美鈴×ゆっくり系18 レミリアと森のゆっくり_前編

※美鈴によるゆっくり虐待……ってか虐待っぽいエロ。非常に下品。
※ゆっくりまりさと美鈴の絡みと言うか性的描写が含まれています。当然の如くアナル。
※本番してないから18禁じゃないと思いたいですが、たぶん18禁です。
※直接の描写は避けましたが、スカトロ要素を含んでおります。
※また、虐待とあまり関係ない場面も、いつものようにやたらございます。
※前後編か前中後編の前編です。
※例の如く、ある意味では美鈴虐め。キャラ性格の俺改変ひどいし。かなり変態だし。
※また、ある意味ではレミリア虐めかも知れません。キャラ性格の俺改変ひどいので。
※「美鈴と森のゆっくり」の後日談的な感じとなっておりますが、これ単独でも普通に読
めるようにしたつもりです……一応。

※当然のように俺設定満載な感じです。
※特に、ゆっくりの設定は思い切り俺設定です。イメージと違う場合もございますので、
ご注意ください。







「レミリアと森のゆっくり 前編」



 悪魔の住む館、紅魔館──
「見なさい咲夜。今夜も良い月よ」
 この館の主人であるレミリア・スカーレットは、自室からテラスへと通ずるガラス戸を
開け放ちながら、傍らに控える従者に言った。

「曇っていますよ。お嬢様」
 瀟洒なメイド、十六夜咲夜の反応はまことにクールだった。
 この従者は絶対的な忠誠をレミリアに捧げているが、完全であるが故に、あからさまな
阿諛追従はしないのである。
 主君は暴君であっても、暗君であってはならないと思っているようだ。
 もっとも、だからこそレミリアも信頼しているのだが。

「……こう言うのは気分の問題よ。それじゃ行ってくるから、後は頼むわね」
 興が削がれた、と言いたげな表情を浮かべ、レミリアはテラスに出た。
 やや湿度は高いが、それでもまだ夜風は心地良い。
 もう一月も時が経つと、この夜風は蒸し暑い熱風となるであろう。

「かしこまりました。時に、今宵はどちらへ?」
 また神社かしら? と思いながら、咲夜は聞いた。
 レミリアはここからも見える近郊の森を指さし、
「森へ行ってみるわ。たまには森林浴も悪く無さそうだから」
 意外な返答を行った。

 それに対し咲夜は、理由を詳しく聞くような真似はせず、
「行ってらっしゃいませ、お嬢様」
 と言って、主に深々と頭を垂れる。
 特に異変が起きているわけでも無いのだから、無理に意図を聞いたり、同行を申し出る
必要は無いと判断したのであった。



 どんよりとした曇天の夜空をレミリアは独り飛ぶ。
「……ムードが出ないわね」
 瞬く星や月の輝きが無いと、夜空を飛ぶ爽快感が今ひとつである。

「降りて……歩こう……」
 レミリアは眼下に広がる木々の群れの中へ降下を開始した。
 やや開けた場所を見つけ、そこに着陸する。
 体重が無いかのように、ふわりと軽やかに。
 そして彼女は二本の足で歩き始めた──森の奥へ。

「ふふっ、夜の森をこうして独り歩くのも、たまにはいいわね」
 後ろに腕を組み、ぶらぶらと歩く。

 魔法の森と違って普通の森であるこの森は、変にじめじめしたいたり、気色悪いキノコ
がわさわさ生えていたり、わけのわからない触手生命体が蠢いていたり、白黒の魔法使い
と七色の人形遣いが逢い引きしていたり、などの意外性にはあまり恵まれていないが、別
にレミリアはそんな意外性を求めていない。
 白黒と七色の逢い引きは、ちょっと見てみたいが。後日からかうために。

 曇った夜の森の中、木々の間からこぼれる弱々しい月星の光すらない、濃い闇の中を臆
することなくレミリアは歩き続ける。
「咲夜と一緒もいいけど、こうやって独り気ままに散歩も悪くないわ」

