ゆっくりいじめ系2123 育児放棄? そんな程度じゃないんだぜ!! 後編その1

これは、『育児放棄? そんな程度じゃないんだぜ!! 中編』の続きです。
それとすみません、終われませんでした。次回で完結します。



ゲスまりさ注意
そんなまりさを制裁もの
子ゆっくりは……今回お休みです
お兄さんが前面に出すぎ
ストレスマッハ注意
ストレスを解消しきれない可能性あり

それでも構わないという方はどうぞ下へ













育児放棄? そんな程度じゃないんだぜ!! 後編1 

『まりさサイド』




「みんにゃ! これきゃらはおにーしゃんとおねーしゃんのいうこちょをきかなきゃだみぇだよ!!」
「「「「「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ!!」」」」」

姉まりさの言葉に返事を返す妹まりさたち。
本当に理解しているか怪しいが、それでも姉妹を引っ張れる存在がいるだけでだいぶ違う。
自分たちに勉強を教えてほしい。その姉まりさのお願いを快諾したお兄さんは、同居人であるゆっくりゆうかに視線を移す。

「……ゆうか、赤まりさたちを畑に連れて行ってあげてくれ」
「……いいの、おにいさん? きっとこいつらはたけをあらすよ」

今回の事はすべて聞いているものの、やはり野生のゆっくりを畑にいれることには抵抗があるらしいゆうか。

「庭の隅にクズ野菜を埋めてた畑があったから、そこなら荒らされても大丈夫だよ。それにもし言うことを聞かなかったら………」

一気にしゃべるトーンを落としたお兄さんは、ゆうかにだけ聞こえるように対策を伝える。
本当に大丈夫なのか。彼の話を聞いても半信半疑のゆうかだが、家主の願いを無碍にするわけにもいかない。
渋々ながらそれを了承すると、箱から出された赤まりさたちを率いて台所を後にする。

「じゃあ、おしえてあげる。ちゃんとおにいさんにおれいをいってね」
「「「「「おにーしゃん、ありがちょね!!!!」」」」」

ぺそぺそと気の抜ける音を立てて、ゆうかを追いかける赤まりさたち。
お兄さんに治療してもらった姉まりさもそれに追随するが、足が潰れたままなので跳ねることができず、一回分の這いずれる距離も妹たちの半分程度だ。
また片目も失明しているせいで、時折進行方向が姉妹たちとずれてしまい、追いかけることもままならない。
するとそれに気づいた何匹かの妹が、姉の体を気遣って時折振り向いたり立ち止まって追いつくのを待っている様がみられた。

(………姉含めて6個か。結構優秀な赤ゆだな)

一度も振り返ろうとしない個体と、姉を気遣う個体を見極めるお兄さん。
その二種の距離がはっきりと分かれたところを見計らうと、玄関に向かう途中のゆうかを止めて、姉まりさとくっついていた妹たちを持ち上げた。

「大丈夫かい?」
「ゆぅ……、あんよしゃんがうごいちぇくりぇにゃいの……それにおみぇみぇも」
「そりゃあねえ、どっちも君のお母さんにぺちゃんこに潰されていたからね。けれどそのうち治せるようにしてあげるから、少しだけ我慢しててね」
「「「おねーしゃんをなおしちゃげちぇね?」」」
「わかっているさ、そのためにはまだ準備がいるからね。お姉ちゃんはそれまで我慢してね」
「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ! おにーしゃんありがちょね!!」

お兄さんの言葉に素直に返事する赤まりさ姉妹。
無論大ウソである。彼の技量なら一日で治すことも可能である。
ただ、彼は楽しみを一度に消費したくなかったのだ。
そもそも、出たらめを形にしたような存在がゆっくりだ。真面目に治すだけ損である。
その間に姉まりさと気遣っていた姉妹にだけ、お兄さんは識別できるようこっそりと印を付ける。
目的の赤ゆたちに印をつけ終わると、お兄さんはゆうかを左手に、赤まりさ達を右手に乗せた。

「じゃ、今日はお兄さんが運んであげよう。ゆうかと他のまりさはお兄さんの後に付いてきてね」
「「「「「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ!!!」」」」」
「ゆー、おそらをとんでるみちゃい~♪」

いまはまだ、玄関から出る際に放置していたゲスまりさと赤まりさたちを会わせるわけにはいかない。
ならば別の出口を使えばいいと言われそうだが、あくまでも家への出入りは玄関を使うということを理解させる意味もあるからだ。
こうして母と娘たちは、同じ屋根の下にいながら互いの存在に気付かない生活を送ることとなる。それを親子が知るのは、もう少しだけ先のことだ。

「それじゃゆうか。後はよろしくね」
「「「おにーしゃん、ありがちょう!! ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!」」」
「はいはい、ゆっくりしていってね」

