堕落天使 - The Fallen Angels -

【だらくてんし】

ジャンル 対戦格闘
対応機種 アーケード
販売・開発元 彩京
稼働開始日 1998年3月11日
プレイ人数 1人~2人
判定 なし
ポイント 格ゲーとしては出来が良い
物足りない部分もあり
KOFに与えた影響も見受けられる
彩京作品リンク


概要

『バトルクロード』以来となる彩京が製作・販売した対戦格闘ゲーム。
基板の出回りが非常に悪く家庭用にも移植されていないため知名度は極めて低いが、その独特の雰囲気からかマイナー格ゲーの話題で名が挙がることも多い不思議な作品。通称『ダラテン』。

開発メンバーにはKOFシリーズの製作に関わったクリエイター達が数名ほど参加していて、後にK2スタジオの代表取締役を務める児玉光生氏もその1人である。


ストーリー

+ 公式サイトから転載

西暦2000年2月10日 午前7時13分 震度7
完全な情報操作による「平和」は一瞬で崩壊し、
コンピューターで制御されたコンクリジャングルの機能は停止した。
大規模な地殻変動により、その街は大陸から分断され
完全に孤立した。
金に狂ったメスブタは意味のない権威にしがみつき、
正義面した悪党は「人の道」を説いた。
「SEX」「犯罪」「ドラッグ」・・・
そして、いつしかその街は皮肉を込めて
こう呼ばれるようになった。
最後の楽園「EDEN」。
そして・・・時に西暦2010年・・・。


評価点・ゲームシステム

  • ストーリーのテキストに象徴される、退廃的ムードの漂うディストピアな世界観が本作最大の特徴にして魅力。くすんだ色使いの実写取り込みのような背景や一癖も二癖もあるキャラクター達、悲壮感の漂うBGMなど、本作独自とも言えるセンスは存分に発揮されている。
  • キャラクターのアニメーションは絵の枚数が多く非常に滑らかに動く。
    • 大きな見所としては、空手バカキャラである鬼瓦の頭にたかっているハエであろうか。
  • 起用声優陣が豪華。緑川光氏や関智一氏、大谷育江氏に郷里大輔氏など実力派の声優が多い。
  • 格闘ゲームとしての出来は及第点以上。対戦ゲームとしての実用性もそれなりに高い。
    • 鋭い軌道のジャンプ、気合溜め操作と攻撃力の上がるパワーMAX状態と、システムはKOFのものに近く、仕上がりも攻めゲーと言えるバランスになっている。
    • 本作ならではのシステムとして、ボタン同時押しで構えを変え通常とは異なる通常技が出せる「スイッチング」、キャラごとにルートの決められたボタン順押しでの連続攻撃「ラッシングコンビネーション」、無敵になりつつ前進した後にボタン追加入力で攻撃ができる「エスケープダッシュ」などがある。

問題点

  • キャラクターの動きが全体的にトリッキーで癖が強い。本作の味と言えばそれまでだが、リーチや硬直が分かり辛いと感じられることも少なくないだろう。
    • なまじアニメーションが滑らかなのが原因か。また、滑らかなアニメの代償かキャラクターの技以外の動き(挑発や勝利ポーズ)は使いまわしが非常に多い。
  • キャラクターバランス的には結蓮、結蘭の二兄妹が図抜けた強さを持つ。
    • 近年の研究の成果により地位が向上した結蓮は、通常技から必殺技まで使えるものが揃っており、機動力も高い。反撃性能・連続技の威力も上質なハイスタンダードキャラなので、やりこむほどに強さを発揮できる。パワーMAX状態だとダッシュからの立ち弱Pだけでループ連続技になったりと、胡散臭さも抜群。
    • 結蘭はジャンプ中に↓+強Kで出せる膝が強力無比。ガード方向が非常に分かりにくい飛込みを行える上、下方向への判定がとても強く、全体的に地対空の弱い堕落天使の世界では落とすことが困難。そこからの連続技でダウンを奪う必殺技に簡単に繋げられるため、起き攻めループがとても強い。難点は若干単発攻撃力が低いことと、兄と比べて地対空が強くないことぐらい。
    • なお当初から強いと言われていた鬼瓦は、上の二人に比べて研究が進んでも強さを増す点が見つからず、「しゃがんだ相手に対する有効打が少ない」「防御力が低い」「ラッシュ力が足りず、ダメージを奪う機会に恵まれにくい」という数多くの欠点が露呈、現状では下から数えたほうが早いほどランクを下げてしまった。超必殺技「ドス竜」によるガード不能攻撃と*1*2、パワーMAX時限定ながら入力が簡単で威力も大きい永久連続技を持ってはいるが、フルにそれらを使いこなしても先述の二兄妹には到底及ばない。
  • 連続技のヒット数が表示されない。本作には見た目だけでは繋がっているか分からない連続技も多く、この点は不便。
  • 非常に淡白なシナリオ
    • 評価点にも上がっている世界観の良さだが、ゲーム中のストーリー描写は勝利メッセージ及び中ボス、ラスボス前のイベントカットのみ。ラスボスを倒すとエンディングクレジットのみでエピローグ等が存在しないのは、はっきり言ってもったいない。

