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Sorcerous Stabber ORPHEN 魔術士オーフェン

【まじゅつしおーふぇん】

ジャンル 3DアクションRPG
対応機種 プレイステーション2
発売元 角川書店
Entertainment Software Publishing
開発元 シェード
発売日 2002年3月7日
定価 7,140円(税込)
判定 クソゲー
ポイント 原作と食い違いはあるが声優は豪華
富士見ファンタジア文庫シリーズ


概要

PS2初期に発売。ライトノベル業界において、『スレイヤーズ』に続いて大ヒットした『魔術士オーフェン』シリーズを3DアクションRPGで完全再現することを謳い文句に製作された。


特徴

  • プレイヤーは魔術士オーフェンとなり、2人の同行者(マジクorクリーオウ+3人のゲストキャラの誰か)と共にカオス島の謎に挑んでいく。
    • 3人それぞれの物語が存在し、それらを全て達成することで最後の謎に挑むことが可能となる。
  • 罠を解きながらフィールドを移動するアクションパート、固定でのイベント戦闘。その2つでゲームは構成されている。
    • 戦闘では○△×ボタンに3種類の魔術を装備し、ボタンを押すことで魔術が発動し敵を倒すというシステム。同行者も援護してくれるが指示はできない。ステージによっては同行者を直接操作して進むこともある。戦闘では自由に移動できない(後述の防御魔術を駆使して戦うことになる)、ボタンを押すことで各種アクションを取る。
      • 魔術は連射の効く「弾系」・広範囲且つ溜めると精霊が召喚できる(後述)「直撃系」・一定の属性攻撃を反射できる「防御系」・接近して連続ヒットの狙える「降魔の剣」を組み合わせて戦うことになる。
    • 極限までプレイヤーにデータとしての数値を隠しており、与えたダメージ表記は無し、HPは数値ではなく5個の青い宝石の削れ具合で表示され、ステータスも内部的には存在して成長もしているようだが(説明書等に記載あり/複数回戦えるボス戦等で一応実感もできる)、直接に成長を見られないのでRPGとしての楽しみは薄い*1

評価点

  • レギュラーキャラクターはアニメ版の声優を起用し、フルボイスである。
  • オープニングを含め、随所で再生されるアニメムービーはクオリティが高い。
  • アニメと違って、マジクがオーフェンのことを原作通り「お師様」と呼ぶ。
  • 原作だけでなく、漫画版のオリジナル魔術も採用し、各メディアミックスのファンを意識。
  • 無謀編*2の登場人物である無能警官コンスタンス・マギー、変態執事キース・ロイヤルの2人がオーフェンの白昼夢という形で登場。
  • 魔術のエフェクトはPS2としてはそれなり。
  • 雑魚戦でのレベル上げが無いので、ボス戦で取得する魔術が戦力に直結している。必然的に魔術の価値が上がり、それぞれの魔術の特徴を活かして戦うことになる*3
  • 3人のゲームオリジナルキャラクターが空気にならず、各々の個性もしっかりしている。
    • ストーリーはいわゆるループものであり、前述の魔術取得の件もあるので「誰を先に攻略するか」も重要な要素。

問題点

システム1

  • このゲームにはイベント戦闘しか存在しない。そのため、新たな魔術を手に入れてもすぐに使用することが出来ない。
    • その分、なにかしらのギミックがある戦闘が多く、「船のマストを飛び移りながら戦う」「狭い通路で戦い、通路の端まで追い詰められると負け」など、イベント戦闘ならではの面白さがある。
    • 原作では巧みな戦闘描写が魅力。魔術も戦闘の選択肢の一つであり、時には肉体や道具も駆使し、様々な戦い方を魅せていた。
  • フィールド(アクションパート)で使える魔術が少なく、フィールドにおける爽快感が乏しい。
  • 謎ときがほとんど存在せず、ほとんどが移動してスイッチを入れるだけ。途中でパートナー交代のイベントもあるが、あまり変わらない。
    • ただし、それぞれの特徴を活かす場面は存在する*4

