本項目では『ファイナルファンタジー』のPSP版と3DS版をまとめて記述する。判定はPSP版が なし 、3DS版が 良作



ファイナルファンタジー (PSP)

【ふぁいなるふぁんたじー】

ジャンル RPG


対応機種 プレイステーション・ポータブル
メディア UMD 1枚
発売元 スクウェア・エニックス
開発元 トーセ
発売日 2007年4月19日
定価 3,800円(税別)
プレイ人数 1人
レーティング CERO:A(全年齢対象)
廉価版 アルティメットヒッツ
2009年7月30日/2,800円(税別)
配信 PS Store
2011年2月22日/2,000円(税別)
判定 なし
ポイント グラフィックは美麗
調整を重ね過ぎてややちぐはぐバランスに
追加ダンジョンの一部仕様がネック
ファイナルファンタジーシリーズ

概要

初代『ファイナルファンタジー』のPSP移植版。ファイナルファンタジー20周年記念作品の一つで、「Anniversary Edition」と銘打たれている。
GBA『ファイナルファンタジーI・II アドバンス』をベースにしており、追加ダンジョンであるSoul of Chaosなども収録している。

これまでFFIの移植は7回目*1で、往年のファンからは乱発しすぎではないかと不安視する声もあった。
それを見越してか価格は一本のソフトとしては控えめになっており、『ディシディア ファイナルファンタジー』から過去作に興味を持ったプレイヤーには同じPSPで発売されたこれが重宝されたものと思われる。


GBA版からの変更点・不評点

時の迷宮
追加ダンジョンなので行く必要はないが、後述するようにアートギャラリーを完成させるには、ここを最低8回はクリアしなければならない。
この迷宮にはGBA版の内容に加えて、手に入るアイテムが追加されている。

  • 単純にエンディングを見るだけなら行く必要は無いのだが、FF1のシナリオを事前に知らない場合は、あたかもラストダンジョンへの入り口であるかのように錯覚させる演出となっている。
  • このダンジョンは、まず『「たたかう」不可』『攻撃力半減』など、プレイヤーが任意に能力を封印する必要がある。すると封印した能力に応じて時間をもらえる。
    その上で迷宮に入り、与えられた時間内にフロアの仕掛けを解く。
    これを繰り返してボス部屋までたどり着き、追加ボスと戦うというもの。
    • 当然、「たたかう」と「まほう」を両方封印して「防御力を半減」したりすると、戦闘では苦戦することになるためどの能力を封印するか考える必要がある。
      • ただGBA版で追加された最強魔法が無限に使えるアイテムがあるので、最低「アイテム」だけあればなんとかなる。そのせいか「アイテム」封印でもらえる時間は「たたかう」より多い。
  • フロアはランダム(分岐により候補は絞られる)で選ばれるので、失敗した場合すぐに再挑戦はできない。
    • 時間切れになってもゲームオーバーにはならないのだが、それでも終わるまでそのフロアの仕掛けを解かなければならない。
    • 時間が切れると視界も悪くなり、そのフロアから脱出するまでHPとMPが減少してゆくので難易度はさらに上昇する。
      • 制限時間内にクリアしたフロアはタイトル画面から挑戦できるようになる。つまりクリアしないと練習できない、このことは不親切だと指摘されている。
      • 逆に言えば「討伐指令」や「兵隊の行進」などの難易度の高いフロアを時間切れでクリアしても、タイトル画面からは挑戦ができない、その場合は何の見返りもないのである。
      • また、時間内にクリアできたかどうかでボスの強さや入手アイテムの変わるルートが分かれるので、場合によっては意図的に時間切れにする必要も…。
  • 迷宮内ではセーブできない。中断はPSPのスリープ機能のみ。
    • 後述の3DS移植版でも同様で、本体を閉じての中断スリープ機能のみ。
    • フロア次第ではあるが、比較的早くクリアしても迷宮脱出までに1時間前後はかかると見て良い。
      やり応えがあるとも言えるが、この追加ダンジョンが携帯機移植版にしか収録されていない事情を考慮するとやや不親切なUIではある。
      本体のバッテリー残量に気をつけてプレイするのが望ましい。
  • ダンジョン内の仕掛けはパズル、クイズ、計算問題、暗記、などがあり、人によっては楽しめるものもある。
    • フロアによって難易度の差が激しく、計算や暗記は難易度が高いものも存在するのでその場合やはりメモやパターン把握が必要になる。
+ 特に難易度が高いと問題にされる仕掛け。クリックで開閉
  • 今作の迷宮の仕掛けの問題でよく話題に上がるのが「討伐指令」というフロア。
    • 部屋をうろついているドラゴンの中から、指定された種類を指定された数だけ倒す、という内容。
      • ドラゴンの種類は角の本数と尻尾と羽根の長さで識別するのだが、批判される点はこのドラゴンが小さいドット絵で非常に見分けがつきにくいということである。
      • 倒すドラゴンは一度しか言われない。「角が2本で羽根が長くて尻尾が短いドラゴンを4匹」などというのを一度に覚えなければならない。メモは必須である。
      • 条件を満たしていない状態で黒いローブの男に話しかけると、即やり直しになる。他の試練のように終わったかどうかを選択することもできない上に、現在何匹倒したかの確認もできない。
      • どの種類のドラゴンも一度に一匹しか現れないので、一匹倒すたびにフロアから探さなければならない。
      • 一度成功しても終わらず、次に二種類のドラゴンを指定される。それも成功すると次は三種類指定される。
      • 三種類のドラゴンを覚えて、細かいドットを見定めながら、さらに倒した数まで正確でなければならない。メモ必須でそれでも混乱する。
      • 倒す数もランダムで、多いときはかなりの苦痛を強いられる。
      • 3回命令されるが、一匹でも間違えると、1回目からやり直しであるためストレスが溜まる。

