本項では『KEYBOARDMANIA』シリーズのうち、初代のみを取り扱っています。
KEYBOARDMANIA
【きーぼーどまにあ】
ジャンル
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音楽シミュレーションゲーム
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対応機種
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アーケード
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発売・開発元
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コナミ
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稼働開始日
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2000年2月6日
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判定
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スルメゲー
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ポイント
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音ゲー史上最高のデバイス数 非常にハードルの高いルール 一方で理不尽と言える点は皆無 ギタドラとのセッションプレー 珠玉な楽曲の宝庫
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BEMANIシリーズリンク
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概要
『GUITERFREAKS』『drummania』に続く実際の楽器をモチーフにしたBEMANIシリーズ。タイトル通りキーボードがモチーフ。
特徴
入力デバイスとしてヤマハ製のキーボード用部品を採用しており、本物のキーボードそのままの操作感覚を実現した。
一つの筐体には『beatmania』シリーズと同じく二人分の鍵盤が存在するため、それらを一人で演奏するダブルプレーも搭載されている(つまり48鍵盤+2ホイールになる)。こちらはあくまでも超上級者向けである。
しかし、鍵盤楽器の特性からくる難易度の高さに加え、当時のプレーヤーのスキル不足も重なり、他のBEMANI機種ほどの人気を獲得するには至らなかった。
問題点
入力デバイスの特性からくる難度の高さ
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キーボードという楽器の性質上、シングルプレーの場合キーが24鍵盤(2オクターブ分)ある。さらに、上下に回すホイールコントローラも操作する必要がある。
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他のBEMANI作品で言うと『ポップンミュージック』シリーズが9ボタン、『beatmania IIDX』シリーズが7ボタン+1スクラッチ、『drumMania』シリーズが無印では5パッド+1ペダル・『XG』以降では7パッド+2ペダルであることを考えると、本作の操作箇所数の多さは明白である。
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キーの配置や運指を大まかにでも体得するのに、他のBEMANIシリーズ以上に時間がかかるため、BEMANIシリーズをやったことのないような一般層はもちろん、他のBEMANIシリーズ経験者であっても、安定したクリアには相応の反復が要求された。
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上方から降ってくる譜面を認識し、それに対応する鍵盤を判断し、画面を見ながらその鍵盤を押さなければならないため、初めてのプレーでは混乱に陥りやすい。特に、実際の演奏に近いプレーを要求される「REAL」モードは初心者お断りと言うべき曲も当然ながら多かった。
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エレクトーンやキーボードの経験者でも、やはり本作独特の譜面表示への対応は難しく、相当実際の楽器を弾き込んでいる人でも、上級レベルの曲に一見でついていくことは難しい。それでも、上級者向けである「REAL」モードの譜面は比較的リアルのピアノの運指に沿っているため、BEMANI初心者や楽器未経験者よりは幾分かは有利ではあるが…
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初代では譜面のレベル選択として、「REAL」のほか、難易度の低めな「NORMAL」を選択できたが、「NORMAL」の時点でも難易度が高いと評するプレーヤーは少なくなかった。
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ピアノ・キーボード経験者の声で聞こえてきた例として、「上から落ちる譜面とキーボードの位置が一致したらやりやすかった」というのがある。ビーマニシリーズがそうではないとしてもキーボードという特性上「楽譜は目で追う」ものでキーボードは所謂パソコンでいう所の「ブラインドタッチ」が普通である。せめて画面構成で位置的につながっていれば…の感想も聞かれた。
判定・ゲージの仕様
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他のBEMANIシリーズではクリア条件が「曲が終了時にゲージを一定量以上保たせるタイプ」と「曲が終了するまでにゲージを0にしないようにするタイプ」のどちらかなのだが、本作はデフォルトの設定ではその両方を合わせた複合タイプなので、全般的に曲のクリアが難しい(ただしオペレーター側の設定で変更することが可能)。ゲージの増減自体は他のBEMANIシリーズに比べてかなり易しく設定されているが、それ以前に上記のような根本的な難度の高さがあるため、決してクリアが簡単とは言えなかった。
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後述の「ロングノート」は、BEMANIシリーズで初の「デバイスを押しっぱなしにする」システムである(『DDRMAX』で登場したフリーズアロー・IIDXのチャージノートよりも先出)。見た目は同じ長さだが押し始めた瞬間に長さがかわり、チャージノートと同様に終点にも離し判定がある。途中で離すのは勿論、終点をスルーして押しっぱなしでいてもミス扱いになる。
