ゆっくりいじめ系925 ゆっくり姉妹 後編



(注)何の罪も無い、純粋で心優しいゆっくりが酷い目に遭います。



 ゆっくり姉妹 後編



庭への扉を開け、まりさの姿を探す。あれから六日も経っているので、
もう諦めて帰ってしまったかもしれないと思っていたが、それは杞憂だった。
まりさは扉の近くでぐったりとしていた。何度も扉に体当たりしたのか、全身ぼろぼろだった。

その様子を見れば、六日間、自分の事を顧みず、ただひたすらに姉を救おうとしていた事がわかる。
れいむの為にここまでやるとは、驚いたな、六日前はただの甘ったれたゆっくりに見えたんだが。
僕はまりさを掴み、自分の顔の高さまで持ち上げる。

「ゆぅ……。お、おにいさん!」

それまで虚ろだったまりさの瞳が、僕の存在を視界に捉えた途端、生気を取り戻す。

「おにいさん! まりさ、すごく怒ってるよ! おねえちゃんをかえしてくれないと、おにいさんとはゆっくりできないよ!」

まりさは顔を真っ赤にして僕の手の中で暴れる。
半死半生の体の、どこにこんな力が残っていたのだろう。
姉を思う強い気持ちが、底知れぬエネルギーを生み出しているのかもしれない。

なかなか大した奴だ、僕はまりさの事が少しだけ好きになった。だから、優しく声をかけてやる。
そういえば、まりさに話しかけるのはこれが初めてだな。

「じゃあ、お姉ちゃんに会わせてあげるよ」

「ゆ!? 本当!? やったあ! おにいさん、ありがとう!」

金剛力士像そっくりだったまりさの怒り顔が、えびす様のようにほがらかになる。
おまけに僕にお礼まで言う始末だ。こいつ、誰がれいむを誘拐したのか忘れてしまったのか?

「どういたしまして。まりさは疲れてるだろうから、僕が連れて行ってあげるね」

「ゆゆ! おそらをとんでるみたい!」

僕に抱えられると、まりさはキャッキャとはしゃぎだした。
六日前、同じような体勢から地面に叩きつけられた事をすっかり忘れてしまっているらしい。
なんとまあ、おめでたい生き物だ。まあ、単純な方が『ゆっくりすること』に都合が良いのだろう。

僕はまりさを抱えて家の中に戻ると、庭の扉を閉めて、れいむの部屋へと歩き出す。
まりさは廊下に飾られた絵画や調度品を見て、楽しそうに笑っていた。

「きれいなものがたくさんあるよ! おにいさん! とっても素敵なおうちだね!」

「そうかい? どうもありがとう」

にっこりと微笑んでそう答えてやると、
まりさは嬉しそうに僕の腕に頬をすり寄せる。随分と人懐っこい奴だ。

僕は、まりさの事を可愛いと思い始めていた。
六日前は『鬱陶しい』『やかましい』としか感じなかったのに、何故だろう。
おそらく、れいむがいつまで経っても僕の事を好きにならなかったから、
すぐに懐いてくるまりさを、愛おしく感じるのだと思う。僕はまりさの頭を優しく撫でてやる。

「ゆゆ~ きもちいいよ! おにいさんは優しいから、まりさ、すごくゆっくりできるよ!」

ついさっき、『れいむを返すまでは僕とはゆっくりできない』、
と言っていたのに、忘れっぽい奴だな。でも、そんな能天気な所が、とても可愛いと思う。

だが、今の僕にとって『可愛い』というのは、『傷つけたい』という事だ。
これから自分がどんな目に遭うか教えてやったら、この無邪気な笑顔がどんな風に歪むのかな。
そんな事を考えると、自然と口元から笑みがこぼれた。

やがて、れいむの部屋の前に戻ってくると、まりさを廊下に下ろし、鍵を開ける。
ドアを少しだけ開けて中の様子を伺うと、れいむは憔悴しきった顔で、呆然と中空を見つめていた。
もう、涙も枯れてしまったらしい。困ったな、これからが本番なのに。
まあ、妹に会わせてやれば、元気になるだろう。僕はドアを全て開いて、まりさを部屋の中に入れてやる。

