ゆっくりいじめ系743 楽園


 楽園

 愛護派、虐待派、駆除派の人間が出てきます。




















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「ゆっへっへ。まりささまはむれでいちばんつよいんだぜ!」
「・・・」
男は無言の返答を返した。
今日はただ単に森の果物を取りに来たのだが、気付けばこんなことになっていた。
おそらくこのゆっくりまりさも私同様に果物を取りに来たのだろう。
大抵のゆっくりは知らない人間を見かけると警戒し、すぐ逃げ出す。
だが、このまりさは逃げ出さずに私と対峙していた。
若いゆっくりにはありがちなことだ。若さ故に親の言い付けを守れなかったのだろう。
「まりささまをむしするなんていのちしらずだね!」
「・・・」
「まりささまのごはんをとろうとしたばかは、ゆっくりしね!」
といって、無視したことに痺れを切らしたのかまりさは男に渾身の体当たりをしかけた。
男は避けることなくまりさの体当たりを脚に喰らい
「や~ら~れ~た~~」
と、気の抜けるような台詞を吐きながら膝から崩れ落ちた。
ゆっくりまりさは倒れた男の背に乗り、トドメとばかりにひたすら男の背で跳ねた。
「にんげんがまりささまにかとうなんてひゃくねんはやいんだぜ!」
そして、気が済んだのかまりさは果物を取ってから巣に帰っていった。
男はゆっくりまりさが帰ったことを確認するとスッと立ち上がる。
まりさが倒した思っている男は虐待お兄さんだった。
「さて、帰るか」
そう言い残し、帰途についた。



数日後



「ゆっくりしていってね!」
「ちょうちょさん、ゆっくりまってね!」
「おみずぷーかぷーか」
「れいむ、あまりおみずのなかにはいってるとゆっくりできなくなるからゆっくりでてきてね!」
「むーしゃ むーしゃ しあわせ~!」
ゆっくり達の群れは森の中にある小さな広場で思い思いにゆっくりしていた。
と、そこに野菜を頭に載せたまりさ達が戻ってきた。
このまりさ達は群れの中でも聞き分けのない若いゆっくり達だ。
「まりしゃおねーしゃんすごーい!」
「おいしそー!」
「まりさ、そのおやさいどうしたの?」
たまに優しい人間が美味しいものをくれてたので、貰ったものなのだろうか。
でも、いつもは貰えたとしても少量だったのでゆっくり達は驚いていた。
「ゆっへっへ。にんげんたちはばかだから、はたけからとってもきづかなかったんだぜ!」
「ゆゆ! にんげんからぬすんできたの?」
「そんなことをしたらゆっくりできなくなるよおおぉおぉぉぉ!」
人間の強さは知っている。以前群れがれみりゃの集団に襲われたときに助けてくれたのだ。
そして恐ろしいれみりゃの集団をあっという間にやっつけてくれた様を見て、力の差を知ったのだ。
そんなに人間に悪さをしてただで済むわけがない。群れのゆっくり達は恐怖するが
「きにすることはないぜ! まりさたちはにんげんよりもつよいんだぜ!
 にんげんがしかえしにきてもかえりうちにしてやるぜ!」
数日前に虐待お兄さんと対峙したまりさは、人間を倒せると勘違いし案の定増長していた。
そして取り巻きの若いゆっくり達を連れて、人間の畑から野菜を盗むと言う凶行に走ってしまったのだ。
「なにいってるのおおおぉぉぉ!」
「にんげんはれみりゃもやっつけちゃうんだよ!」
畑から野菜を盗んできたまりさ達は盗みが成功したことにより自分の力を過信しすぎていた。
たしかに群れの若いゆっくりの中では強いゆっくり達だ。
だが、それはあくまで群れのしかも若いゆっくりの中の話だ。
たしかに子供のころ、人間がれみりゃの集団をやっつけていたのは見ていたが
それは自分達が子供だったからであり、今なられみりゃの集団も敵ではないとまで勘違いしている。
井の中の蛙という言葉を知らないとは哀れである。


