アーマード・コア ヴァーディクト デイ

【あーまーど・こあ う゛ぁーでぃくと でい】

ジャンル メカカスタマイズアクション
リアルタイムストラテジー


対応機種 プレイステーション3
Xbox 360
発売・開発元 フロム・ソフトウェア
発売元(海外) バンダイナムコゲームス
発売日 2013年9月26日
定価 通常版:6,800円
コレクターズエディション:16,800円
プレイ人数 1人(マルチプレイ時最大10人)
レーティング CERO:B(12才以上対象)
判定 なし
ポイント UI及びシステム面の不備の改善
基本システムは前作とほぼ変わらず
本格的なAI編集
アーマード・コアシリーズ


概要

数多くの新要素を実装しながら、調整不足によって多くの批判が寄せられた『アーマード・コアV』の続編。
プロデューサー自ら「マイナスからのスタート」と発言した本作は、公式生放送にて改善点・新要素が発表された。
前作に落胆させられたプレイヤーにも、遊び続けたプレイヤーにも、多くの期待と不安を与えながら発売を迎えた。


前作からの追加および変更点

基本システムは前作『アーマード・コアV』と同じ。

ダメージ関連

  • 全体的にダメージが前作より抑えられた。
  • また、装甲値を攻撃力がギリギリで上回っている場合に、貫通ダメージが低下するシステム(通称「小貫通」)が追加された。
    • 「即死ゲー」と揶揄された前作から脱却するための調整だと言える。

勢力戦

  • 今作でのメインコンテンツであるこれは、あらかじめ用意された3つの勢力のうち1つを選び、その勢力と敵対する勢力側のチームと対決するというもの。
    • 用意された3つの勢力は最終目的地である「タワー」を目指して段階的に敵拠点を攻略していく。この拠点がマルチプレイにおけるマップになる。
    • 勢力は自動で攻撃地及び防衛地を指定する、いわゆるオートマッチングで敵チームと戦うようになっているため、マッチングはかなり改善された。
      • 攻撃する敵勢力の指定や、自勢力があらかじめ指定した攻撃地を無視したいなどの条件を希望することはできる。
  • 侵攻には通常と特別の二種類が存在。前者はチームランクが通常通り上がっていく。後者は通常侵攻で溜めたポイントを使って可能となり、勝てば劇的上昇、負ければ急下降するというもの。
    • チームランクはFからSSSまである。
  • 2024年3月31日、サーバーが老朽化したためフロム・ソフトウェアによるオンラインサービスが終了。辞めるにはいい晴れた日だった。
    • 勢力戦とストーリーミッションの協力プレイは出来なくなったが、PSNもしくはXbox Liveを利用したフリー対戦は引き続きプレイ可能となっている。

UNAC(ユーナック)

  • コンピュータが操作する味方AC(人工知能)を作製できるシステム。
  • 機体のアセンブルはプレイヤー同様だが、行動に関してはチップと呼ばれるあらかじめ用意されている行動パターンを組み合わせてUNACの動きを決めるという、本格的なもの。
    • 例えば、自身のAPが減少した際に敵から離れるようにしたい場合、「APが○○秒で△△以上減った時」という条件の下に、任意の相対距離を保つようにチップを設定する……といった具合。
    • 勿論同じ結果を生み出すチップでも、その過程(例:ブーストで一気に近づけ or 徐々に近づけ)が違うチップがいくつもあるので、カスタマイズの幅は恐ろしく広い。

ハードコアモード

  • ストーリーミッションクリア後に解放されるやりこみ要素。
  • 様々な制約が付けられた状態で、ストーリーミッションを1からプレイしなおすというもの。
    • パーツ・資金・プレイヤーランクなどが全てリセットされた状態からスタートする。ハードコアモード専用のセーブデータが作られるので、通常のプレイ内容がリセットされるわけではない。
    • TYPE:A~Jの計10パターンのモードが存在し、プレイヤーは最初にいずれかのタイプを選択する。制約は各タイプによって異なり、被ダメージ上昇や与ダメージ減少、獲得資金の減少や修理・弾薬費の上昇など様々。
    • いずれのタイプでも「残機数」が設定されており、これがゼロになった瞬間強制的にゲームオーバーとなる。当然1からやり直しとなる。
    • また、一度クリアしたミッションは二度と選択できない。ノーマルモードのように同じミッションを何度もクリアして資金やプレイヤーランクを稼ぐことは不可能。
  • クリア後は、自分の名前とクリアしたモードがオンラインの殿堂入りリストに登録される(最新100人まで)。初回クリア時はトロフィー・実績を獲得できるが、それ以外にこれといったご褒美は無い。