 元々が夜の生き物である吸血鬼なのだから、夜目が利くどころか、自然の闇の中ならば
充分に見えるため、レミリアは足下の障害物に引っかかり、顔から転んでおでこを擦りむ
いて「うぇぇぇんっ! さくやぁーっ!」などと泣く事もなく、危なげない足取りでぽく
ぽくと歩いている。

 ふと、遠くに人影が見え、レミリアは足を止めた。
 こんな暗い夜の森で人影とは、尋常ではない。
 注意深く、レミリアは木々に身を隠しながら人影に近寄ってゆく。
 別に恐れているわけではなく、状況を確認せずどんどこ進んで敵性と遭遇し、奇襲を受
けたりするような事態を招くのは、あまり美しくないからである。

「……あら? あれは……美鈴じゃない……」
 良く知った人物が人影の正体だった。
 自らの館の門番を勤める紅美鈴。
 勤務態度は真面目なのか怠惰なのか、いまひとつ微妙だが、穏和で人当たりの良い、あ
まり妖怪らしくない彼女が、何故こんな所にいるのであろうか。

「……なにを、してるのかしら……!?」
 顔が判別でき、向こうの声が聞こえる程度にまで近寄ったレミリアは、身を隠したまま
小声で呟いた。
 こんな夜に、こんなところで、なにをしているのか興味があったのである。
 ずかずかと歩んで姿を現し、尋問するのは簡単で手っ取り早いが、それでは興がなさ過
ぎるので、夜の王は窃視を行う事に決めた。



 自分が物陰から覗かれている事に、美鈴は全く気付かなかった。
 これがレミリアではない別の誰かならば、またレミリアが相手でも別の時であったのな
らば、気の乱れを察したであろうが、うきうきわくわくしている今の美鈴は色々と足りて
いない。
「さぁ、はじめるわよ」
 美鈴は足下を見渡して言った。

「ゆっ! やめて、おねえさん! れいむになにするのっ!」
 生首のような生命体──ゆっくりれいむは、持ち上げる美鈴の手を振り解こうと、もが
いている。
 その直径はだいたい40センチほどで、人の頭部よりも大きく、形もまた人の頭が卵形な
ら、これは下ぶくれで鏡餅を連想させる形であった。



「なっ……! なにあれ?」
 見知った顔と良く似た生首を見て、レミリアは驚きの声を漏らした。
 驚いてはいても、自分の今の状況はしっかりと把握しているため小声で。

「…………そうだ! あれが、ゆっくりね……へー、本当に霊夢に似てるわね」
 幻想郷の有名人に似た妙な生き物について、話には聞いていたが、実物を見るのは初め
てであった。
 それで、どうする気なんだろう? 思いながらレミリアは展開を静かに見守った。



「ふふっ、あんたは友達をいじめたんでしょ? だから罰を受けるのよ。そうよね、まり
さ?」
 再び美鈴は足下に視線を向けた。
 それに答え、黒い帽子を被った生首──ゆっくりまりさが口を開く。

「……ゆっ! そ、そうなんだぜ……れいむはまりさをくさいっていって……いっ、いじ
めたんだぜ!」
 虐められた相手を告発するにしては、やけに態度がおかしかった。
 許しを乞うような目で、美鈴の手に捕らわれたれいむを見ている。

「ゆっ! そ、そんな! だ……だって、まりさほんとにくさいんだもんっ! それに、
おかおもきたないしっ!」
 その告発は誣告だ! と言わんばかりの態度で、れいむは自らの正当性を主張する。
 かつて友達であったまりさを、その言葉がどれだけ傷つけているかも知らず。

「臭くて汚い、か……まぁ、確かにこいつは臭くて汚いけど、お友達なんでしょ?」
 ニヤニヤとまりさを見ながら、美鈴は「臭い」「汚い」を強調して言った。

「ちがうよっ! れいむのおともだちなんかじゃないいよっ! まりさはもっといいにお
いがして、おかおもしろくてきれいで、きんいろのかみのけもながかったのに、こんなぶ
さいくになったまりさは、もうおともだちじゃないよっ!」
 まりさの心中を全く慮ることなく、れいむは友人関係を否定した。
 その言葉の一言一言が、まりさの心を刺し抉る。