その頃、畑を荒らされた村では話し合いが行われ紛糾していた。
今までもゆっくり達はちょくちょく畑荒らしに来ていたが単体もしくはつがいで来るので
被害はあったものの微々たるものだった。しかし、今回は数が多く被害が大きかったのだ。
今までのことに加え、今回の大きな被害で積もり積もったものが爆発したのか激怒していた。
「ゆっくりはすべて駆除すべきだ!」
畑を荒らされ被害を被った駆除派の人達は今後も被害にあう可能性を考え駆除を訴えた。
「良いゆっくりもいる。すべて駆除はやりすぎだ!」
それに対し、野生のゆっくり達とたまに遊んだりしていた愛護派の人達は擁護を唱えた。
「ならば、今回の被害をどうすればいい? そして今後も被害に遭わない保障はない。
 それとも、お前達が被害を被るたびに被害を穴埋めしてくれるのか?」
駆除派の矛先は気付けば愛護派に向いていた。
本来なら怒りの矛先を畑を荒らしたゆっくりに向けるべきだが、生憎とここにはいない。
なので振り上げた拳がゆっくりを擁護する愛護派に向いてしまったのだ。
駆除派は農業を生業にしている人がほとんどだ。
故に元々ゆっくりなぞどうでもいいと思っている。それよりも日々の暮らしが重要だからだ。
だが、実際に被害を被り、また今後も被害を被ることを考えると駆除派になってしまうのも仕方がなかった。
また農業を生業にしている人が多いため、駆除を唱える人が大多数を誇っている。
他のことを生業にしている人のほとんどは、この話し合いを傍観している。
矛先を向けられ窮地に陥ってる愛護派の人達は困り果てていた。
被害の損失補填をしろと言われても生活にそれほどの余裕はない。
しかし、だからといってゆっくりの全滅を黙って見過ごすわけにはいかない。
そんなとき、今まで話し合いを眺めていた虐待お兄さんが助け舟を出した。
「私に良い案がある」
全員に聞こえるような声ではっきりと発言し立ち上がった。
話し合いの場は静かになり、虐待お兄さんの案を聞くことにした。
「つまり駆除派の方たちは被害の穴埋めが出来ればいいのですよね?」
「ああ、暮らしていければ我々は何も文句はない」
その言葉を聞くと虐待お兄さんは微笑み妥協案を提示した。
「ならば、ゆっくり達に被害の穴埋めをしてもらいましょう」
「「「「「・・・・はぁ?」」」」」
突拍子もないことをいきなり言う虐待お兄さんに一同は唖然とする。
ゆっくり達に貨幣経済の概念はない。
そんなゆっくり達にどうやって被害の穴埋めしてもらうのかと騒ぎ始めた。
だが、虐待お兄さんはあることを知っていた。それは加工場の存在である。
駆除派の農家の人達には遠くの町にあり、また実生活とは関係ないためほとんど知られてないが
虐待愛好者の間では有名な存在だ。なにせゆっくりの売買をしているのだから。
「遠く離れた町にゆっくりを買取ってくれる場所があります。
 群れのゆっくり達に被害額分のゆっくりを提供するように交渉し
 さらに今後の被害を出さないために、また被害を出したら同じことになると教えます。
 それと群れ以外の野生のゆっくりが畑を荒らした場合も同様に群れに責任を取らせましょう。
 もしここで反省の色なく断るようでしたら、そのときは仕方ありません。駆除ということで。
 しかし、反省し素直に被害を穴埋めするならば、それ以上は人間は何もしないと教えます」
駆除派の人達はこの案を受け入れた。
この案ならば、ゆっくり達が大人しく受け入れるなら被害額分が手元に戻ってくる。
逆に断られた場合でも駆除の名分が立つ。どちらに転んでも利があるからだ。
「さて、愛護派の人達はこの案は如何でしょうか?」
と言っても、結果など分かっている。
愛護派は対案など出せないだろう。被害の損失を穴埋めしなければ駆除派は納得しないからだ。
ゆっくり達が盗んだ野菜を返しに来る可能性もなくはないが限りなく低い。
そしてこの案を蹴れば、多数決でゆっくり達の駆除が決まってしまうだろう。
唯一、道があるとすれば私財を投げ打ってゆっくり達に代わって被害の穴埋めをすること。
別にそんな選択肢を取っても構わない。畑荒らしに味を占めたゆっくりは、再犯を繰り返すからだ。
すべての逃げ道は塞いである。


