ゆっくりいじめ系745 ゆっくりれいむの悪夢


※序盤にちょっと愛で描写あります
※いわゆる良いゆっくりが虐められます
上記が苦手な方はご注意ください。



青年が畑仕事から帰ってくると、玄関口の前で一匹のゆっくりれいむが眠っていた。

「ん? 何でこんなところで寝てるんだ?」

お兄さんは疑問に思い、涎を垂らしながら眠るれいむの頬を突っついた。
何回かぷにぷにすると、れいむは目を覚まして辺りを見回した。

「ゆ? おにいさんだぁれ?」
「僕はこの家の持ち主さ。君はどうしてここで寝ていたんだい?」
「おさんぽしてたらついきもちよくなっちゃって…」

れいむの話を纏めるとこうだ。
『散歩中、あまりにも心地よい気温だったので直射日光の当たらない屋根の下で眠ってしまった』
それを聞いたお兄さんは楽しそうに笑った。

「あははっ、そうかそうか。まあ確かに今日は涼しかったけどね」
「ゆ、ゆぅ~」

れいむもつられて恥ずかしそうに微笑んだ。

「おにいさん、かってにばしょをかりちゃってごめんなさい。すぐでていくよ!」

おや、とお兄さんは思った。
先程から感じていたことだが、このれいむは普通の野生のゆっくりとはどこかが違う。
飼いゆっくりかと思ったがどこにもバッジ等の目印を付けていない。

「ねぇ、れいむ。君は誰かに飼われていたのかい?」
「ゆ? れいむはだれにもかわれてないよ!」

どうも捨てゆっくりでもないらしい。
ならやはり野生だろうか。しかしそれにしては礼儀正しい。
まあそういうゆっくりもいるのだろうと思ったお兄さんはれいむにもう一度尋ねた。

「みたところ一人のようだけど、家族はいるの?」
「ゆ…それが…」

どうやらこのれいむは家族で仲良く暮らしていたところをれみりゃに襲われたらしい。
そしてれいむだけが命からがら逃げ出し、それからはずっと一匹で過ごしてきたようだ。

「そっか、それは辛かったね。ごめんね、変なこと聞いてしまって」
「ゆ! おにいさん、きにしないで! れいむはだいじょうぶだよ!」
「そっか、君は強いんだなぁ」

その後も少し二人はおしゃべりをした。
やはりれいむは普通の野生ゆっくりよりも大人しく、人間側の常識を知っている。言葉遣いも丁寧だ。
話しているうちにお兄さんはれいむをとても気に入った。
そこでふと考えた。
このゆっくりれいむは一匹で生活してきたと言っていた。
ならば自分と一緒に過ごすのはどうだろうか、と。

「ねぇ、れいむ。君が良かったらでいいんだけど、僕の家に住まないかい?」

それを聞いてれいむはびっくりした顔になる。
人間の家に住む。それは確かに魅力的なことだ。
他のゆっくりに巣を取られることもないし、雨や雪の対策も必要ない。
何よりこのお兄さんはとても優しい。もしかしたらご飯も用意してもらえるかもしれない。
しかし。

「ゆ…でもおにいさんのめいわくになるよ」
「いや、君はとても賢いゆっくりだ。迷惑だなんて思わないよ」
「でも…」
「それに僕から言い出したんだ。少しぐらい迷惑かけてくれてもかまわないよ」
「…ほんとう?」
「ああ、本当だよ」

そう言ってお兄さんは優しく微笑む。
その笑みを見てれいむは決心した。このお兄さんのお世話になろうと。

「ゆ! ふつつかものですが、よろしくおねがいします!」
「ああ、よろしく」

それからお兄さんとれいむの生活が始まった。
お兄さんは一人暮らしということもあり、れいむをとても可愛がった。
れいむもお兄さんの迷惑になるような事は一切しなかった。
やはり今までひとりっきりだったのは寂しかったのか、その顔はとても幸せそうだ。

「よし、今日も一緒に畑に行こうな」
「うん! れいむもゆっくりてつだうよ!」

朝と昼はお兄さんと一緒に畑仕事。
水を運んだり、雑草や害虫を食べたりしてれいむはお兄さんを手伝う。
れいむの髪には元々あるリボンの他にもお兄さんお手製の可愛いリボンが結ばれていた。
そのおかげで野良ゆっくりと間違われることもない。

「ふー、今日も頑張ったな」
「おにいさん、おつかれさま!」

夕方になり、二人は家に帰る。
お兄さんは夕飯を作り、れいむは疲れを癒すためにゆっくりとする時間だ。
最初はれいむも夕飯作りを手伝うと言ったのだが台所は危険だという事で断られたのだった。

