ゆっくりいじめ系2038 ゆっくり存在否定

書きたかった事
  • 本スレ90の>>316さんの書き込み
『「おまんじゅうさん」とか呼び続けたら物言わぬ饅頭になるかも知れん』
からインスパイアされて
  • 言葉責めとかやってみたかった






その男には日頃から疑問に思う事があった。
最近現れたゆっくりと呼ばれる奇妙な不思議生物は本当に生物と呼んでいいのだろうか。
詰まるところあいつらは饅頭なわけで、饅頭を生物とするのは明らかに間違っていると思っていたのだ。
誰かに聞いても答えられるはずのない疑問であることは承知しているのでそこはやはり本人達に聞いてみるのが早いのだろう。
そう思い立ち男は早速行動に起こした。

人間の集落の周りにある森に出かければすぐにでもゆっくりは見つかった。
日の当たる広場に二匹の成体ゆっくりが寄り添って仲良く昼寝をしていた。
ゆっくりまりさとゆっくりれいむだ。どうやらカップルらしい二匹を起こすように男は挨拶をする。
「ゆっくりしていってね」
「「ゆっくりしていってね!!」」
さっきまで寝ていたのに脊髄反射のように挨拶を返してきた。
「ゆゆっ、ゆっくりねていたのにおこさないでね」
「ここはまりさたちのゆっくりぷれいすだからゆっくりでていってね!!」
「少し君たちに聞きたい事があるんだけどいいかな?」
ふくれていたれいむに出て行けと怒鳴るまりさを完全に無視して男は質問する。
「君たちは何だい?」
「ゆゆっ、れいむはれいむだよ」
「まりさはまりさだよ」
「いや、そう言う事ではないんだよ」
やはりかと男は思った。ゆっくりと初めからまともな会話ができるわけはないのだ。
「お兄さんは人間だ。なら君たちは何だ?」
「れいむはれいむだよ!!」
「まりさはまりさだよ!! なんかいもいわさないでね!!」
あまりの会話の成りたたなさに男は頭を抱える。
どうしてもこいつらから質問に対する答えを聞きたいのだが、どうやら誘導質問をせざるをえないようだ。
「そしたられいむ。れいむはゆっくりだよね?」
「うん、れいむはゆっくりしているよ」
「そうじゃないんだ……、もういい。まりさ、君はゆっくりだな」
「ゆゆぅ、そうだよ!! まりさはゆっくりだよ」どうやらまりさは男の質問の意味が分かったようだ。
「まりさは賢くて助かる」
「それにまりさはかりもじょうずでかっこいいんだよ!!」
「ゆっへん」まりさはお腹を突き出して偉そうな表情をした。
男がしまったと思ってももう遅い。
誉めるとすぐこうなるのだから言葉を選んで会話をせねばならないと思い直す。
「それじゃあまりさ、お兄さんは人間だ。人間は動物だ。わかるな?」
「ゆっくりりかいしたよ!!」
「それなら、まりさはゆっくりだ。するとゆっくりはなんだ?」
これでようやく疑問が解決すると男は思った。しかしそううまくいくわけがない。
「おにいさんしらないの? ゆっくりはゆっくりだよ!! ゆっくりりかいしてね」
「……」
男は改めてこう思うのだ、やはりまともな会話ができるわけはないのだと。
それなら仕方ないと誘導質問に切り替える。
「お兄さんから見ればゆっくりは饅頭に見えるんだが?」
男の質問は実に簡単なものだ。結局のところお前らは饅頭だろということだ。
しばし時間が止まったように二匹のゆっくりが固まった。
男の言葉をゆっくりと頭の中で反芻し、ゆっくりとその言葉の真意を読み取った。
そして突然二匹は怒り出した。
「どおじでぞんなごどいうの!! れいむはおまんじゅうじゃないよ!!」
「まりさはまりさだよ!! おまんじゅうさんはあまあまでしょおおお!? そんなこともわからないの? ばかなの? しぬの?」
二匹は大激怒である。二匹は目をつり上げ、涎を飛ばしてきながら今にも襲いかからんとばかりに跳ねながら叫んできた。
まりさの言葉にカチンとくる部分があったがそれくらいで潰してしまうほど男の沸点は低くない。
「だってどう見てもそうじゃないか……。いや、まてよ……」
ふと男は面白そうな事が思い浮かんだ。
自分達が何であるかを分からせる必要がありそうだ。
「お前達うちに来てくれないか。うちにくれば饅頭を食わしてやる」
「ゆゆっ!! おまんじゅうちょうだい!!」
「ほんとうにくれるんだぜ!?」
「ああ、食わしてやるから。ちょっとの間付き合ってくれよ」
「れいむをゆっくりつれていってね!! それでおまんじゅうちょうだいね!!」
「まりさもいくんだぜ!!」
「そしたら早速行こう。気が変わらないうちにな」
男が家でちょっとした実験をするために二匹を連れて帰る事にした。
両脇に二匹を抱えてやると随分ご満悦そうにゆっくりしだした。
普段見慣れない風景とか地面から解き離れた感覚とかそういった部分にゆっくりは惹かれるのだろうか。

