「なあ、れいむってうんうんするの?」
俺は庭でゆっくりしているれいむに聞いてみた。
「ゆ?うんうんてなに?」
うんうんてなに?
by ”ゆ虐の友”従業員
ふと、”そっち系”の遊びをしてみたくなった俺は、その店を訪れた。
ゆっくり専門店”ゆ虐の友”。
里の住人のために広く門戸を開く一般商店ではなく、名前が示す通り少数者のための店だ。
ここにはゆっくり飼育/虐待のための様々な用具が揃っている。
「店員さん、ちょっと相談に乗ってもらえますか」
俺は暇そうに店番をしている店員さんに声をかけた。
俺は、ゆっくりを使ってうんうん関係の遊びをしたくなったこと、
家のゆっくりはまだうんうんを知らないこと、などを店員さんに説明する。
店員さんはひとしきり俺の説明を聞いたあと、ゆっくりのうんうんについての講釈を始めた。
「まずですね、ゆっくりのいわゆる”うんうん”というものに実体はありません。
彼らの存在と同様、その排泄物も通常、思い込みから来るものです。
そこで、まずは彼らにうんうんとは何か?ということを教えてやります。
うちではゆっくり向けの紙芝居を用意していますが、別に口頭で教え込むことも可能です」
「その紙芝居って、見せてもらえます?」
「ただいまお持ちいたします」
店員さんから紙芝居を受け取って眺める。
<ゆっくりのたべたむしさんは、ゆっくりのおなかでゆっくりして、うんうんになります。>
<うんうんがずっとおなかでゆっくりしていると、ゆっくりはゆっくりできなくなってしまいます。>
<なので、ゆっくりはうんうんをします>
「おお……これは、なかなか……」
なるほど、餡子脳にも理解できる絵と平易な文章でうんうんを教育する仕組みになっている。
「ありがとうございました、これ、いただきます」
店員さんは一礼すると、一そろいの紙芝居を袋に入れてくれる。
「ほかには何かあります?」
俺はさらに聞いてみた。
「これなんかどうです?うんうん色のかりんとうです。
これを食べさせると、”うんうんは美味しいもの”とゆっくりが認識するのでもともと食用のうんうんが
より美味しくなります」
「……その”逆”ってありませんか?」
「ありますよ」
店員さんは棚から別のかりんとうを取り出す。
「こちらは”ゆっくりできない”うんうんかりんとうです。
これは食べられますが美味しくなく、ゆっくりは嫌がります。ゆっくりが嫌う匂いも出します。
この二つの商品は、あまり併用しないほうがよいでしょうね」
「じゃあ、ゆっくりできない方ください」
その後、ゆっくり用の厠を買って俺は店を出た。
この店の利用は里の規律に反するわけではないが、あまり大っぴらにしていいものでもない。
遠回りの道を使って、人目に触れぬよう家に帰る。
* * * *
家に帰ると、
「おなかすいたよ!ゆっくりたべものちょうだいね!」
とれいむ。早速かりんとうを食べさせる。
「ほれ、これを喰え」
「ゆゆ!れいむのだいすきなあまあまだよ!おにーさんありがとう!」
かりんとうはれいむの好物だ。満面の笑顔で食べ始める。
「むーしゃ、むーしゃ……ゆべぇぇぇ!!!まじゅいよぉぉぉぉ!!??ゆっくりできないよぉぉぉぉぉぉ!!
それに、へんなにおいがするよぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「あ、間違えた。それうんうんだった」
「うんうん?
ゆっくりできないうんうんはいらないよ!ちゃんとしたごはんをちょうだいね!」
「悪い悪い、間違えたよ」
「ぷっくー……おにいさんだから、とくべつにゆるしてあげるよ、かんしゃしてね!」
「はいはい」
次の日、れいむに紙芝居を読んで聞かせてやることにした。
<ゆっくりのうんうん>
「ゆ!きのうのうんうんさんだよ!こんなゆっくりできないものみたくないよ!」
<ゆっくりのむしゃむしゃしたむしさんは、おなかのなかでゆっくりして、うんうんになります。>
「ゆ?そうなの?れいむしらなかったよ……」
<うんうんがずっとおなかでゆっくりしていると、ゆっくりはゆっくりできなくなってしまいます。>
「そうだよ!ゆっくりできないよ!うんうんさんはゆっくりでてね!」
<なので、ゆっくりはうんうんをします>
「ゆっくりりかいしたよ!うんうんするよ!」
ここまでは紙芝居の原版どおりなのである。
俺はここに、昨日一晩かかって作り上げた手書きの紙芝居を継ぎ足す。
<うんうんのしかた>
「ゆ?うんうんってどうすればいいの?」
<れいむのばあいは、あたまにきがにょきにょきはえてきて、そこからうんうんがでます。>
「ゆゆ!そうなの!?しらなかったよ!」
<うんうんはゆっくりできないので、”かわや”へすてましょう>
「うんうんはからくてくさいよ!ゆっくりできないからかわやへすてるよ!!」
うんうんのさせ方についてはちょっとした工夫をしてみた。上手くいけば面白いものが見られるかもしれない。
俺はゆっくりの住居に砂の入った厠を入れてやる。
「さあ、うんうんなさい!」
すでに餌は与えてある。うんうん情報の刷り込みさえ上手くいっていれば、
うんうんをはじめるはずだが……
少し待つと、れいむは期待通りぷるぷると震えはじめた。
「ゆゆ!うんうんでるよ!
