「そこの穴の中のまりさ5匹と親まりさ、どっちが死ぬか選べ」
赤ちゃんゲスまりさが潰された後も恐怖の二択地獄は続いていました。
今度天秤にかけられたのは赤ちゃん5匹の命と親まりさ1匹の命。数で言えば当然赤ちゃんまりさ5匹のほうが大事なのですが・・・
「ま、まりさをつぶしてね!」
そう判断したまりさは一歩踏み出し、自らの命を差し出そうとします。
けれど、れいむはそれに反対しました。
「ゆゆっ、だめだよまりさ!そんなことしたらあかちゃんたちがゆっくりできないよ!」
そう、それでなくても子どもの数が多いのに冬真っ盛りに巣を失った家族が片親まで失ってしまうと下手をすれば赤ちゃんを全滅させてしまう恐れがあるのです。
それに、片親を失った状態で5匹のまりさが助かったとしても、れいむ一匹で育てられるはずもありません。
「・・・ゆぅ。わかってるよ!でもまりさはあかちゃんをたすけたいんだよ!」
「ゆゆっ!たすけてもしんじゃったらいみないよ!」
さっきの赤ちゃんゲスまりさのようにどうでもいい選択やどっちでも大差ないような選択なら即決も出来ますが、今回ばかりはそうも行きません。
「・・・れいむ」
一向に譲ろうとしないれいむのそばへ歩み寄ったまりさはおもむろにれいむにちゅっちゅをし、それからこう続けました。
「まりさはれいむをしんじてるよ!だからあかちゃんをたすけたいんだよ!」
信じようが信じまいが無理なものは無理なのですが、そういわれてしまってはれいむは何も言い返せませんでした。
「ゆぅ・・・わかったよ!」
自分が犠牲になる決断を下したまりさは、男性の足元に歩み寄り、目を瞑ります。
そして、その姿を見た男性は相変わらず無感動なままにこう言い放ちました。
「俺に潰されてどこかに捨てられるか、家族に食われるか選べ」
「ゆゆっ!?」
彼の言葉を聞いたまりさは驚いて目を見開き、彼の顔を覗き込みます。
しかし、冗談を言っているような様子は一切なく、相変わらずの無表情でした。
「お、おにーざん、なにいっでるの!?」
「れ、れいぶまりさをだべるごどなんででぎないよ!」
「なら、俺に潰されるんだな?」
男性の言葉に困惑するまりさとれいむを尻目に男性は淡々と話を続けます。
「ゆゆっ!ちがうよ!まりさはれいむにたべられたいよっ!」
「ま、まりぢゃ!なにいっでるのおおおお!?」
まりさの判断はきっと間違っていません。冬の間の食料が雪に閉ざされた巣の中にある以上、どうせ死ぬのなら家族に食べてもらいたいのです。
けれど、れいむの判断も間違っていません。やはり家族を食べるのは気持ち悪いものですし、何より甘くて美味しい同族は麻薬のようなものなのです。
そんなものを自制心の無い赤ちゃんのうちに食べさせてしまったらどうなるか・・・。
「れいむ、おねがいだよ!まりさのいうことをきいてね!」
「でいぶ、ばりしゃをだべだぐないよおおおお!」
感情が高ぶりすぎたれいむはついに泣き出してしまいました。
まりさはそんなれいむの隣に寄り添って舌で涙を拭いてあげています。
「早くしないなら俺が決める」
そして、男性は空気を読む気が全くありません。
結局、家族はまりさを食べることにしました。
「ゅぎぎぎぎ・・・・!」
きつく口を縛って悲鳴を上げないように耐えるまりさ。
「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇ~!」
「しゅごきゅゆっくちできりゅね!」
「おいちいよ!」
「おきゃーしゃんもおいちいよね?」
赤ちゃん達は最初はまりさを食べることに強烈な嫌悪感を示していましたが、一口食べた瞬間にその味の虜になってしまいました。