「ゆ゛っ、ゆ゛ぐぅっ……ひ、ひどいんだぜ……れいむぅぅぅぅっ……ぐずゅんっ……」
 滂沱の涙を流し、まりさは泣いた。
 悲しく、苦しく、悔しくて、とても辛い。

 お散歩につれて行ってあげる、と言ってくれた時は、自分はやっとお姉さんに認められ
た、良い子になれたと思って、あんなに嬉しかったのに。
 今はもう辛かった。こんな思いをするのなら、喜ぶんじゃなかったと後悔していた。

「それじゃ百歩譲って、お友達じゃ無いってのは認めてあげるわ。こんな汚臭いのを友達
だなんて言って、すまなかったわね」
 手中に収めたれいむへと顔を向け、美鈴は微笑んだ。

「もうっ、おねえさんやっとわかったの? あたまわるいねっ! わかったなら、ゆっく
りしないで、はやくれいむをはなしてねっ!」
 相手が自らの非を認めたようなので、れいむはすこぶる強気である。
 状態は全く変化せず、捕らわれているままだと言うのに。

 それに対して美鈴は、
「それはダメよ。だってあんた、まりさいじめたんでしょ? あんたのお友達じゃなくて
も、こいつは私の可愛いペットなのよ」
 と言いながら、細い麻縄でれいむを縛りはじめ、
「だから、飼い主が黙ってないってわけよ。ゆっくり理解してね」
 器用に縦横しっかりと十文字に縄を掛けた。

「ゆぎゅっ! やべでぇぇぇぇっ! いだいっっっっ! なわ゛きづいぃぃぃぃっ!」
 縛られたれいむは悲鳴を上げ抗議するが、美鈴が耳を貸すはずもなく、木の枝につるし
上げた。



 そんな様子を絶賛ピーピング中のレミリアは、
「うーん……聞いた通りね。似てるのは外見だけで、性格はだいぶ違うって」
 と感想の声を漏らしていた。
「それに見た目が似てると言っても、おおまかな特徴だけね……霊夢は、あんな下ぶくれ
のぶさいくじゃないし」

 似てると言われれば似ているし、そっくりといえばそっくりではあるが、瓜二つとか生
き写しではなく、喩えて言うなら写実的肖像画ではなく漫画的似顔絵としての話だと、レ
ミリアは思った。

「……と言うか、美鈴ったらゆっくりをペットにしてたのね……ふむ、ペットを散歩させ
に来て、そのペットが野良に虐められた、ってとこかしらね……」
 それにしては美鈴がやけに楽しそうなのが気になったが、この会話からではそれ以上の
推察が難しい。

「なーんか……引っかかるのよねぇ……ま、見てればわかるか」
 レミリアは引き続き経過を見守ることに決めた。



「ふふっ、私の可愛い可愛いゴミクズのまりさを虐めた罰、たっぷりと味わって貰うわよ」
 心地良い悲鳴に恍惚とした笑みを浮かべ、美鈴はぽきぽきと指の関節を鳴らした。
「……ゅぅ……」
 沈痛な面持ちで、まりさは悲しそうに喉を鳴らす。

 可愛いと言われても、後にゴミクズと付けられるのは嬉しくなく、散々に「汚い」「臭
い」と美鈴にも言われているのだから、素直には受け取れない。

 ──そもそも、まりさが「臭い」「汚い」と言われる原因を作ったのは、美鈴なのだか
ら。

 このまりさは、数日前までこの森に住んでいた。
 可愛い二匹の子供と、性欲処理相手とその二匹の子供と、二匹の奴隷の計八匹の家族で、
何不自由なくゆっくり暮らしていた。
 その暮らしぶりは、自分のゆっくりのために奴隷二匹を虐げるなど、あまり褒められた
ものではなく、そのために因果が応報し全てを失ってしまったのだが。