畑についたお兄さんが全員を降ろしてゆうかにお願いすると、彼女は頷いた仕草を見せてくれた。
それを確認して赤まりさたちに適当な声をかけると、お兄さんはすぐに畑を後にした。
後はゆっくりゆうかのドS(スパルタ)授業が行われるだろう。
もし赤まりさ達にゲスが出れば、容赦なくお仕置きをしていいと伝えてある。
姉まりさを気遣える個体を選んだのは、この時点で仲間意識の強い個体を見極めるため。
特にまりさ種の場合、姉妹でも仲間意識が弱ければすぐに裏切ってしまう。
だが赤ゆっくりならば、まだ矯正が間に合うことも少なくない。
印を得られなかった個体への手本として、お兄さんは印のある姉たちを利用する考えであった。
その狙いが外れた場合、つまり印のない妹の矯正が不可能だと判断した時は、そいつらを徹底的に虐待して賢い個体への見せしめに使えばよい。
試せるものは何でも試す。このようなチャレンジ精神が、日々新たな虐待を生み出すのだ。そうお兄さんは信じていた。





「さて、それじゃいよいよ矯正の効かないゲスに移りますか……」

お兄さんは家に戻ると、今度はゲスまりさの箱を抱え、お馴染みの虐待部屋へと移動した。
そこに転がるは虐待お兄さんたちの必需品となる様々な道具たち。
かぴかぴになった餡子がいまだこびり付くスプーン。
たっぷりと砂糖水が染み込んだ釘バット。
何度も使用されて硬さを失ってしまったハリセン。
饅頭を焼くためだけに準備された鉄板。
赤ゆの足を痛めつけるための定規等など…。
お子様の文房具から本格的な拷問具まで、品ぞろえはばっちりだ。
ゆにゃゆにゃ、と幸せそうに居眠りしているまりさ。いつの間に気絶から睡眠へと移行したのだろうか。相も変わらず図太いナマモノである。
やれやれとお兄さんは苦笑した次の瞬間、彼は抱えていた箱を思い切り部屋の床へと叩き落とした。

ッッガァン!!!!

「ゆぎゃあああああああ!?」

完全な防音仕様の部屋の中にだけ響く衝撃音とまりさの悲鳴。
本気で落としたのにヒビ一つ入らない加工所特製の箱を見て、満足そうなお兄さん。
相変わらずいい仕事をしてくれる職員の皆様だ。

「ゆっ!? なに!? なんなんだぜ!?」
「やあ、ゲス饅頭。ゆっくりしていってね」

目が覚めたばかりで状況を把握していないまりさに対し、お兄さんは爽やかな笑顔で毒を吐いた。

「ゆ!? ゆっくりしていってね!! ……ゆ!? うごけないんだぜ!?」
「そりゃあね、箱の中にいるんだから仕方ないじゃない?」
「ゆ!! じじいがまりささまを………!」

そこまで言って、まりさはお兄さんの顔を見て凍りついた。
目の前の人間の顔を思い出したのか、次第に餡子の詰まった身体が震えだす。

「どうしたんだい?」
「な……なんでもないんだぜ……です」

ゆっくりが隠し事などできるはずもないが、お兄さんはあえて気付かないふりを続ける。

「まあ、別にいいよ。これからまりさには、罰を受けてもらうから」
「ゆ!?」

罰。その言葉に敏感に反応するまりさ。
餡子脳の饅頭でも、その言葉の意味はわかる。

「な、なんでまりさがそんなものをうけなきゃいけないんだぜ!?」
「だってまりさは野菜を食べたんでしょ? さっき言ったよね」
「ゆ……!? ゆ、そ、そうだよ!! まりさはしょうじきにはなしたよ!! だからおにいさんはおやさいさんをよこすんだぜ!!」
「ん? …………ああ。そういえば約束したっけ。ちょっと待ってな」

まりさが言った内容とは、彼の質問に対して正直に話せばお兄さんが野菜をあげるというものだった。
自分に都合の悪いこと以外は、わりと記憶力のいい餡子脳。
愛護派でもない限り、饅頭との約束なんて守る必要がないというのが、一般的である。
とはいえ、約束は約束だ。お兄さんは台所から約束のりんごと大根と人参を持って来る。
もちろん、彼がそのまま言うことを聞くつもりは全くないのだが……。

「おいしそうなやさいさんなんだぜ!! はやくここからだしてまりささまにおやさいをたべさせるんだぜ!!」

目の前の野菜に意識を持っていかれたまりさは、すぐにお兄さんへの恐怖を忘れて命令する。
だが、もはやその程度など些細なこと。
おにいさんは無言でまりさの髪を引っ張ると、言われたとおり箱の外へ放り投げる。
ゆべっ、と悲鳴をあげて転がるまりさだが、今はそれよりも目の前の食べ物だ。
すぐに起き上がると、お兄さんの持つ野菜へと飛び跳ねて食いつこうと飛び跳ねる。
だから、まりさは先ほど見たお兄さんの顔が、いまどんな表情をしているのか知ることができなかった。
もし気づいていたとしても、その未来は変わらなかったではあろうが……。

「はやく!! はやくまりささまにおやさいをよこすんだぜ!! たべさせるんだぜ!!」





「…………そう。それじゃ、お望みどおり食べさせてあげる………よ!」

めごりっ!!

