レミリア×ゆっくり系2 レミリアと森のゆっくり 中編_2


 人間が吸血鬼となる場合、必要な要件としては"吸血"と"受血"の二つがある。
 血を吸われ、血を与えられることによって、人間は完全な吸血鬼となる。
 どちらか片方の場合は、不完全な吸血鬼となり、人間でもなくなる。

 もっとも、これについては分量や回数だとか手順、タイミングや月齢の影響とか、色々
な関係要素があるため、ちょっと舐めただけ、ちょっと吸われただけでは、別に吸血鬼と
ならない場合もあるが。

 とりあえず、ふらんは血を飲んだ事によって、苦しみもがいている。
 おそらく、何らかの変化が現れるであろう。
 どこにどのように作用して、どうなるのかはわからないが。

「しかし……自分の血を飲んだやつが、こうやって苦しんでるのを見るのって、複雑な気
分ね。まるで私の血が毒みたいじゃない」
 レミリアはなんとなく釈然としない気分である。
 美味しい美味しいと涙を流して喜ばれても微妙だが、苦しまれるのもそれはそれで傷つ
く。

 そんなレミリアの複雑な感情はともかくとして、ふらんの状態は徐々に変化してゆく。
 失われた、両腕と両脚、そして両翼と左目から、紅い煙が出て来ていた。

「がぁぁぁっ!? う゛ぁ? な゛……な、な゛に゛……!?」
 自分が何か別のものにされてゆく感覚に、ふらんは怯えた。
 その顔には、紛れもない恐怖と言う感情が見える。

 ふらん種は、そんな感情を表現できなかったはずなのに、表現できるように変化してい
た。
 それは些細な変化であったが、これから起こる大きな変化の前触れであった。

「あら、手足が生えてきたわね……へー、なかなかの再生力じゃないの」
 失う前よりも、やや長い腕と脚がふらんに生えたのを見て、レミリアは感心したように
言った。
 無くしたパーツを再生させる場面は、吸血鬼にとってそれほど珍しい見せ物ではないが、
ほとんど一瞬のうちに復活させたのは少し凄いと思った。

「え゛っ!? う、うで……あし……な、なんで……?
 再生能力があるとは言っても、こんな一瞬で再生するような力を、ふらん種は持ってい
ない。
 手足が蘇ったのは嬉しいが、それ以上に驚きの方が上回っている。

 いつの間にか苦しみと痛みは和らぎ、地面の上でふらんは大の字に寝そべっていた。
「あぐっ、せ、せなか……?」
 むずむずとした感触に慌てて身を起こす。
 両翼もまた手足と同じように再生していた。

「ふふっ、さすが私の血ね……効果抜群じゃない。蓬莱の薬なんかより、すごいわ」
 目で見てわかる劇的な効果に、彼女は満足した。

「あっ……わ、わたし……ど、どうしちゃった、の……これ、は?」
 ふらんは呆然と座り込んでいた。
 いつの間にか左目も再生し、両目で自分の手をじっと見ている。

 変化と言えるほどの変化は、外見的にはあまりない。
 失われたパーツが、物凄い速度で再生したぐらいである。
 腕と脚の長さは少しだけ伸びたが、翼と左目は復活しただけで特に変わっていない。

「おい、おまえ……私が、わかるか?」
 外見的な状態変化が一段落したのを見届けてから、レミリアはおもむろに話しかけた。

「れ、れみりあ……え? なんで、わたし……どうして?」
 知らないはずの人名が口から出た。
 ゆっくりれみりゃは知っているが、吸血鬼であるレミリアを、ふらんは知らなかった。
 だが、今は知っている。いつの間にか知識として刻まれていた。

「ふむ、呼び捨てか。まぁ、それはいいわ……おい」
 レミリアはふらんに視線を合わせた。
 想像通りならば、この者はそれだけでもう逆らえないはずである。

「あ……う、え……う、うそ……な、なんで……?」
 身体が動かない。
 声は出せるし目も見える、音も聞こえるが、身体はほとんど動かせない。

「効いているようね……あははっ、あんたは馬鹿よ。不用意に吸血鬼の血を飲んだりした
から、こうなったのよ」
 吸血鬼に血を吸われた者、吸血鬼の血を飲んだ者は──その吸血鬼の下僕となる。
 本人の意志に依ってではなく、血のもたらす呪いとでも言おうか、主の意のままに従わ
される存在と化す。

