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エアーズアドベンチャー

【えあーずあどべんちゃー】

ジャンル RPG
(公称:正統派ロマンティックストーリーロープレ)
対応機種 セガサターン
発売・開発元 ゲームスタジオ
発売日 1996年12月10日
定価 5,800円(税抜)
判定 クソゲー
ポイント 豪華スタッフによる史上屈指の電波ゲー
たたみかける様な展開の早さ
何もかも簡略化
デザインとBGMは好評

概要

ゼビウス』の遠藤雅伸、後に『巨人のドシン』を出した柴田賀盆、音楽には『機動戦士Ζガンダム』の三枝成彰、キャラクターデザインには『ファイブスター物語』の永野護という超一流のクリエイター集団が関わった、俯瞰視点・コマンド式戦闘のストーリー主導型RPG。
グラフィックを3Dポリゴンで表現し、プレイボーイで名を馳せる美形の貴族ヘンリーと、とある国の王女コーリンの物語を描く(名前は変更可)。
かつての『クロノ・トリガー』を彷彿とさせるその制作陣の豪華さから、本作はビッグタイトルとして大いに期待・注目を集めていた。
しかしいざ蓋を開けてみると、船頭多くして船山に上るという諺通りに、盛大にコケた怪作となってしまった。

ゲーム内容

あえて好意的に表現するなら、「誰でも簡単に遊べるRPG」。純粋にストーリーに没頭させるべく、あらゆる要素が簡易的である

  • 移動シーン
    • 屋外マップは昔ながらの2DRPGと同じ、俯瞰視点で上下左右の4方向移動。ダンジョン内は3Dで描かれ、左右旋回と前方への移動を組み合わせる3人称視点を用いる。
      • 屋外では乗り物も登場する。船は港のある町のみ上陸、ライトセイル(空飛ぶドラゴン)は特定地点のみ着陸可能。
  • 戦闘
    • ランダムエンカウントで、「攻撃(ヒロインは魔法)・防御・アイテム」のコマンドを使ったターン戦闘。
      • コントローラーのボタン毎にコマンドが割り振られており、ボタン1つで攻撃や防御が可能。
    • プレイヤー側は前後二列に位置取りして戦う。後列キャラには直接攻撃が及ばず、魔法は普通に使用可能。敵側は複数出現しても先頭の1匹のみが戦い、倒すごとに後続が1匹ずつ出てくる。
      • 主人公は入手していれば特殊技が使用可能。特殊技はアイテム扱いで説明にあるコマンドを入力すれば何度でも使用可能(騎乗戦闘時を除く)。
      • 魔法はコマンド決定→発動までにタイムラグが発生する。
      • 回復は戦闘中に限り全員に(アイテム、魔法問わず)効果が発動する、尚敵は一切回復行動を行わない。
      • 防御は「構え疲れた」が発生しない限り、殆どの攻撃を無効化、軽減できる。
  • 装備は武器や防具などが「○○の装備」といった一式にまとめられている。要所要所で新たな装備を入手できるが、そう頻繁ではないため、手持ちを鍛冶屋で強化しながら使うことになる。
    • 武具も剣や盾等の区別が無く、全てが一体となった「装備」で統一されている。
    • 一部の特別な品以外は名前もシンプル。「力の装備」「戦車の装備」など、タロットカードをモチーフにした名前がみられる。
  • 上記とストーリー部分を除いたRPGとしてのシステムの骨組は、お使いでイベントとキーフラグをこなしていく極々ベーシックなもの。

問題点

あまりにも簡略化されている。その省略っぷりたるや、一周回って爆笑もの。

かねてより不義を働き続けていたという主人公は、ゲーム開始直後のイベントで処刑台にかけられるピンチに陥り、偶然通りかかった王女(ヒロイン)と出会う。
これ以降は、何を考えているのか分からない人物、どうしてそうなるのか分からない展開、常識外れで女性の事しか頭にない主人公が織りなす、説明不足の物語が繰り広げられる。