合図も何もない。全くの不意打ちだった。
よ! の部分で、お兄さんはりんごをまりさの顔面へと投げつけたのだ。

「ゆべあぁぁぁぁぁっ!!」

りんごを与えられたまりさに待っていたのは、むーしゃむーしゃ♪ ではなく、しあわせー♪ でもなく、顔の潰れるような激痛。
食べ物といえど人間の力によって放たれた固形物は、ゆっくりにとって驚異の威力を発揮する。
瑞々しいリンゴは、音を立ててまりさの鼻に当たる部分にめり込んだ。

「ゆべあ!? ぶあああ!? ば、ばりざのおがお!? いだいいだいいだいいいいいいいい!!」
「あぁ、まりさ。ダメだよ、ちゃんと受け止めなきゃ………」

突然の痛みにのたうつまりさ。
対するお兄さんは、まるで子供の粗相を優しく咎めるような口調。

「な…、なにずるんだぜええ!! じじいはまりざざまにおやざいをよごぜえええ!!」
「あげてるじゃないか。まりさがちゃんと受け止めないからだよ」

手に抱えた人参と大根を持ち上げながら、お兄さんは当然とばかりに答える。

「『食べさせろ』って言われたからね。僕がしっかりお口に運んであげるよ」

お兄さんの回答に、ゲスまりさはそれがどういう意味を持つか理解した。
もともと狡賢い種族だ。言葉の裏に含まれる意図に気づくのにも時間はかからなかった。

「ゆ、ゆっぐりじねええええええ!!」
「あ、大根食べる?」

ばぢん!!

一杯食わされた。ハメられた。ゲスまりさはその事実に激怒し、彼に食ってかかる。
対するお兄さんは握っていた大根で、熱烈に飛び込んできたまりさの顔面をクリーンヒット。まりさの話なんて聞いちゃいない。
カウンターの衝撃に、身体全体を回転させて吹っ飛ぶまりさ。部屋の壁に顔をぶつけ、その際に小麦粉の皮膚が一部削れる。

「ゆべがああああああ!?」
「ほら、はやく食べなよ。ちゃんと口を開けるんだ」
「!? …ま……まっで! まっでええええ!!」
「はい、あーー……ん!」

文字通り身を削られる痛みに泣き叫ぶゲスまりさ。
このままではいけない。本能で一度態勢を整えようと身を捩じらせる。
だが、あくまでもお兄さんは自分のペースを崩さない。
頬を打たれた拍子にまりさの顔から転がり落ちたりんごを拾い、今度は悲鳴を上げる口に叩きつけた。
餡子脳では反応していたが、痛みに動きが鈍っていたゲスまりさは結局、為す術なくその直撃を受ける。

みぢりっ……!

歯茎の裂ける音とともに、ゲスまりさの口から液状餡子にまみれた前歯が何本か転がり落ちた。

「びゃぎゃ!? びゃりびゃにょびゃが!?」(歯が!? まりさの歯が!?)
「ああもう……、落としちゃダメだって……の!」

まりさの悲鳴は、一回ごとに大きくなるにつれて、意味が聞き取りづらくなっていく。
しかし、お兄さんはそんなことを気にしない。再び大根を食べさせようとまりさに近づいた。

「ゆひっ…!? ゆびぃぃぃあぁぁぁぁぁぁぁっ!! ぐるな!! ぐるなあああああああ!! ……ゆごびゅっ!?」
「来てほしくなかったら、逃げるんだ。でもそうなると野菜は食べられないよ?」

最初は野菜に気を取られていたまりさも、ここまで来るとそれどころではない。
いや、そもそもまりさが意識を食べ物に向けることを許されていた時間は一分も無かった。
ゆっくりにとっては広い部屋を、必死に這いずって逃げ回る。
しかし、人間にとってみれば本当に小部屋である。まりさがどんなに逃げたと思っても、五歩もかからず追いつける程度の。
また隠れて休もうにも、まりさが身をひそめるような隙間はどこにもなかった。そして追いつかれれば、また大根とリンゴ。
必死に距離を取ろうと逃げる間。ゲスまりさの脳裏に浮かんだのは、恐怖だった。