「おねえちゃん!」

「………まりさ?」

まりさの元気な声に、生きる屍のようだったれいむがぴくりと反応する。
そして、乾ききっていた瞳が最愛の妹の姿を捉えると、枯れたはずの涙が洪水のように溢れ出す。
その涙は、誘拐されてから流し続けてきた、恐怖と悲しみの涙ではない、暖かい、喜びの涙だった。

「まりさ…! まりさあああ!!!」

「ゆ~! おねえちゃん~! くるしいよ~!」 

れいむがあまりにも激しく擦り寄ってくるので、まりさは少し苦しそうだった。

それでも、嬉しそうに姉の頬を舐めている。ゆっくり姉妹、感動の再会だ。

「ご、ごめんね! つい嬉しくって! これじゃ、ゆっくりできないね!」

「ううん! おねえちゃん、とってもいい匂いがするよ! すっごくゆっくりできるよ!」

自分の行動を恥じて、妹から離れようとするれいむの頬に、まりさは自分の頬をすり寄せる。
いい匂いがするのは当然だ。僕が毎日風呂に入れて、人間用の高級ボディソープで体を洗い。
髪にはリンスまでつけてやっていたのだ。野生のゆっくりの甘ったるいだけの匂いとは大違いだろう。

「本当? うれしいな! まりさにそう言って貰えるのが、一番うれしいよ!」

ニコニコと笑って、ぴょんぴょん飛び跳ねるれいむ。すっかり元気を取り戻したようだ。
さて、そろそろ良いかな。僕は、感涙に咽ぶれいむに優しく語りかける。

「れいむちゃん。君の言うとおり、まりさはとっても可愛いね。だから、ここに連れて来たよ」

「おにいさん、ありがとう! 本当にありがとう!」

れいむは心から幸せそうな顔で、僕に感謝の気持ちを伝えてくる。
おやおや、お礼を言うのは、まだちょっと早いんじゃないかな? 人の話は最後まで聞こうね。

「それじゃ、今からまりさを殺すね」

「うん! そうだね! ………え?」

幸せな表情のまま固まるれいむ。その姿は、まるで縁起の良い置物のようだ。

「どうし…て?」

「どうしてって、さっき、部屋を出る前にそう言ったじゃない」

「で、でも…まりさの事、可愛いって…」

「そうだね。殺したいくらい可愛いね」

ぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶる

僕の足にも振動が伝わってきそうなほど強く震えるれいむ。小さな歯が、ガチガチと音を立てる。
そして、先程まで幸福な涙を流していた瞳からは、とめどなく悲涙が流れ落ちていた。
良い顔だ。すごく可愛いよ。れいむちゃん。

「ゆ~ そんなに褒められたら、まりさ、はずかしいよ~」

まりさは、僕とれいむのやり取りを、騒ぎもせず聞いていた。
その表情には危機感のかけらもない。それどころか、先程から可愛い可愛いと言われて、照れていた。
この部屋まで自分を優しく抱っこして連れて来た人間が、酷い事をするはずがない、と思っているのだろう。

六日前の僕なら、甘ったれた考え方のまりさを不快に感じただろうが、
今の僕は、まりさのそんな子供っぽい所を愛おしく思った。

純粋で、とっても可愛いまりさ。大好きだよ、殺したいくらいね。
僕がゆっくりとまりさに手を伸ばすのを見て、れいむが絶叫する。

「まりさあああ!!! 逃げてえええ!!!」

「ゆゆっ!?」

さすがのまりさも、れいむの悲鳴にただならぬものを感じたのか、素早く僕の手を逃れる。
そして、そのまま部屋の隅に置いてある、小さなベッドの下に隠れてしまった。
なるほど、れいむが自慢するだけの事はある。まるでウサギのようなすばしっこさだ。

「すごいなあ。これなら確かに、れみりゃからも逃げ切れそうだね」

僕はそう言いながら、れいむに食べさせたショートケーキの残りが乗っているガラステーブルに向かう。
まりさにケーキをご馳走する為ではない。さっき使ったケーキナイフを手に取るためだ。
長さ30cm程度の鋭い刃物。甘いお菓子を切断する為だけに生まれた道具。
ゆっくりを傷つけるのに、これほど適した物が他にあるだろうか。