        上記のように非常に凶悪な難易度を誇るフロアである。クリアするだけでも非常に気を使う上、制限時間内にクリアするのは困難を極める。
        とはいえ種類の違いを頭に叩き込んだ上で、ダッシュ機能を使う、1回目の討伐命令は少ない数の命令が出るまでやり直す、メモを取るなど工夫をする事で時間短縮ができるので、攻略法を編み出す面白さも確実に存在する。

  • 他にも「兵隊の行進」が難しいとされる。人によってはこちらの方が難しかったという人も。
    • 「ランダムに途中停止する隊列を乱さずに歩く」という緻密な操作を要求されるフロアである。これに関しては攻略やパターン対処と言った類の物は実質なし。
    • 「討伐指令」は工夫次第で時間短縮できるのに対して、「兵隊の行進」は反射神経とは名ばかりの所詮「運ゲー」に近いのも理不尽度に拍車をかけている。
    • 原則として後ろの兵隊に追いつかれない程度に遅めに移動する必要があるのだが、途中で止まるタイミングは完全にランダムなので、どこかで妥協して止まることを考えないといけない。下手をするとすぐ列より前に出てしまう。
    • かと言って遅めに移動しすぎると、4~5回歩く場合までは通用しても6~7回歩く場合だとほぼ必ず追いつかれる。
    • 頑張っても運ゲーに近いので、プレイヤー側で何回歩くか予め決めておきそれで総当りするのがストレスや負荷が少ないと思われる。
      しかしながら正解の歩数に当たらない時はいつまで経ってもクリアできないので、運が良くないと時間内攻略は厳しい。
      • 以上のようにただでさえ難しいのにもかかわらず、時間切れになると突破は困難を極める。
        歩いてる途中でも敵が平然と出現するようになりエンカウントで歩数やタイミングが分かりづらくなる上、敵が出なくてもスリップダメージ音で集中力を掻き乱してくる。
        行進開始の笛の音が聞こえなくなるのでミュートにする訳にもいかず、最悪笛の音とダメージ音が被ると聞き取りづらい問題まで出てくる。
  • 時間内に突破できたか否かで分岐が変わり、最終的に8パターンのボスが選ばれるがノーヒントだとわかりにくい。
    • アートギャラリーを完成させるためには8パターン全て倒す必要がある。
      さらに全てのフロアをクリアすることもコンプリート条件の一つとなっており、こちらは8回ではまず不可能。
      分岐パターンを把握しても狙い通りのフロアが必ず出るとは限らず、出てきても失敗すればまたやり直しである。

その他

  • カセットROMのGBA版と比べると仕方ないとはいえ、ロード時間が長い。DL版なら多少は短くなるが、それでもGBA版よりは長い。
    • レベルアップ時の成長吟味やランダムダンジョンのフロア選択など、やり込む上ではリセット→ロードする場面が多いのでストレスの要因。