鍵盤のキーと打鍵音が一致していない
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本物のキーボードであれば、例えばC(ド)のキーを押せば常にCの音が鳴るのが当然だが、本作はそのような造りにはなっていない譜面を持つ曲があり、キーと打鍵時になる音との対応が譜面ごとにまちまちである場合がある。
違う音階の音が鳴ったり、時にはキーボードではない音が鳴ったりもする。
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リズムアクションゲームとしては当たり前の仕様なのだが、本作はなまじ見た目が本物のキーボードほぼそのままであるため、かなり混乱を招きかねなかった。
評価点
楽曲
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『beatmania』シリーズがクラブミュージック系、『GUITARFREAKS&drummania』シリーズがロック系の楽曲をメインに収録していたのに対し、本シリーズは「特定の音楽ジャンルを想起させない鍵盤型デバイス」という特徴を活かし、実に多種多様なジャンルの楽曲が収録されている。総数は少ないながらも、どれもクオリティ・評価ともに高い物が多い。
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一部の楽曲は他のBEMANIシリーズにも移植されている。特に『beatmania IIDX』に移植された「Ride on the Light(IIDXではアレンジ版)」「Frozen Ray」、『ポップンミュージック』への移植歴を持つ「Henry Henry」「Pink Rose」「Mighty Guy」、マルチセッションGDKの対応曲として『GUITARFREAKS&drummania』にも移植された「VITALIZE」「しりとり」等は本シリーズを代表する名曲と言える。
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クラシック曲である「剣の舞」「おもちゃの兵隊の行進」のアレンジ版や、ディープ・パープルの有名曲「BURN」をモチーフとしたと思われる曲のほか、往年のKONAMIの名作『悪魔城ドラキュラ』『イーアルカンフー』『沙羅曼蛇2』のBGMをアレンジした楽曲などもあり、知っている人には親近感や懐古感を抱かせる要素も備えている。特に「エリーゼのために」は、テンポの揺れが規定はされるものの、実際のピアノ演奏の疑似体験に非常に近いプレーができる。
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グラディウス等のバブルシステム基板起動直後のカウントダウン中に流れる名曲「Morning Music」も、アレンジされて収録された。ただし人気の高い初代デモプレーの曲はサウンドトラックには未収録。
譜面
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初心者には認識が非常に困難な譜面だが、決して理不尽な配置はされていない。
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REALモードについては、上述の通り比較的リアルのピアノの運指に沿っているためピアノの経験者にとっては弾きやすく、理不尽な押し方を要求される曲もほとんどない。
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アーケード版では、モニターのすぐ真下に鍵盤が配置されている為、降ってきたノートの真下にあるキーを押すように心掛けるとクリアしやすくなる。
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ビームが伸びている間キーを押しっぱなしにしなければならない「ロングノート」と呼ばれるノートを搭載。よりリアルな演奏感を出すことに成功した。
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このロングノートは後のBEMANIシリーズにも、「キープ君」(『ポップンミュージック MICKEY TUNES』)、「フリーズアロー」(『Dance Dance Revolution』)、「チャージノート」(『beatmania IIDX』)、「ロングオブジェクト」(『SOUND VOLTEX』・『REFLEC BEAT』)、「ホールドマーカー」(『jubeat』)、「ロングポップ君」(『ポップンミュージック』)などの名前で登場することになる。特にIIDXのチャージノートは見た目・性質ともに本作のロングノートに一番近い。
総評
入力デバイスや判定・ゲージの仕様により初心者は勿論、BEMANIシリーズのプレーヤーにも白旗をあげさせる程の難度を有する作品。
これが枷となったのか、制作されたシリーズ作品は全3作に止まり、単発作品を除いたBEMANIシリーズとしては比較的短命に終わってしまった。
「BEMANIシリーズのみならず、他社作品を含めた全音楽ゲーム中でも最も難しい」と評する声も見られる程である。
しかしながらそのリアルな演奏感覚や、突出した良曲の数々に魅せられたファンによる本シリーズへの支持は今尚根強い。
現在に至るまで人気の息が長い作品となっているのも事実である。
大きな人気を獲得できなかった要因として「当時のプレーヤー側のスキル不足」が大きかったという点も考慮しなければならないだろう。
現在はリリース当時と比較してプレーヤー側のスキルも大きく上昇しており、シリーズ復活を望む声は少なからず存在している。
余談
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ゲームショーで本作が発表された時点ではちょうどビーマニ~ドラムと音ゲーブームの波が来ており、参考出品ながらもまるで隠し玉の様に扱われていた。
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しかし本作のメインターゲットとなっていた中高生プレーヤーの大半が有していた演奏スキルは、精々「ほうきでギターを弾くマネをする」程度であり、ピアノやエレクトーンなど鍵盤楽器を習い事としていた層は限定されていた。コナミもコナミだが、ゲームセンター側も客層を大きく見誤っていた点は否定できない。