「まりさ! 隠れててもすぐに捕まっちゃうよ! もっと動きやすい所にいないとだめだよ!」

れいむがまりさに向かって、実に適切な助言をする。
その通りだった。ただ怯えて隠れているだけなら簡単に捕まえる事が出来るが、
あの俊敏さで逃げ回られたら、狭い部屋の中とはいえ、捕獲するのは容易ではないだろう。
れいむの聡明さに、今更ながら感服する。だが、まりさの知能ではその作戦を理解する事は出来なかったようだ。

「だいじょうぶだよ! おねえちゃん! ここなら、体の大きなおにいさんは入ってこれないよ!」

まりさは自信満々にそう言い放つ。まりさが隠れている場所は、
僕がれいむのために用意した、1平方メートルの広さの、ゆっくり専用ベッドの下だった。
そこには、丁度まりさ一匹が収まるくらいの隙間があった。

「なるほど、確かに僕の体じゃそこには入れないね。うーん、これは困ったぞ」

僕は、わざとらしく困った振りをしながら、まりさの元に近づいていく。
その様子を見ていたれいむが、すごい剣幕でまりさを怒鳴る。

「まりさ! 急いでそこから出て! そこにいちゃだめえ!」

そんなれいむの必死な姿とは正反対に、まりさは何故姉がそんなに焦っているのか分からない、といった顔だった。
僕が『僕の体じゃそこには入れない』と言った事で、ベッドの下は安全地帯だと信じきっているのだろう。
馬鹿だなあ。でも、そんな所も可愛いね。そう思いながら、僕はベッドの下に左腕を入れて、まりさの体をしっかりと掴む。

「つかまえた」

「ど、どうしてぇぇぇええええ!? おにいさんは、ここには入れないのにぃぃぃぃいいいい!!!!」

そう、確かに僕の体はベッドの下には入らない。
だが、腕だけなら別だ。人間用の大きなベッドならともかく、
ゆっくり用の小さなベッドの下なら、まりさがどこに隠れていようと、掴む事ができる。

僕はまりさを引きずり出すと、その体を胸の前に持ってきて、そのままベッドの上に腰を下ろす。
そして、右手に握り締めたケーキナイフを
大げさに振りかぶり、少し待つ。
このまま振り下ろしてもつまらないからだ。

「まりさを放してぇぇぇぇぇぇええええ!!!!」

ほら来た。人間には決して敵わないと知りながらも、
妹を助けるために命がけで僕に向かってくる、優しいお姉さん。
すごいね、この六日間、怯えてばかりだった君が、妹のためになら、そんなにも強くなれるんだね。

れいむは丁度僕の膝の辺りに体当たりしようとしていたので、僕は閉じていた足を急に開く。
すると、突然攻撃目標を失ったれいむは、体当たりの勢いを止められず、僕の股の間に飛び込んでくる。
その瞬間、僕は両足の太ももを勢い良く閉じ、れいむの顔を挟み込む。

れいむは、まりさを見上げるような格好で僕の股ぐらに固定される。
これから始まるショーの、最高の特等席だ。

「ゆぐぅっ! …ま、まりさを放し…て…びぷっ!」

「やめでえ゙え゙え゙!! お゙に゙い゙ざあ゙んん!!! お゙ね゙え゙ぢゃんをい゙じめ゙ないでえ゙え゙え゙!!!!」

僕の太ももに強く圧迫され、苦しそうに餡子を吐き出しながらも、妹の身を案じるれいむ。
ナイフを突きつけられ、恐怖に震えながらも、姉の為に涙を流すまりさ。
最高だ。
最高のゆっくり姉妹だ。内臓が燃えるような興奮。先程から、僕の陰茎は痛いほどに怒張していた。

僕は、まりさの顔をれいむにくっつけてやる。そして、お菓子を切り刻むという宿命を果たす為に、
先程から出番を待っていたであろうケーキナイフを、まりさの右側頭部に思い切り差し込む。

「ゆ゙ぎゅぅぁぁぁあ゙ぁあ゙あ゙あ゙っぁあ゙ぁぁぁあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!!!」

「まりさ!!!!!! まりさあ!!!!!!! まりさぁぁぁああああ!!!!!!!!!!!」

心地よい旋律が耳に染み渡る。僕は生まれてから今日まで、こんなにも素晴らしい音楽を聴いたことがない。
姉の絶望と悲しみ、妹の苦痛と恐怖が絶妙に絡み合う、究極のアンサンブル。れいむとまりさは最高の楽器だった。

