ゆっくりいじめ系98 川の流れのように

ある日、僕が家に帰ると、家の中から話し声が聞こえる。
足音をなるたけたてないように家に入る。
そこには10匹ほどのゆっくり魔理沙の群れがいた。しかもクッションをバレーボールのようにトスしあいながら遊んでいる。
サッカーボールほどの大きなゆっくり魔理沙が母ゆっくりかな。あとはだいたい野球ボール大くらいか。

「なんだお前ら、どっから入った?」
「ゆ?おにいさんだれ?まりさのおうちへようこそ!」
「「「ゆっくりしていってね!」」」

なんか歓迎された。
いや、人の話聞けよ。

「ここ、お前たちのおうちなのか?」
「そうだよ!まりさがみつけたの!」
「おかーさんがみつけてくれたょ!」
「しゅっごくゆっくりできうよ!」
「いつ?」
「ゆ?」
「いつここを見つけたのさ?」
「おひるごろだよ!それがどうしたの?」
「そーかー。ここは俺が昨日見つけたおうちなんだよ」
「ゆ?」
「だからどっかいってくれ」
「うそだよ!だって、だれもいなかったもん」
「おにーちゃんゆっくりできないの?」

二十の目がとたんに敵を見る目に変わる。
と思ったら一番小さいゆっくり魔理沙が飛び掛ってきた。

「ゆ!ゆ!ゆっくりできねぇならでてってね!」
「でてけー」
「ゆっくりできないこはでてけー!」

ぽすんぽすんと足もとに当たる。柔らかい。
なんだろう、普通動物は自分より大きな生き物には喧嘩を売らないんだけどなぁ。
野生が足りない?でもこいつら大自然に生きてるしなぁ。
う~む。謎だ。
などとゆっくりしていると、それを怯んでいるとみなしたのだろう、攻撃が激しくなった。

「よし!てきはひるんでいる!きょーげきせよ!」
「ゆっくり!」
「はんすーはてきこ~はいをつけ!」
「ゆっくり!」

半分がわざわざ迂回して背後に回ろうとしている。いや、どこで覚えたそんなせりふ。
あ、いいこと思いついた。
でっかいやつは前のほうにいるのか。よし。

後ろに移動した五匹の野球ボールほどの子ゆっくり魔理沙たちの位置を確認。
正面の母ゆっくりたちの攻撃が始まる。ぽこぽこぽこぽこぽこ。

「うわぁー!やらぁれたぁ~~~~~~!!!」
「ゆ!やったよ!たおしたよ!」
「これでゆっくりできるね!!」
「これだけおおきいと、おいしそうだね!」

おいおい、食べる気か。まじか。
そう思いつつ、その場で飛び跳ねてうつぶせになるように倒れる。
後ろにいた五匹に向かって。

「ゆ!」
「ゆ?」
「ゆ゛!!」

まぁ、服が汚れるけど、洗えばいいことだしね。

ズゥウゥン……

ぶじゅりゅっ!ぶりりっ!ぎゅ!

「ぶぎゅ!」
「ゆびゃーっ!」

声すら上げられずに圧縮された子ゆっくりと、まだ生きている子ゆっくり。
どちらが幸せだったろうか?とりあえず生きてるやつらは体の後ろあたりが潰されているから生き地獄だろう。
別に死んだ振りとはいえ、目はつむってない。戯れだしね。
母ゆっくりたちは何が起こったのかいまいちわかっていないようだった。

「いだぁ~~~いぃっ!!」
「!」
「うあっ!うあーーーー!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
「ま゛り゛ざぁの゛ぉがわ゛い゛ぃい゛ぃあ゛がぢゃあ゛ぁあ゛ぁあ゛ぁあ゛ぁあ゛ぁんっ!!!」
「まっでで、いまだずげるよっ!おねぇぢゃぁんっ!!」
「ばやぐだずげでねっ!おんげぇ!」

泣き濡れながら救助作業にとりかかる五匹。
甘い。
寝返りをうつように半回転!

「むぎゅりぶじゅるっ!!」
「きゃあああああああああ!」
「なかみがぁああああっ」
「いやだぁっいやだよぅっ!!!」
「おがーーーざんっおがーざんっ!!おねーぢゃんがぁあ!おねーぢゃんがづぶれぢゃったよぅ!!!」

にやり。
そこでゆっくりと立ち上がる。

「あー、服がべとべと。餡子がついてるよ」
「!」
「あ、あ、あ、あ、あ」
「ぶぇえぇぇぇぇえぇ」
「あんこじゃない!なかみだよ!」
「いや、これ餡子だから、食ってみって」

母ゆっくり魔理沙は、自分たちの中身が餡子だと知らないのか、認めたくないのか、否定した。
だから食べさせてやろうと思った。
服についていた、つぶれた子供の中身をまるごと指でとって、母ゆっくり魔理沙の口元に持っていく。

「むーーーーー!」
「ほれ、口開けれって」
「んんんんん!」

口をへの字に結んで、やや頬をぷっくりとしている。
まるで嫌いなものを食べさせられそうな幼児だな。無理やりねじ込んでやってもいいけど、自分から開いてもらおうか。
開いてるほうの手で母ゆっくりの目を隠す。
しばらくは我慢できたのだろうけど、だんだん震えてきた。