このゲスまりさは、人間というものが自分たちにとってゆっくりできない存在であることを知っていた。
知ってはいたが、それは鈍くさい他のゆっくりだからそんな目にあうのだと考えていた。
狩りに秀でて賢い自分がやれば、人間なんてすぐに倒してしまえる。いや、それよりも下僕にして利用しよう。そう企んでいた。
だが現実はどうだ。まんまと人間の罠にかかり、なまじ賢い分人間との実力差を理解してしまった。
こんなことになるなら、最初から自分の娘たちを交換道具として扱えばよかった。
元々春になれば捨てるつもりだった子供だ。夫のれいむもいない今、不要な子供をまりさが育てる理由もない。
そうだ、全てはあのガキどもが悪いんだ。あいつらがいたから人間の里へ来てしまったのだ。
あのゴミどもを自分が人間のための奴隷として躾ると提案すれば、喜んで受け入れてくれるだろう。
少しは自分の餡子を受け継いでいるのだから、物覚えはいいはずだ。
言うことを聞かないやつがいれば、人間に食べさせればいい。全部潰して逃げるということだってできる。
もしかすると、お礼に美味しいごはんを用意してくれるかもしれない。いや、きっとそうに決まってる。
そうと決まれば、早くこの素晴らしい提案を人間に伝えよう。自分は悪くない。被害者なんだって。
そうすれば、人間も同情してくれるに違いない。赤まりさたちは憎たらしい顔をしていたが、自分はこんなに美ゆっくりなんだから。
だから……だから早く止めてええええええええええ!!!!
叫びたくとも叫べない。うかつに声を出そうとすれば、先ほどのように口を痛めてしまうことに、ゲスまりさは気づいていた。
そんなまりさの懇願など知らず、お兄さんはまりさの顔に向けて野菜を向ける。
起き上がれば大根、倒れればリンゴの大盤振る舞いだ。

「ぼ、ぼうやべで……いだいのいやだぁぁぁぁ……」

この行動が5分ほど続いた頃、呆れるほど遅いながら全力で逃げていたまりさは体力の限界を迎えた。
限界まで動かした身体は痙攣気味に激しく上下し、時折少量の餡子が、口から濁った音と共に噴き出して床を汚す。
先ほどまでふてぶてしかったその顔は、りんごや大根によって何本も歯が抜けおち、顔の所々は内出餡で黒ずんでいる。
恐怖と激痛によって穴と言う穴から垂れ流した砂糖水が、フローリングの床に水たまりを作っていた。
まりさ種自慢の帽子も、初めの時より半分以上も潰れて縮んでいた。これでは鍋を逆さまにして被っているのと大差ない。

「じゃ、お野菜さんはもういらないんだね。……残念だな、すごく新鮮ですごくゆっくりできた大根さんたちだったのに……」

やれやれ…。とお兄さんはため息をついて首を振る。あざとい、さすが虐待お兄さん、あざとい。
そんな彼が握る大根とリンゴはいまだ無傷。野菜は食べるものであって、遊ぶものではない。それを忠実に守っているお兄さんであった。

「じ……じじいがだべざぜでぐれないがらでじょおおおおお!!」
「食べさせてあげようとしたのに、まりさが逃げたり口を閉じたりするからだよ。そんなこともわからないの? 馬鹿なの? 死ぬの? ……あ、それと」

何かを思い出したようにお兄さんは言葉を切ると、何の躊躇もなくゲスまりさのぐずぐずになった顔へ指先をぶち込んだ。
ずぶり。という音とともに、湿った感触がお兄さんの指の先端へ伝わってくる。

「ゆがああああああ!? いだい!! いだいいいいいいいい!!!」
「その薄汚い喋り方を今すぐ止めろ。このゲスが」
「おがおづぶれるうううううう!!」(お顔潰れるうううう!!)
「潰れたって死にはしないよ」
「やべでぬいでいだいいだいぬいでいだいやべでいだいいだいいいいい!!」
「黙れ」
「おべがいじまずごろざないでぐだざい!! おべがいじまずおべがいじばず!!!」
「動くな、死ぬぞ」

死ぬ。突如雰囲気を豹変させたお兄さんに、自分が最も恐れる単語を言われて、まりさは口をつぐむ。
危機管理能力が疎いゆっくりでも、さすがに自分の現状を理解できたようだ。
お兄さんが刺しこんだ箇所は、ゲスまりさの眉の部分であった。
指を全て頭へ埋めこむと、指先を僅かに動かして中枢餡付近に食いこませる。