 そして、その際まりさは美鈴によって、全身の皮肌を餡子が漏れない程度に切り剥がさ
れながら、激辛調味料を垂らされると言う仕置きをされ、治療はされたものの醜い顔とな
ってしまったのである。
 まりさはあまりの苦しみに死を望んだが、美鈴はその希望は叶えず、あえて生かして己
の支配下に置いたのであった。

 ──このあたりの詳細に関しては、合計150kbほどのクソ長ぇ物語となっているが、そ
れはまた別の話である。

「ゆぎゅぅぅぅっ! ばつってな゛にっ! れい゛むなにもわるいごとしでないよ゛っ!」
 痛い目に遭うか、怖い目を見ない限り、そうそう謝らないのがゆっくりと言う生き物の
習性である。

 目端の利く狡猾な個体は危ないと思った際に、心にもない謝罪を口にする事も度々ある
が、たいがいのゆっくりは言い逃れできない状況でも、自分は悪くないと主張する事が良
くある。

 ゆっくりが「自分は悪くない」と主張するのは、他に言い逃れの言葉が見つからず頑な
に現実を否定しようとしている時と、本当に悪いことだと思っていない時の、どちらかで
ある場合が多い。

 今まさに痛い目に遭わされようとしている、このれいむに関しては後者であった。
 自分がまりさに対して行ったことを、全く悪い事だったと思っていないのである。



 約30分ほど前──れいむは自分の巣で、ゆっくり眠っていた。

 数日前、このあたりのゆっくりたちの中で、人間社会で言うならば「顔役」として通っ
ていた、まりさとその家族たちが突然姿を消すと言う事件が起きた。
 親しかった者は、その親しく仲良かった度合いに応じて、まりさたちの失踪を嘆いた。

 れいむは友達であり、過去に何度か一緒に「すっきり」した経験もあったので、丸一日
嘆き悲しみ、ゆっくり出来ない日を過ごした。
 だが、そこは常に外敵の危険がある野生のゆっくりである。次の日には、もう「過去の
辛い思い出」のひとつとして、再びゆっくり出来るようになっていた。

 今日もまた、いつも通りエサを探して食べたり、友達のゆっくりと遊んだりして、何ら
普段と変わらないゆっくりした一日を終えて、眠っていたのである。

 そこに失踪していたまりさが現れ、寝ているれいむを起こした。

「ゆっくりしていってね!」
 再会の喜びとともにお決まりの挨拶をしながら、れいむは違和感に気付いた。
 臭いのである。まりさが、すごく。
 友達だったまりさの匂いもするが、それ以上に臭い。腐ったような臭いがする。
 れいむは不快感に顔をしかめた。

「ゆっくりしていくぜ!」
 まりさは笑顔で挨拶を返したが、れいむはその顔を見て驚いた。
 汚いのである。まりさの顔が、とても。
 白くきれいだった皮肌が、ところどころ黒い染みのあるでこぼこ肌になっていた。
 れいむは、もう耐えられなかった。

「ゆっくりしないで、でていってね!」
 渾身の力を込めて体当たりして、臭くて汚いまりさを巣から追い出した。
 そのとき、髪の毛も短く切られている事に気付いた。
 自分が好きだった、親しかったまりさが、醜くなったのが許せなかった。
 だから、もう一刻も早く目の前から去って欲しくて、体当たりで攻撃した。

 ケンカの強さに物を言わせ、かつて顔役として通っていただけあって、れいむの激しい
攻撃もまりさにはさほど効いていない。
「ゆぐっ! れ、れいむっ! な、なにするんだぜ! いたいんだぜっ! ゆっくりしよ
うぜ!」
 ──いっしょにすっきりしたなかなのに、ひどいんだぜ……。
 臭いにおいを発していて、顔が汚くなっている事を、まりさは自覚しているが、それで
も仲の良かったこのれいむなら、話せばわかると思っていた。

「ゆっ! れいむは、くさくてきたないまりさなんかと、ゆっくりできないよっ! はや
くどっかいってね!」
 じりじりと後ずさってはいるが、まだ話しかけてくる、近寄ってくるまりさを、れいむ
は体当たりで攻撃し続ける。
 そんな事をせず巣の中に陣取って、巣に入ってきたら撃退するようにしていたら、もし
かしたら運命は変わったのかも知れない。