男は二匹を連れて家に帰ってきたのはいいものの、実験の準備はまったくしていない。
この実験には腕の立つ菓子職人が必要だったがそれには思い当たる節があった。
自身がゆっくりをとてもよく観察して、人間に友好的なドスまりさを作り上げたと評判になっている和菓子屋の店主だ。
ひとまず二匹をあまり物を置いてない寝室に招待し、適当なご飯を置いてその主人の元へと出かける事にした。



「ふむ、その実験は実に興味深いな」
「そこで実験に必要なものを旦那に作って欲しいんですよ」
「そういうことなら喜んで協力しましょう。なんなら場所も提供しますがどうですか? 家の奧にあるゆっくり用の部屋が空いてるんでそこを使っていいよ」
「いいんですか。家ではそんな部屋が無いんで願ったり叶ったりです。喜んで使わせてもらいますよ」
「ついでに私も観察させてもらうけど問題はないよな」
「ええどうぞどうぞ。それじゃあ約束のものはいつできますか? 出来上がればすぐにでも実験を始めますけど」
「実験結果が面白そうだから今から作り始めて明日の午後までには作っておくようにするよ」
「それは有難い。そしたら明日の晩にまた尋ねることにしますね」
「そしたら明日の晩にお待ちしてます」
この実験に使われる物の費用に関してはそれほどかからない上、商品開発のヒントに繋がったと喜んでタダにして貰えたのも助かった。
明日になればゆっくりが何であるかの答えが出るやもわからない。

そして次の日。男はもう二度とゆっくりは飼うまいと心に刻んでいた。
わずか一日を一緒に過ごしただけだがあれほどにまで騒がしい生物とは思わなかった。
もちろん野良のゆっくりだというのもそうなのだろうが、いちいち大声で叫ばれたのではかなわないのだ。
どうせ耳がないから互いに大声でないと聞こえないとかそんなことなんだろう。
体罰を与えて機嫌を損なわせて実験に支障がでても困ると思ったが、
よく考えればそのときは別のゆっくりを捕まえてくればいいだけだった気付き愕然とした。

約束の時間通りに男は二匹を連れて和菓子屋に到着した。
「ゆゆっ、おいしそうなにおい!!」
「あまあまのにおいだぜ!!」
二匹は店内に充満した美味しそうなお菓子の匂いに反応していたが、今日はあとでたらふく食わせてやると伝えてあるのでねだってくる事はなかった。
「二匹を連れてきました。例のものはできてますか?」
「ああ、完成してるよ。それと少し色をつけといたからきっと実験結果がもっと面白くなるよ。それじゃあ部屋に案内するよ」
「それは楽しみだ。それじゃあお前らもいこうか」
「あまあまたのしみだね!!」
「はやくちょうだいね!!」
「ああ、協力してくれたらいくらでもくわしてやるよ」
そう言って二人と二匹は和菓子屋の横に併設された家の奧に設けられたゆっくり用の部屋へと入っていった。

