※ぺにまむ描写があります
※ぬるいじめです
※死なないゆっくりがいます
※このSS内で使われる設定はこのSS内でのみ通用します
捨てる神あれば
道を歩いているとゆっくりを抱えて歩いている男を見つけた。
「やぢゃー!ありちゅおかあちゃんとゆっきゅちしちゃい!」
叫ぶ子ありすの言葉が耳に入っているのかといった様子の男は、ふいに足を止め子ありすを振りかぶった
「捨てるんですか?」
男がギョッとして振り向く。
「え、ええそうですが」
「なぜ?」
私が尋ねると男は苦々しげに答えた。
「こいつ、うちに入ってきた発情ありすが産ませた子供なんですよ」
男の説明によると、発情したありすの力は他のゆっくりを凌駕し、たいていは相手が死ぬまですっきりを繰り返すのだという。おまけに生まれてくる子のうちありす種以外の子は『とかいはではない』という理由で即座に踏みつぶしてしまうのだとか。
「まあ幸いうちのれいむは生きてたんですが、もうありすを見るだけでおびえるようになってしまって」
「じゃあ別々にして育てればいいじゃないですか」
私が言うと男は苦々しげに顔をゆがめた。男は私に向っていかにゆっくりを飼うのに手間がかかるかということを力説したが私には彼の内心がなんとなく理解できた。
要は彼もその飼いれいむも、レイプされて生まれた子などそだてたくないのだろう。その気持ちはわからなくもない。
だが罪もない子ありすに責任をなすりつけるのは許せない気がした。
「捨てるくらいなら、私に譲ってくれませんか」
気づけば私はそんなことを口走っていた。
※※
勢いで子ありすをひきとってしまったのはいいが、あいにく今までゆっくりどころかペットなどは一匹も飼ったことがない。私は家に着くとすぐPCの前に座り、ゆっくりの飼育法を調べ始めた。
「ゅぅ……ここがありちゅのあちゃらしいゆっきゅちぷりぇいしゅ?」
PCの脇に置いた子ありすがきょろきょろとあたりを見回してそんなことを聞くので、私はとりあえずそうだと答える。
「ゆぅ……なきゃなきゃとかいはなおうちにぇ!おきゃあしゃんはどこ?」
無邪気にそんなことを聞く子ありすに私は視線を合わせることができず、PCに熱中しているふりをしながら彼女の母とはもう会えないことだけを告げた。
「やぢゃー!ありちゅおきゃあしゃんといっしょにゆっきゅちしちゃい!ゆっきゅち!」
舌足らずに泣きわめく子ありすをなだめ、『とかいは』なありすが親がいなくても一人で生きていくと納得させるまでだいぶ時間がかかった。
「ありちゅおなきゃすいちゃ!」
一通り落ち着くと子ありすはそんなことを言い出した。そういえばもう夕飯の時刻である。とりあえずゆっくりは何でも食べるということはすぐにわかったので、夕飯を少し多めに作り子ありすの分とすることにした。
「むーちゃ、むーちゃ、しゃーわしぇー!」
小皿に盛られた野菜炒めを本当においしそうに食べ散らかす様を見ると、自然と心がなごむ。やはり子ゆっくりに罪はないのだなあと、この子ありすを幸せに育ててやる決意を新たにする。とりあえず次の食事のときはちゃぶ台に布巾を敷いておこうと思った。
※※
結局ほとんど丸一週間をありすの生活環境をととのえることに費やしてしまった。こういう時は時間に融通のきく勤務先がありがたいと思う。
ゆっくりの成長は早く、人間が飼育すれば一週間で赤ゆっくり(子ありす子ありすと言っていたがあれは間違いだった)から子ゆっくりまで育つ。我が家のありすもその例に違わず、ピンポン玉サイズだったのがソフトボール大にまで成長した。赤ちゃん言葉もだいぶ抜け、今ではちゃんと私のことを「おにーさん」と呼んでくれる。餌や遊びに注文が多いのが少々困りものだが、成長すればおいおい分別も付くことだろう。
『仕事』の概念がゆっくりに通じるか心配だったが、これから毎日昼の間は出かけることはなんとかわかったらしい。子ありすは「べ、べつにさびしくなんかないんだから!」と言ってくれたので私は子ありすの昼食を用意してでかけることにした。
仕事を終えコンビニでスナック菓子を買い家路につく。子ありすはスナックが好きだった。
「ここはまりさのゆっくりぷれいすなんだぜ!ゆっくりできないにんげんさんはでていってね!」
帰宅した私を迎える第一声がこれだった。
もちろん子ありすではない。黒い帽子と口調からどうやらまりさ種というものであるということくらいは連休中にゆっくりの飼育手引きを流し読みした知識からわかった。
「ゆ、おにーさんおかえりなさい!」
私が混乱していると、子ありすが家の奥から出てきた。
「ゆ?このにんげんさんはありすのしりあいなの?」
「そうよ!すごくゆっくりしたとかいはなおにーさんなの!」
べた褒めである。なんだか気恥かしい。