新パーツ

  • シリーズではおなじみの「武器と腕部が一体となっているパーツ」が前作を挟んで復活。
    • 従来シリーズとは違い、機体の肩部に武器を搭載する設定のため、今回の武器腕は腕そのものが変形し、腕部と武器そのものという2つのシルエットを持っている。変形機構の説得力は拍手もの。
  • フレームパーツには通常の新パーツに加え、既存のパーツを改造したという設定で「改造パーツ」が追加された。性能が変化しており、外見もそれに準じたものになる。物によっては大きく印象を変えるものも。
  • 武器パーツも大量追加。新カテゴリとしてヒートマシンガン、シールド、プラズマミサイルが登場。どれも前作には存在しなかった特性を持っており、特にシールドはアセンブルに大きな影響を与えている。

武器チューニング

  • 前作では武器育成という形を採用していた。数値の成長率はランダムで、長時間の作業プレイを強いられたため大不評であった。
  • 今回はショップでの武器購入時に、「威力・速射・命中」の3項目に対して最大3ポイントを割り振るという形をとっている。
    • 例えば「威力2・命中1」、「速射1・命中2」といった具合に自由にポイントを割り振ることが出来る。
    • チューニング時は簡単なレーダーチャートが表示され、その場でおおよその性能変化を確認出来るようになっている。
    • 乱数変化は廃止され常に一定の変化を示すようになった。成長傾向によるパラメータ変化率や成長項目も見直されている。

歩兵モード時の機能拡張

  • 撃破されると歩兵モードになるのは前作と同じだが、歩兵モード中にスクリーンショットを撮影できるようになった。
    • あくまで歩兵がカメラを持って走り回っているという体なので、カメラの動き=歩兵の動きとなり融通の利かない場面も。
    • ガレージ内でもスクリーンショット撮影可能。
    • 撮影されたスクリーンショットはハードの中に保存されるわけではなく、サーバー側に保存されるので、パソコンなどで撮影した画像を見たい場合は専用サイトにログインする必要がある。
  • また今回は歩兵モードとの切り替えで、味方の戦闘画面を見ることが可能となった(いわゆる背後霊)。

オーバードウェポン

  • 今作では駆動時間終了時に一定時間ロックオン不可や消費エネルギーの爆増、ブースト強制オフなどペナルティが設けられており、前作に比べリスクを大きくした調整がなされている。
    • 消費エネルギーは、種類により異なるが最低でも8000、最大では無限大に増加する。当然、終了後はまともな戦闘など出来るはずもない。
    • 前作と比較すると完全なる弱体化。使用の際はチームメンバーとの連携がより一層重要となったが、全く使えないというわけではない。オフミッションでは相変わらずSランク・サブクエスト達成のお供となる。
  • また、オーバードウェポンにも1つ新パーツが追加されている。もちろん一撃必殺の超威力である。ギミックも必見。

評価点

テンポの良いマッチングシステム

  • 相手チームとのマッチングが非常に早く、マルチプレイへの参加が非常に快適になった。
    • 適切な相手が見つかれば、30秒も経たないうちにブリーフィング画面に突入する。
  • マッチング条件の指定はあくまで「希望」であるため、条件通りに出撃できない事もあるが、テンポ良く戦闘に参加できるということは極めて重要である。
  • 同じメンバーで再出撃も可能となったため、1から部隊を編成し直す手間を省くことも出来る。