話し合いの結果、虐待お兄さんの妥協案が全員賛成を持って受け入れられた。


ゆっくり達に群れに交渉しに行くことになったのは、虐待お兄さんと愛でお姉さんである。
「案を提案したのは自分なので、交渉役も行います」
虐待お兄さんは、案を提案したので自分なのでと交渉役に立候補した。
「私もついていきます」
続いて愛でお姉さんも立候補に名乗り出た。
一瞬、自分が虐待お兄さんであることがバレたのかと思ったが、どうやらばれてはないようだ。
どうやらゆっくり達に不利な交渉にならないようにと監視役も兼ねてのことようだ。
賛成すべきか反対すべきか迷ったが、ゆっくりと仲の良い彼女を利用する算段が付いたので
「1人よりも2人のほうが交渉がしやすいと思いますので
 2人で行こうと思いますがどうでしょうか?」
虐待お兄さんは愛でお姉さんも行くことに賛成した。


虐待お兄さんは内心で嘲笑していた。
すでに条件はほとんどクリアされた。
唯一の懸案はゆっくりの出方次第だったが
愛でお姉さんがいれば成功率も上がるだろう。


翌日
虐待お兄さんと愛でお姉さんはゆっくり達の群れと交渉に向かった。
愛でお姉さんは群れの住処が分かっているのか迷うことなく進んでいく。
虐待お兄さんは分からない振りをしてついていく。
この2人がゆっくり達の群れの住処を知った理由は違った。
愛でお姉さんは優しいゆっくりできる人間として群れに招待されたため。
虐待お兄さんは捕まえたゆっくりに苦痛を与え、巣の場所を吐かせたためだ。
もっとも虐待お兄さんは効率よくゆっくりを捕まえるために聞いておいただけだったので
巣の場所を聞いても群れを全て駆除など考えていなかった。楽しみがなくなってはつまらないしな。


2時間ほど歩いたところでゆっくり達の群れについた。
ゆっくり達は異常に怯えていたが別に私に怯えてるわけではないだろう。
私はゆっくりを虐待した後、生かして返したことがないからな。
「ゆっくりしていってね!」
愛でお姉さんが声をかけたことで
「ゆっ ゆっくりしていってね!」
ゆっくり達はおずおずと挨拶を返してきた。
そして群れのリーダーなのか、大きいゆっくりれいむが出てきたと思うと
「むれのゆっくりたちがおねえさんたちのはたけからおやさいをぬすんでごめんなさい」
いきなり謝罪した。
なかなか見所のあるゆっくりだ。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
他のゆっくり達もつられて、ひたすら謝っている。
愛でお姉さんはばつが悪そうに項垂れながらそれを眺めている。
大方、必死に謝罪するゆっくり達を見て許してやりたくなったのだろう。
交渉は愛でお姉さんがやると宣言していたので問題が発生するまでは見守ることにした。
そして、10分も過ぎた頃にようやく愛でお姉さんが言いにくそうに話を切り出した。
「あのね、里のみんながね、お野菜を盗られてすごく怒ってるの」
「ゆうぅぅうぅぅ!」
「ごめんなさいいいいぃぃぃいいぃぃ!」
「むきゅうぅぅぅぅうぅうぅ!」
1匹のぱちゅりーが泡を吹いて気絶した。まさか一言めで脱落とは。
「それでね、お野菜を返してくれないかな?」
「まりざだぢがだべぢゃっだあああぁぁぁぁああ!」
愛でお姉さんは私が一番が知りたかったことを聞いてくれた。
そして、私にとって最高の答えをゆっくり達は答えてくれた。


私とは正反対に愛でお姉さんは最後の希望を砕かれ渋々と要求を伝える。
「このままじゃね、みんなはゆっくりできなくなるわ。
 だからね、盗みを働いたゆっくり達には人間の所で働いて返して欲しいの。
 そうすれば里のみんなは盗んだことを許してあげるって」
「ゆゆ! それでゆるしてくれるの?」
「それならおやすいごようだわ!」
ゆっくり達は、ゆっくりさせてくれないゆっくりを嫌う。
まりさ達は人間から盗んだ戦利品を群れの前で食うことで優越感に浸り
さらにまりさの部下になれば美味しい目にあえると見せ付けることで仲間を増やそうと思っていたのだが
しばらくすると群れの長と大人のゆっくり達がまりさ達のところに来て袋叩きにした。
虐待お兄さんは群れのゆっくり達がゆっくりできなくしたゆっくり達を差し出すことは予想がついていた。
しかし、分かっているからと言ってストレートに言うことは出来ない。
にもかかわらず愛でお姉さんはオブラートに包みながらもストレートに要求してくれた。
実に素晴らしい。加工場の名を出さずに上手く誘導するとは。
交渉を任せた私の目に間違いはなかった。
にしても、人間の所で働いてねか。上手い言い回しをするものだ。
それが二度と帰ってこれないことなのに。