「いいかい、ゲス饅頭。いまから僕の話をよく聞いてね?」
「ど、どぼじでごんなごど……」
「返事」

ぐずり……

指を動かして、体内の餡子をかき混ぜる振動を直に伝える。

「わがりまじだ! なんでもぎぎばず! だがらごろざ…!」
「うるさい」
「ゆぐりいいいいい!!」
「もしまた生意気な口…。さっきのじじいとかね。ああいうことを言ったら、まりさの中身を全部出すからね。理解出来た?」
「ゆ……、ゆっぐりりがいじだよ…!!」
「敬語忘れてるよ」
「ゆゆゆゆゆっぐりりがいじまじだ!!!」

痛みと不快感の中で、まりさはお兄さんの言葉を待つしかなかった。
間近に見える死。まりさはそれを回避するために全意識を集中させる。
その反応に満足そうな表情のお兄さん。いつの間にか口調も元に戻っていた。

「話は簡単だ。まりさはどうしてこんな目にあってるのかな?」
「ゆ……、ば、ばりざのあがぢゃんがわるいんだよ!! わがままばがりいっで、ばりざをごばらぜるがら!!」
「答えになっていません。はいお仕置き」

お兄さんは手首を回すと、額に当たる部分の餡子をぐりぐりとかき回した。

「ゆぎゃ!? ゆびょ!? びょ! ゆっっぴょ!? ゆっぐ!?」
「次はこんなもんじゃないぞー? それとも、身体の中ぐちゃぐちゃにされたいの?」

ぐずりぐずりと体内から湧き上がる音にパニックを起こすまりさ。
それが治まるのを待って、再びおにいさんは声をかける。
体内をかき回されたことにショックを受けたまりさは、大人しくお兄さんの質問に答えるようになった。
自分たちはぎりぎりで冬を越せたが、量が足りないため人間の畑に餌を取りに来たこと。
番のれいむが死んだことで育児が面倒になり、赤ゆたちを最初から捨てる考えだったこと。
人間はゆっくりより弱いと考えていたこと。
一刻も早く手を抜いてもらいたい。そのためにまりさは偽りを騙る手間さえ惜しんでいた。
だがまりさは体験したことない責め苦に怯えながらも、自分が先ほど考えていた提案を口にする。

「じ、……おにいざん! ば、ばりざのおはなしをゆっぐりぎいでね!? ぎっどすごぐおどろぐよ!!」
「ん……お話?」
「ば、ばりざがあのおぢびじゃんだぢをどれいにぞだでであげるよ!!」(あのおちびちゃんたちを奴隷に育ててあげるよ)

餡子をこねくり回す手を止めて、お兄さんはまりさの顔を覗き込む。
かかった。ゲスまりさは心の中で笑みを浮かべながら、自分の提案を口にする。
その間お兄さんは空いていた手を顎に当て、何事か考えるそぶりを見せていた。

「…ど、どうおにいざん!? ごはんはうんうんだげだべざぜるじ、ずっぎりのあいでもできるようにざぜるよ!?」 

お兄さんはずっと黙っているが、まりさには手ごたえがあったと根拠のない確信があった。
もしかすると、まりさの考えに驚いて声が出ないのかもしれない。
やがてお兄さんが口の端を釣り上げて自分を見下ろす。
そうして受け入れられる自分の未来を想像し……

「お断りします」
「ゆ゛っ!?」

お兄さんから明確な拒絶を食らい、痛みも忘れて固まった。

ああ、よく似た親子だ。その様子を見て、お兄さんは苦笑する。
そもそも、子供を奴隷とする様なゆっくりと取引するつもりはなかった。
それにいつの間にか敬語も忘れている。だから早くお仕置きという名の虐待に移りたいのだ。
真面目に取り合うだけ時間の無駄だ。適当な嘘でお兄さんはこの話を切り上げることにした。

「あのゲス饅頭どもさ、全然使えなかったよ。ゴミだねゴミ」
「ゆ!?」

そんなはずはない。まりさは咄嗟にそう口に出そうとしたが、続くお兄さんに遮られる形となった。

「全く、言った話を聞きやしないし覚えもしない。ほとんど潰しちゃったよ」
「ど、どぼじでぞんなごどじだのおおおお!?」
「だって捨てたじゃないか。それをどう扱おうが僕の勝手だよ。もういないけど」
「じゃあばりざをゆるじでよおおおおお!!」
「ダメだよ、お野菜食べたんだし。それに、あの赤まりさたちは役に立たなかったし……もういないけど」
「ばりざのごどもがやぐにだだないわげないでじょおおおお!? ばがなの!? じぬの!?」
「まあ、そんなわけで穴埋めをゲスまりさにしてもらうことと相成りました。はい拍手」
「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおおお!?」
「それにさ、ゲスの子供が何の役に立つの、ゴミでしょ。そんなこともわからないの? 馬鹿なの? 死ぬの?」
「ばりざばげすじゃないいいいいいいいいいい!!」
「全く。赤ん坊も言ってたよ。おかーさんを潰してまりさを助けてね、ってさ。もういないけど」
「ゆがあああああああ!! ぐぞばりざどもおおおおおおおお!!」
「いや、お前の子だし。役に立たないとことかそっくりだね。もういないけど」
「あんなのばりざのごどぼじゃないいいい!!」
「じゃあやっぱり好きにしていいんだよね。もういないけど」
「ゆっぐりじねえええええええ!!」
「一々煩いんだよこのゲス饅頭」