「まりさ、痛い? ふふっ、ごめんね、痛いに決まってるよね。ナイフが体に刺さってるんだものね」

激痛に身を震わせるまりさにそう言って、僕は小さく笑う。
そして、より美しい旋律を生み出すため、
右手の調律棒をグリグリと回し、まりさの体内の餡子を引っ掻き回す。

「い゙だ、い゙だい゙ぃい゙ぃっ! い゙ぢゅあ゙い゙い゙ぃぃっ!! お゙ね゙え゙ぢゃんだずげでぇえ゙ぇっ!!!」

「やめて! お兄さん、やめてえ! まりさ、痛がってる!! とっても痛がってるからあああああ!!!」

僕は、ゆっくり姉妹の悲鳴にうっとりとしながら、
まりさの頭に突き刺さったケーキナイフをじわじわと引き抜いてゆく。
まるで、ナメクジが這うような、遅鈍な動きで。

「ぐぎゅ゙ぐあ゙ぁぁぁあ゙あ゙あ゙ぁぁあ゙あ゙あ゙あ゙!!!!! ぐがぐぐぐぐゔががががが!!!!!!!」

「お兄さん!!! そんなにゆっくりしないでえ!!!! もっと速く抜いてあげてぇぇえええ!!!!!」

れいむの哀訴を無視して、僕はナイフを引き抜く手をピタリと止める。
そして、父親が娘に語りかけるように、優しく声を掛ける。

「れいむちゃん、悲しい? 悲しいよねえ。可愛い可愛いまりさが、目の前で苦しんでるんだから」

そこまで言って、半分以上抜けていたナイフを、再びまりさの中にぶち込む。

「えががががあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っぁあ゙ぁぁぁぁあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁぁぁぁあ゙あ゙あ゙!!!!!!!」

「まりさぁぁぁぁあああ!!! もうやだぁ!!!!!! やだああぁぁぁぁぁああああ!!!!!!!」

僕の呼吸は、体内を駆け巡る途方も無い快楽により、突進寸前の猛牛そっくりに荒くなっていた。
脳味噌が沸騰しているかのような錯覚を受ける程の、異常な陶酔感。
知らなかった。世の中に、こんなにも気持ちの良い事があるなんて。

もう、長く楽しむために手心を加えて痛めつける、なんて事を考える余裕は無かった。
ただ、めくるめく喜びを得るため、狂ったようにまりさの顔をメッタ刺しにする。

「ゆ゙ぎぃっ! ぐぎゃあ゙っ! や、やめ…べっ! げぼぉっ! もう、や゙め゙、ぶべぇっ! や゙…め゙…」

「ああああぁぁぁぁ…。まりさのあんこがなくなっちゃう…。このままじゃ、なくなっちゃうよおぉぉぉ…」

傷口から餡子がだくだくと流れ出し、まりさの瞳から、生命の輝きが消失していく。
れいむは、まりさの口から吐血のように吹き出される餡子を全身に浴びながらも、
自分の顔についた餡子を舌で掻き集めて、まりさの口に戻そうとしている。だが、それは無駄な努力だった。

やがて、まりさの顔色は白蝋のようになり、もちもちとしていた皮は、ほとんど弾力を失っていた。
死の一歩手前、といった所だろうか。僕は、最高の絶頂を迎えるために、
最後に残った理性で、ナイフを振り下ろす腕を止める。

「まりさ、お別れだよ。最後に、お姉ちゃんに言いたい事はないかい?」

「ゆ゙…ゆ゙ぅ…お゙わ…がれ…」

まりさは、れいむのように賢くない。
だが、さすがにもう自分が助からない事は分かるのだろう。
そして、今を逃せば、もう姉と話す事が出来る機会は二度とやってこない、という事も。

