STEINS;GATE 線形拘束のフェノグラム

【しゅたいんず・げーと せんけいこうそくのふぇのぐらむ】

ジャンル 想定多元アドベンチャー


対応機種 Xbox 360
プレイステーション3
プレイステーション・ヴィータ
プレイステーション4
Windows7/8.1/10(Steam)
発売・開発元 5pb.(MAGES.)
発売元(Steam) Spike Chunsoft
発売日 360/PS3 2013年4月25日
PSV 2013年11月28日
PS4 2018年9月20日
Steam 2019年2月20日
定価 通常版 7,140円
限定版 11,550円(共に税5%込)
備考 PS4版はPS4/PSV版『STEINS;GATE ELITE』
の初回封入特典として付属
Steam版はSteam版『STEINS;GATE ELITE』
の初回封入特典として付属
レーティング CERO:B(12才以上対象)
判定 賛否両論
ポイント 様々なキャラクター視点の『STEINS;GATE』
ゲーム性は著しく低くボリュームも不足
ROBOTICS;NOTES』との繋がりあり
科学アドベンチャーシリーズ


__ラボメンの数だけ物語がある。




概要

『比翼恋理のだ~りん』『変移空間のオクテット』に続く『STEINS;GATE』ファンディスク第3弾。
各キャラクターをメインにしたショートシナリオで構成されたオムニバスADV。
主人公の岡部を始めとするラボメン達の他、ミスターブラウンこと天王寺のシナリオもある。
シナリオをクリアするごとに先のシナリオ群が解放される仕組みになっている。
「岡部 ⇒ ダル・紅莉栖 ⇒ 鈴羽・天王寺裕吾・フェイリス ⇒ るか・まゆり・萌郁 ⇒ 鳳凰院凶真 ⇒ 綯」と解放される。
そして、中には『ROBOTICS;NOTES』と繋がりを見せるシナリオもある。