「おーい、れいむー。 ごはんだぞー」
「おいしそう! ゆっくりいただきます!」

テーブルの上に乗り、お兄さんと同じものを一緒に食べるれいむ。
やはり普通の野生ゆっくりのように周りに散らかすようなことはせず、綺麗に食べる。
料理を口に入れると、その美味しさに顔を輝かせた。

「むーしゃむーしゃ、しあわせー! やっぱりおにいさんはおりょうりじょうずだね!」
「そう言ってもらえると、作ったかいがあるよ」

とても美味しそうに食べるれいむを見てお兄さんも微笑む。
と、そこでちょっと悪戯をしてみたくなった。
れいむがミートボールを口にくわえたとき、お兄さんは彼女の頬をつっついた。

ぷにぷに

「ゆ! ごはんがたべれないからやめてね!」

ぷにぷにぷに

「ゆ、ゆっくりやめてね!」

ぷにぷにぷにぷに

「やべでっでいっでるのに゛ぃぃぃ!」

ついにれいむが泣きだしたのでお兄さんは慌てて手を止める。
そして頭を優しく撫でてあげた。

「あはは、ごめんごめん。れいむがあまりにも可愛くてね、ついやめられなかったんだ」
「ゆぅ~…」

可愛いと言われるとれいむもきつくは反論できない。
それに頭をなでなでされるのは気持ち良かった。
夕食後、お兄さんはれいむの体を洗ってあげる。
タライに薄く水を張り、れいむをゆっくりとその中に入れる。

「ゆー! つめたくってきもちいいー♪」

濡れた布で素早くれいむの体を拭く。
あまり長く水に浸かっているとれいむが溶けてしまうかもしれないからだ。
皮を傷つけない程度の力でれいむを洗い、最後に水をかけて汚れを完全に落とす。

「すっきりー♪」

れいむをタライから出し、乾いた布で水分を拭き取っていく。

「気持ちよかったかい?」
「うん! おにいさん、いつもありがとう!」

にっこりとれいむは微笑む。
その時、健康的な頬がぷるぷると揺れた。
それを見てお兄さんはその頬をぷにぷにと親指と人差し指で挟んだ。

「ゆ! くすぐったいよ!」

もちもちとした感触がなんとも心地よく、お兄さんはついつい夢中でぷにぷにと指を動かす。

「ゆゆっ、ちょ、ちょっと…いたくなってきたよ!」

人間にとっては何とも無い力でもゆっくりにしてみれば強力なのだ。
いくら優しく挟んでいても何度も同じ個所を挟まれ続けると次第に痛みが出始める。
だがお兄さんは夢中なせいかれいむの言葉が聞こえていなかった。
かまわずぷにぷにし続けるお兄さん。

「ゆ! お、おにいさん、ちょっといたいよおぉぉぉぉ!」
「ああっ!? ごめんごめん」

れいむの目にうっすらと涙が浮かんできたのを見て、お兄さんは再び慌てて手を止めた。
そしてそのままれいむを優しく抱きしめる。

「ごめんね、れいむ。つい止められなくってさ」

お兄さんの腕に抱かれ、れいむは満足げな笑顔を浮かべた。
それからしばらくそれぞれの時間を過ごして二人は就寝する。
ふとんは狭いので、れいむにはふかふかのクッションが与えられた。
細かいところに違いはあるが大体それが二人の一日の過ごし方だった。


それから数カ月が過ぎた。
れいむの体は通常の成体ゆっくりより大きい、サッカーボールほどの大きさになっていた。
肌はまるまると健康的で、黒い髪はつやつやと輝いている。
そんなある日、お兄さんはれいむに向かって言った。

「れいむ、僕はこれからしばらく出かけなくちゃいけないんだ。寂しいかもしれないけど、留守番よろしくね」
「ゆっ! わかったよ! れいむがちゃんとおるすばんしてるからあんしんしててね!」

その返事にお兄さんは満足そうに頷き、最後にれいむの頭を優しく撫でて家から出ていった。
それかられいむのお留守番が始まった。
と言ってもお兄さんがきちんと戸締りをして出かけたので野良ゆっくりが家に侵入してくることはまずない。
食事もきちんと用意されている。
れいむがする事といえばゆっくりする事ぐらいである。
そういえば最近はずっとお兄さんと一緒だったから一人になるのは久しぶりだな、とれいむは思った。
その日、れいむは久々に一人でのゆっくりを満喫した。