床が掘り下げられたその部屋の中にはいくつか台が用意されていた。
「手前の台の上に二匹を置くと良い。その高さからなら飛んで逃げやしないだろう」
「わかりました」
指示された台は男の腹の位置くらいまである台で、ゆっくり二匹が並んで乗るとそれ以上身動きは取れそうにない台座であった。
「ゆっ、ちょっとたかいね……」
「おにいさんゆっくりおろしてね」
「今降りると饅頭を食わせるわけにはいかないんだが?」
「ゆ゛ゆ゛っ!!」
「ゆっくりがまんするね!!」
「是非そうしてくれ」
測られたようにゆっくりが飛び降りようとしない高さであるようだ。さすがゆっくりをよく観察しているだけのことはある。
そして別の台にはいくつか皿が乗せてあり、皿に載せたものが分からないよう布で覆ってある。
皿の枚数は六枚ある。それぞれに要望通りの物が収まっているのだろう。
「ちなみに左の皿から順番通りに並べてあるから。あとそれと……」
店主はゆっくりに聞こえぬよう男に耳打ちをしてきた。
その内容を聞き男は笑顔のままで身震いする。男が思いもしてなかった内容にさすがとしか言いようがない。
「確かに面白くなりそうですね」
「だろ? あとは好きなようにやってくれ」
そう言うと店主は男とゆっくりを置いて部屋を出て行った。
話によると隣の部屋から実験の様子を観察するらしい。
男はゆっくりに振り返ると不安そうな表情をするゆっくり達が見返してきた。
「さて、それじゃあ昨日の質問の続きをしようか」

男は六枚の皿が置かれた台を挟んでゆっくり達と対峙した。
この位置に立てば右から順に皿の上の物をゆっくり達に見せていけばいいということらしい。
そっと自分だけが見えるように布をめくるとそこには一般的な大きさの饅頭が二個鎮座していた。
「では、もう一度聞こうか。お前達は饅頭ではないのか?」
「ぷくぅぅぅ。ちがうよ!!」
「おにいさんまりさおこるよ!!」
「はいはい分かった分かった。じゃあこれを見てくれ」
そう言いながら男は最初の皿の中身を見せた。そこにあるのもを見てれいむとまりさは色めき立つ。
「おまんじゅうさん!!」
「まりさにはやくちょうだいね!!」
「そうかこれは饅頭だよな」
男は並べられた二つの饅頭を皿ごと二匹の目の前まで持ってきて見せた。
「二つとも饅頭だな」
「そうだよ!! はやくれいむにちょうだい!!」
「二つとも饅頭なら問題ない」
男は持っていた皿を台に戻して次の皿の布をめくる。
ゆっくり達は饅頭を食べたいとうるさく叫んでやまない。
「静かにしてないと饅頭はやらないぞ」その一言でゆっくりはあっさり静かになった。
次の皿の上にはゆっくり側から見れば先程のもの変わらないものが乗っていた。
「またおまんじゅうさん!!」
「静かにしてろ。これならどうだ?」
そういって皿の上の物を二つとも180度回転させる。
するとそこには饅頭にあるものがくっついていた。
実に良くできているその代物はどうやら寒天か何かで作られているようで近くで見ても本物となんら損傷はない。
「ゆゆっ、さっきよりおいしそうなおまんじゅうだぜ」
「そうか、やはりお饅頭か」
男が聞く前にまりさが答えたが二つめの皿に乗せられたものも饅頭であると答えた。
しかし先程のまっさらな饅頭とは異なる点がそこにはある。ゆっくりの目玉のようなものがくっついているのだ。
プルプルと震えるその眼球は饅頭に加えられたアクセントくらいにしか思わないらしい。ケーキに乗せられた苺くらいの感覚なのだろう。
「それなら次の皿はどうだ」
ここまでの反応は概ね予想していた通りだ。三皿目の反応もそう変わらないだろうが見せてみることにする。
布を外せばそこには饅頭にゆっくりの閉じた口のような皺が入っている。
これもやはり本物と変わらない出来だ。店主の観察眼と造形技術に舌を巻くしかない。
「おにいさんはやくれいむにちょうだい!!」
「これは饅頭か?」
「「そうだよ!! おまんじゅうだよ!!」」

