『どろっ☆わーずぅ』
幻想郷のはずれ、鬱蒼とした森の奥で、
ニコニコ笑みを浮かべ続ける者がいた。
「う~♪ ぷっでぃ~ん♪」
幾重にも重なった木々の葉によって、ほどよい強さとなった日光を浴びながら
その自慢の下ぶくれを広げるのは、胴体有りのゆっくりれみりゃだ。
落ち葉を集めた絨毯に、切り株のテーブル。
密集する枝に大きな葉っぱを重ねたハンモック……。
苦労して少しずつ作り上げた"こーまかん"がそこにはあった。
そんな"こーまかん"の出来映えと、これからのゆっくりした日々を想像しながら、
れみりゃは倒木のソファーに腰かけて"うぁっ☆うぁっ☆"太ましい体を揺らして、幸せを噛みしめる。
「でみりゃのがぁ~い~あかじゃ~ん♪ ゆっぐりうまれでぐるんだどぅ♪」
くぐもった声でひとりごちり、肥大化した下膨れ顔を優しく撫でるれみりゃ。
すると、肉まんハンドの温もりを感じてか、大きな下ぶくれの奥から"うー♪"という小さな声が聞こえてきた。
「うーうー♪」
その声を聞いて、くねくね体を揺らして喜ぶ、れみりゃ。
このれみりゃは、"にんっしんっ"をしており、出産を近くにひかえていた。
ただでさえ大きな下ぶくれ顔は、通常の2倍以上に膨らみ、
その下ぶくれの奥からは、もう一つの下ぶくれ顔が既にのぞきはじめている。
れみりゃにとって、この"にんっしんっ"は二度目の出産であった。
一度目の出産でその苦労を味わったれみりゃは、"こーまかん"で万全の準備をすると同時に、
先に生まれた子どもに狩りを行ってもらいながら、出産にそなえて安静を保っていた。
「でみりゃってば、おりごぉーさんだどぉー♪ かりしゅま☆にんぷっさん☆だどぉ♪」
ゆっくりを満喫して、自画自賛を繰り返すれみりゃ。
すると、木々の隙間を抜けて、一回り小さいれみりゃがパタパタ低空を飛んできた。
「まんまぁー♪ れみぃ、ごぁんとってきたどぉー♪」
「うっうー♪ でみりゃのあがじゃ~ん♪」
小さなれみりゃを見つけて、立ち上がるれみりゃ。
紅白のお饅頭を"うーしょうーしょ♪"と抱えて飛ぶ、そのれみりゃこそ、狩りを任せていた子れみりゃだった。
「おかえりだどぉー♪ でみりゃのあがじゃん、さっすがだどぉー♪」
れみりゃは子れみりゃを出迎え、その頭を帽子の上から撫でてあげる。
子れみりゃは抱えていた饅頭を地面に落として、両頬をおさえて体を揺らす。
「うれしぃどぉー♪ まんまぁーにほめてもらえたどぉー♪」
親子のスキンシップは、やがてれみりゃ種特有の"だんす"へと変わっていく。
こーまかんのダンスホールで繰り広げられる"うぁうぁ☆だんす"を経て、
れみりゃと子れみりゃは、仲良くお饅頭を食べていく。
「「あまあま☆でりしゃすぅー♪」」
顔の周りを汚しながら、あっという間に食事を終えるれみりゃ親子。
食後、互いの"おぐし"を撫でたり梳かしたりしながら、
れみりゃと子れみりゃは、食後のコミュニケーションに花を咲かせた。
話題の中心は、これから産まれてくる"べびりゃ"のことへ自然と移っていく。
「れみぃは~♪ おねぇーちゃまになっちゃうんだどぅ♪ うぁうぁ☆うっうー♪」
「う~~♪ でみりゃのあがじゃん、でみりゃそっぐぃで、かぁ~わいいどぉ~♪」
当たり前な、けれどかけがえのない時を満喫する、れみりゃ親子。
すると、子れみりゃが何かに気付いたように"うぁ☆"と立ち上がり、親れみりゃの方を向いた。
「そうだどぉー♪ まんまぁーにしょうかいするどぅ♪」
「う~~? あがじゃん、なぁ~にぃ~?」
幸せを疑うことなく、重たい頭を少しだけ傾けるれみりゃ。
子れみりゃは自信満面に下ぶくれスマイルを輝かせて、ぴょんぴょん体を跳ねさせた。