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本シリーズでは、『ParaParaParadise』や『beatmania III』、『pop'n music』シリーズの一部作品と同じくFirebeat基板が用いられている。
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このFirebeat基板では、RTCを維持するため、RTC-65271に電池が2個(BR1225)使用されている。電池が切れるとRTCの停止に伴い、ゲームが実行できなくなる。
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RTCを再設定する際にはKONAMIが発行するパスワードが必要だが、現在ではパスワード発行も打ち切られてしまっており、RTC用の電池が切れると復旧はほぼ不可能。
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……と思われていたが、本シリーズに限り電池切れを起こしてもRTC再設定時にパスワード発行は不要で、電池交換だけで復旧は可能となっている。
続編
家庭版への移植
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本シリーズは、プレイステーション2用として、初代を移植した『KEYBOARDMANIA』および、3rdMIXをベースに2ndMIX楽曲を追加しカップリング移植した『KEYBOARDMANIA II 2ndMIX & 3rdMIX』の計2作が発売されている。
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アーケードで収録された楽曲自体は1曲も削除される事なく収録されてはいるものの、2ndMIX以降に収録されたいわゆる”1st曲の別譜面”は収録されなかった(『II』の方には隠し譜面として2nd曲の別譜面が収録されている)。
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ただし、当然のことながらPS2のコントローラではボタン数が足りないため専用コントローラがないと遊べない。そのため『KEYBOARDMANIA』は専用コントローラとの同梱版で発売された。ただしソフトの流通量自体が多くないため、プレーできる環境を整えるのにも相応の労苦が求められる。また、発売以来常に一定以上の需要が保たれていると見られ、中古市場でも価格の下落がさほど見られないため、購買時の価格も相応である。これは特に『2ndMIX & 3rdMIX』で顕著である。
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ちなみに他のBEMANIシリーズのコントローラと異なり、USBで接続する為、互換性のある旧型プレイステーション3でもプレーする事が可能である。また、シンセサイザーやキーボードも適応するケーブルを使用してUSBで接続すれば、コントローラとして認識される。よってそれらを持っている場合、専用コントローラは必要ないが、ホイールコントローラにアサインされていたノートが鍵盤にアサインされる等、専用コントローラでのプレーとは若干の差異が生じる。なお、ヤマハ製のシンセサイザーならば使用可能となっているが、ライバル社のローランドやコルグのシンセが使用可能かどうかは不明。
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『KEYBOARDMANIA』CS版には、アーケード版に収録されていないCS独自の楽曲が複数収録されており、その1つに、F1中継でも知名度の高いT-SQUAREの「TRUTH」がある。ファンからは弾きたい曲としてトップクラスの人気に上がっていたことが収録の要因となったと推測されている。
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また、海外のPC版限定で『KEYBOARDMANIA Yamaha Edition』も存在する。これはBEMANIシリーズのゲームとして販売されたものではなく、YAMAHAが海外で販売したキーボードに同梱される付属ソフトである。
その後の展開
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2013年2月をもって本シリーズの公式サイトが消滅した。
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これは本シリーズだけでなく、『MAMBO A GO GO』や『Toy'sMarch』、『DANCE86.4』など既に更新が止まっていた他のBEMANIシリーズも同様である。
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2017年3月より正式稼働したBEMANIシリーズ作品『ノスタルジア』が、その作風などから「KEYBOARDMANIAの後継作品」と言われる事が多い。本シリーズ作品から複数の楽曲が移植されノスタルジア側でプレー可能となっている点も、この説の強力な裏付けとなっている。
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本シリーズから移植された楽曲の中でも特筆すべきなのは、久保田修氏による楽曲「Carezza」。
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2001年に稼動した『3rdMIX』で初期楽曲として収録されて以降、ANOTHERとDOUBLE REALどちらの譜面も最難関を誇るラスボス曲にして、上述した「鍵盤のキーと打鍵音が一致しない」という問題を一切発生させずに構成された非常に高品質な楽曲&譜面であるものの、とある事情から本シリーズ以外への移植が長い間叶わなかった事もあって、ファンの間では“伝説の楽曲”と呼ばれていた。
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時は流れて2018年、なんと7th KACのノスタルジア部門の決勝戦課題曲として「Carezza」が登場。実に17年越しのサプライズ収録を果たした。
楽曲紹介コメントは“伝説に 挑め”。これ以上の解説は無粋だろうと言わんばかりの短さである。
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実は、KACの決勝楽曲として他シリーズの過去作品からの移植曲が用いられたのは「Carezza」が初。公式もこの楽曲を、そしてこの楽曲によって紡がれた伝説を大切に扱っている事が窺える。
最終更新:2023年10月07日 17:42