ここでようやくお兄さんはまりさの中に突っ込んでいた手を引いた。その手にわずかばかりのオマケを掴んでいる。

「ゆぎゃああああああ!! ば、ばりざのおべべえええええええええ!!」
「全く、敬語を使えと言っただろうに……あと、うるさい」

彼はまりさの顔から手を引き抜くと同時に手首のスナップを利かせ、掻き出す要領でまりさの眼から頬にかけて削ぎ落としていた。
ぽっかりと顔の左上半分が削られたまりさ。さぞかし甘くなったはずの餡子は、まりさが垂れ流した水分が多すぎて硬くなっていた。
お兄さんは掴んだ餡子を手の中でおにぎりの様に固めると、それを部屋の隅へ放り投げる。

「……あれは餡団子なのか、はたまた善哉の素になるのか……それが問題だ」
「ば、ばりざ! ばりざのおべべがえぜえええ!!」

その様子を見ていたまりさは餡子の転がった隅へ這いずると、どうにか自分の身体を取り返そうと舌を伸ばす。
だが、そんなことを許すほど虐待お兄さんは優しくない。

「はい、よく聞いてねゲスまりさ。じゃないと踏み潰すよ。この舌」
「ゆひぇ!?」

もう少しで届く、そう思って全神経を集中させた先端部分に、お兄さんは容赦なく足を置いた。

「まりさにはこれからしばらくの間、子供たちの分までお仕置きを受けてもらいます」
「ゆひぇひぇひぇ! ゆひゃんひゃにょほ!!」
「何言ってるかわかんないんで、こっちが勝手にしゃべるよ。それとも、踏みつぶしたらちゃんと喋れるかな?」

赤くなったり青くなったり忙しい饅頭だ。お兄さんは悪戯に足に力を込める。
残った片目が大きく見開かれた直後、すぐにまた力を抜く。安心したらまた力を込める。
お兄さんはこれを何度か繰り返し、お仕置きが嫌ならここで潰されるかと迫った。
その選択に、もはやまりさは目を伏せて諦めるしかなかった。
絶望を顔に張り付けた土饅頭を見て、ようやくお兄さんは舌から足を離す。

「じゃあ、まりさ。いよいよ本格的なお仕置きに行こうか?」
「あ、あれがおじおぎじゃないの!?」

当然です。
お兄さんはオレンジジュースを混ぜて練った小麦粉の塊をまりさの顔にくっつけて応急処置をすると、部屋を見渡して道具を探す。

「……そうだ。これにしよう」
「ゆ!? なにをずるの!? ぼうばりざをいじめないでね!? ゆっぐりざぜでね!!」
「ああ、終わったらゆっくりできるよ。……まあ、したくなくてもすることになるけど」
「おべがいだがらゆっぐりざぜでええええええええええ!!」
「はいはい、ゆっくりゆっくり」

適当に答えながら部屋の中を物色していると、ある物を発見して動きを止めた。
それは以前解体したゆっくりまりさの舌の長さを測るために使用した定規と、番いのありすの目の前で引き抜いた舌を輪切りにするために使った包丁。
そして輪切りにされた舌をありすに食べさせるために使用した爪楊枝だった。
結局ありすはまりさの舌を食べた直後に発狂し、自ら包丁を無理やり飲み込んで死んだ。
その二匹の亡骸は今、我が家のゆうかの畑の栄養としてゆっくりしていることだろう。

「そうだ、いい事を思いついた……」

お兄さんは早速それらをまとめて抱え上げると、すぐにまりさの方へ向き直る。

「ゆ!? なにずるの!? やべでね!! ゆっぐりできないがらやべでね!!」
「だから、終わったらさせてあげるって」

それだけ言うと、お兄さんは距離を取ろうとしていたまりさを髪を掴んでひっくり返す。
その拍子に帽子がとれたと騒がれても迷惑なので、素早く頭の下に敷いてやる。
潰れるとかゆっくりできないとか騒いだが、すでに直し様のない状態だったので、お兄さんは黙殺した。