システム2

  • 魔術をボタンによって装備するシステムを取っているため、一つの戦闘で駆使できる魔術は3種類である。戦闘中、装備魔術の交代はできるものの、実行すると戦闘そのものがリセットとなる。
    • あくまで詰み防止。あるいは敵と魔術の相性を探るためのシステムであるが、戦闘中の魔術交代ができれば戦略の幅が広がったのは事実。
  • ヒットポイントが宝石の数と削れ具合であるため、確認がし辛い。尚、原作に於いて特に宝石は意味を持たない*5
  • 自由に移動できないので原作のような素早く走り回って敵を倒す、といったアクションができず、直撃系魔術を最大まで溜めると敵全体にダメージを与えられるので、雑魚戦に関してはほぼそれだけでゴリ押しできる。ただ時折素早い敵が沢山現れる(後述のラスボス含め)のでその際は防御魔術を張り続けて凌ぎ、一瞬でも隙があれば溜め無しで魔術攻撃という形になるが、それにしても単調さは免れていない。またボス戦の半数が一定のタイミングで攻撃しないと無効化or相手から攻撃が飛んできてキャンセルされる等の仕様で、もはや単調かつ無駄にシビアなリズムアクションゲームをやらされている感覚に陥る。
    • ただし、移動できないおかげで防御系魔術などの受身な魔術の出番が増えたと言える。
  • ラスボス戦で一気に難易度が跳ね上がる。有効な魔術が限られているが、ほとんど防御される。2つある防御腕を破壊してから、頭部を破壊するという順序以外で倒すことが出来ない、それ自体はゲームとしてオーソドックスな形だが…。
    • 一敵は防御壁を突き破ってくる攻撃を連発し、小さなビットを無数に生みだしてくる。そのためオーフェンは敵の集中砲火を浴び続けることとなる。なお、ボス戦だけ仲間からの援護はない。更に、負けるとそれまで戦ったボスとの連続戦闘(いわゆるボスラッシュ)からやりなおし。これらを含めると、ラスボスは難易度がかなり高い部類になる。
    • ただし、ちゃんと効果的な魔術を使えば、そこまで鬼畜ではない*6
  • 回復アイテムが戦闘中に使えない。アクションパートのトラップ(ギロチンや落とし穴)でダメージを受けるので、そのために使うのだが…移動中は自動回復するので、そこまで重要でない。

原作との食い違い

  • 大半は魔術に関連する
    • そもそも「魔術士オーフェン」世界で人間が使う魔術は「音声魔術」というもので、効果範囲は声が届くまでであり、物理的な破壊力はそれ程高くはない。にも拘らず、オープニングで遙か彼方の山まで吹っ飛ばしている。
    • 原作に、魔術の属性などと言った要素は存在しない。もっとも、原作における魔術の設定は文章以外での表現は難しく(構成の概念等)、またゲーム的な面白さのための改変なのも理解できる。しかし、その当て嵌め方がおかしい。
      • 例1:「我は裂く大空の壁」
        かまいたちを作りだす魔術→ゲームでは何故か「風」ではなく「炎」属性である。「風」属性には、漫画版オリジナルの「我撫でる獅子の鬣」が当てはめられている(描写的にはあっている)。
      • 例2:「我が指先に琥珀の盾」
        空気を局所的に圧縮して相手の動きを束縛したり、物理的な攻撃を妨害したりする魔術→「毒」属性の攻撃を反射。
    • 音声魔術は精霊など召喚出来ない。そもそも、精霊という概念が通常のファンタジーと異なっている。フェアリードラゴン種族の用いる「精霊魔術」に精霊が登場するのだが、これは「契約」を媒体とすることで生み出された、契約内容を実行する疑似的意識体を“精霊”と呼ぶのである。勿論人間には使えない。
    • また、原作では大魔術と設定されている「我は描く光刃の軌跡」(転移する疑似球電)が弾系の低威力魔術にされている。描写的にアニメ準拠なのだろう。
    • オーフェンの必殺技であり切り札でもある、意味の消滅、物質崩壊、疑似空間転移も不在(自壊連鎖は発売直前に発行された作品で初登場)。もっとも、あまりに強力すぎて登場させるとゲームとして構成が難しいという問題がある。
    • ゲーム開始時、オーフェンが二種類の魔術しか使えなくなっているのだが、まったく説明がされない*7。ゲーム的なお約束とは言え、お粗末すぎる。ボスを倒すと魔術が取り戻せることにも言及されない。
    • 劇中のアニメで表現される唯一の魔術がゲームオリジナル呪文。音声魔術は呪文内容と魔術効果が結びつかないという設定とは言え、そこは原作準拠でダメだったのか。
  • 冒頭、オーフェン一行はアーバンラマに居るので、原作での「東部編」にあたる時期のはずだが、その時点で登場しているはずのロッテーシャやウィノナがいない。
  • 世界観について
    • 原作は中世ファンタジー的な要素が一部引き継がれてはいるものの、小型化された銃火器や発電機が存在し、都市に上下水道が完備され、大陸には蒸気機関車が引かれ、人々はGパンやらスーツを着用しているなど近現代的な世界観となっている。
      • しかし、ゲストキャラである、セフィ(踊り子の衣装)、ゼイアス(騎士の衣装)、マー(楽士の衣装)は中世ファンタジーを意識したものであり、非常に“オーフェンたち”が浮いている。
    • また、原作では天人たちが作り出したもの(カミスンダ劇場のコウモリ犬、レジボーン温泉郷の猿など)以外は、クリーチャーらしきものはかつて女神が送り込んだ魔獣(バジリコックなど)やドラゴン種族(ミストドラゴンなど)やヴァイパイアなど設定の根幹に関わる物を除くと、ダイナソア(大型爬虫類)やうさぎ様(どことなくウサギっぽい温厚な巨大動物)といった野生動物の範疇のものしか存在しない。にもかかわらず、リザードマンやらワイバーンやらリヴァイアサンやらが大量に登場する
    • なお謎の機械による幻影に囚われていたというのが真相なので、原作の世界観にそぐわなくても設定には矛盾しない。
      • ただしラスボス戦は幻影ではない。
  • キャラクター
    • マジクがいいとこのぼっちゃん風の衣装で、原作、アニメとも違った雰囲気である。
      • 原作では黒を基調とした簡素な服装(シャツの上に黒マント羽織ったり等)、アニメでは庶民っぽいパーカー姿。
    • クリーオウに懐いているディープドラゴン・レキが暗黒魔術(視線を媒介して万物を支配する魔術)で援護してくれず、タックルしかしない。 設定上まともに魔術を使わせると強すぎるせいかと思われる。