  • ストーリーの省きぶりが尋常でなく、細かい段取りが一切無い
    • 序盤で言うなら、「なんとなく」予感がして主人公を助けたヒロイン、主人公の何を見込んだのか突如勧誘してくる自称裏社会の秘密結社(最初の町のみの登場、特別なエピソード無し*1)、初めて見る顔だが主人公の入団を何故か既に知っていて指令を告げてくる秘密結社員、ヒロインに近づきたいがため入ったばかりの秘密結社から無言で即脱退する主人公、などが挙げられる。これはまだ最初の町から出る前の10分くらいで消化するイベントであり、同じ調子が最後まで続く。
    • ストーリー展開の都合上、当時の主人公の能力では太刀打ちできそうにない敵と序盤で戦う事になるが、直前に強力な装備が何の脈絡も無く空から降ってくる
      • その装備一式が降ってきた時に居合わせた主人公の弟のコメント「これは天からにいさんへの贈り物に違いない」
        + ちょっと軽いネタバレ
      • 実は、本当に“天からの贈り物”であったと相当後になって分かるのだが、入手時点で描かれている主人公像は、女性関係の乱れが過ぎてあわや処刑されかかった軟派男でしかない。プレイヤーがその物語を素直に受け取るのはおよそ不可能だろう。
    • あるダンジョンでは探索をしていると、突然ボス戦が始まる。それに関する説明や演出は一切されない。
      • 戦闘中に形態変化をするボスもいるが、これも説明や演出は特に挟まれない。
    • 極限まで簡略化された例では、キーアイテムを入手するために訪れるある場所で、マップアイコン到着と同時にそのアイテムを入手できる。普通ならイベントやダンジョン攻略が始まるところなのだが。
      • そのマップアイコンも、久々に町の外を探索できると思いきや*2、町から出て真西に直の場所にある。住人が「その樹は巨大すぎて誰も近づけない」と言っているが、普通に隣接してボタンを押すだけでアイテムが入手できる。フラグとはなんだったのか。そもそも「樹が巨大すぎて近づけない」という話自体もおかしい。
    • 他にも、ゲーム的なフラグの都合に絡んで思わせぶりに登場しては、省略されて投げっ放しにされる要素が多い。
      + そしてそのノリは最後まで続く…
    • ラストダンジョンはなんとダイジェスト形式。入り口でのボス戦の後は主人公達がラストダンジョンを進む姿が数シーン映し出されるだけで唐突にラスボスが出現する。ダンジョンを経由せずラスボスと戦うRPGは他にもあるが、大層なラストダンジョンを用意だけしておいてプレイヤーの探索を省略するのは本作ぐらいのものではないだろうか。容量か開発期間が足りなかったのだろうか…?
      • そのラスボスも肝心の最終決戦時は一言も喋らない。無言のまま戦闘に突入し、無言のまま第二形態に変身し、無言のまま倒される。
    • エンディングは意外にも切ない結末である。
      • …と思わせて最後にそれをひっくり返すまさかのラブコメオチが待っている。しかもその伏線が微妙にストーリー中に存在するのもまた小憎らしい。
  • 街の構造も判り易くシンプルで、秘密結社のアジトが街の広場のすぐそこに堂々と建っている。しかも一般市民が存在を知っている
  • ダンジョンも然りで、最初のダンジョンは全く分岐の無い一本道構造。また、ゲーム全体を通じてダンジョンの数自体が少なく個々のボリュームも無い。ほとんど3Dの意味なし。
    • 常に正面方向へ移動する仕様で入口方向へ戻る様な一方通行(踏み込んでしまうと逆側からは壁になりもう一度同じルートの移動を強いられる)のトラップが多く、引き伸ばし感が強く感じられる。
  • エンカウント率にも妙なバラツキがあり、1分以上歩いても敵に遭遇しないときがあれば、2~3歩だけで敵がぞろぞろ出てくる時がある。
  • キャラクターは、バストアップ絵の変化や、マップ上のキャラによる演技が無い。ムービー中ですら感情表現に乏しい。
    • 主人公の人間性は特に理解しにくい。一般的なRPGの主人公としては異色な設定を持つにも拘らず、女性が絡まない限り口数が少なくムービーでも上記の通りであり、行動の意味不明さに拍車がかかっている。例えば…
      • 実家の侯爵家に戻ると父親から勘当に近い宣告を受けるのだが、主人公は無表情ノーコメント
      • 「中身を読むなよ」と念を押されて預かった手紙に対し、預け主が扉を閉めるや否や、顔色を変えず物も言わずその場で開封する。なおこのイベントは秘密結社から与えられた試練であり、一部始終を見ていたであろう上司からは 「素晴らしい働きであった」 と褒められる。大丈夫かこいつら……
  • 説明書も簡易的で、5つ折りの紙切れ1枚のみ。ジャケ絵などを差し引くと実質4ページ。
    • せっかく有名イラストレーターの起用であるにも拘らず、説明書にキャラクターイラストの掲載は無い。
  • サターンは元々3DCGの表現に向かないと言われているものの、それを差し引いてもグラフィックの出来がお粗末。
    • 主な理由は「ほとんど動かない」こと。一部のムービーや戦闘といったキャラを大きく描くシーンに時折アニメーションがあっても、全体的にギクシャクしている。
      • 自社で動きがあるCGを制作する機材やノウハウがなくCGは外注だが、モーションの数を増やす予算が不足していた。
      • プログラム担当でもある柴田氏の技術力も不足していた。
      • 発売延期を繰り返したため、市場のCG水準も当初より格段に上がっていた。
    • 逆にキャラが小さいシーンでは、画質の粗さが目立つ。
    • カメラワークも単純で、比較的描写に力を入れるイベントシーンでも、斜め上方や真横からなど固定視点が多い。
      • 前述した主人公の父親は、「主人公のバストアップのカットを挟んだ一瞬の隙に、画面が戻るといつの間にかいる」という登場の仕方をする。パッ、パッ、と1コマで。
  • イベント中のセリフ文は映画の字幕のような感じで表示されるのだが、情報や動きの少なさ故に誰がしゃべっているのか混乱しやすい。