 ──攻撃に熱中するれいむが、美鈴によって捕らえたのはこの直後である。



「ふんっ、悪くないですって? 良いか悪いかは私が決める。そして、あんたは悪いと私
が決めた。だから罰するのよ!」
 これが裁判であるならば、まさしく茶番であろう。最初から筋書きが出来ているのだか
ら。

「いやぁぁぁぁぁっ! れ、れいむわるくないよぉ! なんでぇぇぇぇっ!」
 悪くないと思っていたとしても、とりあえず詫びを入れていたら、もう少しは会話が続
き、多少長生きは出来たかも知れない。
 美鈴は最早れいむの言葉に応えることなく、速やかに罰の執行へと移行する。

「豚のような悲鳴を上げ、許しを乞い、助けを求め、泣き叫ぶがいい……いくわよっ! 
紅家奥義! 虎納魅拳っ!」
 どうかと思うネーミングセンスな技名を叫び、美鈴はれいむへの懲罰を開始した。

「上! 上!」 
 言葉の通りれいむの上から美鈴は頭突きを二度行い、
「ゆ゛ぎゅっ!」

「下! 下!」
 次に下から突き上げるようなアッパーカットを二回、
「ゆ゛べっ!」

「左! 右! 左! 右!」
 続いて左フックと右フックを交互に二発、
「びゅぶっ! お゛ぶっ!」

「B!」
 そして膝蹴りを顎に見舞い、
「ごじゅっ!」

「A!」
 最後は顔面の中心へのエルボー。
「べぶっ!」

「あははっ! どう? これが虎納魅拳よ! 虎のように動き、型に納めるように敵を圧
倒する、魅力的な拳よ!」
 誇らしげに豊かな胸を張り、美鈴は技名を解説した。編み出してから初めて使用した技
に有頂天になっている。

「……いや、Bって膝蹴りだからニーじゃないの。それに……エルボーの綴りはAじゃな
くてEからよ……突っ込みどころ多い技ね……」
 美鈴に聞こえない程度の声で、隠れているレミリアは呟いた。

「ゆぶっ……ゆっ、ゆぅ……ゅ……」
 すでにもうれいむは虫の息である。
 打撃もさることながら、縛られている縄が身体に食い込み皮肌を切り裂き、そこから中
身を溢れ出しつつあった。

「ふふっ、どうかしら? これをもっと速いスピードで、573回連続で行うのよ。あんた
は何回目まで耐えられるかしらね」
 初使用がゆっくり相手と言うのは気分的に微妙なものもあるが、サンドバッグなどの無
生物とは異なり、ちゃんと悲鳴が聞こえるので威力を実感出来るのは楽しい。



「……あー、573回ねぇ……んー……なんて言うのかしらね……」
 上機嫌で有頂天な美鈴とは対照的に、木陰で窃視中のレミリアはとてもだるだるな気分
である。

「……にしても、美鈴が霊夢の顔を殴ってるみたいで、ちょっと微妙ね……んー、そう言
えば私やパチェ、魔理沙たちのゆっくりも居るのよね……うーん……」
 自分や友人知人と似た顔が、知らないところで殴られたり虐められたりしている可能性
を考え、レミリアは少し不快な気分になった。

「なんかねぇー……微妙な気分。なんて言うのかしら、出来の悪い似顔絵を描かれて、そ
れを破かれたり踏まれたりしてるみたいな、そんな気分……んーむ」
 美鈴の行動を盗み見る好奇心よりも、徐々に不快感が上回りつつある。
 だが、レミリアは立ち去らず、もうしばらく見守ることにした。ひょっとしたら、気分
が良くなるような展開になるかも知れないと思ったのである。



「さぁっ! 二発目行くわよ! 上上下下左右左右BA!」
「ゆ゛べぶじゃぐゆ゛う゛ぉばぁっ!」
 二回目の衝撃に、れいむの身体は耐えきれなかった。

「ちょ、ちょっとぉっ! なんでたった二回で死んじゃのよっ! もうっ!」
 食い込みすぎた縄によって四分割に解体され、地面に落ちたれいむの残骸に向かって、
美鈴は怒りの声を上げた。