敷居の下がったオンライン対戦

  • 本作のオンラインモードの目的はあくまで「所属勢力の勝利」なので、チーム単位での領地の奪い合いは発生せず新規プレイヤーも気軽に参加することが出来る。
  • 対戦時のマッチングもチームランク・対戦成績が考慮されるようになったため、初心者が強豪チームに一方的に蹂躙されるという事態は少なくなっている。
  • 前作と比較して単純な構造のマップが多く、個々のメンバーの腕さえあればそれほど戦略を練らずとも勝利することが可能となっている。傭兵オンリーのチームにもそれなりのチャンスがある。
    • 裏を返せば、敷居を低くするためにゲームとしての奥深さ・遣り甲斐がある程度犠牲になっているとも言える。

パーツ選択肢の増加

  • 前作の問題点だった、世代ごとの格差を撤廃。元第1世代パーツの多くが実戦レベルの性能を得た。
    • 武器成長システムの廃止もあり、前作と比較してパーツ選択の幅が広がっている。
  • 新パーツもバランス調整に一役買っており、戦場で見かける武器は多い。要求される装甲値も多岐に渡る。
    • いわゆる「テンプレアセン」は常に存在するものの、ある程度のバリエーションがあり、一択という状況には陥っていない。
  • ブースタの消費エネルギーの低減によって、前作では敬遠されがちだった軽量機にも光が当たった。

素早いパーツバランスの修正

  • パーツバランスの悪さで知られる本シリーズ。本作も発売当初はバランスが良いとは言えなかったが、それに対しフロム・ソフトウェアは素早く連続したアップデートを実行。発売から2ヶ月ほどで、現在の良好なバランスに到達。
    • これはアップデートによるバランス修正が可能となった「4」以降の作品としては異例の早さであり、「マイナスからのスタート」とまで言い切った開発陣の本気が窺える。
  • ただし、レギュレーション更新は2013年12月を以て途絶えてしまっている。現在はアセン・戦術が煮詰まってしまい、決して良バランスとは言い難い。

勢力戦終結後の「特殊兵器タイム」

  • シーズンが終了するとリセットまでの猶予期間に入るが、この期間中にオンライン限定の特殊兵器と戦闘することが出来る(いわゆる「エクストラミッション」)。
    • これらの特殊兵器は勢力戦中も登場するが、出現日時はランダム、一定量の侵攻ポイントが必要な特別出撃でしか戦えない、ということで滅多にお目にかかることは出来ない。
  • いずれも歯ごたえのある敵ではあるが、猶予期間は1時間しかないため、これ目当てにその1時間だけを必死にやる人も。
    • 本作でも特殊兵器を撃破することでトロフィーor実績を獲得できる。上述の通り勢力戦中に遭遇することは稀なので、トロコンを目指す人にとっても嬉しい仕様と言える。
    • 前作は基本的にチーム評価が高くなければ特殊兵器と戦えなかったが、今回は特に制限は無く誰でも挑戦可能。
  • 特殊兵器の中には、ACシリーズ(特に4系)ファンに対するサービスととれるものも存在。

オフラインモードの改善

  • すこぶる不評だった前作のオフミッション(特にオーダーミッション)と比較して、随所に改善がみられる。
    • ミッションの舞台となるマップが大増量。前作は10種類程度のマップをひたすら使い回していたが、今作では3倍以上のマップが存在する(オンライン専用マップも合わせると全56種類)。
    • 敵(AC、通常兵器問わず)が前作よりも攻撃的になった。ミッション中の敵の配置などにも工夫が見られ、単調さの払拭に一役買っている。
    • 前作ではアセンブルや動きに問題の多かった敵ACのAIも強化。立ち振る舞いやアセンはそれぞれ個性の感じられるものに仕上がっている。AI特有の高いエイム力や射撃頻度の大幅な向上もあり、歯ごたえのある敵が多い。
  • 前作同様ストーリーの分岐はない。今作はストーリーミッションとオーダーミッションが統合されたうえで細かく区切られており、攻略順もある程度自由なため一本道感は減少している。
    • 味方ACとの共闘、次から次へと湧いてくるUNACとの激闘、シリーズ恒例の騙して悪いがなど、ミッションのシチュエーションも多彩になった。
    • 前作で戦闘開始前に一言二言喋るのみで個性に乏しいと言われていた敵ACパイロット達も、撃破後に経歴や解説が表示されるようになった。
  • 新要素となるハードコアモードは、単純な操作技術だけではなくアセンブル・ゲームシステムに関する深い知識が要求される、非常にやり甲斐のあるモードに仕上がっている。
    • ダメージ倍率が大幅に上下したり、弾薬費や修理費が変化するなど、単純な数字の変化ではあるがそれ故にプレイ感覚が大幅に変わる10種類のモードが用意されている。
    • 同じハードモードでもロックオンサイトが狭小化するだけの3系とは一線を画している。ただミッションのシチュエーション、ストーリーの補完にもなった4系のハードモードとは違いあくまで熟練者向けのチャレンジモードといった所。
    • 敵の武装・装甲値・出現数をきちんと把握した上でアセンを行い、また制約に応じてミッションでの立ち回りを変えるなどの工夫が必要となる。これまでのシリーズでゲームがある程度進んでくると死にステになっていたパーツの値段なども考えたアセンブルも必要になってきたり奥が深い。