「お゙ね゙…お゙ね゙え゙…ぢゃ…ん…」

真理を悟った聖人のような表情でれいむに語りかけようとする。
だが、『お別れ』と言う言葉を聞いたれいむは、僕の足の間で狂ったように暴れだした。

「だめ!! だめぇぇぇええ!!!!! ぜったいにだめぇぇぇぇええええええええええ!!!!!」

そんな姉の慟哭が、聞こえているのか、いないのか、
まりさは、感嘆するほど穏やかな面持ちで、れいむに自らの気持ちを伝える。

「お゙…ね゙え゙ぢゃん…だい゙ずぎだよ…まりざが…いなぐなっでも…ゆっぐりじでいっでね…」

「いやだよお! そんな事、言わないでよお! いつまでも、二人でゆっくりしようよお!!」

れいむは、血みどろ…いや、餡子みどろのまりさの顔の傷を懸命に舐めている。
どうやら、怪我の治療をしているつもりらしい。賢いれいむなら、そんなことをしても、
もうまりさの命は助からない事が分かっているだろうに。
いや、賢いからこそ、妹が死んでしまうという事実を認められないのかもしれない。

「上手にお別れが言えたね。えらいよ、まりさ。それじゃあ、さようなら」

僕は柔らかくまりさに微笑むと、その眉間にナイフを突き刺す。
そして、人間で言うならば心臓にあたるであろう、餡子の中心部分をえぐった。
すでに死にかけだったまりさは、叫ぶ事もなく、静かにその生涯を終えた。
そんな、物言わぬまりさの代わりに、れいむが今日一番の叫び声を上げる。

「ま゙ぁり゙ぃざぁぁぁぁっあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っあ゙ゔゔあ゙っぁぁぁあ゙あ゙ぶゅぅゔゔば゙ば゙ば゙あ゙!!!!!!」

凄まじいショックのせいだろう、れいむは大量の餡子をぶちまけながら絶叫する。
そのため、今まで一度もよどむ事の無かった、清流を連想させる程の綺麗な声が、泥水のように濁った。
それは、れいむの生涯で最大の苦しみが訪れた事を知らせるシグナルだった。

その神々しい調べを聞いた瞬間、僕は射精していた。
一度、二度、三度、吐き出された精液が下着を汚していく。今まで経験した事が無い、長い長い絶頂。
全身が痙攣を起こしたように震え、目が霞む。四度、五度、六度、僕は精を放ち続け、七度目の放精で、意識を失った。



どれくらい気を失っていたのだろうか。
朦朧とした意識で目を覚ますと、僕の足元には、ナイフが刺さったままのまりさが転がっていた。
いや、『まりさだったもの』と言った方が適切かもしれない。
なぜなら、その物体は口らしきもの以外は全てズタズタに切り刻まれていて、
餡子と皮のぐちゃぐちゃとした塊になっていたからだ。

れいむは、その『まりさだったもの』の側に寄り添う形で息絶えていた。さっき叫んだ時に、餡子を吐き出しすぎたのだろう。
今日一日だけで、一生分の涙を流しつくしたであろうその顔は、ほとんどの餡子が抜けてしまった事もあって、
さながらエジプトのミイラのようだった。これも、『れいむだったもの』と言った方が適当な気がする。

窓から差し込む血のように真っ赤な夕日が、二匹の死骸を朱色に染め上げていた。
それは、一般的な感性を持つ人が見たならば、思わず嘔吐してしまうような、グロテスクなオブジェ。
でも僕は、そんな『れいむだったもの』と『まりさだったもの』の姿を、世界で最も美しいと感じていた。
そして、『また今日のような素晴らしい快感を味わいたい』と思っていた。



翌日。僕は朝早く起きて、庭にゆっくり姉妹のお墓を作ってあげた。
墓標は、まりさの命を奪ったケーキナイフだ。なかなか、しゃれた墓になった。
さようなら、れいむとまりさ。天国で、ゆっくりしてね。

お墓を作り終えると、僕はそのまま庭でデッキチェアに腰掛けた。
今日、仕事は休みなので、ここで日光を浴びながら、のんびり過ごす事にしよう。
一度、家の中に戻り、紅茶を淹れ、昨日の残りのショートケーキと一緒に庭のテーブルへ運ぶ。