シナリオ

  • 以下のシナリオ紹介は『STEINS;GATE』本編の大きなネタバレを含んでいます。ご注意ください。
+ 問題なければクリック
  • 「走査線上のジキル」 -Dr. Jekyll on lines- (岡部倫太郎)/0.337199
    • ゲーム開始時に唯一開放されているシナリオで最初にプレイするシナリオ。岡部倫太郎はまゆりの作ってくれた「アルパカマン」のスーツとDメールやタイムリープマシンを駆使し工夫して、秋葉原の平和を守る「アルパカマン」として活躍していた。しかし世界線変動を繰り返しても皆が幸せになれる結果はなかなか生み出せない。苦悩する岡部の前に喪服姿の紅莉栖が現れ、衝撃の事実を告げる。
  • 「絢爛仮想のファムファタール」 -Bird singing in cage- (橋田至)/3.019430
    • @ちゃんねるにて、チョップスティックガールというコテハンが謎の暗号を解いてほしいという文言と爆発物を見つけたという書き込みを残し、釣り宣言とともに途絶える。橋田至は事前にコミケ会場で出会ったマイナーなチョップスティックガールのコスプレをした少女を思い起こし、嘘と思いきれず調査に乗り出す。
  • 「黄昏色のソーテール」-Vermilion sooteer- (牧瀬紅莉栖)/0.328403
    • タイムリープマシン完成後直後に掛ってきた岡部への携帯電話の着信の直後岡部の態度が豹変し、タイムリープマシンを破壊しようとしたりラボを一目散に走りぬけようとするなど異常行動を取る。紅莉栖は他のラボメンに協力を得ようと仲間に電話をするも、まもなくフェイリスから連絡が入り、岡部、フェイリス、そして彼女の執事・黒木とともにラボに戻ると、ラボには血が残っていた…。
  • 「幽霊障害のランデヴー」-Ghosting rendezvous- (阿万音鈴羽)/0.337337
    • ラジオ会館にめり込んだままだったタイムマシンが激しい雨で故障した。過去に跳ぶ手段を失い、失意に暮れる鈴羽の前に二人の自分が現れる。一人は軍服に、もう一人はメイド服に身を包んでいた。彼女達は別の世界線の記憶なのか?それとも鈴羽の見ている幻覚なのか?
  • 「雨鈴鈴曲のスクレイパー」-A strange building filled of love- (天王寺裕吾)/3.386019
    • 天王寺は悩んでいた。ブラウン管工房を構えるこのビルが娘の綯にとって本当に居心地の良い場所なのか、と。そんなある日、奇しくも宝くじで三億円を当ててしまった彼は、この機会にビルの建て替えを決意する。約一年を掛けて新ビルが完成するが、綯の表情は暗く、ラボメン達も変わってしまった。建て替えた事を後悔する天王寺に岡部がDメールの使用を提案する。
  • 「桃色幻都のシャ・ノワール」-Super hero chat-noir -(フェイリス・ニャンニャン)/3.030493
    • 秋葉原で起きているオカルトチックな噂を耳にしたフェイリスは、自分の愛する町を守る為、まゆりが作った衣装を纏い、鈴羽と共に守護戦士「シャ・ノワール」に扮して調査に乗り出す。しかし噂の実態が、駅前商店街の振興組合の自作自演であり、しかも町づくりに強い影響力を持つ自分に何の相談も無かった事を知り、ショックを受ける。更に追い打ちを掛けるように鈴羽が秋葉原を離れると聞かされ…。
  • 「迷宮錯綜のヘルマフロディトス」 -Hermaphroditus in labyrinth- (漆原るか)/0.456923
    • まゆりの死を受け入れ、るかを男に戻す事を諦めた岡部。るかはそんな岡部に、せめてまゆりの願いだった自分のコスプレ姿を生前の彼女に見せてあげたい。と、タイムリープを申し出る。一見、本編のるかエンドを描いたシナリオのようだが…。
  • 「悠遠不変のポラリス」 -Eternal polaris- (椎名まゆり)/0.571046
    • まゆりは最近の岡部と紅莉栖の様子がおかしい事、その原因が自分である事に気付き始めていた。意を決し、紅莉栖に真実を打ち明けるように懇願する。紅莉栖は躊躇しながらも、岡部がまゆりを救う為に紅莉栖を見殺しにしなければならない事、自分もその事実を受け入れた事、そして岡部がその事で苦悩し続けている事を語る。自分の為に紅莉栖を犠牲に出来ない。しかし岡部を苦しめたくもない。そう考えたまゆりはある決意を固める。
  • 「昏睡励起のクアンタム」 -Quantum excited in coma- (桐生萌郁)/0.509736
    • 萌郁はSERNのラウンダーの一員としてタイムマシンの調査の為に未来ガジェット研究所へ潜入していた。上司であり、母代わりであるFBの命令は絶対と考えていたが、ラボメン達の、特に紅莉栖とまゆりの温かさに触れる事で次第にFBに従う事に躊躇を覚えるようになる。だが、そんな気持ちを他所に、とうとう未来ガジェット研究所への襲撃とラボメン達の抹殺が命じられてしまう。
  • 「三世因果のアブダクション」 -Three contrapasso about the abduction- (鳳凰院凶真)/4.456441
    • ひとまずの最終シナリオ。岡部はタイムリープの反動で直前の記憶を失ってしまう。直後、まゆりを誘拐した旨を伝えるDメールが届く。消えたまゆり、謎のDメール、火事、黒マントの男達。タイムリープとDメールの使用を繰り返し、世界線が変動する度に事態は混迷していく。しかし岡部が意を決して行動した時、それらは一つの真実へと収束していく。
  • 「月暈のビヴロスト」 -Bifrost of lunar- (天王寺綯)/0.337161
    • 隠しシナリオ。天王寺の死から数年。何も分からないまま突然父を失った綯は、行方不明だった橋田至と再会した事で、生前の父に気持ちを伝えるチャンスを得る。