「あ゛ぁっ……れ、れ゛いむ゛ぅぅぅっ……うぅっ……」
 親愛を裏切られたとは言え、交尾まで行ったことのある友達の死に、まりさは涙を流し
た。

「あら? なに泣いてるのよ? まりさ、あんたが殺したのよ、このれいむは」
 れいむへの懲罰が中途半端なところで強制終了した不満をぶつけるかのように、美鈴は
まりさを言葉の鞭で叩いた。

「ゆ゛っ! ゆぐっ……お、お゛ねえざん゛っ……ぞ、そぶな゛ぁ……」
「だって、そうでしょ? あなたが『まりさはいじめられたりしなかったぜ!』って言っ
てれば、これは死ななかったのよ。だから、まりさ、あんたが殺したのよ」
 非常に強引な理屈で、美鈴はまりさをなじる。



「……うわぁ、えげつないわね……美鈴ってこんな一面があったんだ……ふふっ、ちょっ
と見直しちゃった」
 とても悪魔的な感想をレミリアは述べた。

「んー……最近、でもないか……ずっと美鈴が腑抜けになったって思ってたけど、これは
評価を改めないとね……いいわぁ、私が見込んだ美鈴は、これぐらい暴力的で野蛮で、意
地悪な妖怪だったんだから……」
 初めて美鈴と出会い、そして戦った当時のことを思い出し、レミリアは恍惚とした表情
を浮かべた。

「うん、今の美鈴もそれはそれで好きよ。でも、私の館の門を任せているんだからね……
単なる良い子じゃ相応しくないの……ふふっ、やっぱ見てて良かったわ」
 先ほどまでとは打って変わって、レミリアは上機嫌である。

 普通の主従であれば、部下の残酷で理不尽な一面を見た場合、悪い方に評価を改めると
ころだが、彼女たちは吸血鬼であり妖怪である。
 人間に恐れられるべき存在なのだから、このように「本当は怖い、恐ろしい」一面を持
っていなければ、鼎の軽重が問われるのだ。



 そんな風にレミリアが自分の行動を見ていて、気分を悪くしたり機嫌を良くしたりして
いる事に全く気付いていない美鈴は、まりさへの言葉責めを続けている。

「いい? あんた、わかってんの? あんたがウソつきで最低な奴だったから、ありすも
ゆっちゅりーも未だに許してくれないのよ!」
 かつてまりさが奴隷として虐待していた、今この場にいない二匹のことにも言及する。
 ちなみに、その二匹もまりさともに美鈴のペットとなっている。

「ゆ゛っ、ゆ゛ぐっ……ご、ごべんなざいっ……おねえざんっ……」
「はぁ? なんで謝るのよ? 私に謝ったって仕方ないでしょ? そんなんだから、あん
たの子供も死んだのよ! このれいむと同じように、あんたのせいであんたと親しいゆっ
くりはみんな死んじゃうのよ!」
 美鈴自身も、我ながら無茶苦茶言っているという自覚はあるが、まりさの泣き顔を見て
いるとどうにも止まらない。

「ぞっ、ぞぶな……ぐじゅっ、う゛ぁぁぁぁん゛っ!」
 とうとうまりさは大声で泣き出した。
 もう何を言っていいのか、誰に何を謝れば良いのか、わからない。

「な、泣けば許して貰えると思ってんの? どうなのよ? あ、あんたは、どうして欲し
いのよっ?」
 大声で泣くまりさを見て、美鈴は自分の胸が高鳴っている事に気付いた。
 もっと泣かせたい、無様に許しを乞わせたい、過去を延々と反省させたい──どんどん、
美鈴の中に欲望が膨らんでゆく。