翌日の正午頃。れいむが相変わらずリビングでゆっくりしていると、玄関が開く音がした。
お兄さんが帰って来たと思い、れいむは嬉しそうに玄関へと跳ねていく。
そこに居たのは間違いなくお兄さんだった。
一人でゆっくりするのもいいがやはり優しいお兄さんと一緒にゆっくりする方が楽しい。
だかられいむはお兄さんが帰ってきた事がとても嬉しかった。

「ゆ! おにいさんおかえりなさい!」

顔に満面の笑みを浮かべ、目を輝かせながられいむは言った。
きっとこの後は優しい笑顔でただいまと言いながら頭を撫でてくれると思っていた。
しかし、帰って来たお兄さんの反応はれいむにとって意外なものだった。

「チッ、そういやテメェがいたんだったな」

お兄さんは冷ややかな目でれいむを見下し、舌打ちをしたのだ。
今までお兄さんにそんな事を言われたことが無かったれいむは戸惑った。
一体どうしたのだろう。何か嫌なことでもあったんだろうか。
れいむは考えた。きっとお兄さんは今機嫌が悪いんだ。
だから自分の笑顔で少しでも心を癒してあげよう、と。
もう一度顔全体に笑みを浮かべ、れいむはお兄さんの方を向いた。

「おにいさん! ゆっくりしていっゆ゛ぶぅぅぅぅぅ!?」

言い終わらないうちにお兄さんのつま先が顔面にめり込み、蹴飛ばされた。
れいむには一体何が起きたのかわからない。
しばらく吹っ飛び、れいむの体は壁に激突した。
蹴られた痛みと壁に叩きつけられた痛みがれいむを襲う。

「ゆ゛う゛ぅぅぅぅ!! い゛だい゛よ゛おぉぉぉぉぉ!! どお゛じでこんなごどするの゛ぉぉぉ!!」
「あーうるせぇ! ガタガタ喚くな!」
「ゆ゛うぅぅぅ!! いいかげんにしないとれいむおこるよ!」

ぷくぅーっと体内に空気を取り込み、眉を吊り上げて威嚇するれいむ。
直後、お兄さんの低空右アッパーが綺麗に顔面に叩きこまれた。

「ゆ゛ぶぶうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」

れいむは再び顔をへこませ、弧を描いて壁に衝突するまで飛ぶ。
べちゃりと音を立ててれいむの体が床に落ちた。
その目には涙が浮かんでいる。今にも泣きだしそうな状態だ。

「ゆ゛うぅぅ! おにいさん、いったいどうしちゃったの゛ぉぉぉ!?」
「あぁ? どうしたもこうしたも俺は最初から…」

そこまで言った時、お兄さんは何かを思いついたような顔になり、ニヤリと意地の悪い笑みが浮かんだ。

「そう、これが俺の本当の性格なのさ。俺は最初からお前の事なんか大嫌いだったんだ」
「ゆ゛う゛ぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」

れいむの心は傷ついた。
でもそんなはずはない、自分がお兄さんが大好きなように、お兄さんも自分が好きなはずだ。
だってあんなにも一緒にゆっくり過ごしたじゃないか。あんなにも優しくしてくれたじゃないか。
これはきっと何かの間違いだ。そうに違いない。

「う、うそだよっ! おにいさんはそんなひとじゃないよ! れいむにはわかるもん!」
「へぇ…知った風な口をきくねぇ」

不敵に口を歪ませ、お兄さんはれいむの頭に手を乗せた。
一瞬、れいむはいつも通りなでなでしてもらえると期待した。
だがその希望はすぐに消える。
お兄さんはれいむに乗せた手で一気に頭から押さえつけた。

「ゆ゛べええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! や、やべでえぇぇぐるじいぃぃぃよ゛おぉぉぉぉぉ!!」
「饅頭ごときに理解されるほど人間は単純じゃねぇよ!」

さらに体重を乗せるお兄さん。
圧倒的な力で押さえつけられ、れいむの体が横に伸ばされた。
その口の端からは少量の餡子が漏れ出している。

「ごべんなざいいぃぃぃぃぃぃ!! も゛うゆる゛じでえぇぇぇぇ!!」

涙を流し、れいむは必死に懇願する。
それでもお兄さんは押しつぶすのを止めなかったが、しばらくすると興味が無くなったかのように別の部屋へと移動した。
誰もいなくなった部屋でれいむは一人、ゆぐゆぐと泣き続けていた。

夜、お兄さんは一人で夕飯を食べていた。
その近くの床ではれいむがぐうぅっとお腹を鳴らしている。
だがお兄さんはれいむなどいないかのように、その音を無視して夕食を食べ続けている。