奥深いUNACシステム

  • 前述の戦闘バランスと、幅広い種類のオペレーションチップ、そして「相性による影響を受けやすい」というVシリーズの特徴がマッチし、敷居は高いが実戦でも活躍できるようなUNACを作ることが出来る。
  • AI故にAIM技術は凄まじいものであり、しっかりと組んだ機体にそれを活かせるオペレーション、そして地形と相性によっては、人間をも圧倒するUNACを作るのも不可能ではない。
    • 基本的に1対1の撃ち合いでは人間よりも強いが、複数を相手にする際の判断力に欠けるため何も考えずに突っ込ませるだけでは勝てない。各UNACのオペレーションもさることながら、アセンや部隊編成の段階でも考えるべきことが多く、通常のオン対戦とは違った楽しみ方が可能。

画質向上

  • 前作では戦闘中の表示が非常に見辛かったが、画質の向上により前作よりは識別し易くなった。もっとも、OW発動時や被弾時の見難さは相変わらず。
  • ガレージ内での機体の表現はリアル。光の反射から環境による明暗の変化まで、迫力あるクオリティ。

DLC

  • 前作にもあったガレージやCOMボイス、リペイントパーツといったものの他に、今作では「アセン可能なUNACの枠を増やすもの(通常1枠の所を、最大9枠まで増やせる)」や「ストーリーミッションのBGM変更」DLCを配信。
    • 特にBGM変更DLCは過去作のアレンジやなんとシリーズ初のキャラソン*1、プロモーション用に作成された本編やサウンドトラック未収録の楽曲を聞くことができる。
  • 今作も導入しなければプレイに支障をきたすようなものはほとんどなく、良心的なDLCであると言える。
    • また、前作のDLCも引き続き使用可能。データ引き継ぎ時に購入していなくとも新しく購入すれば使用できる。

問題点

敵を殲滅する「だけ」のミッション

  • 前作と比較して単調さはかなり和らいではいるものの、相変わらずほぼ全てのミッションが「敵の殲滅」のみであり、シリーズ全体を通してみるとバリエーションに富んでいるとは言い難い。
    • 前作と変わらず、旧作(『4』系以前の作品)にあった探索系ミッションは一つも無い。また今作にて新たに追加された「ハッキング性能」を活かせるミッションも、勢力戦にはあるが、ストーリー中には一つも存在しない。
    • 世界観的に仕方のないことではあるが、折角マップが大量に増えているのでもう少し工夫が欲しかったところ。
  • ブリーフィングもやはり復活せず簡素な文章で説明されるのみである。
  • 雑魚敵の種類も相変わらず少なく、ミッションの単調さに拍車を掛けている。
    • ほとんどのミッションで防衛型・高機動型・支援型の3種類が使い回されており、たまに未確認兵器や砲台(これもほんの数種類)が出てくる程度。従来シリーズと比較して明らかに少ない。
    • 三大勢力それぞれが用いる兵器の傾向などの工夫も全く見られず、設定を活かし切れていない。
    • 本作では雑魚敵の配置・増援方法などに工夫が見られるが、それでも単調さは拭えていない。
  • 後半は雑魚敵殲滅ミッションすらほとんど見掛けなくなり、ひたすら対AC戦や対特殊兵器戦が繰り返される。
    • ボス級の特殊兵器については前作のように大半がオンライン限定という事はなくなったが、それでも全11種類中4種類程はオンラインの特別出撃のみの登場となる。
  • 対AC戦は前作と同様、旧作におけるアリーナをミッション化したものである為、人によっては水増しと感じる。
  • ミッション終了後にプロフィールが表示されるようになったものの、稚拙な文章が多く、尚且つ前作と同じく戦闘中に敵ACのパイロットが台詞を発する事はなく、やはり旧作に比べるとキャラクターの掘り下げが弱い。
    • 本作の撃破演出*2から撃破時の台詞は無理があるにせよ、旧作で見られた劣勢(優勢)時の台詞が欲しかったという意見は少なくない。