さて問題はここからである。この先からのゆっくり達の反応が重要となってくる。
男がおもむろに四皿目の布を外すとそこにあった饅頭は二種類の構図が見て取れた。
一方は歯を食いしばり固まっているもの、もう一方が口を開けて固まっている物だった。
口を開いた方をよく見れば歯はどうやら飴細工らしい。本物と比べれば少し透明感と艶が目立つがそれでもよく見ないと分からないほどだ。
どちらにも眼がついており、もはや禿ゆっくりの標本のようだ。
「れいむ、これは何だ?」
「おまんじゅうだよ!!」
「そうか。まりさはどう思う」
「ゆゆぅ……」まりさは返答に困った様子を見せた。
「どうしたまりさ。これは何だい?」
「さっきよりもおいしそうなおまんじゅうだよ!!」
「そうか、わかった」
ここにきてようやく二匹に違いが現れた。まりさの方が違和感を覚え始めたようだった。
たしかに目の前にあるものは饅頭だが、何かおかしいと思っているのだろうか。
少し表情が曇ったまりさを余所に男は淡々と次の皿に向かう。
五皿目の布を外すとそこにはもはやゆっくりと呼べそうなものが並んでいた。
れいむ種を元に造形されたそれは子ゆっくりサイズで、目は開かれ口は笑顔のゆっくりした表情の饅頭に、これもまた飴細工であろう髪の毛が被せられている。
隣り合う二つの饅頭に差は見て取れない。両方とも本物と違う点はれいむ種の紅白飾りが無く動かないという点だ。
「れいむ、これも饅頭か?」
ここでさすがのれいむも返答が止まった。
「これは……、おまんじゅう? ゆっくりできてないれいむ?」
「さっきの饅頭と比べるとどうだ」
「ゆゆっ!! このおまんじゅうはれいむのまねをしてるだけだよ!!」
「ということはこれも饅頭だな」
「そうだよ。ゆっへん」
れいむは見事に饅頭である事を看破してやったと言わんばかりに威張る。
「ではまりさ、これは何だと思う?」
「まりさもおまんじゅうだとおもうよ!!」
「そうかならこうするとどうだ」
男は饅頭を一つ持ち上げるとゆっくりの声真似をした。
「ゆっくりしていってね!!」
「「ゆっくりしていってね!!」」
「これは饅頭か?」
二匹は挨拶を返したままの表情で固まってしまっている。
「どうした? これは饅頭じゃないのか?」
「れいむはゆっくりびっくりしたよ」
「……」まりさは黙り込んでしまった。
「饅頭が喋るだけでまるでゆっくりみたいだよな?」
「ゆゆゆゆっ!!」
「おまんじゅうといっしょにしないでね!! ゆっくりあやまってね!!」
「そうか? お前達もさっき普通に挨拶返しただろ。ならこうしてみるか」
男は手に持ったままの饅頭を真上に放り投げた。ゆっくり達の視線は自然とそちらに向かう。
「やめてね!! ゆっくりおろしてね!!」男の声真似だが二匹は完全に饅頭から発せられたものと誤解した。
「どぼじでなげたの゛おおおお」
「ゆっくりやめてね!!」
「何言ってるんだ。饅頭だよ饅頭」手に戻ってきた饅頭を二匹に見せて男は笑う。
「やっぱり饅頭はゆっくりなのか?」
男の問いに二匹は答えなくなってしまった。二匹のなかで何かが変わろうとしているようだ。
これは最後の皿でどうなることやら、男はそっと残されていた皿に手を伸ばして布をはずす。