しばらくして15匹の若いゆっくりたちが体中に傷をつけたまま連れてこられた。
全員ぐったりしている様子で、その中には私を倒したと勘違いしたまりさも含まれていた。
どうやら群れのゆっくり達に折檻されたようで誰も文句を言わずに歩いている。
さすがに顔を見られては不味いので、群れのゆっくり達に何も言わずに
まりさを持ってきた袋にいきなり詰め込む。
「ゆゆ?」
前回会ったときは声を出してないので、覚えているとしても顔だけのはずだ。
その顔も眼鏡をかけ髪型は変えて帽子まで被っている。餡子脳とは言え、ごくまれに賢いのもいるので念には念を入れた。
それに袋の中に入れたのでこれでもうこのまりさは、私が以前倒した勘違いした人間とは分からないだろう。
まりさを詰め込んでから、改めてゆっくり達に尋ねる。
「こいつらを持っていけば良いんだよね?」
「ゆっくりおねがいね!」
「わかった」
手早く残りの盗みを働いた若いゆっくり達を袋に入れた。
最初はいきなり袋に入れられたことに騒いでいたが、次第に大人しくなっていった。
この袋は加工場が作ったゆっくり専用の袋で、この袋に入れるとどういう原理か知らないがゆっくりは大人しくなるらしい。
他にも対ゆっくり用の便利グッズを取り揃えているので、よくお世話になっている。


ゆっくり達はこれでゆっくりできると思い笑顔になっていた。
「おねえさん、これでゆっくりできるね!」
一応群れの仲間であるはずのゆっくりが連れて行かれるわけだが
群れのゆっくり達は、誰も気にしていなかった。
まぁ、こんなことをしでかすくらいだから普段の素行も悪かったのだろう。
愛でお姉さんは、まだ言うことがあったので言い淀んでいた。
本題はここからだ。
「あとね、里のみんながね、また悪いことをしたら同じことをするって言ってるの」
「ゆ、おねえさん。もうれいむたちはそんなことをしないからゆっくりしてね!」
愛でお姉さんが落ち込んでることに気付いたのか励まそうとする。
「むきゅ! わるいことをしたらゆっくりできなくなるっていってるのにきかないのがわるいのよ!」
「ゆっくりさせてくれないゆっくりは、もういないからだいじょうぶだよ!」
群れのゆっくり達は悪いことをすればどうなるのか理解しているらしく
そんなことしない。安心して。大丈夫など必死に伝えている。
それでも立ち直ることなく愛でお姉さんは落ち込んだまま、話を再開した。
「みんな、ありがとう。みんなは優しいものね。
 でもね、里のみんなはこの群れ以外のゆっくりが悪いことをしても、この群れのせいだと思ってしまうの」
「ゆっゆぅぅぅぅぅ!」
「むきゅうううぅぅぅ!」
一部の賢いゆっくり達はこの意味を理解し嘆いた。
群れのゆっくりではないゆっくりが人間の畑を荒らしても
その責任を関係ない群れのゆっくり達が取らなければいけないのだ。
「どうずればいいのおおおぉぉぉぉ!」
「おねえざぁぁぁぁあん! まりざだぢをだずげでえええぇぇぇ!」
「う~ん」
周辺にすべてのゆっくりが畑荒らしをやめなければ、この群れのゆっくりに被害が出てしまう。
しかし、すべてのゆっくりに悪いことはしてはいけないと理解させることは現実的ではない。
これといった名案は思い浮かばず、愛でお姉さんも困っていた。
この場所を捨てて新しい場所を探すという考えを持たせぬために
すかさず虐待お兄さんは手を差し伸べた。
「なら、こうしたらどうだろう。
 畑を荒らしたら君達に被害が出る。でも、逆にいうと荒らさなければ被害が出ない。
 だから、君達は人里近くに住んで畑を荒らそうとするゆっくりを捕まえれば良い。なんなら私も手伝おう。
 悪いゆっくりが来ない日は今まで通りゆっくり過ごせるし、餌場まで少し遠くなってしまうけど
 その代わりれみりゃとか野犬とか危険な生物が出たら助けてあげよう。
 それに越冬で死んでしまう心配もしなくていい。
 冬は他のゆっくりも来れないから、冬の間だけ人間の廃屋を貸してあげよう。
 もっとも餌だけは自分で取ってきてくれよ」
「ゆゆ! にんげんのはたけにくるわるいゆっくりをちゅういすればいいの?」
「こわいのがきてもたすけてくれるの?」
「ふゆもきにしなくていいの?」
ゆっくり達が賛成するように、なおかつ人間が楽を出来る範囲内で条件を出していく。
「ゆっくりりかいしたよ! れいむたちははたけのちかくにすむよ!」
「これでゆっくりできるね!」
「あたらしいすをゆっくりつくろうね!」
「お姉さんも手伝うから、みんなでゆっくりしようね!」
「一緒にゆっくりしようね!」
これで条件はすべてクリアされた。
すべてが上手く良き、虐待お兄さんも笑顔だ。
もっとも横で笑ってるゆっくりや愛でお姉さんとは別の意味でだが。