「今さら後悔しても遅いわ。おまえは、もう私には逆らえない──強大な力を得た代わり
に、私の人形となったのよ……あははははっ」
 力と恐怖でこの者を屈服させることは出来なかったが、ゆっくりを下僕にした吸血鬼な
どと言う者は、おそらく有史以来初めてであろう。

 非常に愉快な気分となり、レミリアは笑った。
 レミリアの幼い精神からすると、一番乗りは偉いのである。
 それが壮大であればあるほど、同時に下らなければ下らないほど、より偉大だと思って
いる。

 何故発生したのか、どうして生命があるのかもわからないような、不自然極まりない生
き物を、血を与えた下僕とするなど、どんな狂った吸血鬼でも成し得ない、偉大にして愚
かなる酔狂の極みだと、レミリアは思った。

「うっ……あ、あぁっ……う、うそ! ゆ、ゆっくりしね! ゆっくりしね!」
 目の前の敵──今は己の支配者となった者が言っていることは、ウソではないとわかっ
ている。
 わかっていても、口に出して否定したかった。

 血によって変化を強いられたのは、外見よりもむしろ内面である。
 性格や今までの記憶はそのままであるが、新たに付け加えられた要素が多い。

 一人称が本人も気付かないうちに「ふらん」から「わたし」に変わり、口調や言葉遣い
も本物のフランドールに近くなった。
 語彙も増え、今まで知らなかったはずの知識も増えた。

 性格が同じであっても、知識が増えたために考え方も若干変化している。

 もっとも、まだ言語表現能力は、それほど高く無い。
 語彙と知識が増えたとしても、それはただ言える単語が増えただけである。

 有機的に単語を繋げ会話する能力というものは、他者の話を聞くことと、自ら話すこと
によって洗練され成長する──すなわち経験と学習で伸びる力なのだから、今はまだ未熟
である。

 そして、なによりも大きな変化は、豊富な感情表現が可能になったことと、闘争本能が
薄れたことであろう。

 最早このふらんは、ゆっくりふらんではあるが、ゆっくりふらんではない。
 かと言って、人間でも妖怪でもなく、妖精でもない。
 不完全に吸血鬼化したゆっくりふらん、としか言えない存在である。

「口癖までは変わらないようね……まぁ、いいわ。行動は私の思うがままだけど、言葉と
心はあんたのものでいいわよ」
 いずれ心も私のものにするけどね、とレミリアは口には出さず付け加えた。

「いやっ! そんなのいやだっ! ゆっくりしね! れみりあはゆっくりしね!」
 口調の変化は、すなわち声の出し方の変化でもある。
 今のふらんの声は、以前と比べるとかなり本物のフランドールに似ている。

「あらあら、フランったらお姉様に死ねだなんて、ひどいわ……あははっ」
 もしも本物の妹に言われたら、おそらく二週間ぐらい部屋に閉じこもって泣くほど傷つ
くが、まだ未調教のやんちゃな下僕に言われたのなら、別に腹も立たない。

「さて、それじゃ可愛がってあげるわ……来なさい、フラン!」
 過程については予定とだいぶ違うが、ともかく殺さずに済み、意のままと出来るように
なったのだから、細かいことは気にせず可愛がりに取りかかる。

「え!? いやっ! やだ……ど、どうして……なんで?」
 心が拒否しても、身体は命令に従い勝手に動く。
 ふらんはレミリアに言われるがまま、彼女の目の前まで進んだ。

「なんでって言われてもねぇ……さっき言ったでしょ? 私の血をあんたが飲んだからよ。
自業自得ってやつね……まずは、そうね……私の靴を舐めなさい」
 ふらんの疑問に対して律儀に答えつつ、レミリアは靴へのキスを要求した。
 屈服の儀式としては、まず靴舐めからだろう、と考えているようだ。

「ふっ、ふざけないでよ! な、なんであんたなんかの……いやっ、やだぁっ!」
 口頭で拒絶しても、勝手に身体が動いてしまう。
 こんな事はしたくないと思っていても、ふらんはレミリアの前に跪き、頭を垂れた。