おにいさん!れいむがうんうんするところみないでね!」
れいむは跳ねて抗議する。
「いや、見るけど」
「どぼじでみるのおおお!!!???」
にょきにょきにょき……
「おっ、本当に生えてきた」
妊娠しているわけでもないのに、額から植物の胚芽が出てきて急成長をとげる。
「やめでね!!でいぶのうんうんみないでね!!」
その先端に黒いものが結実し、すぐに昨夜れいむに食わせたかりんとうの形のうんうんとなった。
「ゆっくりできないうんうん、いっぱいでたよ!」
「ほら、厠へ行かないと」
「ゆ!そうだよ!ゆっくりうんうんするよ!」
住居の隅に置いた砂箱へと跳ねるれいむ。
「ゆっ、ゆっ」
れいむが跳ねると、頭上のうんうんも揺れる。
「お…おい…」
跳ねなければ砂箱へ行けない。跳ねるとうんうんも揺れる。
「うんうんさんやめてね!ゆっくりしてね!」
れいむの叫びもむなしく、ぽとぽとと地面におちるうんうん。
「どうじでゆっくりじてくれないのぉぉぉぉぉぉ!!!???」
すぐにれいむの周りはうんうんだらけになった。
「ゆーしょ……ゆーしょ……」
うんうん時に生えてきた植物の茎を使って、うんうんの始末をするれいむ。
「ぐざいよ……ゆっぐりでぎないよ……」
その日から、れいむは食事を厠の近くでする決まりになった。
食べるとすぐにうんうんを出すので、そうしないことには住居がうんうんまみれになってしまうのだ。
「れいむ、おいしいかい?」
「おいしいけど……うんうんのそばだからゆっくりできないよ……」
* * * *
一週間ほどしたある日、仕事から帰って来るとれいむの様子がおかしくなっていた。
目は泳ぎ、体は潰れ気味になっている。
「ゆへぇ……ゆへぇ……」
「おーい、どうした饅頭」
「れいむ……ゆっくりできないって……ゆへへ、うんうんするゆっくりはゆっくりできないっていわれたよ……
きらわれちゃった……うんうん……うんうんいっぱいぶらさげてへんだって……ゆへ、ゆへへぇぇ……」
「おい?れいむ?れいむ?」
聞き取りに要すること一時間。情報の断片をかき集めて、俺はおよそのあらましを理解した。
俺の留守中に、野良のまりさがこの家を訪れた。
どうやら俺が知らなかっただけで、時折昼間に家に来ていたれいむの友達であるらしい。
「ゆゆ!まりさだよ!きょうもゆっくりしていってね!」
「れいむ!いっしょにゆっくりしようね!」
箱を隔ててゆっくりする二匹だったが、やがてれいむのむーしゃむーしゃの時間がやってきた。
「むーしゃ、むーしゃ……しあわしぇーーー!!」
当然、むーしゃむーしゃのあとはうんうんだ。
「ゆ…ゆ…ゆ…」
「れいむ?なにしてるの?」
「う……うんうんだよ……はずかしいからみないでね……」
「うんうんってなに?」
「うんうんはうんうんだよ!まりさだってするでしょ!あっちむいててね!」
しかし、まりさは見たことも聞いたこともない現象に興味深々で追究する。
「わかんないよ?ゆっくりおしえてね!」
「うんうんはうんうんなの!ゆっくりできないからうんうんするんだよ!