その後、群れのゆっくり達に
人間の家や畑に許可なく入ってはいけないこと。
人間のものを勝手に取ってはいけないこと。
そういう悪いことをしたらお仕置きをすること。
ゆっくりを憎悪する人間もいるので、知らない人には近づかないこと。
など人里近くに住むに当たってのいくつかの注意事項を教えた。
群れのリーダーの教育が良かったせいかゆっくり達は覚えが早かった。
その日の夜、里の人を集めてこれからゆっくり達に畑を守ってもらう旨を伝え
畑番を束ねる人間が必要ということで、私が畑番になった。
そして、私を倒したと勘違いしたまりさ以外は交易商に売り払って
出来たお金は被害に遭った農家に渡しに回った。
まりさだけは大いに私の役に立ってくれたので透明箱に入れて私の家の地下室に招待した。


翌日から群れのゆっくりたち80匹ほどが人里の畑近くに引っ越してきた。
案の定というか愛護派はゆっくりの巣作りを手伝ってあげた。
「すっごくおおきいよ!」
「これなら、ゆっくりできるね!」
さらにまだ必要ないというのに冬に住む廃屋のリフォームにかかってる。
いったいどこの馬鹿親だ?と言いたくなるような可愛がりようだった。
またゆっくりたちの中でも交渉についてきた愛でお姉さんが一番人気があった。
優しいというのもあるだろう。だが、理由はそんなことではない。
「むーしゃ むーしゃ しあわせ~」
「うっめ! めちゃうっめ!」
彼女は致命的に料理が下手だった。
普通の人は野菜の皮を剥くときは綺麗に皮だけを残すように剥く。
だが、彼女は包丁の使い方が下手だったため、そんな器用なことが出来ず
人間が食べる部分を多く残したまま皮を剥くのだ。
また肉や魚料理にしても料理下手を自覚しているのか、ひたすらシンプルに作る。
肉や魚を何の処理もせず焼いて塩をかけただけなど、えっ?と思うような料理を作るのだ。
そんな食材の無駄が多い料理のため、食べれない部分が大量に出てくる。
故に彼女から貰う生ゴミが一番豪華だ。もっともゆっくりにとってはだが。
そして、そんな悲しい理由で彼女はとても好かれていた。


愛護派の人達はゆっくりと遊ぶ時間が増え感謝していた。
なにせ今までは森の奥まで行かなければ会えなかったゆっくりの群れが歩いてすぐのところにいるのだ。
今では暇なときは散歩がてらにゆっくり達と遊べ、ゆっくりできるのだ。
そして、ゆっくり達には知らない人間には近づくなと言ってあるが、私が紹介した人は警戒されることなく近づける。
紹介された愛護派からもゆっくり出来る人連れてきたことでゆっくりからも喜ばれた。
恩は売れるときに売っておくに限る。


元駆除派の農家の人達は畑番が出来たことに感謝していた。
畑番をすることになったゆっくり達の群れは基本的にいつもゆっくりしているが
畑を荒らそうとするゆっくりが来た場合は必死になって畑を守る。
なにせ畑が荒らされた場合、畑番をしているゆっくり達はゆっくりできなくなる。
ゆっくり達はゆっくりできなくなることを何よりも嫌がるからだ。
おかげで畑荒らしの被害は一切なくなった。農家の人達からは大いに喜ばれた。
恩は売れるときに売っておくに限る。