我先にと夢中になって親であるまりさの皮を食い破って吐き捨て、餡子をなめる4匹の赤ちゃんれいむ。
どうやら、餡子の甘さを知ってしまったこの子達にとって皮は邪魔なもの以外の何者でもないようです。
あまつさえ「これまじゅいよ!いらにゃい!」とか「こんにゃのたべしゃせないでね!」などと文句を言っています。
ちなみに赤ちゃんまりさ達は相変わらず穴の中にいるのでまりさのおこぼれに預かることは出来ません。
「ゆぅ・・・おきゃーしゃん、ごめんにぇ!」
「おきゃーしゃん、ありがちょね!」
一方でさっきの4匹からすこし離れた場所で、感謝の言葉を告げながらまりさを食べる2匹の赤ちゃんれいむがいます。
その子達は皮も残さず食べ、餡子の美味しさ以上に親のやさしさに涙を流して、一口一口噛み締めるようにまりさの食べていきます。
「「む~ちゃ、む~ちゃ・・・ちあわちぇ~!」」
そして4匹の赤ちゃんれいむ達を複雑な表情で見守る親れいむもまた、まりさにお礼を言いながらゆっくりとまりさを食べていました。
「まりさ、れいむをしあわせにしてくれてありがとう・・・」
「むーしゃ、むーしゃ・・・しあわせ~!」
けれど、口を開けば悲鳴を上げてしまいそうなまりさが返事をすることはありません。
気がつけば、まりさの体の5割が家族のぽんぽんに収まっていて、苦悶の表情を浮かべたまりさの口からは痛みを必死に堪えるうめき声も聞こえなくなっていました。
「これでいんんでぢょ!?」
双眸からぼろぼろと涙を零しているれいむはもはや帽子だけになってしまったまりさを指しながら、男性にそう告げます。
そして、その言葉を受けた男性は即座に次の二択を迫りました。
「どっちを殺すか選べ」
彼の両手にはさっきまりさが自らの命を捨てて守った赤ちゃんまりさが1匹ずつ。
右手には自己犠牲の精神を持ち合わせた立派な子が、左手には見捨てられたときにまりさやれいむを罵倒していた子が収まっています。
「ゆっ!どほぢでそんなごどいうのおおおおおお!」
流石のれいむも、いや優秀なこのれいむだからこそこの二択は絶望的でした。
当然でしょう。れいむにしてみれば最愛のパートナーの悲壮な決意を踏みにじられたも同然なのですから。
「どっちを殺すか選べ!」
しかし、男性は何の感動もなくただルーチンワークをこなすかのようにそう問うてきます。
「でいぶもおおごっだよ!」
我慢の限界に達したれいむは男性に体当たりを仕掛けます。しかし、どんなに頑張っても人間には全く歯が立ちません。
「なら、俺が決める」
そう呟いた男性は右手にすこしずつ力を加えていきました。
「いちゃいよおおお!やめちぇええええええええええ!」
ぼろぼろと大粒の涙を零しながら、か弱い力で男の手から抜け出そうとする赤ちゃんまりさ。
徐々に餡子が圧迫され、顔は真っ青でありながらも真っ赤という不思議な状態になり、今にも餡子を噴き出してしまいそうです。
一方、左手の赤ちゃんまりさは安堵のため息をつくと、右手のまりさに向かって「まりしゃのためにゆっきゅちちんでね!」と満面の笑みで吐き捨てました。
「おきゃーぢゃん、たしゅけてえええええええ!」
ぷちっ!というかわいらしい破裂音が聞こえたかと思うと、男性の右手から少量の餡子が漏れ出してきます。
「やべろおおおおおお!でいぶのあがぢゃあああああああん!」
れいむは我が子の助けに応じて必死に男性に体当たりを続けていますが、男性はぶつかっていることに気づいていないんじゃないかと思うほど平然としています。