すると、その良い香りに誘われたのか、一匹のゆっくりが庭にやって来た。
金髪に、赤いヘアバンドのゆっくり。これは、なんて種類だったかな。そうだ、ゆっくりありすだ。

ありすは、しゃなりしゃなりと、気取ったような歩き方で僕の側までやってきた。

変わったゆっくりだな。そう思っていると、
ありすは、体を半分だけこっちに向けて、横目でちらっと僕の顔を見てこう言った。

「おにいさん! ど、どうしてもって言うなら、ゆっくりしてあげてもいいわよ!」

ありすの珍妙な態度に、僕は思わず吹き出した。こういうの、なんて言ったかな。
ツンドラ? いや、ちょっと違うな…。ええと…そうそう『ツンデレ』だ。
『ゆっくりしていってね!』と言う、お決まりの台詞が来ると思っていただけに、余計に可笑しかった。

「な、なに笑ってるの!? しつれいなおにいさんね!」

クスクスと笑う僕を見て、ありすはぷくっと頬を膨らませる。
だが、ここから出て行く様子は無く、庭の花壇や池を順番に見て回り、
『なかなかとかいてきね』などと言って、うんうんと頷いていた。
やがて、ゆっくり姉妹のお墓の前に来ると、不思議そうな声をあげる。

「おにいさん、これはなあに? これだけ、ぜんぜんとかいてきじゃないわ!」

それはそうだろう、丁寧に手入れされた花壇や池と違って、
盛り上がった土にナイフが突き刺さってるだけなのだから。
僕は気に入っているけどね。

「それはね、僕の大好きだった、友達のれいむとまりさのお墓だよ」

その言葉を聞いた途端、ありすは狼狽した様子で僕の元に駆け寄ってくる。

「ご、ごめんなさい! ありす、しらなかったの!」

ありすは泣きそうな顔で、僕の足に頬を擦り付けながら謝罪の意を表している。
ゆっくり姉妹のお墓を『全然、都会的じゃない』と言ってしまった事で、
僕の心を傷つけたと思っているらしい。

気取り屋だが、根は素直で優しいゆっくりのようだ。僕は、ありすの事を可愛いと思った。
その途端、心の中でサディズティックな欲望が膨らんでいく。

『可愛いありすを、ズタボロになるまで苦しめて殺したい』

我慢は出来なかったし、する必要も無かった。
僕は申し訳なさそうにしているありすを慰めるように、明るく笑いながら話しかける。

「ははは、大丈夫。気にしなくて良いよ。僕が殺したんだから」

「よかった! それじゃ、おわびにありすがともだちになって………ゆ? ころ、ころしたって? ゆ? ゆ?」

ありすは最初、僕の発言の異常さに気がつかなかったようだった。
それよりも、先程の自分の無神経な発言を僕が気にしていない事が分かり、ほっと息を吐いていた。
だが、その息を吐き終えて、楽しそうに話し始めた時、僕がおかしなことを言った事に気がついたらしい。
ありすの頭には、さかんにクエスチョンマークが浮かんだり消えたりしていた。

僕はその目障りな疑問符を吹き飛ばすために、ゆっくり姉妹のお墓から墓標であるケーキナイフを引き抜く。
刃には、まりさの餡子と土が血糊のようにべっとりとこびりついていた。

「だから、僕がれいむとまりさを殺したんだよ、このナイフで切り刻んでね。あ、れいむは違うな。あれは自然死だ」

しゃれたジョークでも飛ばしたかのようにケラケラと笑いながら、
僕はナイフの腹でありすの右の頬をぺたぺたと叩く。
ありすの桜色の頬が、こげ茶色に汚れていった。

「ど、どうして…? れいむとまりさ、悪い子だったの?」

『そうだよ、ものすごく悪い子達だったからおしおきしたんだよ』とでも言えば、納得するのかな。
でも、違うんだよ。れいむもまりさも、本当に良い子達だったんだよ。二匹の名誉のためにも、嘘はつけないよね。

「ううん、とっても良い子だったよ。それに、二匹ともすごく可愛かったよ」

今度はありすの左の頬をナイフの腹でぴたぴたと叩く。
鏡を見なくても、自分がいやらしい笑みを浮かべている事が分かる。

「じゃ、じゃあ…どうして? どうしてえ? ありす、わからないよお…」

ありすは大きな瞳からぽろぽろと涙をこぼしながら、小さな唇を、わなわなと震わせている。
まったく、たまらない顔をする。可愛いよ、ありすちゃん。

「僕はね、可愛いゆっくりを見ると殺さずにはいられないんだ。れいむとまりさも可愛かったけど、ありすちゃんもすごく可愛いね」

僕はそう言うと、餡子と土で汚れてしまったありすの頬をそっと撫でる。
手のひらから、震えが伝わってくる。僕が怖いんだね。そりゃ、怖いよねえ。

「いや…いやぁ…」

「ふふっ、少し前までは、もう少しまともな人間だったんだけどね」

恐怖のためだろう、ありすは金縛りにあったように動かなかった。
何の警戒もせずに、人間のテリトリーに入ってくるくらいだ、
生まれてからこの方、これほど恐ろしい思いをした事など無かったに違いない。
僕は、難なくありすを捕まえると、家の扉を開けて、乱暴に中へ放り込む。