総評

知名度こそ高くはないものの、見た目の類似感が出やすい格闘ゲームにおいて独自の雰囲気を醸し出した点は評価が高い。
しかし、その雰囲気をうまく伝える為のストーリー描写が薄く、またその独特さは万人受けする物とは言い難かった為か、知る人ぞ知るマイナーゲーになってしまった。

ゲームバランス自体は一部強弱があるものの破綻はしていないので、その雰囲気に取り込まれた方はプレイしてみるのも一考だろう*3


余談

  • 前述の児玉氏の回想によれば、本作は開発期間が短く、十分なスタッフを確保できなかったため、納得のいく仕上がりにはならず、かなりの見切り発車で発売されてしまったと述懐している。キャラが少なかったり、エピローグが未搭載な点もその影響が見受けられる。
    • 各キャラごとにストーリーモードが搭載されるはずであった。
      • 結蓮はストーリーの展開次第で髪を切られてしまい、そこからは女装を解いて戦うというドラマがあったらしい。この「女装を解いて戦う結蓮」の外見は、後に彼の妹・結蘭の元ネタになった。
    • 最低でもさらに4人、キャラが追加される予定だった。「ジミー」「ラピス」「スネーク」「シド」といった名前の面々で、基板内にデータが残っている。いずれも一癖あるキャラデザインであり、実に惜しまれる。中には灰児以外の「ケースクラス」ではないかと思わせるキャラも…。
    • その後、2019年5月26日に開催されたイベント「高田馬場ゲーセンミカド10周年記念~イケダミノロックのそんな感じでお願いします 大・復・活!!~」の席上で本作にボツキャラ追加や諸々の調整を施した「完全版」がexA-Arcadia基板によるAC版としてリリースされることが決定。その後はCS機への移植も予定されているとのこと。
  • 壬生灰児の必殺技及び超必殺技の技名は日本のロックバンド、ブランキー・ジェット・シティの曲名が元ネタ。

『KOF99』への影響

  • 人気格闘ゲームのシリーズ作『THE KING OF FIGHTERS '99』には、本作から影響を受けた要素が数多く見られている。
    • 背景グラフィックの暗い色調のアングラ的な雰囲気は本作の方向性と近い。
    • 『KOF99』からの新システム「かわし移動」は、本作の「エスケープダッシュ」と性質が酷似している。
    • 『KOF99』の新主人公「K'」は、本作の人気キャラである壬生灰児と共通点が多い*4。K'の相棒のマキシマも、本作のハリーとそっくり。
      • 旧主人公である草薙京にも灰児に似た動きや台詞の新技が追加されている。灰児が「皆殺しのトランペット」を放つ際の「受けるか?このブロォー!」なのに対し、京が放つ「百八拾弐式」は「受けろ!このブロォー!」とパクリは明白*5
      • 灰児自体も『KOF97』に登場した七枷社に似ていると言われているが、これは本作のデザイナー(過去にKOFを制作し、京や庵をデザインしていた。)が灰児や社の原案となるキャラを描き残してSNKを退社し、それが社として使われていると知らずに本作で同じキャラデザインを使ってしまったかららしい。
    • これらのオマージュを暗に認めるように、『KOF99』の新キャラの一人であるウィップのプロフィールには「嫌いなもの:天使、堕落」という記述がある。また、対ボスBGMの曲名も「Dear Falling Angel」。さらにラスボスであるクリザリッドの超必殺技名が「エンド・オブ・エデン」(本作の舞台は「EDEN」。)。

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最終更新:2022年04月10日 19:22

*1 「発生が早い上にガード不能」という性質があり、ジャンプ攻撃をガードさせて着地してドス竜を撃つだけでヒットが確定。

*2 さらに起き上がりリバーサル無敵技を出すことができない仕様から、ピタリと起き上がりに重ねても確定してしまう…のは昔の話。今は1フレームだけ、起き上がりにリバーサルでエスケープダッシュができるらしいことが発覚。確定しなくなってしまった。

*3 最も2022年現在でも、このゲームを置いてあるゲームセンターを見つけるのが大変であることに変わりはないが…

*4 銀髪、サングラスを愛用、改造人間、無愛想で無頓着、型のない暴力的な戦闘スタイルなど。またK'の服装も本作のクールとほぼ同じデザインのレザースーツ。大きな違いは肌の色。

*5 そして、『KOF2000』の「百八拾弐式」に至ってはモーションまでもが「皆殺しのトランペット」とほぼ同じになってしまっている。