「ゆぅぅうううう・・・もっちょ、ゆっくちちたかっちゃよ・・・」
やがて、そんな断末魔を残して健気な赤ちゃんまりさは親まりさの元へと旅立っていきました。
「ゆうううううう!でいぶのあがぢゃんがああああああああああああ!」
男性の手から落ちてきた赤ちゃんまりさだったものの前で泣き崩れるれいむ。
そんな親の周りに赤ちゃんれいむ達も集まってきます。そして「まりしゃ・・・てんごきゅでゆっきゅちちてね!」や「まりしゃのぶんもゆっきゅちするよ!」と元気良く言いました。
ただし、それはさっき餡子の味におぼれなかった2匹の話。ほかの4匹はまたしても我先にと赤ちゃんまりさの餡子を貪り食っていました。
「ゆゆ゛っ!?ゆっぐぢやべでね!!」
れいむはそんな風に赤ちゃんまりさの餡子を食い漁る赤ちゃんれいむ達を弾き飛ばしました。
けれど、赤ちゃんれいむ達はどうして怒られているのか理解できず、母親に抗議します。
「どほぢでこんにゃこちゅしゅるにょおおおおおお!」
「おきゃーしゃんのばきゃあああああああああ!」
「れいみゅあまあまたべちゃいよ~」
「れいみゅたちをゆっきゅちしゃ・・・ゆっ?」
最後に文句を言おうとした赤ちゃんれいむの言葉は突然伸びてきた男性の手によってさえぎられ、それと同時に一家の注意が男性のほうに戻りました。
「右手の子ども(赤れいむ)と左手の子ども(赤まりさ)、どっちを潰すか選べ」
淡々と告げる男性。
「ゆーっ!れいみゅちにたくにゃいよおおおおおおお!」
「まりしゃだってちにたくないよおおおおおお!」
手の中で泣き叫ぶ赤ちゃんたち。
そして、二択を迫られたれいむは・・・
「みぎてのこをつぶしてね!」
あっさりと右手の赤ちゃんれいむを切り捨てた。
「どほぢでしょんなこちょいうにょおおおおおおおお!!」
「しまいをたべるようなこはゆっくりしないでしんでね!」
切り捨てられた赤ちゃんれいむは当然抗議しますが、れいむはそれをたった一言で一蹴してしまいます。
そしてその言葉通り、赤はんれいむはあっという間に潰されました。
潰れた赤ちゃんれいむの亡骸を適当に放り捨てた男性は穴の中から健気なまりさを取り出すとさっきと同じように右手でしっかり掴み、二択を迫ります。
「どっちのまりさを潰すか選べ」
「ひだりのこをつぶしてね!」
れいむはすぐに結論を出しました。どんなに必死になって抵抗しても人間には勝てない。
やはり最初にまりさと相談したときに出した結論どおり、この人間が飽きるのを待つしか道は無いのだ。
それなら、少しでも素直でゆっくりできるいい子を生き延びさせよう、と。
それがれいむに出来るたった一つのことなのです。
「おがあしゃああああああああん!どほぢでえええええええ!」
「れいむにわるぐちいうゆっくりできないこはしんでね!」
当然のように抗議する赤ちゃんまりさにれいむは容赦ない言葉を浴びせます。
若干自分の勝手が混じっていたような気もしますが、より良い子を生かすためのれいむは非情な決断を下すしかありません。
「このれいむとまりさどっちを潰すか選べ」
またしても二択。
右手にはさっき赤ちゃんまりさの死体に飛びついた赤ちゃんれいむが、左手には健気な赤ちゃんまりさが握られています。
「れいむをつぶしてね!」
「どほぢで「しまいをたべるこはゆっくりしないでしんでね!」
今度は最後まで言い切らせる暇もなく、死刑宣告をしました。
そしてその言葉通り、赤ちゃんれいむはすぐに潰されてしまいました。
「れいみゅ~・・・どほぢよおおおおお!」
「れいみゅもまりしゃをたべぢゃっだよおおおお!」