「ゆぐっ……う゛ぅっ……ま、まじざはぁっ、ゆ……ゆるじで、ぼじいですっ!」
「誰によ? あんたのせいで死んだ、あんたの子供? さっきのれいむ? ありす? ゆ
っちゅりー? 誰に許して欲しいのよ?」
 泣きながら強い調子で意志を述べたまりさに対して、美鈴は厳しく、意地悪く追求した。
 どんな答えが返ってこようと、またそれに対して追求するつもりである。

「ぞっ、それ゛う゛ぁ……み、み゛んな゛にっ! みん゛なに、ゆ゛っゆる゛じで……」
「はぁ? なにムシのいい事言ってんのぉ? 欲張り過ぎよっ! だいたい、どうやって
許して貰うのよ? もう死んじゃってる相手もいんのよ? ほらっ、どうすんのよ? 言
ってみなさいよ!」
 どうせゆっくりの知能では答えられないと思いながら、美鈴は問い詰めた。

「う゛っ……ゆ゛ぐっ、ぞ……ぞれ゛はぁっ……」
「なによ? 答えらんないのっ? そんなんで、みんなに許して貰いたいなんて、よく言
えたものねっ! ほらっ、考えてみなさいよ! どうすればいいかっ!」
 美鈴は、黙り込んでしまったまりさに対して、容赦なく答えを求める。



 一方、隠れて見ているレミリアは、
「意外ねぇ……美鈴ってこんなねちっこい性格だったかしら? 意地悪なのはいいけど、
ちょっとねちっこ過ぎるわねぇ……でも、これはこれで……ふふふ」
 まりさがどう言うか、美鈴がどう反応するかを楽しんでいる。

「それにしても、あれって魔理沙のゆっくりよねぇ……んー、美鈴ったら弾幕ごっこで負
け越してる鬱憤を、似ているゆっくり虐めて晴らしてんのかしら……?」
 ひょっとしたら自分や咲夜のゆっくりも美鈴は虐めているんじゃないか、とレミリアは
想像し、また少し機嫌を悪くした。

「……ま、まぁ、別にいいわ、それぐらい……ガス抜き、ストレス解消も必要でしょうか
らね……」
 あまり嬉しくない想像で壊れた気分を、自分は器が大きい"カリスマ"だから気にしない、
と思い込む事でレミリアは修復した。



「で、どうなの? 答えらんないの? ほら、さぁ、ぐじゅぐじゅ泣いてないで、なんと
か言いなさいよっ!」
「ゆ゛っ! ぐ……ゆ゛ぐっ……わ、わ゛がじまぜん゛……ぐじゅっ……」
 絞り出すように、わからない、とまりさは言った。

「ふんっ、だからあんたはゴミクズなのよっ! 望むばっかりで、どうすりゃいいかもわ
からない、最低ね! 牛のクソ以下ねっ! 肥料にすらならないから、ゴミクズなのよ!」
 普段口にしないような汚い言葉を使うことによって、美鈴は己をどんどん昂ぶらせてゆく。

「ゆ゛……ぐっ……ん゛、ひっく……ゆ゛っ……」
「泣いたってどうにもなんないのよっ! 全く、なんであんたみたいのが生きてるのよ?
あんたはなんのために生きてんのよ? ほらっ、ゴミクズ! 答えてみなさいよっ!」
 まりさの泣き顔を見ていると、ある程度での切り上げが難しい。
 普段はふてぶてしく見える顔が、泣くと無様に可愛らしくなるからだ。

「ぐじゅ……ぐずっ、ゆ゛……わ゛……わ゛、がり゛、ません゛……」
「あら、自分がなんで生きてるのかもわかんないの? じゃ、死ぬ? なんで生きてんの
かわかんないんなら、とっとと死んじゃえば? ほら、どうなのよっ! 死ねよ!」
 死ねと言ったものの、美鈴にはまりさを殺す気は全くない。

 むしろ、死んで貰ったら困るのである。
 全てを奪い、痛めつけ、泣かせ、いじめ抜き、時には飴を与え、自分好みに矯正してき
たのだから、簡単に死なせる気は全くない。
 さほど長い時間をかけて矯正を行った訳ではないが、その代わりに工夫をし、手間を掛
けたのだから。