 首に力を入れ頭を上げようとしても上がらない。
 意に反して、どんどん顔はレミリアの足下に近付いてゆく。
 やがて唇が靴に触れる。

「やめてっ! どうして? いやっ! い……う゛ぶっ……うぅっ……」
 唇が触れる寸前まで、ふらんの心は抵抗したが、全く身体は自由にならない。
 口内に広がる土の味と、靴を舐めさせられているという事実が、強い屈辱と悲しみを与
える。

「あははははっ、良い子ね、フランは良い子よ! おいしいでしょ? お姉様の靴は?」
 ふらんの口の中に爪先を突っ込み、顔を上げさせながらレミリアは聞いた。

「ぐがっ……うぅっ……!」
 視線で相手が殺せたら、と思いながら精一杯敵意を込めた目で、ふらんはレミリアを見
る。
 その唇は殺したい相手の靴を咥え、舌は掃除するかの如く靴底を舐めているが。

「いい目ね……その怒りと屈辱に満ちた目、とっても可愛いわよ、フラン」
 最初から素直で従順な者よりも、反抗的な者を堕とす方が楽しい。
 ふらんの目を見ているだけで、背筋がぞくりとするほどの快感を、彼女は感じている。

「ふふっ、靴へのキスはもういいわ。次は……ああ、そうだ! 服を脱ぎなさい。帽子は
そのままでいいから、他は全部脱ぎなさい」
 服を着たままよりも、脱がせた方がより多くの屈辱を与えられるだろう。

「なっ……え、えっち! へんたいっ! ゆっくりしね!」
 もうすでに怒りで赤くなった顔を、羞恥でさらに赤く染め、ふらんはレミリアを罵る。

「好きなだけ吠えていいわよ。逆らえない者が、唯一出来る反抗手段だもんね……それす
ら奪ったら、あんまりにもあんたが哀れだしね。あははははっ」
 試してはいないが、おそらくレミリアが「喋るな」と命ずれば、ふらんは言葉を発する
自由も奪われるだろう。

 だが、あえて発言の自由を残すことで、より強い屈服感を与えられるとともに、慈悲を
かけられてると思わせることも出来る、とレミリアは考えている。

「……っ……!」
 ふらんは口を閉ざした。
 喋らないことで、反抗してやろうと思ったのである。

「本当に反抗的ね。でも楽しみだわ、あんたが自分から私に跪いて、媚びて、慈悲を乞う
姿を見るのが……ふふふっ」
 どれだけの時間と手間がかかるかわからないが、必ずそこまで堕としてみせる気でいる。
 やり遂げた後については、今のところレミリアは全く考えていない。

 喩えて言うならば、新しい玩具を手に入れた子供、いや新作エロゲを買ったエロゲ好き
のような心境である。
 今は全シナリオを終え、全CGコンプする気満々だが、途中で飽きるとか、やり遂げた
らどうするかなどは、完全に考慮の外である。

 今のレミリアはこれからどうして、どのようにしてやろうかを妄想し、ニタニタと微笑
んでいる。
 先の事なんかは全く考えられないほど、期待に胸一杯なのであった。

「ほらっ! ぬいだわよ! これでまんぞく? このへんたい!」
 脱げと命令しておきながら、気色悪い笑みを浮かべて妄想に耽るレミリアに向かって、
ふらんは怒鳴った。
 喋っても口を閉ざしても、どっちにしろこの変態が喜ぶのならば、せめて少しでも気が
晴れる方を選ぼうと言う事である。

「これはこれは、わざわざ教えてくれるなんて悪いわね。ふふふっ、フランと比べると、
あんたの方がもっと幼児体型ね」
 膨らみかけどころか、今後少しでも膨らむ気配さえ全く感じさせない真っ平らな胸、少
しぽっこりとした幼女らしいお腹、全然くびれていないウエスト、そして無毛の股間を無
遠慮に眺めながら、レミリアはあざ笑う。