その他

  • 宝箱を開けると、専用の画面になり主人公がガッツポーズする。この演出は宝箱の中身が何であろうとも例外なく実行され、たとえ中身がモンスターであってもガッツポーズ
  • 敵を倒すと、倒した敵がポリゴン片になって爆発する。敵を打ち倒したという事を強調する演出なのだろうが、スカスカなストーリーと相俟ってギャグにしか見えなくなってしまっている。
    • 戦闘終了後お金を入手する時、実際に空から音と共に金貨の降ってくる描写あり。こういうところは省かない。
    • 空から落ちてきた装備を着た時、同時に父親から貰う「馬」に乗って戦うのだが、相変わらず戦利品の小銭は地面に落ちる。毎回馬から下りて小銭を拾っているのだろうか。
    • そしてこの後、この馬である建物に突入するのだが、突入後の室内でも馬に乗ったまま進行する。
  • メニュー画面を開くたびに、豪華なファンファーレと共に旗のひらめく演出が入る。テッテテーテッテー♪
  • 主人公は通常攻撃と特殊技のみ、魔術師タイプのヒロインが使える魔法は たったの三種類 。装備は二人合わせて 五種類だけ 。アイテムの種類も最低限で、凝ったステータス異常などは一切ない。ドラクエ2にも劣るバラエティでは戦略性と自由度があるはずもなく、プレイヤーに与えられる選択肢は 「レベルを上げてひたすら殴る」 ことのみ。
    • ちなみに装備はお金を支払うことで強化できるが、せっかく頑張って強化しても後から手に入る上位互換の装備にあっさり性能面で抜かれてしまう。
      • 但し、各装備の更新には間が空く上にアイテム購入や回復以外に金の使い道は無いので強化すること自体は無駄ではない。むしろボス戦や雑魚戦をスムーズに展開する上では必須である。
  • あるボスが戦闘中に使う技「結界」は、通常攻撃も魔法攻撃も受け付けずに数ターン持続するという、じっと待つ以外に対策のない厄介な技。
    • ちなみに、このボスが出る聖堂内は 異常なまでに処理落ちして移動がかなり遅くなる。 普通に歩くスピードも結構遅いのに。
  • 民家に入ると住民が一言だけしゃべる。それで終わりで家中の探索はできない。情報は冒険のヒント(か電波)だが、一部住人のヒントが間違っている。
    • 町の住人が常に正解を知ってるわけではないというのはある意味現実的かもしれないが、ゲームとしてはどうだろう。

賛否両論点

  • 少女漫画感のある作風
  • シンプルな造り

評価点

  • デザインや雰囲気作りの面は非常に優れている。
    • キャラクターデザインでは服飾面でも卓越したセンスを誇る永野氏らしく、キャラの上着はもとより下着まで(!)緻密に設定されている。光の帆を張って飛ぶドラゴンなどモンスターのデザインも独創的。
      • 戦闘に関しても装備によって外見が異なる等、当時のRPGとしては頑張っている面が見られる。
  • イベントシーン、ムービーシーンそのものはパッと見てよくできており、パステルの彩色も絵本のようで美しい。
    • また当時のCDROMゲームとしては読み込みが短めであり、スキップも可能。
  • 音楽の評価は高い。勇ましい曲から神秘的な美しい曲まで、高水準かつ豊富に取り揃えられている。数々の劇伴も手掛けている三枝氏の実績故のものであろう。
  • ストーリーそのものは電波とダイジェストで構成されているが、物語の展開は波乱万丈で退屈しない。電波すぎて理解しづらい事を除けば、かなり壮大ではある。
  • レベルアップ時の演出が主人公とヒロインは勿論各妖精毎に差異がある。かなり大仰な演出だが、本作において演出が空回り(電波化)していない数少ない部分と言える。
    • 戦闘で片方が倒されると、残った方が倒れたパートナーに駆け寄ってから敵を睨みつける、と言う細かい演出もある。
  • 上記の通り簡略化されすぎている為に数十分毎にイベントが発生する為に中弛みが起こりにくく、ゲームプレイ中のテンポはかなり良い。
    • 初見&全ムービー閲覧でも約10時間前後でクリアできてしまうボリュームなので「変わったRPGをやりたいけど時間を取られるのはちょっと…」「ク〇ゲーやってみたいけどゲーム中にストレスたまるのは嫌」と言う人にもお勧め出来る。