「ぐゆ゛っ……じ、じに゛だい゛ですっ……う゛ぁぁぁぁんっ!」
「そう、死にたいのね? でもあんたは自分で死ぬ事も出来ないじゃないっ! また出来
もしない望みを言ってるのよ! あんたは、生きるのも死ぬのも、私にお願いしないとま
まならない、何も出来ないゴミクズなのよっ!」
 事実まりさの生殺与奪は、完全に美鈴によって握られているのであった。

 自由に活動できる野生のゆっくりならば、崖から飛び降りたり、入水するなどの方法で
自殺する事も可能だが、美鈴に飼われているまりさには行動の自由が無い。
 そもそも飼われている場所が、紅魔館中庭の物置小屋──美鈴ハウスの、鍵のかかった
地下室なのだから、行動の自由以前に太陽の光すら見る事が出来ない。

 飼われている部屋で、美鈴が勤務中など不在の時を見計らって、角のある物や壁などに
渾身の力で体当たりしたとしても、死ねるかどうかは微妙なところであった。
 何故ならば、一緒に飼われている他のゆっくり、ありすとゆっちゅりーの二匹がいるた
め、自殺を図る前に阻止される、または図って後に助けられてしまう。

 ありすとゆっちゅりーの二匹は、まりさを嫌い憎んでいるが、死なせてしまった場合、
美鈴から厳しく責任を追及される事も良く判っているから、全力でまりさが死なないよう
に力を尽くすであろう。

 すなわち、まりさは自らの意志で死ぬ事が出来ないのである。
 そして、命を繋ぐエサは、飼い主である美鈴によって与えられている。

 生きるも死ぬも、飼い主次第の存在──それがペットと言う身分なのだ。

「ゆ゛っ……ひぐっ……ぐじゅっ……う゛ぅっ……」
「ふんっ、泣いてばっかりいないで、ちっとは私の役に立ってみたら? その気が無いん
なら何もしなくて良いけど、何もしないんだったら、また殺さない程度に皮剥いだりして、
私が勝手に役立てるわよ? どうなの?」
 たっぷりと自分の立場をわからせた上で、美鈴は助け船を出してやった。
 それに乗らないのならば、言葉通りにいたぶるつもりである。

「ゆ゛ゆ゛っ! ご、ごべん゛なざいっ! ま、まじざ、おね゛えざんのっ、や、や゛ぐ
に、だっだぢたい゛でずぅぅぅぅっ!」
 殺さない程度に皮を剥ぐ、それはまりさが最も恐れる懲罰である。
 死ぬほどの苦痛、事実もう死にたいと思ったほどの苦痛を、再び味わうのは何よりも怖
く嫌であった。

「あら、そうなの? 私の役に立ってくれるの? ふふっ、いい子ねぇ……そうよ、そう
やって、あんたは私に媚びて、私に心から服従しないといけないのよ。わかった?」
「ばっ、は、はい゛ぃっ! わ、わ゛がり゛まじだっ! ま、ま゛りざ、お、お゛ねえ゛
ざんの゛や、や゛くにだちまずぅっ! だっ、だだぜて、ぐだざいぃぃぃっ!」
 役立たねば苦痛が訪れる、そう思っているまりさは必死であった。
 必死に美鈴に、役立ちたい、役立たせてくださいと懇願する。



「……んー……これって、ペットのしつけ、なのかしら……?」
 事の成り行きを、飽きもせず見続けているレミリアは呟いた。

「なんか、しつけって言うよりも……んー、特殊なプレイみたいね、これ……まぁ、
でも相手がゆっくりとは言え、美鈴も案外カリスマあるのね……いや、カリスマじゃない
か、これは……うーん」
 何となくだが、レミリアはこのまま見続けていると、精神衛生上あまり良くない事にな
りそうな予感がした。

 だが、なんだかんだ思いながらも、ここまでずっと窃視し続けていたのだから、せっか
くだからもうちょっと見ていようと考え、その場に留まった。

 ──この後レミリアは、やっぱり立ち去るべきだった、と後悔する事になる。




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最終更新:2008年10月27日 20:42
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