 もっとも、レミリア自身の体型も似たり寄ったりなのだが、お腹ぽっこりではなく、僅
かながらウエストにくびれもあるので、優越感に浸っている。

「うっ、うるさいっ! どうしようってのよ? ぬがせて……お……」
 途中まで言いかけて、ふらんは口を閉ざした。
 絶対にそれを行う気だと予想はしているが、言葉に出して言うのがおぞましく感じたの
である。

「察しがいいわね。そうよ、フラン。あんたの想像通りよ……ふふっ、期待してんの?」
「ばっ、ばかっ! そんなわけないでしょ! えっち! へんたい! ひとでなし!」

 ふらんの反応にレミリアは満足げに頷き、
「お生憎様、私は人じゃないのよ。あんたも人じゃないし、お似合いでしょ」
 と言って微笑んだ。

 人でなしと罵られて、人じゃないと返すのは、レミリアにとってお気に入りのシチュエ
ーションなのである。
 同様に、鬼とか悪魔と罵られて、「だって吸血鬼だもん」とか「悪魔ならうちに居候さ
せてるわよ、図書館に小さいの一匹」と返すのも好んでいる。

 そう言う会話が出来ただけで、レミリアの機嫌は良くなる。
 基本的に、お約束とかテンプレは、フォーマルを愛する高貴な者として、好まなければ
ならないと思っているのであった。

「それじゃ次は……ああ、犬のように地面に這って、三遍回ってワンと鳴きなさい」
 犯されると思っている相手を、いきなり犯すのは無粋である──などと考えたわけでは
ない。
 単に思いついたので、レミリアは命令してみた。

 こんな命令には忠実なメイド長も、あまりに下らなすぎて従ってくれない。
 なので、この際せっかくだから、本当に誰かが三遍回ってワンと言うのを見たいと思っ
たのである。

「しねっ! ゆっくりしね! ゆっくりしないでいますぐしね! きちがい! ばか!」
 ふらんは激怒した。
 生まれてからそんなに長く生きているわけではないが、今まで生きてきた中で、最大級
の屈辱であった。

 何の益もない、くだらない、どうしようもない事を強要され、従わざるを得ないという
のは、物凄く惨めである。

 犯される方がまだマシだと思いながら、悔し涙を流しつつ、ふらんは命令を実行した。

 実際やらせてみると、あまり面白くないとレミリアは思った。

「……あんた、馬鹿じゃないの?」
「しね! おまえがやらせたんだろ! いますぐしね! はやくしね! とっととしね!」
 あまりと言えば、あまりにひどい反応に、ふらんは叫んだ。

「いや、まさか本当にやるなんて……ああ、そっか、逆らえないのよね。忘れてたわ」
 ぺろっとレミリアは舌を出した。

「…………しね!」
 ふらんの顔色は、激しい怒りによって青ざめている。

「ふむ……そうね。ふふっ、この際だから色々とやって貰わないとね……じゃあ、次は……」
 再び、先と同じぐらい下らない命令を、レミリアは口にした。

 ──そして、ふらんはそれに従うしかなかった。



 約一時間後──
「んー、どれも……こう、なんか今ひとつね。あんまり面白くないわね」
 散々に下らない、馬鹿としか思えない命令を下し、その悉くを実行させてから、レミリ
アはこのように総括した。

 具体的には、帽子をザルに見立てて安来節を踊らせたり、土で腹に顔を描いて腹踊り、
立木に掴まらせて蝉の真似、などである。
 一時間ほどかけたのだから、他にも様々な命令を下したが、そのどれもが、のびのびと
自由に発育したレミリアの精神を体現するようなものであった。

「しんじゃえ、きちがい! もう、いやっ……やだっ、こんなの! おうちかえりたいっ!」
 レミリアが命令はじめてから、だいたい20分が経過したあたりから、ふらんは怒りなが
ら泣き続けている。

「ふふっ、だいぶおとなしくなってきたわね。いいのよ、もっと泣き言を言っても」
 泣き言を言うのは、心が折れつつある証拠だ。
 心が折れれば、後は一直線に堕とせるとレミリアは考えている。

「うっ、うるさいっ! くっだらないことばっかりやらせて、あんたはずかしくないの?
あたまおかしいんじゃない? みためだけじゃなくて、なかみもがきね!」
 命令を聞き、それに対して罵倒で返すという会話を重ねたため、ふらんの言語表現は急
速に洗練されていた。