評価点

  • グラフィックは「もっとも美しいファイナルファンタジー」と宣伝されただけあって綺麗になっている。
    • フィールドや敵のグラフィックは勿論、隠しダンジョン「Soul of Chaos」に登場する歴代ボスを含めたすべてが新規のものとなっている。プレイしてきたファンは新鮮に感じるだろう。
      • また、歴代ボスとの戦闘BGMが過去作のボス戦BGMに変更された。それ自体は過去作ファンから好評なのだが、『IV』から出演した四天王は原典で使用された「ゴルベーザ四天王とのバトル」ではなく「バトル2」になっており、さらには大人しい曲調にアレンジされている為、不評である。
    • 一方でキャラドット絵や街背景などは「市販のゲーム作成ツールの素材のようだ」という声も多い。高解像度なのが裏目に出たケースとも言える。
      実際、書き込みは細かい方だが…。
    • モンスターグラフィックはWSC版以降のリメイクでは基本的に同様のデザインだったが、今作では大幅にリファインされている。特に天野氏による原画に近づけた例が多い。
    • 一部の魔法エフェクトが派手になった。これも派手になった事自体は歓迎されたがその代償として同時に演出時間も長くなっており、前述の時の迷宮の仕様と合わせるとプレイヤーに対する嫌がらせと邪推されることもあるが…。
      • 最強魔法であるホーリーはエフェクトも最長。敵に使用されることもある。
  • GBA版ではオミットされた、PS版のオープニングムービーや原画ギャラリーが復活した。

賛否両論点

バランス面

  • GBA版は少しの経験値でレベルアップ可能なバランスとなっており、「手軽にできる」という意見もあるが、FC版をプレイしていたファンの中には「簡単にしすぎでは?」という声もあった。
    そのためか今作は、レベル11以降はレベルアップに必要な経験値がGBA版から1.5倍に増加している。
    • ザコ戦は依然として簡単であるため、GBA版と同じ感覚で進めるとボス戦のみ苦戦するという事態になるため「バランスがちぐはぐではないか」と指摘する声もある。
    • だが極端にバランスが破綻しているわけではないので、初めてプレイする分にはさほど問題ない。
    • またレベルアップのペースが落ちても魔法の修得可能レベルは変更されていないので、レベルを上げるためにザコ戦を繰り返し経験値を稼がなくてはいけない事は変わりないが…。
  • ちなみに元のFC版は、どちらかというとザコ戦のやりくりで苦労するゲームである。

問題点

追加アイテムに関して

  • 最強の剣として「バーバリアンソード」が追加された。「蛮族の剣」というネガティブな意味合いを含んだ名前の武器が、歴代シリーズの最強武器を差し置いて最強の剣となっている。
    • この剣は『FFXI』から引用されたものだが原典では別に強い剣でもなく、このPSP版で謎のパワーアップを遂げた。
      さらに後に『ディシディア ファイナルファンタジー』でもFFIの戦士の最強武器として登場し、PSP版をプレイしていないファンにとっては馴染みのない武器のために物議をかもした。以降のFFソシャゲ等でも、FFI出典の武器として登場している。
  • 他の追加アイテムも、原作では特に目立たず強くなかったものが多く、何故これが選ばれたのかと疑問点が付くものが多い。
    • 時の迷宮を攻略しボスを倒す事で手に入る武具も、全て強い訳ではなく性能格差がある*2
  • 引用元では戦士系専用だった重装備が、なぜか軽装備の赤魔道士でも装備できるよう設定されているため、結果ジョブ間の能力格差も広がってしまったと指摘する声もある。
    • 2015年に入ってから強制的に装備するバグと、アイテムが変化するバグが発見された。ジョブ間の能力格差に関しては強制装備バグである程度カバーできる*3
  • 本作のベースになったGBA版では『II』が同時収録されていたものの、PSP版でまた引き離されてしまった。
    • 他のPSPのゲームソフトに比べれば若干価格は安いが、基がカップリング作品だったことを考えると「割高」というイメージは拭い切れない。

総評

当時あらゆるハードで発売されていたFFIの最終形態であり、総合的に考えればGBA版と比較しても完成度は上がっていると言ってもいい。
だが調整を重ねすぎたゆえのバランス面の問題点や、追加ダンジョンの仕様の不親切さに対しては不評の声もある。 時の迷宮の一部の凶悪な難易度を誇る試験を許容できるプレイヤーや携帯機で気軽にプレイしたいプレイヤーにオススメと言えるだろう。


余談(PSP版)

  • 本作発売より2年後に、オリジナルのFC版やそれをベースにしたWSC版に近いゲームバランス・テキストであるPS版が同じくPSPのゲームアーカイブスで配信されている。
    • このため、GBA準拠リメイクのPSP版とFC準拠リメイクのPS版の両作を同一ハードでプレイすることも可能となっている。
  • 「Anniversary Edition」第2弾としてPSP版『ファイナルファンタジーII』も発売されている。本作と同じくGBA版『I・II』ベースのリメイクで、バラ売りされた形になる。

ファイナルファンタジー (3DS)

【ふぁいなるふぁんたじー】

対応機種 ニンテンドー3DS
メディア ダウンロード専売
発売・開発元 スクウェア・エニックス
発売日 2015年1月21日
定価 1,000円(税別)
プレイ人数 1人
セーブデータ 10個
レーティング CERO:A(全年齢対象)
判定 良作
ポイント PSP版をベースにロード・グラフィック・UIを最適化