「ゆきゃっ!」

ありすは可愛い悲鳴を上げて、廊下に倒れこむ。

「ありすちゃん、僕とかくれんぼして遊ぼうよ。今から百数える間に、好きな所に隠れてね」

僕は、倒れたままのありすに優しく微笑むが、ありすはいやいやと首を振るだけだった。

「やだ! やだあ!! もうおうちかえるう!!!」

「隠れないなら、今すぐ殺しちゃうよ」

『殺す』という言葉に、ビクリと反応するありす。

「ゆっ!? か、かくれんぼしたら、ありすのこと、ころさないの?」

 ありすはおずおずと僕に尋ねてくる。

「ううん、見つけたら殺すよ。だから、よく考えて上手に隠れてね」

「そんなのおかしいよぉぉぉぉおおおお!!!、ちっともとかいてきじゃないよぉぉぉぉおおおお!!!!」

「それじゃ、スタート。いーち、にーい、さーん、しーい…」

「だめぇぇぇぇええええええ!!!!! かぞえないでぇぇぇぇぇえええええええ!!」

ありすは僕の足にすがりついて、
死のゲームへのカウントダウンを止めさせようとする。

その必死な姿はどれだけ見ていても飽きないが、
このままではゲームにならないので、家の中に蹴飛ばして扉を閉める。
ありすはそれでも扉の向こうで『やめて、やめて』と喚いていたので、少し脅かしてやる事にする。

「百まで数え終わった時にまだそこにいたら、かくれんぼじゃなくて鬼ごっこになっちゃうよ?」

そう言ってから、僕は再び数字を数え始めた。ありす種はゆっくりのなかでは比較的賢い種類らしい。
ありすは、鬼ごっこよりはかくれんぼの方が、まだ生き残る可能性があると思ったのだろう、
わんわんと泣きながらも、家の奥に向かったようだった。僕は遠ざかるありすの泣き声を聞きながら、
自分でもうるさいと思うほどにゲラゲラ笑っていた。

僕の心は、複雑に絡み合う知恵の輪のように、グニャグニャに歪んでいた。
れいむとまりさに出会わなければ、こうはならなかっただろうか。

もしくは、まりさが最初に庭に入ってきた時、優しくしていれば、
今頃、れいむとまりさ、それにありすも一緒に、楽しくお茶でも飲みながら過ごしていたのだろうか。

『ゆぅ~! おねえちゃん! このケーキ、とってもおいしいよ!』

『まりさ! たべながらお喋りするのは、お行儀が悪いよ!』

『まりさはいなかものね! とかいはのありすは、しずかに紅茶をいただくわ!』

ふと、脳裏に楽しげな情景が浮かんで、なんだか悲しい気持ちになった。
そういえば、どうしてれいむをさらったんだっけ。最初は殺すつもりでは無かったはずだ。
何か、別の目的があった気がする。少なくとも、虐待するよりは、まっとうな目的が。

まあ、そんな事はどうでもいいか。これから圧倒的な興奮と快感が味わえるのだ。
正常な人間ならば生涯体験する事の無い、狂人だけが味わえる異常快楽。
歪んだ心というのも、まんざら悪いものではない。

「きゅーじゅういーち、きゅーじゅうに、きゅーじゅうさーん、きゅーじゅうしーい…」

さあ、もうすぐ百だ。ありすちゃん、上手く隠れられたかな。せいぜい楽しませてね。
僕はそう思いながら、ゆっくり姉妹に出会った一週間前のように、秋の空を仰ぎ見る。
高い高い青空に浮かぶ、ふかふかの絨毯のようなうろこ雲は、相変わらずとても美しかった。



おわり



作:ちはる


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年09月27日 16:28
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。