 しね、きちがい、ばか、へんたい、などの単語の悪口しか言えなかったのが、今ではち
ゃんとした言語で罵倒できるほど成長していた。

「なによっ! 見た目で言うなら、あんたの方がガキじゃないの!」
 しかし、下僕の成長をレミリアは喜ばなかった。
 単語での罵倒ならば聞き流せても、しっかりとした言葉で言われると、腹が立つのであ
る。

「それがなによっ! みためはあんたよりがきでも、わたしのなかみはあんたよりおとな
よ! あんなくっだらないめいれいなんか、わたしだったらはずかしくてできないわよっ!」

「なっ……い、言ったわね! その命令で、泣くほど悔しがってたくせに! 私はあんた
を辱めたいのよ、わかる? 辱めるための手段なのよ、くだらない命令は!」

 頭に血が上ったレミリアは、絶対的優位である己の立場を完全に忘れ、ふらんと同じ目
線で口げんかを開始した。

「はんっ、うそばっかり! ずぼしだったから、いまかんがえたんでしょ、そのりゆう!
はずかしめる? どうぞ、やってごらんなさいよ! ほら、めいれいしなさいよっ!」

「くっ、こ……この、ガキ……ああ、わかったわよっ! そんなに言うんなら命令してや
るわよ! 私が大人だっての見せてやるわよっ! ほら、そ、そこで……」
 言いかけて、レミリアは顔を赤らめ口籠もった。

「なっ、なによ……い、いいなさいよ、はっ……はやくっ!」
 彼女の様子から、ふらんはどのような種類の命令なのかを、だいたい察した。

「あー……そ、その……」
 もじもじと身を捩り、言うべき言葉を探す。

「……ちょ、ちょっと……す、するなら、はやくしてよっ! ほらっ!」
 もう主導権がどちらにあるのか、わからなくなってきている。

 どんな命令が下されるのか想像するうちに、ふらんの鼓動は早まってゆく。
 心臟が無いにも関わらず、不安と微かな期待で胸が高鳴る。

「……あっ! ふふっ、そうだわ……我ながら名案よ、これ……ふふふっ」
 何かに思い当たり、レミリアはにんまりと笑った。

「き、きまったの……か、かくごはできてるわよ……」
 本当は出来ていない。

「くくっ、あんたのいやらしい本性を確かめる、良い命令があるのよ……さぁ、フラン、
良く聞きなさい……私が命令すると思ったこと、今ここでやりなさい!」
 そう、言いづらい、言うのが恥ずかしいのなら、言わずにやらせれば良いのである。

「なっ……う、うそ……ちょっと、そ、そんなの……あ、ありな、の?」
 ふらんの身体は、早くも勝手に動き始めている。

「ありよ。ふふっ、残念だったわね……さぁ、私にたっぷりと恥ずかしい姿を見せなさい」
 だめ押しとばかりに、レミリアは恥ずかしい姿を見せるよう命令した。
 これで、ふらんは"レミリアが命令しそうな、恥ずかしい姿になる行為"を、行わされる
事になる。

「あ、やぁっ……やだっ……こ、こんなのっ……うそっ……」
 直立したふらんの両脚が、大きく水平に開かれる。
 ぐっと力を入れて踏ん張りながら、膝が90度になるまで腰を下ろす。

 右手を右膝、左手を左膝に宛てがい、ふらんは──ゆっくりと四股を踏み始めた。

「……あんた、なに考えてんのよ?」
 唖然とした顔で、幼女が全裸で四股を踏む光景を、レミリアは見つめている。

「……わたしも、なんでこんなことしてんのか……わかんないわよ……」
 かぱっと脚を開くため、股間は隠されずさらけ出されているので、恥ずかしいと言えば
恥ずかしい行為である。

「っつか、なに? それが恥ずかしい事なわけ? あんた、力士に失礼よ」
 四股を恥ずかしがられては、お相撲さんが気の毒だとレミリアは思った。

「そ、そんなこといわれても……あっ! そうか! あんたがさっきばかなことばかりめ
いれいするから、そのときかんがえたんだ! つぎはこんなこというんじゃないかって!」
 色んな下らない命令を実行させられている際に、ふらんはレミリアが命令しそうな事を、
いくつか想像したのである。
 実際に想像通り命令され、やらされた事もあるが、四股のように命令されなかった行為
もいくつかあった。