「めしつかいができたんだどぅ♪ ごーまがんのそとでうろうろしてたのを、れみぃがひろってあげたんだどぉー♪」
「あーぅあぅー♪ あがじゃん、すごいどぉー♪」
れみりゃは、まだ小さいのに召し使いを従えるようになった我が子を褒めちぎる。
まんざらでもない様子の子れみりゃは、興奮気味に、その召使いを呼んだ。
「しゃくやぁーくるんだどぉー♪ まんまぁーにしょうかいしてあげるぅー♪」
子れみりゃの声が森に響いたそのわずかな時間を置いて、
ぺきぺきと枝を踏みしめる音とともに、こーまかんに"めしつかい"が入ってきた。
子れみりゃは確かに"めしつかい"と呼んでいた。
けれど、そこに姿を現したのは……
「……う、うぁ!?」
疑うことなく微笑む子れみりゃの後ろで、
れみりゃは俄に体を強ばらせた。
* * *
この仕事を始める時、私は周囲から反対を受けた。
けれど、私は確信していた。この新しい"ゆっくりとの在り方"を。
だから、私は今日も森へ入っていく。
用が有るのは、"ゆっくりれみりゃ"や"ゆっくりふらん"と呼ばれるゆっくり。
それも人間の幼女のような、それでいてぬいぐるみのような体を持った連中だ。
比較的どこでも見るようになった"ゆっくりれいむ""ゆっくりまりさ"とは違い、
それらの種類は数も少なく、また比較的夜行性であるために、探すのにはコツがいる。
……まぁ、コツといっても大したことじゃない。
それに、そのコツを考え得たからこそ、私はこの仕事を始めたわけだが。
私は、いつもようにスカートとエプロンを着て、頭に銀髪のかつらとヘッドドレスをつける。
これで準備万端。あとはメイド服とは不揃いな籠を背負い、森の真ん中で、お腹から声を出せばいい。
"おぜうさまぁーおやつの時間ですよー"
私の声が、森の中でこだまする。
そんなことを2~3回繰り返すうち、目的のゆっくりが、あちらの方からやって来る。
"うっうー"とか"さくやー"とか"ぷっでぃ~ん"とか言いながら、
ゆっくりれみりゃが、次々と私の前に姿を現していく。
何も私が探すことをしないでも、向こうから喜び勇んでやって来てくれるのだ。
まったくちょろい仕事だ。
歯ごたえの無さに少々の虚しさを覚えなくもないが、それは贅沢というものだろう。
私は、テキパキとれみりゃ達との応対を進めていく。
れみりゃ達は、私のことを本能レベルですり込まれた従者"さくや"だと信じ切っている。
私はかいがしいメイドのふりをして、
同時にはお仕えすることはできないと断ってから、一軒ずつ"こーまかん"を訪ねることを約束する。
"ゆっくりりかいしたどぉー♪ れみりゃ達はおりこーさんだからゆっくり待ってあげるどぅ♪"
れみりゃ達はそう言って、うぁうぁ踊ってそれぞれのカリスマをアピールしだす。
どうやら、そのダンスが上手い順番に"さくや"を"こーまかん"に招いても良いということらしい。
私は、れみりゃ達の順位づけが終わるまで、優しい微笑みを被ったまま、ゆっくりと待つ。
たまに合いの手を入れたり、れみりゃ達を褒めたり、頭を撫でてあげたりすることで、
なお一層の信頼をれみりゃ達から勝ちうることができる。
そうして、今日もまた、私は"こーまかん"に招かれた。
すると、そこには私を招いたれみりゃの親らしきれみりゃがいた。
親れみりゃはどうやら妊娠をしているらしく、
肥大化した下ぶくれ顔からは、もう一つの顔がのぞいて"うー"と鳴いている。
……おや?
親れみりゃの方が、私を見て体を強ばらせた。
どうやら、この親れみりゃは人間の存在に警戒心を持っているようだ。
以前、人間に飼われていたか、虐められたことがあるのだろう。
"あがじゃん、にげるんだどぉー!"