見返りに乏しい勢力戦

  • 3つの勢力に分かれているものの、違いは対戦前に表示される指令書の内容やワールド画面でのBGMが変わる程度。
    • 各シーズンで勝利しても敗北しても、簡単な休戦協定のニュースが表示されるのみ。余韻を味わえないうちに1時間の「特殊兵器タイム」に突入し、その後何事も無かったかのように次シーズンへ移行してしまう。
    • 勝てば領地が手に入り、負ければ自らの領地を奪われる前作と比較すると、戦闘に勝利した際の達成感に欠ける。
  • 戦闘の勝敗により各拠点の耐久値が増減するが、具体的に自チームが敵の拠点耐久値をどの程度減らしたのか、もしくはどの程度回復を許したのかということが分からないため、勢力戦に加担しているという気分を味わいづらい。
  • チームランクは勝敗によって上下するものの、一度ランクが上がってしまうと、以降いくら負けても下がることはないため「ランク上げ」に拘る必要性も薄れた。
  • 勲章という形で1シーズンあたりの個人の成績を確認することは出来るが、具体的な詳細な数値などは確認できないため、自身の強さ指標というのも認識しづらい。
  • 結局のところ、フリー対戦に毛が生えた程度のものに留まってしまっている。

プレイヤーランクの煩わしさ

  • 今作はプレイヤーランクというものが存在しており、これはミッションの達成状況に応じてランクが上がっていくという一種のやりこみ要素なのだが、あろうことかショップの品揃えに影響している。
    • 全パーツを解放するには、一通りミッションをクリアした程度では全く足りず、パーツ集めのためにSランククリアやサブクエスト達成を強いられる。
    • 前作ではチームレベルがショップの品揃えに影響していたが、あちらはミッションをクリアするだけでレベル上げに必要なポイントが貰えた上に、一度クリアしたミッションを再びクリアしても、初回クリア時と同等のポイントが貰えたため、簡単にチームレベルを上げることができた。
  • ミッションオールSやサブクエスト全達成をしなければならない訳ではないが、パーツが全て集まってからが本番と言われる本シリーズ、対戦を前面に押し出した今作では欠点と言えるだろう。

マップの構成

  • 『V』と比べ、数は大幅に増えたのだが、単調なマップだらけという意見が多い。また、フリー対戦で使えるステージもかなり少ない。
  • 一部のマップでは領域限界警告のラインがかなり厳しい場所に引かれており、少しだけ出ただけでも即爆散してしまうという、前作の上空エリアオーバーを彷彿とさせるものとなってしまっている。
  • マップによってはプレイヤーにダメージを与えるギミックが存在し、これもまた不評を買っている。
    • ダメージを与えるギミックは破壊することが出来ず、場合によっては大ダメージを貰ってしまうこともある。その上侵攻防衛の区別は無く、全てのACが無差別に攻撃される。
    • 現在はアップデートによって、現在はダメージギミックのあるステージの耐久力が下げられ、不満の声も聞こえなくなった。

放置された一部のバグ

  • 実害のあるものは少ないが、前作にあった「逆関節がブーストONの状態でジャンプを行う際、およそ50%の確率で消費ENが二倍になるバグ」は健在。重量逆関節と低容量のジェネレータを組み合わせた場合、ジャンプしただけでENの大部分が吹き飛ぶことも…。