「ゆ!じゃあとくべつにまりさのゆっくりぷれいすにいれてあげるんだぜ!かんしゃのきもちをしめしたかったらごはんとおかしをちょうだいね!」
とりあえず腹が減っているようなので、途中で購入したスナック菓子を与えてみた。
「うめっ!これめっちゃうめっ!」
すぐに横着して布巾を敷かなかったことを後悔することになった。どうやらゆっくりの食事風景というものはすべてこんなものらしい。
食事が終わったところで事情を聞いてみる。なにせゆっくりの言うことなのでなかなか要領を得なかったが、どうやら子まりさは野良で、鍵をかけ忘れていた居間の窓から入ってきて、子ありすのすすめでここにいつくことにしたらしいことはなんとか伝わった。
「まりさはありすとゆっくりするからにんげんさんはでていってね!」
どうやら人間に対してだいぶ警戒しているらしい。子ありすもまりさと遊びたそうだったので部屋に戻ってPCをつけることにする。
PCで調べた結果、あのまりさの言葉はいわゆる縄張り宣言らしいことがわかった。これをされるとよっぽどのことがない限りその縄張りを放棄することがないのだという。どうやらもう一匹飼わなければいけなくなりそうだと思っていると、台所の方から悲鳴が聞こえた。
「ゆぎゃあああああああああ!あづいいいいいいいいいいい!」
割れ物や食べ物などゆっくりがとれないようなところに置いていたが、さすがに給湯器や炊飯器がゆっくりに害されるとは思わなかったので逆の場合を失念していた。
「だづげでええええええええええええええええ!」
子ありすは給湯器のお湯をもろにかぶってふやけていた。どうやらありすが下にいる時に子まりさが給湯ボタンを踏んだらしい。
そのまりさはといえば、体中に飯粒をつけながら保温状態の炊飯器の中で転がりまわっていた。こちらはどうすればこのような状況になるのかさっぱりわからない。
とりあえずありすは布巾で軽く水気をふきとり、まりさを流し台に放り込んで軽く水洗いする。
「みずはいやあああああああああああああああ!」
あらかた飯粒がとれた所でなっ●ゃんをかけると、だいぶ元気を取り戻した。ありすはまだ少しふやけていたため、寝床で一晩ゆっくりさせて元気が戻るのを待つことにする。
ありすの処置を一通り終わらせたところで、足もとに柔らかい感触を感じた。
「まりさとありすをいじめたひどいにんげんさんはゆっくりしね!」
どうやら一連の事件の犯人を私だと思っているらしい。憤怒の表情でぽよんぽよんと体当たりをしかけてくる。
「しねっ!しねっ!しねっ!っゆがああああああああああ!」
私がつかみ上げるとこの世のものとは思えない悲鳴を上げて暴れたが、やさしく頭をなでながら言い聞かせてやると次第に落ち着きを取り戻した。
「ゆふんっ!まりさのつよさにおそれをなしたんだね!これにこりたらにどとまりさにさからわないでね!」
このまりさは私の言うことを理解したのだろうか?私は少し不安になった。
※※
ありすを飼い始めてから一か月がたった。
正直私はゆっくりに対して辟易していた。
まりさが来てからというもの、ありすの興味はそちらに移ってしまったようで、今では私のことを餌係としか思っていない節がある。少し気に食わないことをすれば「でていけ」の大合唱が始まり、これはさすがにひどすぎると思ってお仕置きすると泣きわめいて部屋中を暴れまわる。私が折れると「ゆふん!」とふんぞりかえり、あたかも悪者を撃退した正義の味方のように「これにこりたらにどとこんなことしないでね!」だ。
さすがに飼育方法を間違えたかと思い、はじめの一週間以降ほとんど見なくなっていたゆっくり飼育のHPを調べてみた。結果わかったのは、これはもうどうしようもないということだ。
縄張り宣言、いわゆる「おうち宣言」は自分がこの「ゆっくりぷれいす」で最上位であるという示威行為で、私がそれを受け入れた時点で彼らにとって私は飼い主ではなく召使だったらしい。さらに快感だけをよく記憶するゆっくりの餡子にとって、この「おうち宣言成功」は強く刻み込まれ、階層認識の変更にはかなりの荒療治が必要とな
る。具体的には、いわゆる「虐待」スレスレのもので、ゆっくり自身が自分から「ここはおにいさんのおうち」だと口にするまで快感以上の苦痛を刻み込まなければならない。私にそれだけのことができるとは思わなかった。
矯正が不可能ならば選択肢は三つ。殺すか、捨てるか、このまま育てるかだ。このうち前者二つは速攻で否定される。結局私は彼らの奴隷にあまんじるしかないようだった。
「んほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「んほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
仕事から帰ってきた私を迎える第一声がこれだった。