「なっ、なによそれっ! あんた私をなんだと思ってるわけ? 四股踏めだなんて、命令
すると思ったの? 馬鹿にしないでよっ!」
 レミリアにとっては非常に心外である。
 心外であったとしても、ある意味で常軌を逸した命令を散々下した後なので、発言に説
得力はまるで無かった。

「ばかなきちがいのがきっておもってるわよ! ってか、し、しこって……き、きついの
ね……いがいと……うぅっ……」
 四股とは、そもそも足腰を鍛えるのみならず、ケガレや邪気を払う行為である。
 不完全な吸血鬼と化した者が行ったら、自身にダメージを与えるであろう。

 当然、ケガレや邪気そのものであるレミリアにも、ダメージが来る。
「うっ、な、何か見てたら……や、やめなさいっ! もう四股はいいわよっ!」
 感情的な意味ではなく、肉体的に気分が悪くなってきたので、慌てて制止を命じた。

「はぁ……ふぅ、はぁ……うぅっ、き、きもち……わるい……」
 ぺたんと地面に尻を落とし、ふらんは荒い息をついた。脚はだらしなくM字に開かれて
いる。

「私も、気分悪い……胸がムカムカする……もうっ、あんたが四股なんか踏むからよっ!」
「あんたが、ばかなことばっかめいれいしたからわるいんでしょ! じごうじとくじゃな
いのっ!」
 再び口げんかが始まる。
 知識や知能はともかく、精神年齢がほぼ同じで、どちらも自分勝手でわがままなため、
相手が悪いと言い合って折り合いが付かない。

「自業自得? はんっ、それはあんたよ! 私の血なんか飲んだから、悪いんじゃないの!」
「のみたくてのんだんじゃないわよっ! あんたがあのとき、いきなりき……き、す……
する、からぁ……」
 威勢良く返すふらんであったが、途中でトーンダウンし、もごもごと押し黙った。

「あっ……そ、そうね……あーっ、もう! 焦れったい!」
 ふらんの言葉に顔を赤らめ俯向いたレミリアは、突然叫んだ。
 苛立ちが羞恥心を凌駕したのである。

 やりたい、やろうとしている事が、なかなか思うように出来ない苛立ちが、とうとうレ
ミリアの心の枷を外した。

「あんたの言う通り、エッチな命令しようと思ってたわよっ! だけど、そんなの言える
わけ無いでしょ! 恥ずかしいのよっ!」
 大声でレミリアは心情を吐露した。

「はっ、はずかしいのはこっちよっ! すっぱだかにされてんのよ? こ、こんなかっこ
うだってのに、かっ、かくせもしないんだからっ!」
 相手がキレれば、ふらんもまたキレ返す。

「えっ!? あ、そ、そう言えば、そうね……そ、それじゃあ、その恥ずかしいとこ、て、
手で……開いて良く見せなさいっ!」
 必要以上の気合いを込めて、レミリアはふらんに命じた。

「……くっ……ほ、ほらっひらいたわよ……ど、どうよ?」
 実行報告をしなければならないわけではないが、命じた本人が言ってすぐ視線を背けた
ので、このままだと放置されかねないと思い、ふれんはレミリアに声を掛けた。

「あ、そ……そう、ご、ごごご苦労さん……」
 レミリアは横を向いたまま言った。

「ちょ、ちょっとぉっ! みっ、みなさいよっ!」
 恥ずかしさを堪えて、ふらんは言う。
 見て欲しく無いが、見て貰わない事には、ずっとこのままの体勢である。

「い、言われなくても、み、見るわよ……」
 意を決したように言ってから、ふらんの方へ向き直り、まじまじとレミリアはその部位
を見る。

 中身が餡子だったから真っ黒だと思っていたが、まるで人間のと同じように、その箇所
は薄桃色に色付いていた。

「へぇー、意外とキレイじゃない……あ、濡れてきた」
 じっと見つめる視線に反応したかのように、割り開かれた内部から、透明な粘液が滲み
出してきている。

「そっ、そんなこと……いちいち、いっ……い、いわないでよ……」
 無遠慮な視線で犯されているかのような感覚に、ふらんは強い羞恥を覚えた。

 普通の四肢つきゆっくりのままであったのならば、ここまでの羞恥心は存在しなかった
であろう。
 強制的にゆっくりから別のものに進化させられた我が身を、ふらんは呪った。