総評

世界の命運より女が大事。そんな異色な主人公の活躍を描くはずだったのだろう。
しかし肝心のシナリオは細部がスカスカ。むしろ細かな描写の積み重ねで深めていく「愛」の物語には、到底なりえなかった。
耽美なキャラクターデザインも、それをゲームの中で活かせているとはお世辞にも言えない。
ゲーム自体は戦闘もお使いイベントも全体的に単調で面白味に欠け、まともに褒められる点は音楽くらいである。

ポリゴン表現の苦手なセガサターンにおけるポリゴンRPGの企画は、元々それなりにハンデを負っている。
とはいえ、本作の抱える「行き過ぎた簡略化」は、こうしたハードスペックの云々とはもはや別次元の問題だろう。

演出の拙さが醸し出す独特の雰囲気と超展開シナリオに触れてみたい…
そんな稀有な趣味の人がいるならば、難易度が易しくBGMの素晴らしい本作はもってこい。
SSのプレイ環境が、後年において次第にハードルを高くしていった事が悔やまれる。

余談

  • 出荷数がそれなりにあったためか、発売後のあまりの評判にすごい速さで値崩れした。
  • スタッフ側も「駄作だった」と認めているようで、柴田賀盆は本作のサントラの後書きにて「想像していたのとは違う物が出来てしまった」と無念の思いを綴っている。永野護に至っては気の毒な事に、本作の悪評を散々聞かされた挙句、数日間寝込んでしまったと言う。
  • クソゲーオブザイヤー2009動画の2008年概要(七英雄)のパートで本作のオープニングBGMが使用されている。
  • 少女漫画的な作風は、柴田氏とともに本作を企画した水戸部氏による所が大きい。
  • 製作総指揮として大々的に名前が出ている遠藤雅伸だが、「制作」面で担当したのはフォント制作やマップ上のオブジェクトのモデリングに過ぎないと後年、本人が2chで暴露している。
    + 該当のレス 【バビロニアン・キャッスル・サーガ】
    782 :遠藤雅伸 ★ : 2001/03/30(金) 10:57 ID:???
    >>365
    P> エアーズはどうしてあんなにアレですか?
     
     スレ違いな上に、制作に参加しているとはいえ人の作品なので、多く
    は語れませんが、「エアーズが無ければ、RPGの面白さを知ることはな
    かった」というライトユーザーからのお便りをたくさんいただいたのも
    事実です。
     そんな方々は、アレをクリアするのに、数ヶ月かかっている(?)わけ
    で、個人的見解としては、賀盆君が相手にしたかったのは、既存のゲー
    ムユーザーではなかったのだろうということです。(スレ違いにつき、
    レスしないでね)
    
    【BCS】Ep.2
    131 :遠藤雅伸 ★ : 2001/03/31(土) 17:20 ID:???
    > 前スレ 856
    P> エアーズの糞を責任転嫁する遠藤萎え。製作総指揮ってなんだよ。
     
     責任転嫁しているワケではなく、遠藤作品とは言えないということな
    んですね。ちなみに製作総指揮というのは、赤字を全部被っているとい
    うことです。
     賀盆君は、エアーズに込めたメッセージが認められてパーラムに移籍
    し、飯田和敏氏と「巨人のドシン1」を作りました。彼のセンスが良く
    現れていると思います。(スレ違いにつき、レスしないでね)
    

参考動画

+ 超展開注意。
オープニング&ニューゲームから最初の町を出るまで。
+ 柴田氏が当時を振り返る
+ タグ編集
  • タグ:
  • RPG
  • ゲームスタジオ
  • KOTY始動以前の伝説的作品

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最終更新:2024年01月06日 20:39

*1 終盤に訪れるといつの間にか解散している。

*2 その時点では、空から落ちた後に船での強制移動イベントが続いている