「ゆ…お、おにいさん、おなかすいたよ…」

びくびくしながられいむはお兄さんに言った。
今日は昼から何も食べていないのだ。いつもならお昼ご飯もあるしおやつもある。
そんな生活に慣れてしまっていたれいむにとってお昼ご飯抜きは相当堪えていた。
目の前でお兄さんがとても美味しそうな夕飯を食べていれば尚更だ。

「あん? ったく、しょうがねぇな」

お兄さんは食事していた手を止め、台所へ向かって行った。
それを見たれいむは心の底から安堵した。
頼んでも貰えるとは思っていなかったし、何よりまた蹴られると思っていたからだ。
今日は美味しいご飯をたくさん食べてゆっくり眠ろう。
きっと明日になったらお兄さんはまた優しいお兄さんに戻っているはずだ、とれいむは考えた。
しかし、お兄さんが持ってきた物はれいむが予想していた物とは全く違っていた。

「ほらよ、散らかすんじゃねぇぞ」

れいむの前に差し出された皿には小さな破片や剥いた皮等の野菜クズが盛られていた。
見るからにまずそうな野菜の欠片。しかも量も少ない。
てっきりお兄さんが食べているものと同じものが貰えると思っていたれいむはつい抗議してしまった。

「ゆ! おにいさんとおなじものをもってきてゆべっ!!」

当然のように踏みつけられた。
餡子を吐きだす一歩手前の力で踏まれ、れいむの目から涙が溢れる。
お兄さんは不機嫌な様子でその足をぐりぐりと動かした。

「ゆぐっ! うべっ!」
「何で饅頭なんぞに人間様と同じ食事を作らなくちゃいけないんだ? あぁ?」
「ご、ごべんなざ、うぎぇっ! も゛うやべぶぇっ!」

お兄さんが足を動かすたびにれいむは苦痛の声を上げる。

「我儘言いがって。きちんと食べ物が貰えるだけありがたいとは思わないのか?」
「ばい゛、あ゛り゛がどうございばず、も゛うわ゛がばばいい゛ばぜん!」

それを聞いたお兄さんは足をどけ、再び夕飯を食べ始めた。
れいむはダメージを受けた体を引きずってテーブル近くに置かれた皿へと辿り着き、野菜クズを食べる。
空腹は最高の調味料という。
普段ならさほど美味しいと思えないであろう野菜クズが、今は最高の食べ物だとれいむには思えた。
いくらかお腹が満たされるだけでも心の落ち着きが大分違う。

「むーしゃむーしゃ、しあわぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

突然、おもいっきり蹴飛ばされた。
昼間と同じように、壁にれいむの体が叩きつけられる。
違うのは今回は蹴りの威力が増しているということ。
普通のゆっくりなら潰れてもおかしくはないほどの衝撃。
だがこのれいむは通常より体が大きく、弾力性も少々増しているため死ぬまでには至らなかった。
とはいえ無事なわけはない。れいむは次々と餡子を吐きだした。

「ゆ゛げっ、ゆ゛げぇぇぇぇっ、どっ、どお゛じでえぇぇぇぇぇぇ! でいぶなにも゛じでないよ゛おぉぉぉぉ!! ゆげっ!」
「うるせぇ! 今度その不快な言葉を発しやがったら命はないと思え!」

イカシンイカシン怒り心頭といった様子でお兄さんは額に青筋を立てながられいむを怒鳴る。
どうやらお兄さんはゆっくりが食事するときに言う「むーしゃむーしゃしあわせー♪」が大嫌いなようだ。
その餡子も自分でかたずけろ、とお兄さんはれいむに言った。

「ったく、テメェらは人をいらつかせる為に生まれて来たとしか思えねぇな」

しばらくして夕食を食べ終わり、皿を重ねて台所へ持っていくお兄さん。
テーブルの下では、這いずって戻って来たれいむが涙を流しながら黙々と野菜クズを食べていた。

これはきっと悪い夢だ、とれいむは思った。
そうでなければあの優しいお兄さんがこんなことするはずない。
きっと明日目を覚ませばお兄さんが微笑んで抱きかかえてくれるはずだ。
しかし、次の日もまた次の日も殴られ、蹴られた。
それどころか前にお兄さんが結んでくれた可愛いリボンも没収された。
お兄さんいわく、ゆっくりなんぞにこんな装飾品はいらねぇ、だそうである。
れいむは返してと泣いて訴えたが完全に無視された。
体も心もとても痛い。こうなるともう現実だと受け入れるしかない。