「ふふっ、恥ずかしいんでしょ? 顔どころか、全身真っ赤じゃない。やっぱ、フランは
お子様ね……ふふふっ」
 自身も恥ずかしくて、見なくてもわかるぐらい顔を朱に染めているが、レミリアは完全
にその事を棚に上げている。

「くっ……へ、へんたいっ! えっち! ばか! ゆっくりしねっ!」
 さきほどまでは多少あった余裕を、ふらんは失っていた。
 ぐっと唇を噛みしめ、恥辱に耐えている。

 ふらんが余裕を失うと、それに反比例してレミリアが精神的優位に立つ。
「あははっ、品行方正な吸血鬼なんて居るわけないでしょ? 淫らに喘いで、私をもっと
愉しませるがいいわ」
 いつもは白い肌を、相変わらず赤くしているが、その口調はしっかりしたものへと戻っ
ている。

「じゃあ次は……ふふふっ、犬のように這い、自分の手でお尻を開いて、汚い穴を見せな
さい」
「しね! へんたい! きちがい! えっち! ばか!」

 唯一自由になる言葉で抵抗しながら、ふらんは命令通りに行動する。
 両膝と両手を地面につけ、くるりと方向転換し、レミリアにお尻を向けた。

「くっ、こ、こんなの……くそっ! ばかっ! しねっ! へんたい!」
 恨みの籠もった罵倒語を喚きつつ、ふらんは頭を下げ、額を大地につけた。
 顔と両膝で身体を支え、両手を自らの臀部へと回し、土に汚れたお尻のほっぺたを掴む。

「あははっ、いい格好ね! ほら、くぱっと開きなさいよ!」
 期待感に呼吸を荒げ、レミリアは催促した。
 別に催促せずとも命令は確実に実行されるのだが、待ち遠しいのである。

「しね! くぅっ、くそっ……こ、こんな……いやっ、やだぁっ……」
 心と言葉でどんなに拒絶しても、身体は全くそれを受け付けてくれない。

 ぷりんとふっくら盛り上がった臀丘を、ふらんは自らの手で押し開き、レミリアの眼前
に肛孔を晒した。
 股間の割れ目のあたりと同様に、この部位もまた人の形を取った他の生き物と変わらな
い外観である。

 特に執着している箇所なので、レミリアはじっくり良く見ようと、ふらんのお尻に吐息
がかかるぐらい近寄った。
「あはっ、フランのお尻の穴かっわいーい♪ ピンク色でひくひくってしてるわよ」
 他の場所を覆う皮肌とは異なる、色素を強めた薄桃色のすぼまりを、彼女は間近に眺め
歓声を上げる。

「み、みるなっ! いうなっ! しねっ! も、もう……やだぁっ……み、みないでよぅ」
 怒鳴ったり、涙声を出したり、ふらんの反応は一様ではない。
 怒り、羞恥、屈辱、悔しさ、などの様々な感情が、心と精神を苛む。

「野生動物だから汚いと思ってたけど、随分キレイね……うん、匂いもいいわ」
 ふらんのアヌスに鼻を近づけ、レミリアはくんくんと匂いを嗅いだ。
 上品な甘い香りが、そこからは漂っている。

 四肢付きのゆっくりは、身体の内部構造は違うが、外見的な作りは人間や妖怪、妖精な
どと大きな差違はない。
 器官の役割もほぼ同じで、人のヴァギナに当たる部位は生殖に使われ、肛門に該当する
箇所は排泄を行う場所である。

 ゆっくりの排泄物とは、すなわち古くなり劣化した中身である。
 ふらん種の場合、中身はあんまんの餡子であるから、当然のように排泄孔からは餡子を
ひり出す。
 古くなっているとは言え、元が高級な餡であるのだから、味は悪くなく、香りもまた上
品で甘い。