などと叫んで、私と子れみりゃの間に立つや否や、"ぎゃおー!"と両手を上げて威嚇を始めた。
この後も何軒も"こーまかん"を回らなければならない。
私は手早く仕事を始めることにする……。
* * *
「あぁぁー! ざぐぎゃぁぁー! だずげでぇぇーー!!」
「まんまぁぁぁーー!?」
鬱蒼とした森の奥、れみりゃの"こーまかん"で、他ならぬれみりゃが泣き叫ぶ。
人間に対して警戒感を持つれみりゃは、
子れみりゃが連れてきた人間が良からぬことをたくらんでいるのを察し、
子れみりゃを守るべく、人間へ必殺の"ぎゃおー!"を繰り出し、牽制しようとした。
……が。
メイドの格好をした人間に、たっぷり下ぶくれた頬を2~3回ビンタされると、
れみりゃは力なく腰から砕け落ち、じんじん痛む頬を押させながら泣き出してしまうのだった。
「うー! こいつぶれぇーものだどぉー!」
自分の母親に手をあげた"めしつかい"を罰するべく、トテトテ近寄っていく子れみりゃ。
「まんまぁーいじめたらゆるさないんだどぉー! さくやなんてだいきらいだどぉー!」
「あぁぁー! あがじゃんだべだどぉー! にげどぅんだどぉぉぉー!」
子れみりゃは、人間へ向かって無防備に頬を膨らませる。
親れみりゃは、うびぃーうびぃーと嗚咽を漏らしながらも、子れみりゃを逃がそうと叫んだ。
「まんまぁーだいじょーぶだどぅ♪ れみぃはおつよいから、めしつかいなんかにまけないんだどぉー♪」
「う~~! ぢがうのぉ~~! あがじゃんにげでぇ~~!」
人間との力の差を理解していない子れみりゃと、
かつて人間によってひどい目に遭わされたことのある親れみりゃとの会話は終始交わらない。
そのかみ合わない会話に見切りをつけた人間が、子れみりゃの背中の羽へ手をのばした。
人間の手には、大きな洗濯ばさみ状の物が握られている。
「う、うぁ?」
子れみりゃがその違和感に気付くより早く、
人間はその巨大洗濯ばさみで、子れみりゃの羽の付け根をパチンと止めて固定する。
「う~! やめるんだどぅ! れみぃのかわいいおはね"ぎゅっ"しちゃだめなんだどぉー!」
羽の付け根を拘束される感覚に、子れみりゃが不満を露わにする。
そして、子れみりゃは、じたばた暴れるうちに、自慢の羽が固定されて動かないことに気付く。
「う~! ぎゅっしてるのとってぇー! これじゃぱたぱたできないどぉー!」
人間はそれを気にもとめず、子れみりゃを後ろから抱えて持ち上げると、
自らも切り株に腰かけ、その膝の上に子れみりゃを座らせた。
「ちがうどぉー! ぞれはでみりゃだぢのてーぶるだどぉー! すわっちゃだめぇー!」
子ども達との幸せなディナーを夢見ていたテーブルに、人間が腰かけている。
その光景に、れみりゃは叫びをあげながら、這うように近寄っていく。
一方、人間は子れみりゃが暴れて傷つかないように、
その下ぶくれの下側に片手を回し、撫でるように、叩くように、くすぐるように、"たぷたぷ"を開始した。
「や、やべるんだどぉー! へんになっちゃうどぉーー!」
「うわぁぁー! でみりゃのあがじゃ~~ん!!」
たぷたぷ。たぷたぷ。たぷたぷ。たぷたぷ。
人間は、れみりゃ達の声を無視して、子れみりゃの下ぶくれに刺激を与え続ける。
「う、うぁ、うぁぁ、あぅ、あぅぅ……」
最初こそ不快感をあらわにしていた子れみりゃだったが、
やがて体から力が抜けていき、完全に戦意を失ってだらんと虚脱状態になる。
「ううう……はちたないどぉー……おぜうさま、けがされちゃったどぉー……」
「あがじゃーん! じっがりぃー! じっがりずるんだどぉぉーー!!」
人間は、子れみりゃが抵抗しなくなったのを確認してから、
慣れた手つきで子れみりゃの"おべべ"を脱がしていく。
「あーぅ、あぅー……」
辛うじて声を振り絞る子れみりゃだったが、それで人間の動きは止められない。
人間は背中に背負っていた籠に、子れみりゃから脱がした"おべべ"をぽいぽい放りこむ。
「だめぇー! あがじゃんのだいじだいじ、ぽぉーい☆しないでぇぇー!」
あっという間にドロワーズいっちょうの格好にさせられてしまう子れみりゃ。
恥ずかしさから、子れみりゃは涙ぐみながら顔を紅潮させる。