「く、くらいよー!なにもみえない!ゆっくりできない!みんなーどごにいっだのおぉぉぉほっ!」
「ほいっと」
「ゆ?」

母ゆっくり魔理沙は確かに舌の上に乗った甘いものを認識した。
目隠しを離すと吐き出さずにそのまま飲み込んだ。

「うめぇ!」
「だろう?それはなんだった?」
「ゆ?あんこだった!」
「だろ?お前らの中身は餡子なんだって」
「!?」
「さっき口の中に入れたのはお前の子供の死体だよ」
「あ、あ、あ、あぁああああああああああ」
「おかーさん!」
「おかーさん!しっかりしていってね!」
「おかぁさん!まりさたちがいるよ?みんあでゆっくりしていこう!」
「ひっくひっくぐすん」

ああ、なんという悲劇。なんという麗しい家族愛だろう!
これ文章にしたら「天狗の山文学賞」とか狙えるんじゃね?
ちなみにそれを受賞すると、射命丸文との一日デートが副賞で付いてくるらしい。
生で聞いてみたいなぁ、あやややや。

「ぐすん。おにーさん」
「ん?」
「ここはゆっくりできないから、でていくね」
「そうかい」
「おにーさんはここでゆっくりしていってね」
「ああ」
「それじゃあね」
「じゃーね!」
「ばいばーい」
「ば~いちゃ」

やや煤けた背中で戸口のほうへ向かう群れ。このまま放逐してもいいのだが、そうは問屋が卸さない。
便所の戸を開けておいて、声をかける。

「お前たちがゆっくり出来る場所をおしえてやろうか?」
「……ゆっくりできるの?」

母ゆっくり魔理沙が振り返って言う。目元は泣きはらしたから腫れている、ように見えてふやけている。
ああ、かわいいなぁ。そのままこねくりまわしてやりたいよっ!
子どももいるから、ちっちゃくなった石鹸みたいに母ゆっくり魔理沙の体中にぺったりとくっつけてやりたい!

「ああ、ゆっくりできるよ。水場もあるから飲み水や体を洗うのにも困らないしね」
「ほんとう!?」
「おにーちゃん!どこどこ!」
「はやくあないしてねっ」
「ここだよ」

と便所を指差す。便所は個室だから、ゆっくりたちには手ごろな大きさだし、水場でもある。
印象的に飲んだり顔を洗ったりはしたくないが、水は水だ。
うちの便所は洋式便所に改造されている。
以前裏手の川を流れてきた河童を助けたときに、恩返しと言うことで水洗式に改造されたのだ。そのときに、和式から洋式に変えられた。にとりめっ。
その場所へ我先にと駆け込むゆっくり魔理沙たち。母ゆっくり魔理沙も気が進まないようだったが、便所を見ると目を輝かせた。
手ごろな広さ!水溜り!運動できそうな物体(便器)!
喜色満面で飛び跳ね始める。
子ゆっくり魔理沙たちなどは、すでに登頂していて、便座のあたりでゆぅゆぅと遊んでいる。
しばし見ていると、その中の一匹が便器の中に落ちた。
ぽちゃん。

「ちべたーい!」
「ゆ?ちべたいの?」
「まりさもいぐのぉー」

ぽちゃんぽちゃんぽちゃんと子ゆっくり魔理沙は全部飛び込んでいた。

「ゆゆゆっ!」

母ゆっくり魔理沙は子供たちの姿が見えなくなって不安になったのか、ゆっくりせずに急いで便座に飛び移っていった。
サッカーボールほどの大きさで便座に乗るのは不安定ではと思ったが、こいつら弾力性に富んでるから凹み気味で乗ってた。
きゃっきゃっとはしゃぐ子供たちを見て安心したのか、ゆっくりとそれらを見守る母ゆっくり魔理沙。
しばらくすると、母ゆっくり魔理沙は、遊んでる子供を夕飯に呼ぶお母さんのような口調で呼びかけた。

「そろそろあがっておいで、ゆっくりしてるとふやけるよ!」
「ゆっくりー!」
「ふやけちゃうふやけちゃう!」
「ゆ?」
「ゆゆゆゆ?」

しかし登れない。それはそうだろう。体中が濡れているし、なにより淵には返しのようなものがあるから子ゆっくり魔理沙の跳躍力では飛び越えられそうも無い。
しかも勾配があるから、水場に滑っていってしまう。

「おかーさん、ここからでられないよ!」
「はやくたすけてね!」
「ゆっゆっ!?」

母ゆっくり魔理沙は困惑した。自分の大きさでは、助けに飛び込んだら押しつぶしてしまう。さりとて口で助けようにも舌は届かない。身を乗り出すと落ちてしまうだろう。
どうしようもない。いや、手はまだある。

「おにーさん!」
「ん?」

じっと見ていた俺に母ゆっくり魔理沙が声をかける。

「ん?じゃなくて、たすけてよね!」
「はぁ」
「おにーさんがしょーかいしてくれたばしょでゆっくりできなくなるよ!」
「う~む」
「うなってないで、はやくしてね!」