「や、やべるんだぜ!! ゆっぐりできないんだぜ!! ゆっぐりじないでもどずんだぜ!?」
「うへぁ……気持ち悪」

少しの間だけとはいえ、休めたことで落ち着いたのだろうか。口調が「だぜ」に戻っていた。
それにしても、どうやらゆっくりは自分で起き上がることが難しいのは本当らしい。
横倒しならまだしも、逆さまにされると体を揺らすのも厳しいようだ。
うねうねうねうねうねうねうねうね……と、ゆっくりで言う『足』の部分が忙しなく動いている。
それはまるで、波打つ芋虫の背中のようだった。きもい、さすがゆっくり、きもい。
一瞬決意を挫かれそうになるお兄さんだが、そこは虐待魂。意を決して波打つ底辺に包丁を当てる。
残念だが、こんなにうねるようでは定規は役に立ちそうにないので放り投げる。

「なに!? なにをずるんだぜええええ!?」

自分で確認できない場所に何かをされる。その事実に、まりさは声を震わせた。
すでに片目付近がごっそりと失われているのだ。死角が増えている今、自分の状況を知ることは無理だろう。
さてと、これからは集中力が大事である。彼は素早く包丁を突き立てた。
失敗しても支障はないが、やはり自分なりに難易度を上げるのも一興だろう。
お兄さんは大きく息を吐くと、すっと深く長い一本線の切り込みをまりさの足に引いていく。

「ゆぎゃあああああ!? なに!? なにじでるんだぜええええええ!!」
「何って、足を切ってるんだよ……」
「やべでよおおお!! ばりざあるげなぐなっぢゃうでじょおおお!!」

あ、また「だぜ」口調じゃなくなった。
だがそんなことはどうでもいい。

「まりさ、これはお仕置きだ。もう二度と君が狩りをできない身体にするんだよ」
「ゆぎゃあああ!! おべがいでず! やべでぐだざい!! ばりざあるげなぐなっぢゃうううう!!」
「……当然じゃないか。その為にしているんだから」

何を言ってるんだい?
お兄さんは呆れた声でまりさの足へ切り込みを入れていく。

「いやだあああああああ!! あるげなぐなるのいやだああああああ!!」
「そりゃ僕だって嫌だよ。でもまりさはお仕置きだからね。ゆっくり切られてね」
「ばりざなんいもじでないいいいい!! いだいいだいよおおおやべでくだざいいいいい!!」
「人の畑に入ったし、子供を見捨てた。それに何より饅頭風情が人間をバカにした。殺されないだけいいと思うんだね」
「ごべんなざい、もうじまぜん! にどとじまぜん!! いうごどだっでぎぎまずがらあああああ!!」
「じゃあ動くなよ。足を切り落とすのが面倒になるから」
「あじをぎらないでぐだざいいいいいいいいいい!!」
「相変わらず無茶を言う…。なら、加工所に行こうか?」
「かこうじょいやだああああああああああ!!」
「だったら、諦めるんだね」

まりさの意味のない声を聞き流して、お兄さんはさらに包丁を突き刺して切り込みを入れていく。
それは寺小屋で子供たちが画用紙を縦に切って短冊を作るのと、よく似ていた。
数分後、彼の目の前には、縦に何本もの切り込みを入れられたまりさがひっくり返っていた。
その顔は水分を出し切ったはずなのに、まだ砂糖水の涙でぐしょぐしょに濡れていた。

「ふう……」
「ゆぐっ……、こんなんじゃもうばりざゆっぐりでぎないいいいい……」

まりさは自分で見ることはできないが、どんな風にされてしまったのかは感覚でわかるのだろう。
縦に切られた足はまだ時折動くが、先ほどまでの様に元気よく波を立てることができなくなっていた。
うねる波が不規則になり、その隙間からは餡子が見え隠れする。
中身を傷をつけずに捌けたことに彼は少しばかりの達成感。
だが、これならまだ十分治癒できる程度だ。お兄さんはまりさに声をかける。

「まさか、これくらいならすぐに治るよ」
「ゆ!? ぼんど!? なおるの!?」
「もちろん。だから、もっと切らないとダメだね」

無論、絶望を与えるために。

「ごのおにいいいい!! あぐまああああ!! ゆっぐりじねえええええええええ!!」
「ははは、ありがとう。それなら、本当に悪魔みたいなことをしてあげようか?」
「ばなぜ!! もどぜ!! ばりざをだずげろおおおおおおお!!」
「さーて、次は横に細切れだー」

まりさの罵詈雑言など当然スルー。
むしろ、余計な事を言えば尚更痛い目を見ると教えてやる。
お兄さんは先ほど切り込みをを入れた傷に交わるように、今度は横に包丁の切っ先を走らせた。
縦で慣れたおかげもあり、横切りは実にスムーズに進む。