評価点

  • 各シナリオはそれぞれ別の世界線の出来事を描いており、本編を別角度から補完するシナリオの他、本編に似ているようで何かが違う展開、本編では起こり得ない、或いは起こり得たかもしれないifストーリー、はたまた本編とは全く関係無い時間旅行などと、様々なストーリーが描かれる。中には世界線変動率3%や4%というシナリオも。
    • 複数のライターが参加しておりそれぞれのシナリオの味が違ったりする。
    • また、本編の主人公である岡部以外の視点で体験する事で、本編とは違ったキャラの側面や心情を垣間見る事ができる。
      • 例えば、フェイリスの場合は実際にその視点に立つ事で、彼女が如何にオンとオフを使い分けていたのかがよく分かる。
      • 紅莉栖やまゆりがタイムリープするというシーンもあり、別キャラ視点ならではの新鮮な体験もできる。
    • フェイリスと鈴羽、綯とダルなど、本編では接点が殆ど無かったキャラ同士の絡みもある。とあるシナリオではダルと鈴羽が親子として一時を過ごすと言う展開も。
    • シナリオの質も良く、同じファンディスク『比翼恋理のだ~りん』は恋愛がメインだが今作はシリアスな展開が多く、本編さながらの謎を追いかける楽しさや、得体のしれない緊張感、ユーモアがある。
    • SERNの一員となった牧瀬紅莉栖。まゆりの死亡を受け入れた世界線などありえる展開も用意されている。
    • キャラクターごとに携帯電話を使用する展開もあり、各キャラに沿った携帯電話が設定されている。
  • ファンサービス
    • 本編では出番が少なかったフェイリスパパが比較的多く登場。4℃、るかパパ、ドクター中鉢と言ったサブキャラが本編とは大きく異なった役割を務める。本編には登場しなかったダルの未来の嫁も登場。秋葉家の執事・黒木に立ち絵が与えられた。『ROBOTICS;NOTES』をプレイした人ならニヤリとできる演出がある…等々、枚挙に暇が無い。
    • 特にドクター中鉢は岡部に挨拶に来いと言うなど、牧瀬紅莉栖との和解が描かれている。
  • 世界観の補完
    • フェイリスパパという秋葉原の実業家という立ち位置から「秘密結社」の説明が入る。世界には個人・実業家・政府などを超えた多くのグループが存在する秘密結社をありふれたもので、ラボメンすら秘密結社であると、世界観の補足がされた。
  • 岡部の立ち絵
    • 今回は岡部の立ち絵が多く登場する。本編では岡部視点で進行していたため、せいぜいイベントCGか全体集合でしか岡部の姿は見られなかったが、今作はシナリオ毎に視点が切り替わる特性上、岡部以外の視点では立ち絵付きで登場する*1
    • その為新鮮味があり、意外にイケメンであることが確認できて評価されている。

賛否両論点

  • 本編のストーリーを補完する要素はそこまで強いとは言えず、その方面を期待すると肩すかしを喰らいやすい。
    • 公式で「本編を補完する」というアナウンスがあったと言う訳ではないが、本編では「何故このキャラが、この世界線ではこうなったのか?」という疑問を抱かせる要素が多く、ラボメン視点という触れ込みからその補完を期待したユーザーは必然的に多かった。
    • しかし本編と密接に関係しているシナリオは紅莉栖編「黄昏色のソーテール」ぐらいで、後は多少本編を要素を含む程度である。
      • 特に最終シナリオ「三世因果のアブダクション」は世界線変動率が4%にまで達しているだけあり、本編から完全に独立したシナリオである。
      • その為、本編の補完を期待していたユーザーには不評である。
    • 「萌郁とFBのメール」「まゆりと綯の出会い」など本編を部分的に補完するエピソードはあり、そこは純粋に評価されている。
  • 複数ライターの起用によって各シナリオにそれぞれの味があるのは長所でもあるのだが、逆に言えば本編とも味が違う(=違和感がある)と言う意味でもある。
    • 本編を手掛けたライターである林直孝氏は今回シナリオを2本ほど手掛けたのみ*2
    • 特に「三世因果のアブダクション」は最後のシナリオながら完全に独立しているという点も併せ、異彩を放っている。他のシナリオは大なり小なり本編と関わりあるのに対し、このシナリオはそれすらもほぼ皆無である。
      • ライターは『Ever17 -the out of infinity-』などで有名な打越鋼太郎氏であり、短編ながらも氏の持ち味である二転三転する展開や伏線回収によるカタルシスが存分に盛り込まれている*3
      • しかし作風が強く現れたが故に、岡部が本編に比べて思慮の浅い行動が目立つ*4など本編との違和感が激しく、加えてストーリー自体が本編とは関係無いという事からファンには良くない評価をされる事もある。
      • 簡潔に表すと、ある世界線で起きた「時のいたずらによって事象が幾重にも絡み合ってしまった事件」を描き、数多の謎に翻弄されながら事態の解明を目指す話である。
        謂わばシュタゲの世界観を用いて打越氏が作り上げたオリジナルストーリーなのだが、「最後にプレイ可能&岡部が主人公」という事で「どう本編に関わるのか」とファンに余計に期待を抱かせてしまい、余計に肩透かしを喰らわせた格好となってしまった。
    • ただし、林氏が各シナリオの監修を行っているので、露骨なキャラ崩壊や世界観の乖離は無い。