お兄さんが帰って来て四日目、れいむは透明な箱の中にいた。
それは昨日、お兄さんが加工場から買ってきた物だった。
れいむが飛び跳ねるのが鬱陶しいということで購入したのである。
だがれいむの方にしてみればたまったものではない。動けないという事はそれだけでゆっくり出来ないことなのだ。
朝から晩まで箱詰めにされ、野菜クズを食べる時のみ体が自由になる。
動けず、窮屈すぎてまともに眠れもしないのでれいむの精神は擦り減っていった。

その日の夕方。お兄さんは突然れいむを透明な箱から出し、その両頬に手を添えた。
今までれいむを殴る蹴るばかりで、ろくに会話もなかったお兄さんが突然そんなことをしたのに、れいむは驚いた。
だがそれと同時に心が安らいだ感じがする。
どれだけひどい扱いをされても、れいむはお兄さんが大好きだった。
だからお兄さんの手の感触がとても嬉しい。
頬をぷにぷにとつねられた。どこか懐かしい感触。
まだ数日しか経っていないのに、れいむにはもう何年もぷにぷにされていないように感じられた。
ああ、やっと優しいお兄さんに戻ったんだ、とれいむは安心した。
しかし。

ブチッ

突然の左側から音が聞こえ、何事かとれいむは戸惑った。
目の前ではお兄さんが右手で肌色をした何かの切れ端を持っている。
そして左頬の違和感は一体――。

「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁ!! いだいよ゛おおぉぉぉぉぉぉ!」

皮を千切られた激痛がれいむを襲う。
幸い餡子はそれほど漏れていない。
しかし、体の一部を力任せに引き千切られる痛みは我慢できるものではない。
れいむは盛大に涙を流し、泣き叫んだ。

「お゛にい゛ざぁぁぁん゛! やべでぇぇぇゆ゛ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

ブチッ、ブチッ、ブチッ

だがれいむの言葉を無視し、お兄さんは次々とれいむの頬を千切ってゆく。
何度目だろうか、れいむの両頬が穴だらけになった頃、お兄さんは手を止めた。

「ゆぐっ、ゆぐっ、ひどいよぉ…どおしてこんな゛こどずるのぉ…」
「どうしてって、そりゃ楽しいからさ」
「ぜんぜんたのじくな゛いよ゛おぉぉぉぉぉ!!」
「俺は楽しいから問題ない」

口元に笑みを浮かべながらお兄さんはれいむを透明な箱へと入れ戻した。
無くなった頬の分だけ、先程までより箱の中には余裕が生まれている。
そこへお兄さんはオレンジジュースを勢いよく注ぎ入れた。
普段ならゆっくりが元気になる行為である。事実、れいむの体にも活力が戻って来ていた。
しかし現在、れいむの体には大きな傷跡がそこかしこにある。
そんな状態でジュースなど入れられれば――。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あぁぁぁ! ほっぺがい゛だいよ゛おぉぉぉぉ!!」

当然、染みる。
じわじわと傷口を侵食される痛みにれいむの精神は段々と消耗していく。
だがそれとは逆に体はどんどんと元気になっていった。

「まあしばらく我慢してくれや。そのうち傷は治るだろう」

そう言ってお兄さんは透明な箱の蓋を閉める。
その日のれいむの夕飯には再び箱の中にオレンジジュースが流し込まれただけだった。

5日目の朝。
れいむが目覚めると、もう箱の中にオレンジジュースは無く、かわりにれいむの頬がほとんど再生されていた。
眠ることによってジュースを効率よく吸収し、体の再生速度が普段より早まったのだ。
体力は元通りになったが、精神的なダメージは未だ残っている。
というよりここ数日、れいむは心が穏やかになったことはなかった。
まともにゆっくりできていなかったこともあるが、何よりお兄さんに酷い事をされるのが一番辛かった。
この間までの幸せな記憶が壊れていくような感じがするからだ。

今日も朝食は抜き、昼食は相変わらずの野菜クズだった。
だがれいむは文句を言わない。言えばまた酷い目に会うとわかっているから。
二人が昼食を食べ終わった頃、家の外からうーうーという声が聞こえた。
お兄さんは急いで家の外に出る。

「うー♪ おとどけものでーす♪」

玄関の外。そこには中にとある物を入れた、標準サイズより若干大きめのうーぱっくがいた。
小さな羽をぱたぱたはばたかせ、にこにこと無邪気な笑顔を浮かべている。
その胸(と思われる部分)にはシャボネットと書かれた小さなプレートが付けられていた。