未だ無くならない産廃パーツ

  • 最新のパラメータにおいては、極端な強さを誇る武器こそ無いものの、実用水準に達していない武器は未だ存在する。
    • ジャンクパーツ並みの低性能と腕部兵装ワーストクラスの重量を併せ持つバトルライフル「Au-C-H30」や、誤差レベルの発射速度上昇と引き換えにプラズマガンの強みである高火力を失った「MASURAO mdl.1」「mdl.2」がその代表格。これらの武器はミッションですら使い道が無い。
  • ジェネレータは、10種以上が存在する中で使われるのは4種類ほど。シリーズ内ではそう悪い数字ではないが、対戦メインとしてはまだまだといった所。
  • 各フレームの改造パーツは改造元の数値をほんの少し弄った程度であり、アセンブルの幅を広げるようなパーツはごく僅か。
  • 頭部の安定演算性能が重要なのは相変わらずで、これが低い頭部パーツは基本使われない。
  • 今作から全ての頭部パーツに『ハッキング性能』という新たなパラメータが導入されたのだが、活躍の場が全くと言っていいほど存在しない。
    • その効果は『敵勢力のデータスポットをハッキングし、データを回収する』というもの。敵UNACや敵砲台をハッキングして一時的に我が物にするという効果は微塵もなく、本当にデータ回収にしか貢献してくれない。活躍する場も、勢力戦の1ルールのみと非常に乏しい。

変更されたパーツ名

  • 今作は前作から約100年後の世界を舞台にしている為か、パーツ名が一部を除き変更されている。
  • 前作のパーツ名は型番のほかに固有名詞が付いているものが多く、ユーザーは主にそれを俗称としていた。形状やパラメータの数値が俗称になっているパーツも少なくなかった。
  • 今作のパーツ名はカテゴリごとの性能によって法則性はあるものの、ただ単に型番を充てただけの名前が多く非常に覚えづらい。また個別の型番自体も前作の型番とは一致していない。
    • よってプレイヤー間では前作の俗称がそのまま用いられる事が多く、情報交換の場では特に新規ユーザーが混乱しやすい。
+ パーツ名の一例
パーツカテゴリ 前作での名前 今作での名前
頭部 UHD-10 TRISTAN HA-111
PERSEUS HD225-2 Hd-U-C37
HD-19 CHROMEYE HE-119
腕部武装 OXEYE HG 25 AM/HGA-304
URF-15 VALDOSTA AM/RFA-130
KO-2H4/PODENKA Au-C-B07
脚部 ULG-10/A DENALI L2MA-131
ULG-05 TOLIMA L2HA-307
KT-2N3/PUTUO LRHB-114
ジェネレータ UGN-70/Ho VITAL Ge-D-G23
KV-3D3/PROCHNYI GA-319
SONNE GNE530 MAKIBASHIRA mdl.3
  • 上記にある「MAKIBASHIRA mdl.3」のように新たに固有名詞が付けられたものも多い*3のだが、
    それらは大部分が主に前作の俗称が使われ、一部が前作の俗称と今作のパーツ名の両方が使われ、ごく一部は今作のパーツ名が使われるという厄介な状況になっている。
  • 前作でもその傾向はあったがパーツ名称の法則におざなり感がある。「恐れ知らず」と銘されたパーツの後継パーツの銘が「子馬」であったり、過去の文明の記録が全く残っていない様な世界設定なのに源氏物語から引っ張ってくるなど。
    • 前作の円卓の騎士から引用されたパーツ名などは、まだ文明があった旧世代に作られたものでる。また今作ではタワーから旧世代の情報を得ており、特にEGFは日本列島が拠点であるため、源氏物語を知っている可能性がある。
  • もっとも前作ではACやパーツを解析、生産する技術は確立されておらず、供給は主に発掘から成り立っていたという設定である。パーツ名もACがスキャンを行い、表示されたものをそのまま名前にした*4という、言わば仮置きと言っても良い状態であった。
    • 今作ではACの解析が進み、パーツ生産も可能になっている時代なのでそれに合わせた名称の変更は何もおかしくはない。あくまで設定面では、だが。