そう、躊躇うことなく自分の赤ちゃんを切り捨てていく母親が何を基準にして選別しているか気づいてしまったのです。
「右のまりさと左のまりさどちらを潰すか選べ」
「みぎのまりさをつぶしてね!」
「ゆぎゅううううううううううう!ゆぎゃっ!!?」
今度潰されたのも先ほど親れいむに暴言を吐いたまりさでした。
今や残っているのは暴言を吐いたまりさが1匹と健気なまりさが1匹、死体を食べたれいむが2匹と健気なれいむが2匹。
健気な赤ちゃん達は親れいむの周りや男性の手の中で「おやーしゃん、やめちぇえええ!」とか「まりしゃをつびゅしてええええ!」と叫んでいますが、その子達はきっと無事でしょう。
もうすぐ自分達が潰される。そう思うと震えが止まりませんでした。
「ねえ、れいみゅ!あのこたちのりぼんをれいみゅたちのものにちようよ!」
「ゆっ!だみぇだよ!そんなことちたらゆっくちできないよ!」
「どうせいまのままでもゆっくちできにゃいよ!」
そう吐き捨てた赤ちゃんれいむは一人、親の周りで泣いている赤ちゃんれいむの背後へ忍び寄っていきました。
そして、その子のリボンを奪い取ろうとした瞬間・・・男性の手につかまってしまいました。
「このれいむとまりさどっちを潰すか選べ」
「おきゃーしゃん、れいみゅをたしゅけてね!」
「おやーしゃん、まりしゃをつぶちてね!」
「れいむをつぶしてね!」
「どほぢで「しまいをたべるようなことはゆっぐぢでぎないよ!」
このやり取りも妙にリズミカルになってきました。親れいむもなんだかノリノリです。
ぷちっ、と言う軽快な音ともに赤ちゃんれいむは一瞬で物言わぬ饅頭になってしまいました。
そうして、親れいむに見捨てられる条件を兼ね備えているゆっくりは気がつけばれいむ1匹になっていました。
「れいむとまりさどっちを潰すか選べ」
「おきゃーしゃん、まりしゃをつぶちてね!」
「おきゃーしゃん!れいみゅを・・・れいみゅをつぶちてね!」
「ゆゆっ!?」
それは赤ちゃんれいむの賭けでした。健気な子が生かされるのなら自分も健気に振舞えば助かるのではないか、そう考えた末の言葉でした。
「それじゃあ、まりさ・・・」
「ゆゆっ!れいみゅたしゅかったよ!まりしゃはゆっくちちんでね!」
「・・・じゃなくてれいむをつぶしてね!」
「「ゆゆっ!?どほぢでそんなごどいうのおおおおおお!!」」
赤ちゃんれいむと赤ちゃんまりさは全く同時にその言葉を口にしましたが、その意図が全く異なります。
「れいみゅいいこなのにぃぃぃぃぃ!!」
その叫びを断末魔に赤ちゃんれいむはどこか遠くへ旅立っていきました。
その後、男性は親れいむと赤ちゃんれいむ2匹、赤ちゃんまりさ1匹を残して立ち去りました。
残された4匹は何とか力を合わせて簡素な巣を作り、親れいむが犠牲になることで食料の問題を解決しました。
春になると生き残った3匹の子ども達が元気に野山を駆け回りました。
両親の知り合いに助けられながら、虫を取り、草花を食み、すくすくと大きくなっていきました。
やがて夏になり、独り立ちして各々別の集落の一員となった子ども達は生来の仲間思いのおかげで集落に上手く溶け込むことが出来ました。
そして、2度目の冬。
巣にたくさんの食料を集めたまりさはパートナーのれいむと7匹の子どもに囲まれてとてもゆっくりしていました。
そこに、どこかで聞いたことのある言葉が響き渡りました。
「巣の中に大量の雪を放り込まれるのと、巣から出てくるのとどっちがいいか選べ」
‐‐‐あとがき‐‐‐
男の目的はゲスだけを間引くことじゃないかと思う
byゆっくりボールマン
最終更新:2008年09月16日 00:26