人間はそんな子れみりゃの足をつかみ、大人が悪さをした子どもの尻を叩く時のように、
自分の膝の上で四つんばいの格好を取らせ、ドロワーズに手をかける。
「あぁぁー! どーが、どーが、ぞれだけばぁぁー!」
人間のやろうとすることに気づき、親れみりゃは人間の足にすりよって、懇願する。
「おでがいでずぅー! "どろっ☆わーずぅ"だけばぁー! それがだいどゆっぐりできだいんでずぅー!」
「ま……まんまぁ……だすげ……れみぃの……どろっ……わーずぅ……」
「あがじゃんー! でみりゃのあがじゃんじっかりー!」
子どもの声に奮起し、れみりゃは再度立ち上がり、人間の足をつかんで揺さぶろうとする。
「う~~! あがじゃんの"どろっ☆わーずぅ"は、まんまぁーがおまもりするんだどぉーー!!」
必死に叫んで、人間を止めようとする、れみりゃ。
しかし、人間はそれに対して、親れみりゃを蹴り飛ばすことで返事を済ませた。
「ぶんぎゃぁぁーー! いだいよぉぉー! ざぐぎゃぁぁぁーー!!」
人間は転がり回る親れみりゃから子れみりゃに注意を移し、作業を再開する。
破いたり汚したりしないように慎重に、されど子れみりゃに抵抗する暇を与えないように迅速に、
人間は、子れみりゃの「ドロワーズ」を脱がせて籠へ入れた。
「ぼぉぉーやだぁぁー! でびりゃごーまがんにがえるぅぅー!!」
人間が子れみりゃを完全に裸にするのと同時に、
親れみりゃは錯乱しだし、子どもと"こーまかん"を後に、逃走を開始した。
しかし、黒い小さな羽をいくらパタパタ動かしても、
身重で運動不足な太ましい体を素早く動かせるわけもなく。
れみりゃの逃走に気付いた人間によって、あっというまに追いつかれ捕まえられてしまう。
「すっぽんぽんはいやだどぉー! でみりゃはおぜうさまなんだどぉーー!」
人間の表情は変わらない。
親だろうが子だろうが、人間は淡々とルーチンワークをするだけだった。
『でみりゃの"どろっ☆わーずぅ"がぁぁーー!』
その日、森の片隅からは、そんな声が時間を置いてたびたび聞こえてくるのだった。
* * *
家に戻り、私は重たくなった籠を土間へ下ろした。
中には、ゆっくりれみりゃ御自慢の"おべべ"と"ドロワーズ"が何着も入っている。
人間からすればサイズの小さな衣服だが、量が量だけに、相当な重さになる。
採集の仕事の後は、いつも肩と背中が痛くなって、温かいお風呂が恋しくなってたまらない。
……とはいえ、これで上げられる利益を思えば、そうそう苦とも言っていられない。
私は籠かられみりゃの"おべべ"と"ドロワーズ"を取り出して、
仕事後の充足に満ちた吐息をついた。
養蚕で作られる絹糸に比べれば質は落ちるが、
ゆっくりれみりゃの着衣はそれなりに上等な質を持っている。
それに気付いたのは、もう1年も前のことだ。
この点に関してのみ言えば、
だてにお嬢様を自称していたり、"おべべ"を大事がっていたりするわけではないらしい。
ちょっとした加工を施すだけで、
養蚕よりもはるかに手早く、多くの量を得ることができる。
もちろん、元が野生のゆっくりれみりゃの服だということで、忌避する人も少なくはない。
けれど、それを気にしない人向けや、同じゆっくり用の着衣として売るだけでも、相当な財がなされる。
そして、何よりも。
ゆっくりれみりゃは"ドロワーズ"をはいているのだ。
幻想郷の女性にとっては、人気の高い下着であるが、
その製造方法や原材料を知るものは、存外限られ、貴重なものとなっている。
そんな中、私は見つけたのだ。
天然自然に、その"ドロワーズ"があることに。
他の人がどうやってドロワーズを用意しているかは知らないが、
私はれみりゃやふらんがドロワーズをしていることに気付き、この仕事を始めることを決心したのだ。
人間、妖怪、神様、飼いゆっくり……。
ドロワーズ無くして、幻想郷の衣生活は成り立たない。
ドロワーズこそ幻想郷を裏から支えているものといっても過言ではない。
周りの人はばかにしていたが、私は違った。成功を確信して行動に移した。
決して需要の無くならない、そして限りなく元手のかからない仕事……
まさに幻想の産物……幻想郷にふさわしい仕事ではないか。
* * *
すっぽん!