何事が起ったのかと急いで声のした部屋に向かった私は、そこで硬直した。
「すっきりー♪」
「すっきりー♪」
まりさとありすが、なんというか、互いの下腹部をすりつけ合い、ものすごい表情で、
「まだまだいぐわよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「ありずうううううううううううううううううううう!」
どうやら、これは交尾らしい。狂ったように暴れまわる二匹を見て、私は結局何もせずに部屋を後にした。
PCで調べるとすぐにわかった。ありす種はうまれつき異常性欲が発露するものが多く、そうなってしまうと相手の種、体力、その他もろもろにかかわらず自分が満足するまで性向を続けるらしい。そういえばあのありすを捨てようとしていた男もそんな事を言っていた。私は今になってあの男の気持ちを理解した。
「ぼうやべでえええええええええええええええええええええええええええ!」
ひときわ大きな悲鳴が聞こえた。駆けつけると、まりさが今にも死にそうな表情でありすから逃れようとしている。
対するありすは全身を紅潮させ、頭に蔦をはやし下腹部もわずかに膨れているまりさにむかってさらなる交尾を迫っている。私はとっさにありすをつかみ息も絶え絶えなまりさから引き離した。
「なにずるのおおおおおおおおおおおおおお!ありずをずっぎりざぜないにんげんはゆっぐりじねええええええ!」
血走った目でこちらを睨みつけながらありすが叫ぶ。低部はだぷんだぷんとスライムの様に揺れている。私ははじめてこのありすに嫌悪を覚えた。
「ゆひー……ゆひー……」
今にも死にそうなまりさを助けるため、私は急いで台所に向かった。ありすにはとりあえず鍋をかぶせ、近くにあった本を何冊か重ねてとれないよう重しにしておく。なっ●ゃんを手に取りまりさのもとへ戻ると、すでにまりさの額からは何本もの茎が生えていた。
「ま……まりさのあかちゃん……」
なっ●ゃんをかけながら経過を観察する。茎になった十数個の実はすでに今にも落ちそうにぷるぷると震えている。
母体となったまりさは今にも死にそうにぷるぷると震えている。
「ゆ……」
「ゆっきゅち?」
「ゆぅ!ゆっきゅちー!」
「ゆっきゅち!ゆっきゅちちちぇいっちぇにぇ!」
一斉にぼとぼとと子供が生まれおちる。
「おきゃあしゃん!ゆっきゅちしちぇいっちぇね!」
「まりさのあかちゃん……ゆっくりしていってね……」
最後の一匹が生まれるのとほとんど同時にまりさは息を引き取った。胎生型のにんっしんっもしていたようだがそちらは助からないだろう。私は空になったなっ●ゃんのペットボトルをそっと置いた。
「おにーしゃん……?」
「おにーしゃんだ!」
赤ありすの無邪気な声に今までの凄惨な光景も忘れ、思わず顔がほころぶ。しかしそんな和やかな気持ちは次の一言で吹き飛んだ。
「おにーしゃんはさっさとまりしゃたちにごはんをもっちぇきちぇにぇ!」
「ぐじゅなにんげんはありしゅたちのゆっきゅちぷれいしゅにはいりゃないのよ!はやくしちぇにぇ!」
ゆっくりの子供は、親から餡子を受け継いで生まれる際、生きていくために必要な一部の記憶も一緒に遺伝するという。この家で育った二匹にとって、生きていくのに必要な記憶イコール私であり、赤ゆっくり達がこのようなセリフを口にするということは、
「にゃにやっちぇりゅにょ!はやくごはんちょーだいにぇ!」
「ゆっきゅちできにゃいにんげんはゆっきゅちしにぇ!」
私は自分の間違いを悟った。
※※
袋詰めのゆっくりを抱えて道を歩いていると、男に声をかけられた。
「捨てるんですか?」
「ええ」
「すっきりさせてくれないおにいさんはゆっくりしね!」
「ちにぇ!」
「まりちゃのゆっきゅちぷれいしゅからでてきぇ!」
袋詰めのゆっくりは、外の様子には興味を示さずただひたすら私のことを罵倒し続けている。
「交尾をさせたら、少し増えすぎてしまいまして」
言わずどもの弁解を付け加えた私を、男はにやにやと見つめている。
あのむき出しの悪意をぶつけられたとき、私がゆっくりに対して抱いていた幻想は完全に崩れた。
人間の言葉がわかるからといって、人間の考えがわかるわけではないのだ。彼らの持つ価値観は、ゆっくりできるか否かということだけで、ゆっくりという言葉の意味すらわからない私にとって、彼らは人間の言葉を話すだけの怪物だった。
「捨てるくらいなら、私にくれませんか」
彼の言葉に私ははっとした。
「いいんですか?」
袋の中からはなおも罵声が響いている。驚く私に男は笑ってうなずいた。
「ちょうどそんなのを探していたんです」
男の言葉の意味が私には何となくわかった。少し考えたが、結局何も言わずに袋を手渡し、そのまま家路についた。
「ヒャア!」
※おわり※
最終更新:2009年01月05日 02:43