「いつもごくろうさまです」

お兄さんはれいむに対してとは違い、うーぱっくには優しく話しかける。
それからうーぱっくの中に入っている物を取り出し、かわりにお金と食べ物を入れた。

「うー♪ まいどありー♪」

うーぱっくは一礼してから空へと上昇していく。
それを見送ってからお兄さんは受け取った物を持って家の中へと戻った。
そしてそれを部屋の隅の床に敷き始める。

「ゆ? おにいさん、なにしてるの?」
「あぁ、ちょっとな」

そう言ってお兄さんは次々とうーぱっくから受け取った物を敷き詰めた。

「ん、まあこんなもんだろ」

上出来上出来、という感じでお兄さんは部屋の一角を見る。
お兄さんが敷いていたもの。それは丸い突起が表面に付いているカーペットだった。
そのカーペット地帯の周りには簡易な室内用の柵が設置されていた。

「れいむ、今日からはもうその箱の中にいなくてもいいぞ」
「ゆ! ほんとに!?」
「ああ、そのかわりここで過ごしてもらう。それでもいいか? 嫌ならそのままでも別にかまわねぇが」

と、お兄さんは今作ったカーペット部分を差す。
柵と壁に囲まれている範囲は狭いが流石に透明な箱の中よりは広い。
飛び跳ねることが出来るスペースも十分にある。
それだけでもゆっくりにとっては大きな違いである。
身動きできないのと体を動かす事が出来るのではゆっくりできる度合いが段違いだ。
だかられいむは迷うことなくカーペットの方を選んだ。

「ゆ! おにいさん! れいむはこのはこからでたいよ!」
「そうか。わかった」

お兄さんはれいむを透明箱から取り出し、カーペットの上に置く。
カーペットの突起が少し気になるがれいむは久々に体を動かせたことに満足した。
これでゆっくりできる。だが、そう思っていたれいむの底面部分を不快感が襲う。

「ゆ…? なんだかからだが…」

そしてじわじわと痛みがれいむの体を侵し始めた。

「いだっ! いだいよ゛おぉぉぉ!! どうじでええぇぇぇぇ!?」

それはカーペットの突起のせいだった。
実はこれ、お兄さんが通販で買った『ゆっくりカーペット ミニサイズ』という虐待道具である。
二日前に注文したのが今日うーぱっく運送によって届けられたというわけだ。
このカーペット、その表面の突起によってゆっくりを傷つけず痛めつけることができる代物。
お値段何と580円(送料:うーぱっくのご飯)という激安品だったので即購入したのだった。
ちなみに同時に売っていた厚底スリッパは資金不足で買えなかった。

「お゛に゛い゛ざあぁぁぁぁん! だすげでえぇぇぇぇぇ!!」

痛みにから跳ねてはまた着地したときに痛みが来る。
れいむは世にも恐ろしい無限ループを味わっていた。

「おいおい、お前がそっちの方がいいって言ったんだぞ。だからもうこの箱はいらねぇよな」
「ごべんな゛ざいいぃぃぃぃぃ! ぞ、そっぢのほう゛がいいですうぅぅぅ!!」
「ハハハ、まあ遠慮せずそこでゆっくりしていけよ」

そう言ってお兄さんはリビングから出ていった。
残されたれいむは少しでも痛みを紛らわすためにもただ叫び続けるしかない。

「い゛だい゛よ゛おお゛ぉぉぉぉ! ぜんぜんゆ゛っぐりできな゛いよ゛ぉぉぉぉぉ!!」

五時間後、リビングにお兄さんが戻ってきた。
れいむは相変わらず部屋の隅でとび跳ねていたが、その顔には生気が殆ど無くなっている。
喋る力もなくなったのか、お兄さんを見ても唇を動かすだけで声は出せずにいた。
普通のゆっくりがゆっくりカーペットに耐えれる平均時間は約六時間。それ以上はゆっくりできないストレスで死んでしまう。
既に六分の五を過ぎたれいむの反応も当然だった。
そんな虚ろになった目で跳ねるれいむをお兄さんはキャッチし、再び透明な箱へと入れ戻す。

「ゆ゛…ゆぐっ……ゆ゛ぅ…ゆ゛…」

そして大量のオレンジジュースをれいむにかけて蓋をし、そのまま放置する。
明日になれば元気になっているだろう、と考えたお兄さんは台所へ行き、夕飯の支度を始めた。
人のいなくなったリビングにはれいむの呻き声だけが反響していた。

六日目。
お兄さんの考え通り、れいむは元気になっていた。
げっそりしていた肌はある程度丸みを取り戻し、目にも輝きが戻っている。
だがその顔には一つ足りないものがあった。
笑顔。いつもは標準でゆっくりれいむに張り付いているそれが全く無い。
それにどういうわけか今日はお兄さんもれいむを虐めようとはしない。
ボーッとしたまま何も喋らず、何も食べずに遠くを見つめ続けて一日が過ぎた。
夜になり、お兄さんが大きなお皿を持ってれいむの前にやってきた。
だがれいむは反応せず、虚ろな目つきで遠くを見つめたままである。
そんな沈んだ顔つきのれいむをお兄さんは箱から取り出し、お皿をれいむの前に置いた。