問題点

  • 一本道のシナリオ
    • 『STEINS;GATE』本編は岡部がDメールや電話レンジ(仮)などを使用する事で、シナリオが分岐するのだが本作にはそれが無い。無論、普通の選択肢も無い。ただ一本道のシナリオを追うだけであり、この手のADVではあってしかるべきのBADエンドも無い。
    • 言ってしまえば『STEINS;GATE』のifストーリーを集めたノベルゲームである。
    • やり込み要素として各シナリオに届いたメールの回収一覧である「メールリスト」が存在するが、一本道という事もあってか周回がやや面倒。シナリオによっては始めた時点で100%獲得となる事も。
  • ボリューム不足
    • 個々のシナリオは短く、ゆっくり進めてもせいぜい20時間程度で終了してしまう。上述した通りそれを補うようなエンディング分岐も無い。
    • ファンディスク故に本編並のボリュームを要する訳ではないが、それでいて値段は本編と変わらないのだから不満が残りやすい。
    • トロフィー/実績コンプリートも非常に容易。
  • 読む順番に自由がない
    • 11個のストーリーは中途半端に読み進める順番が固定されている為、好きなキャラや見たいシナリオが好きに読めない。
  • 使い回しが多い
    • 立ち絵やBGMなど新規がほとんどない。低予算すぎるという意見も

総評

『STEINS;GATE』ファンディスク第3弾。
様々なキャラクターの視点で描く『STEINS;GATE』は新鮮味があり、内容も本編に準じたシリアスで奥の深いものとなっている。
しかし、本編の補完と考えると今一つであり、あくまで『STEINS;GATE』のifストーリー集と言った形となっている。
また、一本道で分岐が一切無い構成はテキスト系ADVとしてもゲーム性が低く、ADVにシナリオ以外も求める人にはかなり厳しいものがある。
違うキャラの視点を描いたシナリオを純粋に満足できたか否かで評価がはっきり分かれるだろう。
シナリオを見る際も、本編を補完するのではなく世界線の違いによる様々なifストーリーを楽しむ…ぐらいの心構えでプレイした方が良い。


余談

  • 本作の発売の約2ヵ月後の2013年7月3日に、本作のサウンドトラックにあたるアルバム『「今井麻美・関智一のRADIO STEINS;GATE」+ 線形拘束のフェノグラム サウンドトラック』が発売。商品名から分かる通りメインはラジオCDのほうで、後者はおまけ扱いであった。
    • ちなみにこのラジオ、本来の目的は本作と旧作の移植版・劇場版アニメの宣伝だったはずなのだが、パーソナリティーの片割れである橋田至役の関智一氏が初回で発した「ある一言」が引き金となり、いつの間にかスタッフ・リスナー総出で今井麻美氏(牧瀬紅莉栖役)をいじり倒す番組と化していた。
  • 2014年4月10日には本作のノベライズ『STEINS;GATE 線形拘束のモザイシズム』が電撃ゲーム文庫より発売された。作者は海法紀光氏。
    • ノベライズといっても、本編の単純な小説化ではなく全シナリオを再構成させた独自のシナリオとなっている。
+ タグ編集
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  • Xbox360
  • PS3
  • ADV
  • 2013年
  • 5pb.
  • 科学アドベンチャー
  • MAGES.

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最終更新:2022年02月24日 14:14

*1 無論、プレイヤー視点のキャラはそのシナリオ内では立ち絵無し。

*2 そのうち1本は別のライターが原案を出した物で、実質1本。

*3 構想段階で林氏の元に、打越氏から膨大なタイムテーブルを記したExcelファイルが届いたとか。

*4 記憶を失っている事と、冷静に分析する間も与えず不可解な現象が次々と襲い来る状況の所為でもあるのだが。