶叫するまりさ。

「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
「うるさいよ!」

見違えるように綺麗になったまりさが風呂からでて床に降りる。
野良作業で泥と汗と油で茶色く薄汚れた髪と体は
元のサラサラと輝く金髪ともちもちとした肌を取り戻した。
他のゆっくりと違って日夜酷使した体は飼いゆっくりとは違う機能美に溢れた輝きを放った。

男も「見違えた!これが真田の小倅か!?」と言わんばかりの驚きの表情を浮かべている。
そんな男の表情を見たまりさは嬉しそうな顔をして床を跳ね回った。

部屋の片隅には命と同じくらい大事なお飾りの帽子が男の手によって洗われて部屋の隅に干してある。
飾りが手元に無いのが少し不安であったが不思議と我慢できた。
そして囲炉裏の横に座る男の膝の上に乗って調理した食事を食べた。

「ゆっ!ゆっくりいただくのぜ!人間さん!」

生のお野菜さんもおいしかったが、調理する事によってその味はまた違う味覚に変化した。
初めて人間さんから貰った玉子焼きを食べたときの衝撃を思い出す。
むーしゃむーしゃは食べる時だけが大事ではない。そこに至る過程も重要。
つまり、ゆっくりできなかった後のゆっくりは格別だということだ。

「しあわせのぜー!しあわせのぜー!」

今や最も安全でゆっくりできる場所になった男の膝の上での食事を堪能するまりさ。
しかし満面の笑顔で食事に舌鼓を打つまりさだったが、その脳裏には先程から一つの考えが渦巻いていた。

人間さんはただここへまりさを連れてきただけで、
ここにまりさを置いてくれるとは一言も言っていない。
ここで暮らせると、勝手に変な理解をして人間さんにまた嫌われたくない。
だから、明日になったらゆっくりとまた畑で働かせてもらえるように頼んでみよう。
寝起きするのはまた外の木箱でもいい、あそこでも十分にゆっくりできた。
でもいつかはここで人間さんと一緒にゆっくりと暮らしたい。そしてゆっくりとまりさを認めてほしい。
食事を食べて幸せを連呼しながらも、一心不乱にまりさはそんなことを考えていた。


しかし、まりさのそんな淡い願いが叶う事は無かった。







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最終更新:2011年07月31日 16:15
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