対戦環境の劣化

  • 前作からパーツの改善はされてはいるのもも、アップデートによる謎調整もあり、全体のバランスの悪さは悪化。
  • 特に肩武器のハイスピードミサイルの性能は圧倒的で、高命中高衝撃高火力高速ロックというパーツ。
  • 高い衝撃により相手の防御低下を引き起こした所を他の武器で刺す。というのは分かるものの、高い命中率となにより自身の高い攻撃力もあって他のパーツとは一戦を画している。
  • ミサイル迎撃パーツもあるものの、ハイスピードとあって高弾速を持ち、いくつかは迎撃を抜けてくるという。ミサイル迎撃パーツ自体、扱いが難しく使用者が少ないのもハイスピードミサイルが蔓延する1つに。
  • ブースターの全体的な出力up、対戦ステージの広大化等あってタンクが産廃に近い状況に。使えない事もないが、前作以上に連携が必要。
  • 盾登場による防御力向上、構え武器以外での高火力武器が複数存在とタンクのメリットが薄くなってしまった。
  • 現在では高所を取れ、重武装高火力高機動力高防御を実現できる四脚が主流。

賛否両論点

跳弾システム

  • 武器チューニングシステムでより簡単な防御値の基準が作られ、旧作以上に「貫通する」「貫通しない」の差が生まれてしまった。
  • 防御値も度重なるアップデートで旧作より全体的に装甲が上がったが、武器も全体的に調整が入った。
    • 特に旧作では微妙扱いだったレーザーライフルと肩ミサイルの「防ぐには要求数値が高い武器」の大幅強化は環境を大きく変えた。
  • この影響でCE・TE・衝撃このどれか2つを防げないパーツ・機体構成は対戦では回れ右と言った状況に。
  • 今作から新規実装の盾が良くも悪くもこれを増長。上記の1つorどれも防げない軽量中量機体には救いのパーツとなるが、条件を満たしやすい重二四脚が装備すれば鉄壁と化してしまう。
  • 全てを満たしやすいタンクは、タンクと相性の良い補助パーツや構え武器の弱体化により逆風に。装甲も全て弾くアセンができいないので、結果ただ遅くて脆くて火力のないカテゴリに。
    • もっとも、全てを弾ける機体を組めたレギュレーションもあったが、売りの跳弾システムを全否定していたためか直ぐに下方されてしまった。

強制チーム

  • 前作同様必ずチームに所属せねばならず、ゲームそのものがチームプレイを想定しているところは変わっていない。前作よりもオンライン対戦の敷居は下がっているが、間口の狭さは相変わらずである。
    • 1人でもゲーム開始時にチームを作成しなければならないという煩わしさは今作でも存在する。
  • 新たに導入されたUNACによって擬似的にチームプレイをすることは可能だが、やはり生身の人間と比較すると不利。

再出撃機能による傭兵システムへの弊害

  • 参加プレイヤー補填のための傭兵システムが、戦闘終了後に同メンバーで即再出撃出来るようになったため、別の傭兵を雇う機会が少なくなってしまい供給過多な状態になってしまっている。
    • 再出撃できるという点自体は非常に評価できるが傭兵システムとの相性が悪く、なにかしらの工夫は欲しかったところ。

シリーズとしては異色のシナリオ

  • 本来、このシリーズは硬派な世界観やシステムに対して、ストーリーは主人公の活躍が世界に影響を与えるなどヒロイックとも言える展開が多かった。
    • シリーズ全体から見てみれば、本作のシナリオはかなり異色であると言える。
+ ネタバレ注意