その皿を見てれいむとまりさは凍り付いた。
最初から見せてもおそらくこの反応が見えるであろうその饅頭の出来には男も驚くしかない。
完全にゆっくりを再現した饅頭がそこにはあった。
五皿目のものに飾りを付け加えるだけでやはり見栄えが違う。
店主の饅頭の出来に感心して見入っているとれいむがついに動いた。
「ゆ、ゆっくりしていってね」
「れいむどうしたのあれはおまんじゅうだよ?」
「まりさこそどうしたのあれはれいむだよ?」
ついにきた!男は心の中でガッツポーズをする。おそらく隣の部屋の店主もほくそ笑んでいるだろう。
れいむの行動も仕方ないほどの饅頭の造形の良さということだろう。
それと同時にれいむの中では心と行動の差が生まれている証拠である。
心ではこれが饅頭だとわかっている。しかし体はゆっくりであると認識して挨拶をしてしまった。
「どうしたれいむ」
「おにいさん、そこにいるのはれいむだよね!!」
「確かめてみるか?」
男はれいむを持ち上げ最後の皿に近づけてやる。
すぐさま食べる様子をみせてないところを見るとれいむはこれを饅頭とはみていないようだ。
「ゆっくりしていってね!!」
再びれいむが挨拶をしてもその声が虚しく部屋に響くのみだ。もちろん饅頭からの返答はない。
「どうだれいむ、さっきのは饅頭でこいつはれいむか」
「ゆゆゆゆっ」
穴が空きそうなほど饅頭を凝視するれいむに男は追い打ちを掛ける。
「やっぱり饅頭はゆっくりでゆっくりは饅頭じゃないか?」
「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛っ!! でいぶはちがうよ゛!! ぞれはおまんじゅうだよ゛!!」
れいむは自身は饅頭である事否定したが、混乱している頭で考え続けていた。
目の前のあれはなんだ。饅頭なのかゆっくりなのか。
今にも動きそうな饅頭を片手に持ちれいむの目の前で男はつぶやく。
「実はこいつはなとてもゆっくりしているゆっくりなんだよ。本当にゆっくりできるゆっくりは動かずに一言も喋らずに笑顔でいるゆっくりのことをいうんだ。」
その言葉に二匹は息を呑む。
「それに比べたらお前達はゆっくりできてないなあ。大声で叫ぶし、忙しく跳ね回る。ゆっくりしていってねというだけなら人間でもできるぞ」
その言葉はゆっくりにとって最大の屈辱である。
ゆっくりできていない人間に自分も同じだと言われてしまったのだ。
そして皿の方を見てみれば自分よりも幼い子ゆっくりの全く動く事のない真のゆっくりを見せつけられている。
自分達はゆっくりなのにゆっくりできてない。
本当にゆっくりするっていうのはああいうことなのか。
今までの自分達の行動を振り返ればなんとゆっくりできていなかったことか。
そのショックにより二匹は動けなくなった。
いや、動かなくなった。これならゆっくりできる。これがゆっくりするということだ。
れいむは男の腕の中で、まりさは台の上で完全に固まってしまった。
片手の物を何度も空中に放っても反応を示さない。
「本当は饅頭なのになあ」
二匹は一度動かないと決めたらテコでも動くつもりはないようだった。