総評

原作の世界観や設定とは全くの別物となっている。
またラスボス戦で負けるとボスラッシュを最初からやり直す仕様には多数のプレイヤーが挫折した。
原作小説が累計発行部数1,000万部を超える大ヒットとなったのに比べるとゲームの出来は悪い。
結果、2chの原作者スレッドにおいて、アニメ・漫画と共に黒歴史扱いされることとなった。


余談

  • オーフェンが魔術を使用する際に使う「我は放つ光の白刃」などの言葉は、日本ファルコムのRPG『ダイナソア』の呪文が元ネタであるというのは有名な話。
    • 本作の開発元であるシェードの横田幸次社長は、PC88オリジナル版『ダイナソア』(1990年発売)の開発スタッフだったりする*8
  • 角川書店とシェードの親会社だったクインテットは共にESPの出資会社。

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最終更新:2022年09月18日 22:46

*1 新しい魔術は習得していくので、一応は成長が実感できる。

*2 本編である「はぐれ旅」の前日憚で、トトカンタ市から旅に出る前のオーフェン達を描いたコメディタッチの番外編。本作の時点からは大分前の時系列となる。

*3 レベルを上げれば解決、物理攻撃が最強、回避ばっかりで防御魔術を使わない、などの問題が起こらない。

*4 例えば踊り子のパートナーを選んだ場合は、その身軽さでオーフェンで探索できない場所を探検してくれる。

*5 当ゲームでのシナリオでは時の卵という宝石が、重要なキーアイテムとして登場する。

*6 普通はラスボスがこちらの攻撃と同時に超反応でガードするため、最速の魔術を放ってもガードに間に合わない。しかし、混沌の姉妹「玉が複数発生して高火力、その代わりに弾速が遅い」という魔術を使うと、魔術を撃つ ⇒ ラスボスがガード ⇒ 数秒経過、ラスボスがガードを解除する ⇒ ようやく魔術が着弾。玉が遅いデメリットが逆に敵のガードのリズムを崩し、高火力の恩恵だけを受けられる。

*7 原作中でも一応オーフェンが魔術を使えなくなった事はあったが、それはあるキャラに植え付けられたトラウマと強迫観念から「魔術そのものが一時的に使用できなくなった」のであり、本作とは全く事情が異なる。一度習得済みの魔術を一部を除いて使えなくなることは、本来は概念上有り得ないことである。

*8 シェードはファルコムを退職したスタッフが設立したクインテットが設立した子会社。