「辛気くせぇなぁ。これでも食って元気出せよ」
「……ゆ?」

れいむは目の前に出された夕飯に目を向け、驚いた。今日初めての反応である。
そこにはここ数日触れることすらできなかった豪華な、お兄さんが食べている物と同じ料理が盛られていたからだ。
てっきり野菜クズだと思っていたれいむは目を輝かせたが――それと同時にある事が思い浮かんだ。
もしかして毒か何かが入っているんじゃないか。
今まで虐められてきたれいむがそう考えるのも無理はない。
だから彼女は目の前の食べ物には手を着けなかった。
その様子を見てお兄さんはれいむに言う。

「安心しろよ。毒は入ってねぇ、約束する」
「…ほんとう?」
「ああ、本当だ」

完全に信用したわけではなかったが、れいむはそろーりと少しだけ食べ物を口に含んだ。
刹那、口内に広がるとても美味しい味。
一度食べ始めると後は止まらなかった。
昨日の夜から丸一日何も食べていなかったれいむは勢いよく、しかし周りにこぼさないように綺麗に食べていく。
勿論、また蹴られてはたまらないので何も言わずに黙々と咀嚼する。
むしゃむしゃと食べ続けるれいむはいつの間にか涙を流しながら笑顔になっていた。

七日目。れいむはほとんどお兄さんが出かける前の状態に戻っていた。
肌はもっちりしつつも張りがあり、髪も黒々と流れるように美しい。
れいむはご機嫌だった。
昨日久しぶりに豪華な晩ご飯を食べただけでなく、今朝もとても美味しい朝ご飯を沢山貰ったからだ。
しかも昨日今日とお兄さんに一度も酷いことをされていない。
それどころかあの窮屈な箱から出して貰った。もちろん、ゆっくりカーペットの上ではなく普通の床の上にだ。
さらに以前お兄さんに取られた可愛いリボンも再び結んでくれた。
どうして突然お兄さんが優しくなったのかはわからないが、とにかくれいむは久々にゆっくりと過ごしていた。
お兄さんは椅子に座って本を読んでいる。れいむはその邪魔をしないように部屋の隅でゆっくりしていた。
そんな時、コンコンと誰かが玄関をノックする音が聞こえてきた。

「鍵はあいてるぞー」

お兄さんの言葉が聞こえたのか、ガチャリとドアが開く。
一体誰だろう、とれいむは玄関を見た。
その開け放たれた扉の向こう側にいた人物とは――。

「ただいまー!」
「おう兄貴、お帰り」
「ゆ゛うぅぅぅぅぅ!? おにいさんがふたり!?」

そこにいたのは紛れもなくお兄さんだった。見間違える筈がない。
れいむと共に数か月間仲良く過ごし、そしてこの一週間虐待していたお兄さんだ。
だがそのお兄さんは今れいむの隣にいる。
れいむにはわけがわからない。
何故お兄さんが二人もいるのか。一体どちらが本物のお兄さんなのか。
混乱するれいむの横で、同じ姿の二人のお兄さんは談笑していた。

「僕の旅行中、留守番ありがとう」
「他ならぬ兄貴の頼みだ、いいって事よ」

そう、このお兄さん達は双子の兄弟なのだ。
優しい兄お兄さんが旅行に行っている間、怖い弟お兄さんがれいむを虐待していたのだった。
ややこしいのでここからは兄を"お兄さん"、弟を"鬼意さん"とする。
よく見れば細かい部分は違っているが、れいむから見ると二人は全く同じ顔をしていた。

「れいむ、ただいま。元気にしてたかい?」

お兄さんはれいむの頭に手を乗せた。
一瞬、また押さえつけられるのではないかと思い、れいむの体がビクッと震える。
しかし、お兄さんの手はれいむを潰すどころか優しく頭を包み、撫でてくれた。
とても懐かしい感覚。思わず涙が溢れそうになる。
だが今はそれどころではない。