「お疲れ様でした」
「なかなか面白い結果になりましたね」
「二匹とも即座に動かなくなるのは少し予想外だったかな。もう少し抵抗というか反抗してくれると思ったけど
「これも饅頭の出来があまりにも良かったからですよ」
「そう言って貰うと嬉しいね。作った甲斐があったよ。大量生産は難しいけどいつかは商品として店に置く事にするよ」
「そのときは買いに来る事にしますね」
「味の方も確認してみてください。改良点があれば直しておくんで」
「ではさっそくいただきますね」
男は店主の薦めもあり一皿目から順に一個ずつ食べていく。
「本体の饅頭はやはり美味しいですね」
「ありがとうございます」
男が美味しそうに饅頭を頬張るにもかかわらず二匹のゆっくりは固まっている。視線もどこか中空を見たままでまったく動かさない。
「れいむとまりさはゆっくりしてますね」
「他のゆっくりもいつもこうだといいんけどねぇ」
二皿目、三皿目、四皿目と続けて食べる。
「目の部分は饅頭と違う食感がたまりませんね」
「季節によっては梅味にしようかなんて考えてます」
「そりゃ良さそうだ」
「歯の部分はサーッと溶けるようにするのが苦労したなぁ、饅頭の中に硬い物があったらびっくりしちゃうからね」
「確かに。さわやかな甘みもいいですね」
男が美味しそうに饅頭を食べても二匹は相変わらず動かない。
五皿目、六皿目は髪と髪飾りの飴細工についての苦労を聞かされた。
髪の毛のように細い飴を作るのに、棒状にした飴を折りたたんでは延ばし、さらに折りたたんでは延ばしを一時間は繰り返したそうだ。
「そうすることでようやく髪の細さに飴が仕上がるというわけだ。面倒だから色は直接塗ったけどね」
「なるほど美味しいお饅頭ありがとうございました」
「いえいえ、それじゃあ残りの奴らはどうしましょうか?」
「まあ二匹にはゆっくりと見てて貰いましょうか。その前に味見だけしておきます」
そういって改めて台に乗せられていたれいむとまりさを残った饅頭のほうに向ける。
いくら触られても何の反応も示さない。
「もうまるで饅頭だな」男が呟くのも無理はないほどに饅頭だった。
「まあこれで動き出しても饅頭よりゆっくりできてないわけだけどね」
これが決定的だった。もはや二匹は動く事はない。
自分達が饅頭以下であるはずがないとでも言わんばかりだ。
そして男は残された饅頭の目や口といった装飾の無い部分だけを一囓りする。
「うん饅頭だ。それじゃあ、そろそろ正体を明かしてやってください」
「わかりました」
男の合図で店主が残りの饅頭達に手を伸ばす。
一つの皿にまとめられた饅頭達は一つ一つピンセットとナイフで拘束が解かれていった。目にはめられていたセロファンを外すと一様に涙を流し、唇や歯の癒着を切り離してやると声を出し始めた。
「「「「ゆっくりしていってね!! ゆっくりしていってね!!」」」」
滝のように涙を流しながら必死に叫ぶ子ゆっくり達がそこにいた。
自分達は饅頭じゃない。気が付いてくれ。痛いから助けてくれ。
心で呼びかけても気が付かなかった目の前の二匹にきちんと聞こえるように叫んだ。
ここにいるのはあるものは飾りを奪われ、またあるものは髪を剃られ、口を閉じられ、目も奪われ、すべてを奪われた子ゆっくり達である。

するとどうだれいむとまりさは微かに動きを見せた。
二匹の心の動揺が手に取るように分かる。
饅頭が動き出した。男が美味しそうに食べた饅頭が急に動き出したのだ。
じゃあさっきお兄さんが食べたのは饅頭だったのかゆっくりだったのか。
あれは饅頭が喋っているだけだ。
でもゆっくりではないのだろうか。一番右の饅頭はどうみてもれいむだ。
しかしあんなに叫んでいるようではゆっくりできていないゆっくりだ。
あれ? やっぱりゆっくりななのか? いやいやあれは饅頭のはずだ。
それとも……。
「饅頭はゆっくりでゆっくりは饅頭だよ」
そうかそれならりかいができる。あれはまんじゅうでありゆっくりなんだ。
ということはじぶんたちもまんじゅうでありゆっくりなんだ。
そうか。じぶんたちはまんじゅうなのか。

れいむとまりさは考えるのを止めた。






あとがき
わからなかったら人に聞く!ということでゆっくりを問いただしてみた。
ゆっくりが饅頭だと決めつけてかかってるから条件が平等ではないけどそこは華麗にスルーしてください。
あと同じようなネタがあるそうなので目新しさはないかもしれないです。
和菓子屋さんは自分のSSに出てきた人を再登場させてみたり。飴細工もできるようにしちゃった(ノ∀`)
プロットなしの走り書きだからおかしいところもスルーしてください

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最終更新:2009年01月26日 10:40
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