「やべでよおおおお!!! いだいよおおおおおお!!」
「止めろと言われてやめるわけないじゃないか、馬鹿なの? 死ぬの?」
「やべで!! やべでよ!! どぼじでごんばごどずるのおおおおお!?」
「何言ってるかわかんないよ。……ほい、半分」
「おにいざんだっで、いだいごどざれだらいやでじょおおおおお!!」(痛いことされたらいやでしょおおお)
「うん、嫌だね。だから人は悪い事をしないんだよ。でも、まりさは悪いゆっくりだから仕方無いの」
「おにいざんがゆるじでぐれればいいんだよおおおおおお!! ぞんなごどもわがらないの!? ばがなの!? じぬの!?」
「ええと……、………そうだあれだ。『絶対に許さない、絶対にだ』」
「どぼじでぞんなごどいうのおおおおお!? いだいいだいいだいだいいだい!!」
「ははは、そんな流れに運んだまりさが悪いんだよ。……よし、できた」

絶えず痛みを訴えるまりさを適当にあしらいつつ、お兄さんは順調に作業を進めていた。
そしてようやく完成したことに満足すると、額の汗をぬぐう仕草をする。
お兄さんの前にあるもの。それはいくつもの見事な正方形に区分けされたまりさの底面だった。
ちょうど、将棋盤のようなものだと思ってもらえればいいだろう。
そんな細かく切り分けられたまりさの小麦粉の皮膚は、辛うじて中身の餡子とくっついてる程度だ。 
動かそうとしてもここまで(あるかわからない)神経を断裂されると、それは最早無理なこと。
人間で言うならば、足の指の根元を裂かれたようなものだ。
まりさの足も所々が個別に痙攣するだけで、底面が波打つことはもうできないだろう。
オレンジジュースでもかければ傷も塞がるだろうが、そんなことは死にそうになってからで十分である。
終わらない拷問に叫び、神経をすり減らしたことで、まりさは心身ともにズタボロになっていた。

「うーん、将棋の網目の数ってこれでよかったんだっけかな……。今度やる時はちゃんと調べておこう」
「ぼ、ぼうやべでぐだざい…。ばりざをおうぢにがえぢでぐだざい………」
「加工所に提案したら採用されないかな……。河童の棟梁とか……さすがに気に入ってくれないか……」
「おにいざん……、ばりざを……ばりざをだずげでぐざだざい」

先ほどまでは怒ったり泣いたりと忙しかったまりさも、足を刻まれたせいで抵抗する気を奪われてしまったようだった。
もう許してほしい。助けてほしい。ゲス特有の傲慢さすら、涙と共に体外へ出てしまっているような大人しさだ。

「………おいおい、何を言ってるんだ。まだまだこれからだろ?」
「ゆびぇぇぇえええええええええん!! おうぢがえるううううううう!!」

だが、それでもお兄さんは許してくれない。むしろ、ようやくギアが入ってきたところだ。
地獄は行った事がないが、生き地獄とは、もっともっと苦しいものだと思う。
そう、これからが本番である。

「さて、それじゃその足も役に立たないし、剥こうか」
「ゆ゛っっっっ!?」

剥く。それがどんな意味を持つかまりさにはわからなかったが、とにかくゆっくりできないことは間違いない。
一時は為すがままに諦めようとも考えたまりさは、必死に身体を揺らして態勢を整えようとする。
だが悲しいかな。立て続けの責め苦にまりさの体力は限界を超え、足を切られたせいで運動能力は元の半分以下。
さらには、潰れた帽子の中へ逆さまに入る形になっているせいで、妙な安定感がまりさに働いていた。
何一つ、まりさの味方になってくれる存在は無かった。
頼れるのは己のみ。その己すら、お兄さんには手も足も出ないという現実が、まりさをより追い詰める。

「おべがいだがらやべでよ!! ばりざをゆっぐりざぜでええええ!!」
「やれやれ……いい加減何度も騒がれると鬱陶しいな」

お兄さんは再びまりさの顔に手刀を打ち込むと、半ば叩きつけるようにして閉じ込めていた箱の中へと戻した。
続きの事も考えて、逆さまのままである。
箱の中でも騒ぎ続けるまりさだが、箱の中に声がたまるので幾分か聞こえてくる声は小さくなった。
相変わらず甲高いが、それでも先ほどに比べれば随分マシである。

「さ、まりさ。覚悟はできたかい?」

手を振り払って餡子を床にまき散らしながら、お兄さんは親しみをこめた三日月型の笑顔を向けた。






後編2 まりさ一家 へ続きます





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あとがき

長すぎました……。
あまりにもやりたかったことを試して行ったら伸びる伸びる……。
お兄さんの独壇場で、まりさが頑丈すぎました……。

wikiなどで感想を下さった方、こうして目を通して下さった方、ありがとうございました。

次回で完結します。
正直長いうえにやり過ぎだとは思いますが、最後は簡潔に済ませたいと思っています。

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最終更新:2009年05月27日 21:30
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