「ここが、この戦場が、私の魂の場所よ!」

  • 今作のストーリーは、主人公の物語ではなく主人公と手を組んだ運び屋「ファットマン」と、その相方である「マギー」の物語である。
    • 特に話の流れはマギーを中心として展開され、その運命をファットマンと主人公が見届ける、というのが大まかな流れである。
    • 序盤こそ、受けた依頼を口の強い2人と、腕のある主人公でこなしていくという展開であるが、ストーリーの進行に伴い、だんだんと過去に傭兵であったマギーにスポットライトがあたっていく事となる。
    • その途中に「死神部隊」や「財団」の話も絡んでくるものの、やはりメインは個人に焦点を当てた話であるため、シリーズとしては異例の規模の小ささを感じさせてしまう。
  • その上「財団」はシリーズ恒例の「管理者」のような立ち回りをするため、どうにも話の不都合を感じてしまう箇所はある。
    • 「財団」の行動の動機の背景については、本作のみで理解しきるのは不可能だと言ってよく、推察しようにも材料が足りない*5という、前作のような問題点がある。
      • 一応、本作とのリンク機能を持つ「ACVD-LINK」によって明らかにされるのだが、それでは設定資料集で重要な情報を公開した前作と何も変わらない。
  • 前作に比べれば幾分かマシになったものの、常に最前線で戦い続ける主人公が蚊帳の外に置かれている感は否めない。デモシーンが多用されるのもその傾向を助長する。
  • しかしながら、マギーに好感を抱くことができれば決して見所が無いストーリーという訳ではない。
    • マギーに対する、ファットマンの最後の語りは必聴。主人公には何も言ってくれないが。
    • 総じてマギーというキャラクターに好感を抱けるか否かという部分で本作のストーリー評価は左右される。
  • 各所に旧作へのオマージュと思われる演出や台詞が散りばめられており、旧作のファンならばニヤリとさせられるシーンも少なくない。
    • 最終ボスであるN-WGIX/vとの戦闘は演出やBGMも過去作を意識した作りで唐突に過去作との繋がりを匂わせた。
    • 明言はされていないものの各所に4シリーズと世界観が繋がっている事を匂わせる要素が登場する。最初から世界観が地続きである事が明示されていた初代三部作と2系、NXとLRとは異なり続編で旧作との繋がりを示す要素が登場するのは異例と言える。これに素直に喜ぶ層もいるが前作「V」のストーリー人気が振るわなかった事もあり人気取りの為の擦り寄り、世界観構築の放棄とも取る層もいて賛否両論気味。

「好きなように生きて、好きなように死ぬ。誰のためでもなく……それが、俺らのやり方だったな」


総評

多くの改善点・良好な新システムによって、『V』の汚名返上は果たせたと言ってもいい。
歯ごたえの増したオフミッション、気軽に参加出来るようになったオン戦、そして『アーマード・コア』らしさを取り戻したアセンブルは、シリーズのファンを納得させるのに十分な出来だと言える。

今回は発売の直前に各地でオフイベントもあり、中々の盛り上がりを見せた。
『V』で失ってしまった信用を取り戻す、フロムスタッフの熱意を感じさせられる作品であったと言える。

だが、戦う動機付けが足りない勢力戦や単調さの拭えないミッション内容、プレイヤーに不親切なシステム変更など、まだまだ改善の余地があるように思える。
また『V』シリーズ特有のシステムにより、人を選ぶという点に変わりは無い。
また、レギュレーション更新は最初の数ヶ月だけで途絶えてしまい、対戦バランスが改善されないまま放置されているのが現状である。

前作『V』での不満は改善されているが、本作単体で見ると良くも悪くも「無難」な出来に仕上がっている。


その後の展開

  • 本作を最後に『アーマード・コア』シリーズは途絶えていたが、2022年12月9日のThe Game Awardsにおいて約10年ぶりとなる新作『アーマード・コアVI ファイアーズ オブ ルビコン』が電撃発表された。
    • 10年越しのシリーズ復活であるのに加え、同じフロム・ソフトウェアから発売された『ELDEN RING』のGOTY受賞直後の発表であり、これは多くのユーザーに驚きと喜びを与えた。
    • 長らく続編が出ておらず誰もが絶望視していた最中のことであるため、発表当初は皆ドッキリやエイプリルフールなのかと疑う事態になるほどだった*6
      • 対応機種はPS5/XSX/PS4/One/Winで、2023年8月25日に発売された。
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最終更新:2024年04月02日 18:45

*1 ミッションで使用されたBGMに歌詞をつけたものだが、そのインパクトは抜群。

*2 撃破時にブースト移動を行っていると機体が火を噴きながら転倒し爆散する他、空中でAPが0になると落下時に即座に爆散する事もある。

*3 三大勢力の一つであるEGFが生産しているとされるパーツ。源氏物語の帖名、及び登場人物から付けられている

*4 Vの設定資料集による

*5 前作の「主任」と同じく、曖昧で大袈裟な発言だらけで、考察は困難を極める。

*6 事実、発表後twitterでは「エイプリルフール」や「集団幻覚」がトレンド入りするという事態に。