ゆっくりをどうでもいいと思っていた人たちは、やっぱりどうでもよさそうだった。
恩を売れそうになかった。残念である。


カーンと鐘がなったので、ドアを開けるとれいむがいた。
「おにいさん、またわるいゆっくりがきたよ!」
「はいはい」
頭にバッジをつけたれいむが悪いゆっくりが来たことを伝えにきた。
畑番をしているゆっくりには他の野生のゆっくりと見分けるために髪飾りに特製のバッジをつけている。
針と糸を使って付けてあるので、裁縫のできないゆっくりではこのバッジを盗んだところで悪用することは出来ないだろう。
「ゆっくりいそぐよ!」
「ほら、抱えてやるぞ。どっちだ」
ゆっくりの歩行速度に合わせると遅くなるので
こういうときだけは仕方なく抱えてやる。
言われた場所に到着するとバッジをつけたゆっくり達に囲まれ
傷だらけになったゆっくりありすがいた。
「ごめんなざあぁぁぁいいぃぃぃ!」
「おまえら、大丈夫か?」
「ゆ! おにいさん、わるいゆっくりはもうまりさたちがやっつけたよ!」
見たところ、酷い怪我をしたゆっくりはいないようだ。
持ってきた袋に悪いゆっくりを入れ褒めてやる。
「そうか、よくやったな。
 また何かあったらすぐ呼ぶんだぞ。死んでからでは遅いんだからな」
「ゆっくりりかいしたよ!」
「おにいさん、わるいゆっくりはいなくなったからいっしょにゆっくりしようよ!」
「そうしたのはやまやまだが、こいつにお仕置きをしないといけないからな」
と言って、先ほどのありすが入った袋を掲げてみせる。


ゆっくり達はここを楽園だと思っている。
危険な生物はほとんどおらず、れみりゃや野犬がたまに来たりもするが
お兄さんを呼べばすぐに退治したり捕まえたりして助けてくれる。
また怪我をしたり、困ったことがあった場合も助けてくれる。
昔住んでた場所に較べ餌場まで少し遠くなってしまったが
たまに人間からお菓子や生ゴミなど、美味しいものを貰えるので気にならない。
気が向いたときに雑草取りなどの人間の手伝いをするととても喜ばれ一緒にゆっくりしてくれる。
また越冬という習慣も残っているが、越冬で死んでいくゆっくりはいなくなった。
なぜならゆっくりが作った巣ではなく人間が作った小屋で冬を過ごせるからだ。
食事もどうしようもないときだけは助けてくれるので餓死するゆっくりもいない。
ただ、たまに悪いゆっくりが来るのが困りものだが、来ない日は気ままに心ゆくまでゆっくりできる。
ああ、ほんとうになんて素晴らしい楽園なんだろう。


虐待お兄さんはここを楽園に作り変えた。
畑番そのものはゆっくりがやってくれる。自分は呼ばれたときだけ行けばいいのだ。
群れのゆっくり達は虐待用のゆっくりを集めるためによく働いてくれる。
ほとんど何もしてないにも関わらず、報酬はしっかりと入る。
ゆっくりへの報酬は愛護派からの施しで十分だろう。
愛護派からは暇なときはすぐに会えてゆっくり達と遊べると喜ばれた。
農家の方からは畑荒らしの被害は一切なくなったので喜ばれた。
自分が働くことなく、また面倒なことをするでもなく
ただゆっくりを虐待するためだけの環境を整えただけなのに、人々とゆっくりに感謝される。
今日もゆっくり達は悪いゆっくりを捕まえた。今夜はどんな虐待を試そうか。
ただ、たまに私を愛護派と勘違いされるのだけは笑いを堪えるのに苦労したが。
ああ、ほんとうになんて素晴らしい楽園なんだろう。


「おにいさん、ゆっくりしていってね!」


知らないということは幸せだ。


「ああ、一緒にゆっくりしような」





























終わり


利用していることを悟られないように人もゆっくりも利用していく
そんな虐待お兄さんの話でした。


by 睡眠不足な人


今までに書いた作品
  • ドスまりさのお願い(前)
  • ドスまりさのお願い(後)

他にも何作品か書いてますが黒歴史ということで




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最終更新:2008年09月22日 07:05
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