概要(3DS)

PSP版を3DSへと移植した作品。
ファイナルファンタジー エクスプローラーズ』のパッケージ初回封入特典として先行ダウンロードコードが付属していた。


PSP版からの変更点

  • メニュー画面用のBGMが流れなくなった。これはPS版と同じ仕様。
  • メニュー画面などの小文字も漢字表示に対応する様になった。
  • 移動の際は下画面で常時マップが表示しており、タッチコマンドで街やダンジョンの位置検索が出せる。
    • これにより、原作から伝統の呪文であったマップ表示コマンドはボタン操作用という扱いになり、やや形骸化した。
  • メニュー画面や戦闘のコマンドなどは下画面が主な表示場所となり、一応タッチ操作にも対応している。

評価点(3DS)

  • PSP版の難点だったロード時間が大幅に短くなり、ゲームテンポが格段に良くなった。またホームリセットが素早く行えるため、リスタートのテンポも良くなった。
  • 値段が安い。
    • PSP版と同内容で1000円+税と、PSPのDL版のほぼ半額で買えるため、かなりお買い得となっている。
    • 値段が安いため、『II』が未収録であることによる割高感も無くなった。
  • UIの最適化
    • UIが下画面に集約されたため、PSP版よりも情報が見やすくなった。
  • グラフィックが立体視表示に対応。このためかフィールドやダンジョンなどが2Dから3Dポリゴン表示に描き直されている。
    • 戦闘画面も味方や敵が奥行きを強調した台形配列となっている。

問題点(3DS)

  • タッチ操作に最適化しきれていない。
    • 基本的にタッチ範囲が小さな文字列である事が多く、まともに使うのならタッチペンは必須。
      また戦闘画面のコマンドもスマホ版のようなアイコンではなく小さな文字列でのボタンもしくはタッチ操作となっている。

総評(3DS)

基本はPSP版とほぼベタ移植作品だが、ロード時間の大幅短縮による利点は大きく、低価格でストレスフリーに楽しめる。
過去のリメイク版で追加された要素も全て収録されており、FF1の最終形態と言える内容に仕上がっている。
既にPSP版を持っている人が再び購入するほどの価値があるとは言い難いが、PSP版未所持であれば、購入するならこの3DS版一択と言えるだろう。


余談(3DS)

  • ナンバリングタイトルの3DSへのリメイクとしては唯一プレイできる作品となった。
    • 他のシリーズも3DS向けに移植されるのではと見られていたが、結局本作のみの展開となった。2023年3月28日をもって本作は配信終了した。
    • もっとも、バーチャルコンソールでは今作のオリジナル版に加えて『VI』までの全てのナンバリング作品をプレーする事が出来たのだが。 ちなみにこちらも同日に配信終了している。

移植

  • 後に本作をベースに各種スマートフォン用にも移植された。
    • iPhone・WindowsPhone版はGBA版及び本作の追加要素(追加ダンジョンの「Soul of Chaos」や「時の迷宮」)が含まれているが、何故か後発であるAndroid版では収録されていない。
      • ちなみにiOSへの移植版ではタッチ操作なので「兵隊の行進」が非常に難しくなっている。
      • 素早く正確に一筆書きで移動するような仕掛けの「灼熱の通路」も操作が難しい関係上、難易度が高くなっている。
    • ポータルアプリ版も配信されていた。こちらも単体版同様にAndroid版のみ追加要素が削られている。
  • 2021年6月14日、『I』~『VI』までをオリジナル版ベースで2Dリマスター化する『ファイナルファンタジー ピクセルリマスター』シリーズの配信が発表された。
    • それに伴い、従来配信されていたスマートフォン版は、3Dリメイクである『III』『IV』を除いて同年7月29日に配信が終了した。
      • 後に3DS版も配信終了したため、最終形態と言える本作のFFIを今からプレイしたい場合はPSP版のみになった。
    • 同日に配信されたピクセルリマスター版『I』には、「Soul of Chaos」や「時の迷宮」といった追加要素は入っていない。また、魔法がMP制からFC時代の回数制へと回帰したのを始め、バランスも再調整されている。

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最終更新:2023年12月27日 09:58

*1 発売順にFC、MSX2、WSC、PS、携帯電話アプリ、GBA、PSP。FC版I・IIや携帯各機種も個別に分けるならさらに増える。このうちMSX2版はマイクロキャビンが開発・販売。

*2 防御力の低い「シャドウマスク」、知性上昇以外に見どころのない「ゴールドスタッフ」、存在意義をマサムネやムラサメに食われている「ラストダガー」、以上3品は所謂ハズレの状態。

*3 移植版の3DS版では修正されている。