「ど、どうしておにいさんがふたりもいるの!?」

その言葉を聞いたお兄さんはおや、という顔をした。

「何だ、言ってなかったのか?」
「いやぁ、ちゃんと言ったぜ。同じ顔の人間が二人っていう光景に対応できねぇだけじゃねぇの?」

平然と嘘をつく鬼意さん。
あまりにも堂々としていたのでお兄さんはそれが嘘だとはこれっぽっちも思わなかった。
なるほど、と頷いてからお兄さんはれいむを持ち上げ、抱きしめた。
久しぶりの温かい感触。やっと優しいお兄さんが帰って来たんだ。
と、れいむが心の底から安堵したとき、彼女の両頬に涙が流れた。

「ゆぐっ…ゆぐっ…おにいさあぁぁぁぁぁん!!」
「おいおい、どうしたんだ? 突然泣いたりして」
「多分兄貴に久しぶりに会えての嬉しいんだろ」

戸惑うお兄さんの後ろで、鬼意さんはあさっての方向を見ながらニヤニヤ笑っている。
そういうことか、とお兄さんはれいむを優しく抱擁した。
しばらくするとれいむは泣きやみ、お兄さんの顔を見上げた。
そこには自分に向けての温かい笑顔が浮かんでいる。
ふと見ると、鬼意さんは眠たそうに欠伸をかましていた。

「僕のいない一週間、いい子にしてたかい? 何か変わったことはなかった?」
「ゆ! それが、あのおにいさんが…」

瞬間、れいむに悪寒が走った。
何か鋭いもので体を突き刺されたような感覚。
それは自分の真正面、お兄さんの背後から来ているように感じたれいむはその方向を見る。
そして再び戦慄が走った。
今まで宙を漂っていた鬼意さんの両目が真っ直ぐれいむに向けられていた。
まるで獲物を睨みつける蛇のような眼。それがはっきりとれいむを捕えている。
目は口ほどにものを言う。
鬼意さんの目は語っていた。『言えば殺す』と。

「あ…あのおにいさんがとってもやさしくしてくれたよ! だからだいじょうぶだったよ!」

作り笑顔でれいむはおにいさんに言った。
お兄さんに嘘を言うのは辛かった。だがもうこれからは辛い思いをしなくていいのだ。
だからこれが最後の苦痛になると思えばなんということはない。
これからはまた優しいお兄さんとゆっくりした時間を過ごすのだから。

「はは、二人が仲良くなってくれたようでなによりだよ」

れいむをだっこしながらお兄さんは笑う。
つられてれいむも笑った。今度のは作り笑顔ではない。
ついでに鬼意さんも笑った。しかし目は笑っていない。

「じゃあこれからも二人で過ごしても安心だね」
「…………ゆ?」

お兄さんの言葉が理解できなかった。
思わずお兄さんを見上げるれいむ。その顔には相変わらず笑顔が浮かんでいる。

「ごめんね、これを機に本格的に世界中を旅しようかと思ってね。多分次は数年は帰ってこれないと思うんだ」

一体お兄さんは何を言っているんだろう。れいむは理解できない。いや、したくなかった。
もう悪夢は終わったのだ。今日からは優しいお兄さんと一緒にゆっくり暮らせるはずだ。
なのにお兄さんはどうしてそんな事を言うのだろう。

「だから、これからはこいつと一緒に暮らしてね」

と、お兄さんはれいむを床に置き、弟を見て言った。
鬼意さんはこいつ扱いかよと苦笑いしているがれいむの耳には入っていない。
れいむは既に理解していた。
この二日間、鬼意さんが自分を虐めなかったのは優しいお兄さんが帰ってくるからだと。
きちんとした食事や箱から出してくれたのも以前の体型に戻すためなのだ。
だが今度はお兄さんは長い間帰ってこないらしい。
なら…一体これから自分はどうなってしまうのだろう。

「そういうわけだ。まあこれからも宜しくな」

ぽんぽんとれいむの頭を叩く鬼意さん。
れいむはガタガタと震えているが、その様子は鬼意さんの体で隠されてお兄さんからは見えない。
今にも涙を流しそうなれいむの耳元で、鬼意さんはれいむにだけ聞こえる声で囁いた。

「安心しな。お前は兄貴のお気に入りだ、殺しゃしねぇよ。…まあ死んだ方がマシとは思うかもしれねぇがな」

れいむはゆっくりと理解した。
この悪夢は永遠に終わることがないのだと。


終わり




あとがき

前作はかなりやりすぎ感があったので今回はなるべく普通の虐待を書いてみました。
でもなんだか難しいですね。文章力が欲しいなぁorz

fuku2088の作者様。誠に勝手ながら、無断で設定を使わせていただきました。申し訳ありません。

今まで書いたもの
  • それいけ! ゆっくり仮面
  • ゆっくり仮面の憂鬱~邪悪な心~
  • お兄さんの逆襲 前後編





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最終更新:2008年09月14日 05:28
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