そんなこともわからないの?ばかなの?しぬの?」
れいむは必死にうんうんについて説明するが、人間ならともかくゆっくりの説明では要領を得ない。
「まりさそんなのしないよ?なにしてるの?あかちゃんうまれるの?」
「みにゃいでぇぇぇぇ!!??」
いつも昼は留守にしているので、ご飯は多く与えている。
「ゆ、ゆ、ゆゆゆ……うんうんでるよ……」
見る見るうちにれいむの頭上に立派なうんうんが鈴なりになった。
「れいむのあたまに、なんだかくさいのがいっぱいぶらさがってるよ?ゆっくりしてないよ?」
「みないでっだらぁぁぁぁぁ!!!」
しかも、緊張のためか、この日のうんうんはなかなか落ちてくれなかった。
「うんうんさん!ゆっくりでていってね!まりさがこわがってるよぉぉぉぉぉ!!!」
まりさは、ゆさゆさとうんうんを揺らすれいむを気味悪そうに眺めた後、
「ゆ……わるいけどれいむとはゆっくりできないよ、ばいばい」
そう言って跳ね去った。
「ゆへ、ゆへ、ゆへへへへへへ……」
「困ったもんだ」
せっかく俺が”れいむのうんうん見世物”としてやろうとしていたことを先回りしてやりやがって。
* * * *
数日間、仕事休みを取った。新しい計画のため……家でれいむの友達まりさを待ち受けるためだ。
がたごとと戸が動いた。
「れいむ、このまえはごめんね……」
「そぉい!!」
戸の隙間から入ってきたまりさを捕まえる。
「お、おにいさん!ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね、じゃない……ここは俺の家だ」
「わ、わかったよ……おにいさんのおうちでまりさをゆっくりさせてください、おにいさん」
「よろしい」
俺は、衰弱したうんうんれいむとまりさを引き合わせてやった。
「ゆへ、ゆへへぇ……ゆ、まりさだ……」
「れ、れいむ……?」
「お前さんがきらったから、れいむはこんなになってしまったよ」
れいむの目は焦点を結んでいない。あらぬ方向を見てゆへゆへと笑っている。
廃ゆっくり同然の状態だった。
「ゆ!そうなの?
ごめんね、れいむ……まりさのせいで……」
(本当は、うんうん生成による精神的負荷のせいでもあるんだがね)
「本当に困ったことになったよ……
しかも、聞くところによるとまりさ、君はうんうんを知らないそうじゃないか」
「うんうんってなに?れいむにもきいたけどよくわからなかったよ!」
最初に、れいむの時と同じように”うんうん色”かりんとうを与える。
だがまりさはこれを拒否した。
「ゆ!いらないよ!うんうんはゆっくりできないものだよ!」
そうだった、こいつはれいむがうんうんを嫌がるところを見ていたんだった。
「そんなことはない。これはとーっても美味しいものなんだよ。
れいむはちょっとうんうんが苦手なだけなんだよ」
俺はかりんとうを一つ摘んで口に入れる。
「うっめ!これめっちゃうっめ!」
「ごくり……ほんとうだね?うそだったらおにいさんでもゆるさないからね?」
まりさはこわごわとかりんとうを口に含む。
「ゆぱぁぁぁ……!とってもおいしいよ!!
あれ?じゃあどうして?れいむのうんうんは?」
混乱しているまりさをそのままに、紙芝居を開始する。
<ゆっくりのうんうん>
「ゆ!うんうんだよ!すっごくおいしそうだね!」
<ゆっくりのむしゃむしゃしたむしさんは、おなかのなかでゆっくりして、うんうんになります。>
「ゆ?そうなの?まりさしらなかったよ!」
<うんうんがずっとおなかでゆっくりしていると、ゆっくりはゆっくりできなくなってしまいます。>
「そうだよ!ゆっくりできないよ!うんうんさんはゆっくりでてきてね!」
<なので、ゆっくりはうんうんをします>
「ゆっくりりかいしたよ!うんうんするよ!」
ここまでは原版どおり、俺はここに昨日一晩かかって作り上げたまりさ向けの紙芝居を継ぎ足す。
<うんうんのしかた>
「ゆ?うんうんってどうすればいいの?」
<まりさのばあいは、おしりからうんうんがでます。>
「ゆゆ!そうなの!?」
<うんうんはとってもおいしいので、ほかのゆっくりにたべさせてあげましょう>
「そうだね!ちょっともったいないけど、まりさはうんうんをほかのこにあげるよ!