森の奥、月明かりの下で、乾いた音が響いた。
その音は、肥大化したゆっくりれみりゃの下ぶくれから、新しい生命が産まれたことを示す音だった。
「う~~♪ でみりゃのあがじゃんだどぉ~~♪」
「れみぃのいもうちょ☆か~わいいどぉ~~♪」
新しく産まれた命に対し、その命の親と姉が喜びを露わにする。
その歓声に導かれるように、産まれたばかりの命は立ち上がり、歓声に応えた。
「ぎゃおー♪ たーべちゃうぞぉー♪」
ばぁーんと両手をバンザイの形で広げて、笑顔を輝かせる新しい命……。
その姿は、普通のゆっくりれみりゃとは違っていた。
「うぁー☆うぁー☆」
「れみぃのいもうちょ☆かりしゅまだっどぅ♪」
改めて見た赤れみりゃの姿に、興奮する親れみりゃと姉れみりゃ。
その赤れみりゃは、"れみりゃザウルス"の格好をしていた。
「すっごいどぉ~♪ さっすがはでみりゃのあがじゃんだどぉ~~♪」
「おねぇーちゃまだどぉー♪ いっしょにゆっくりするどぉー♪」
"れみりゃザウルス"は、ゆっくりれみりゃにとって憧れの姿の一つ。
その姿で産まれた赤れみりゃを、親と姉は祝福し、むぎゅーと抱きついた。
「うっうー♪ まんまぁーもおねぇーちゃまも、くるちぃどぉー♪」
エレガントな笑みは崩さぬまま、少しだけ苦しげな声をあげる赤れみりゃ。
親れみりゃと姉れみりゃはハッとして、赤れみりゃを抱く力を弱めた。
「う~~♪ あがじゃんごめんごめんだどぉ~~♪」
「れみぃ☆うれしてくついやっちゃうんだどぉ~~♪」
ニコニコ微笑んで謝る、親れみりゃと姉れみりゃ。
そんな二匹を、赤れみりゃも笑顔で許す。
……しかし、次の瞬間。
月光がより強くあたりを照らした時、赤れみりゃは無邪気に首を傾げた。
「う~~♪ まんまぁーもおねぇーちゃまも、すっぽんぽんだどぉー♪」
「「うっ、うぁ!?」」
その一言に、ぴたっと笑顔を凍り付かせる、親れみりゃと子れみりゃ。
そう、この2匹は、人間に"おべべ"と"ドロワーズ"を捕られてしまったままであった。
「どろっ☆わーずぅまでないどぉー♪ はしたないどぉー♪ おぜうさましっかくだどぉー♪」
「「うっ、うわぁぁぁーーーー!!!」」
赤ちゃんだからこその、歯に衣を着せぬ物言いに、
親れみりゃと姉れみりゃは現実を思い出して、泣き叫んでしまう。
「ないちゃだめだどぉー♪ れみぃはかりしゅま☆ぼでぇーがあるからー♪ あんっしんっなんだどぉー♪」
赤れみりゃは、泣いてしまった親と姉を慰めるべく、立ち上がって自慢の恐竜ボディーを披露する。
そして、産まれて初めての"のうさつ☆ダンス"を踊り出すのだった。
「うっうー☆うぁうぁ♪ れみ☆りゃ☆うー♪」
* * *
「れみりゃザウルスですか?」
得意先の紅魔館の門番さんからその話を聞いた時、私は思わず反芻した。
曰く、紅魔館の中でもたまに出現し、野生でも極まれに姿を現す希少種らしい。
恐竜のヌイグルミを産まれながらに着込んだようなれみりゃ……。
私は脳内で、次なる仕事の成功を思い描きはじめる。
れみりゃ種がすっぽり入ってしまうようなヌイグルミ……そこからいったいどれだけの綿が取れるだろうか?
私は、得意先からの帰り道、自ずと足が軽くなるのを感じた。
おしまい。
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プライベートで人生の選択に迫られる中、
思い悩んでいたら、いつの間にかれみりゃSSが出来ていたというこの不思議……。
最終更新:2022年01月31日 02:13