「なっ! に、におい……かがないでよっ! やだぁ、へんたい……ばかぁ……」
「臭いって言ってる訳じゃないんだから、恥ずかしがらなくたっていいじゃない。甘くて
いい匂いよ……ふふっ」

 その甘い香りこそが、ふらんの排泄物の匂い──便臭なのだが、そんな事をレミリアは
知らない。
 元々ゆっくり自体、話に聞いた程度にしか知らず、接触したのはこのふらんが最初なの
だから、当たり前であるが。

「だっ、だってぇ……そ、そのあまい、に、においって……ぐすっ、もうやだ! うわぁ
ぁぁぁぁんっ!」
 ふらんは声を上げて泣き出した。

「あらあら、こんな程度で泣いちゃうなんて……フランのが、私よりよっぽど子供じゃな
い」
 何度も「がき」と言われたのを、しっかりとレミリアは根に持っていた。
 こんなに早く泣き出してしまったのは予想外だが、良い機会なので言い返したのである。

「でも、泣いたって許してあげないわよ……ふふふっ、私の、私だけの可愛い可愛いフラ
ン……」
 今までずっとそうだったが、レミリアは明らかに、ふらんに自分の妹を重ねている。
 ふらんにとっては失礼極まりなく、迷惑千万な話であるが、レミリアは重ねるのではな
く、だんだんと同一視するようになってきていた。

「ここには咲夜も居ないし、パチェも居ない……誰にも気付かれる心配なんて無いんだか
ら、ほら……もっと、泣いていいのよ」
 顔を見れば、一発で妹ではないと認識できるのだが、生憎とこの体勢では顔が見えない。

「えっ……ちょ、ちょっと、あんた……ねぇ、こ……こわいよ、やめて……おねがい」
 レミリアの声のトーンが変わり、喋る内容も変わってきている事に、ふらんは気付いた。
 今までも得体の知れない、絶対に狂っている変な奴だとは思っていたが、何かのスイッ
チが入ったかのような変貌は、非常に怖い。

「怖くなんかないわよ、私が居るんだから……ねぇ、フラン。可愛いわよ、すごく可愛い、
……大好きよ、フラン……」
 自分の発する言葉で、彼女は思いこみを強めている。
 もう、レミリアの目には、目の前の相手がフランドール・スカーレット本人にしか、見
えなくなっていた。

「いやっ……や、やだっ……ご、ごめんなさい……も、もうゆるしてっ! た、たすけて
ぇっ! おねがいっ! ごめんなさいっ!」
 死の恐怖とは違う、不気味なものに迫られるような恐怖に、ふらんは絶叫した。
 生まれて初めて他者に許しを乞い、助けを求めた。

 ──だが、その願いを聞き入れる者は、この場には居なかった。


                                   ■つづく■

あとがき

 ご笑覧いただきありがとうございます。A.Hでございます。
 相変わらず虐待ぬるめですねぇ……目的に対する手段としての虐待だと、何かやっぱり。
 虐待を目的とする虐待を書くようにしたら、もうちょいハードになるかなぁ、と。
 作中、ふらんが放ったのはフランドールの通常弾幕です。あんまり特徴的じゃないです
が、おぜうさまならわかるんじゃないかと言う解釈で。
 あと、レミリアの年齢は500歳以上なので、500歳も以上に含まれると解釈しました……
いや、500歳児って言いたかっただけですが。
 ゆっくりに限らず、設定は俺解釈と俺設定バリバリなのは仕様です。原作の設定は、明
記されてない部分を、受け取り手が自由に解釈可能なのも魅力だと私は考えています。

 前編、ご感想いただきありがとうございます。
 きめぇ丸につきましては……気長にお待ちいただけると……自分の中でキャラがまだ掴
み切れていないというよりも、固まらず四苦八苦してますので。
 今回の後編か、同時進行でだらだら書いてる別のが、先に上がっちゃいそうです。

 ってか、虐待描写ほぼ皆無で可愛がりばかりなのに、エロネタのものとか、どう始末を
つけるべきかを悩んでいたり……注意書きに明記して、虐待スレかな。やっぱり。

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最終更新:2008年09月14日 11:23
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