便器の中からは、相変わらずおかーさんおかーさんと聞こえてくる。
そこを覗き込むと、早くもふやけ始めているのか、ぶよぶよとたるんでいるのが何匹かいる。

「あのね」
「なに!ゆっくりしないでね!」
「そこに紐があるでしょ」
「ゆ!わかるよー」
「それを引っ張れば、こう、ポーンって中から出られるから」
「ゆっくりありがとね!みんな、ちょっとまっててね!すぐたすけるからね!」

言うが早いか、レバーに食いついてぶら下がる。
これでみんなでゆっくりできるよ!
そんな表情だ。

がしゃん。ざばぁああ。

動き出したのがわかったのか、飛び降りて便座に着地する母。
見ると水かさが増えているような気がする。それにぐるぐると回っている。

「ぐるぐるぐるぐるぐる~~~」
「ゆっくりさせて!まわらないで!」
「あがぁああぁぁぁああ」
「はくちっ」
「「「「ゆぅうぅうぅうぅうぅうぅうぅうぅうう」」」」

一匹一匹そのまま流されていった。
その速さはゆっくりにはとめることが出来ない速さだった。

じゃー。ざばざばざばざば。

「…………」

それをじっと見て、硬直している母ゆっくり魔理沙。浮き上がってくるのではないかと待っているのだろうか。
そしてそのまま十秒、二十秒、三十秒。

「う。うあ。うああ。あ。あ。あぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!」
「ごどもだぢぐぁあああぁぁぁああぁぁっ!」
「までぃざのおごがぁああぁ」
「どっか、どっがいっぢゃったんだなあぁあぁぁぁあああああ!!」
「ど、どごにいるのぉぉおぉぉおぉぉぉおおおおぉぉっ!?」
「がくれんぼぢでないで、ででぎでぇっ!」
「ででぎでぇよっ!!」
「ぶあぁあぁぁあぁああぁぁぁぁっ!!!」

さて、そろそろかな。
むんずっ!
と泣き喚いている母ゆっくり魔理沙を掴むと家の外に出る。

「はなじでぇーっ!こどもがっ!までぃざのごどもがあぞごにっ!!」
「子供たちはあそこにいないよ」
「うぞだよぅ!とぢこめられでるんだよっ!」
「違うよ、悪いやつに盗まれたのさ」
「おにーざんでじょぅ!わるいこ!おにーさんはわるいごっ!」

餡子のこびりついたままで外に出てしまったけど、ほんの裏手だからいいか。
そうして1分ほど歩くと、川が見えてくる。
にとりはここで土左衛門よろしく引っかかっていたのだ。
そこに腰掛けるといまだえづいているゆっくり魔理沙に川を見せる。

「ごんなどこにっく、まぢじゃのごどもはいねぇべさ」
「もうすぐだって」
「?」
「あ、いた」
「ゆ!どこどこ!?まりさのこどもはどこー」

そこには無残にも餡子がはみ出している子ゆっくり魔理沙が4匹流れてきていた。
じっと見ると、体の下に何匹かの小魚の姿が見える。
そいつらが体をついばむたびにびくんびくんと痙攣している。生きているかもしれないけど、さすがに意識はないだろう。

「あ゛~~~~~~」
「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」
「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛っ」
「ゆびゅぅんっ」
「みんなぁっ!みんなぁっ!!!」

母ゆっくり魔理沙は川に飛び込むと子供たちに駆け寄ろうとする。が、たしかに浅い小川といえど、ゆっくりには海よりも深い。
あっぷあっぷしながら川の流れに為すがままになっている。
それを見ながら、川下に歩いていく。とりあえず母ゆっくりが力尽きるまで見てみようと思ったのだ。

「どぉしてごっちにきでぐれないのぉぅ!!」
「うあ゛っうあ゛っうあ゛っ!」
「たべないでっ!まぢさはおいぢくないよぅっ!」
「はっぷはっぷ!はぱぱっ」
「ごぼっごぼぼっ」
「がふっ!がぼぉっがばばばば」
「~~~ッ!~~~~~ッッ!!!」
「…………!」

バッシャバッシャという音が徐々に静かになるにつれて興味が薄れていく。
母ゆっくりの溺れる声が聞こえなくなる頃にはすでに引き返していた。

「さぁって、いまのをちょいと脚色して"天狗の山文学賞"に応募してみるか」

ちなみに、文とデートをした人間はいまだ一人もいない。いつも文が受賞しているからだ。
文々。新聞を書いているから、文章慣れしているのかもしれない。
にとりによれば、文の応募作はなかなかに読ませる文章だという。
ま、駄目もとでいこうかね。

夕焼け空にからすの親子が飛んでいた。
その母ゆっくり魔理沙の行方は誰も知らない。


終わり。

短編のつもりで書いていたら、いつもと変わらない量になってしまった。
あれ?伝統の幻想ブン屋ののろいだろうか?
幻想郷には「天狗の山文学賞」なるものはありません。念のためw

著:Hey!胡乱

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最終更新:2008年09月14日 05:18
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