それで、かわりにほかのこのうんうんもらうよ!まりさあたまいいね!」
紙芝居が終わると、まりさはれいむにすりすりした。
「ごめんねれいむ……まりさがまちがってたよ……
うんうんはゆっくりできないなんていってごめんね……」
「まり……さ……?」
これにて仕込みは完了。
俺は二匹を森へと放つことにした。
れいむはまりさのおかげで少しずつ良くなっているし、二匹で暮らしていけるだろう。
「おにーさんいままでうんうんれいむをいままでかわいがってくれていままでありがとうね」
「おにいさん!れいむはまりさがしあわせにするよ!ゆっくりしていってね!」
「ああ、二匹で力を合わせてゆっくりするんだぞ」
二匹は寄り添って森の奥へと跳ねていった。
「ゆっくりうんうんしていってね……」
俺は誰にともなく呟いた。
* * * *
まりさの懸命な介護もあり、れいむは少しずつ回復していった。
ある日のことだった。
「ゆゆ?ここはどこ?」
「れいむ……?もとにもどったの?」
まりさは感動した。
れいむの表情には正気が戻り、今までのようにゆへゆへ言っていない。
「どうしてれいむこんなところにいるの?」
「………ゆくっ」
「なんでないてるの?まりさ?」
目に浮かびかけた熱い砂糖水を堪えて、まりさはれいむに挨拶をする。
それは全てのゆっくりの共通言語。
「……こ、ここはまりさとれいむのゆっくりぷれいすだよ!
ゆっくりしていってね!」
「ゆ?……ゆっくりしていってね!」
れいむの餡子に、此処にはいない誰かの面影がよぎったが、それはすぐに消えていった。
大好きなまりさと一緒にいる、その充足感だけで充分だった。
「「ゆっくりしていってね!!」」
しばらくゆっくりし、むーしゃむーしゃを終えるとまりさは言った。
「それじゃあれいむ、きょうもれいむのうんうんをたべさせてね」
そういうとまりさはれいむに後ろから乗り、その頭頂部にあるうんうんの植物茎をむーしゃむーしゃしようとする。
れいむは慌てて抵抗した。
「ゆゆゆゆ!!なにしてるのまりさ!?うんうんなんかたべたらゆっくりできなくなるよ!?」
「ゆ?れいむこそなにをいっているの??」
れいむが正気にかえるまでの間、まりさはれいむのうんうんをたべてやり、自分のうんうんをれいむに食べさせて
生きてきたのだった。もしその糧がなかったら、二匹分の餌をとることなど叶わぬこの番(つがい)は
食糧不足で死に絶えていただろう。
「おなかすいたよ!!れいむのうんうんゆっくりたべさせてね!!」
「やめでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
それはれいむにとって悪夢のような光景だった。
あんなにゆっくりできないうんうんを。
あんなにくさくてまずいうんうんを大好きなまりさが食べている。
「むーしゃ、むーしゃ……しあわしぇーーー!
れいむのうんうん、きょうもとってもおいしいよ!」
「どぼぢでぇぇぇぇぇ!!!???」
理解できずに、れいむはさめざめと泣いた。
「ゆっくりおいしかったよ!
それじゃこんどはまりさのうんうんれいむにあげるね!」
「ゆ?なにいってるの……」
まりさは今までいつもそうしていたように、れいむの口に自分の後背部をあてがうと、
「ゆ ゆ っ !!」
力一杯うんうんをした。
「ゆふー、きょうもいっぱいうんうんでたよ!!」
「むがべぇぇぇぇぇ!!!じんばびゅえぇぇぇぇぇ!!!!」
* * * *
れいむはゆっくりできなかった。むーしゃむーしゃするたびに、汚いうんうんをどっさり付ける自分の茎が嫌だった。
あのかしこいまりさが、どうして汚いうんうんなどを食べるのかも理解できなかった。
それにまりさは、自分がどれだけ嫌だといってもうんうんしているところを見るのだ。
「れいむのうんうんすごくりっぱだよ!とってもゆっくりしたうんうんだね!!」
「ゆゆ……やめてよ……いじわるいわないで……」
まりさもゆっくりできなかった。
れいむはあんなにたくさんうんうんを持っているのに、食べずに捨ててしまう。
それに自分のうんうんも食べてはくれない。
まりさは自身で後背部のうんうんを処理できないため、ゆっくりぷれいすの壁にすーりすーりしてうんうんを取るのだが、
そのたびにれいむが
「やめてね!くさいよ!ゆっくりできないよ!」
と怒るのも、ゆっくりできない原因となっていた。
「うんうんはいいにおいだよ!それにとってもおいしいんだよ!
れいむはそんなにいっぱいうんうんもってるくせにたべないなんてもったいないよ!」
「まりさのばか!へんたい!うんうんふりーく!
うんうんなんかぜんぜんゆっくりしてないよ!」
「ばかなのはれいむのほうだよ!せっかくのうんうんをれいむがすてちゃうからごはんがすくないよ!
えらそうなこというんならじぶんでごはんとってきてね!」
異なったうんうん観を植えつけられた二匹のゆっくりは、際限もなくいがみ合うのだった。
おしまい。
最終更新:2008年11月24日 18:28