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ジークリンデ・ハルトシュラー&ジークフリード・ハルトシュラー入館

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ジークリンデ・ハルトシュラー&ジークフリード・ハルトシュラー入館

少年は、読んでいた本から目を離して外をながめた。
電車から見える景色は、一面の海だ。
その先、海沿いに続く線路のむこうに町並みが見えた。
目的地まであと十数分といったところか。
少年は本を鞄に戻し、向かいの席の少女に声をかけた。

「お姉ちゃん起きて。そろそろ到着だよ」

向かいの席に座っている少女は、窓に寄りかかったままで起きる気配が無い。
仕方なく少年は、少女を揺すって起こそうとした。

「お姉ちゃん、起きて起きて。到着だよ」

少女はやがて目をさまし、大きく伸びをして少年に尋ねた。

「おはようジーク、到着かしら?」

「ううん、あと少し。町が見えるよ」

少年の声にうながされ、少女は窓から顔をだした。
先ほどよりずっと町は近づき、その周りには海と山がみえる。

「ふうん、田舎だと思ったけどなかなかよさそうな所じゃない」

「避暑地には良い所だろうね」

「ま、旅費はたっぷりとあるし、ゆっくり静養しましょうか」

少女が側の鞄を動かすと、じゃらじゃらと音がする。
少年はその音を聞いて、少し顔を曇らせた。
自分の鞄には雑貨が、あちらの鞄には貴金属が入っている。
少女、つまり自分の姉が、家から勝手に持ち出した物だ。

(まったく、勝手なんだから……)

少年はため息をついた。
ある日突然、姉の家出に付き合わされる羽目になったのだ。
理由は非常にシンプルだった。

「なんとなく」

そう答えた姉は、家から金銭を持ち出すと(姉に言わせれば借りただけ、だが)
自分の襟首を捕まえ、無理やり同行させたのだった。
一応説得を試みたが、それで思い直すような姉ではない事は承知している。
少年はずるずると、少女の家出につき合わされていた。
次なる少女の行き先は、閑静な洋館だという。
そこでしばしの滞在を予定していた。

「この写真によればなかなか趣のあるところらしいわ。ところでジーク、これは
 なんて読むのかしら? 漢字ってのはよくわからないわ」

目的地の名前すらも知らなかった事に、少年はふたたび重いため息をついた。
これから起こりうるであろう出来事を考えると、気が重くなってゆく。
しかし母国はすでに遠く、少年にはどうする事も出来ない。
疲れをかくさずに、少年は答えた。

「それは『箱庭館』て読むんだよ。お姉ちゃん」

童話と民話創作スレより
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